10/26 山口の通所施設「夢のみずうみ村」 博打のススメ

ルーレットに興ずる通所者たち。チップを張って、勝って万歳、負けてガックリ=山口市の「夢のみずうみ村」で

 作業療法の応用で高齢者や障がい者の生活能力改善に著しい成果を上げている通所施設がある。山口市の「夢のみずうみ村」だ。介護施設というとバリアフリーが一般的だが、ここでは逆にバリアーだらけの「バリアありー」。階段の上り下りや伝い歩きなど通所者に自助努力を促すのが特徴だ。 (鈴木伸幸)

 「さあ、張った、張った」「あっ、やられたー。持ってけ泥棒」-。花札にルーレットなどが並ぶ“賭場”に威勢のいい声が響いた。“博徒”は、時々言葉がもつれる要介護の高齢者に障がい者。施設内で使われる地域通貨のユーメ紙幣が飛び交い、勝って万歳、負けてしかめっ面-と喜怒哀楽が入り乱れた。

 名古屋市から見学に来ていた女性介護士がつぶやいた。「こんなに元気な要介護者は初めて見た」

 人間生活に「遊び」は必要。それは要介護者も同じだ。それを実践してのカジノだが、実はこれも心身のリハビリテーション。まずは勝とうとする意欲が沸く。勝つには、考えなければならない。さらには、ユーメ紙幣を指先で数え、手を伸ばして賭けることは機能回復につながる。

 みずうみ村の藤原茂代表(63)は「普通の施設では、要介護者に転ばぬ先の杖(つえ)ばかり提供して、持てる能力まで衰えさせてしまう。うちでは何でもやらせ『自分でできる』と思わせる。それが生きる意欲や喜びにつながる」と強調した。

 カジノだけではない。料理や陶芸の教室に、温水プールも。通所者は何をするか自分で選び、一日を思い思いに過ごす。施設の廊下はわざわざ坂にしてある。手すりはない。歩行困難な人は雑然と並ぶ家具を伝い歩く。それもリハビリだ。

 通所者は小さな目標設定と達成を繰り返す。過去には、脳卒中の後遺症で半身まひとなり、車いすで全介助が必要な七十六歳女性が「海外旅行をしたい」と言いだした。その夢に向けて、段階的な目標を設定した。

 最初の目標は「自分の足で立つ」。続いて「飛行機の狭いトイレで体の向きを変えるための足踏み」「便座に座る」-。そんな小目標を設定するたびに百ユーメ、達成したら五百ユーメが渡される。女性はリハビリを通じて、一年半後には北海道を旅行できるまでに機能が回復した。

 これは、決して例外ではない。過去の通所者を調べたところ、要介護度の改善は顕著。特に中度の「要介護度2、3」の通所者は半分以上が改善した。「中重度では加齢による要介護度の進行抑止は困難」という“常識”を打ち破った。

 介護保険に詳しい龍谷大学(京都市)の池田省三元教授は「『みずうみ村』には、あらゆるところにリハビリがちりばめられ、動機付けの仕掛けも良く考えられている。全国の施設で参考にしてほしい」と高く評価する。

 それに呼応して、藤原代表も「ノウハウは全て公開している。もうけ主義ではできないし、通所者の『できる』『できない』の見極めは難しく、職員教育も大変。でも、いいところは吸収して、要介護者の生活能力を改善してほしい」と話す。

 今年九月に創設十年を迎えた「みずうみ村」。「首都圏に同じ施設を」という声に応えて今年七月、千葉県浦安市に開設、口コミで評判は広がり、予想以上のペースで通所者は増えている。

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和光市でルーレットなどカジノゲームを使った介護予防事業が人気を集め、年間の利用者数が1000人以上に上っている。現金はかけずチップのやり取りだけだが、緊張感を味わいながら頭や体を使うことで、軽度の認知症や引きこもりの予防に一役買っているという。(山内悠記子)
ディーラー役の男性介護福祉士がルーレットを回転させると、お年寄りたちの視線が集まった。回転していた玉が全員はずれの番号で止まった瞬間、「あー」という叫び声や「汗かいたな」の声。会場は笑顔と元気な声で満たされた。
九月三十日、同市内で開かれた市の介護予防事業「アミューズメント・カジノ」。七十~九十代の男女二十五人が介護福祉士らの指導を受けながらルーレットやサイコロゲームなどを楽しんだ。
六十五歳以上の高齢者が対象の同事業は、市長寿あんしん課が「楽しめる介護予防を」と、国のモデル事業の適用を受け、カジノゲームの導入を決めたのがきっかけ。
二〇〇七年度から月一回ペースで市内二カ所で実施し、利用者の延べ人数は〇八年度は千三百十人と前年度の約二倍に。人気を受け、本年度から計三カ所での開催に拡大した。
参加者はチップを置くため自然に手を伸ばしたり、立ったり座ったりし、会話も弾む。市から事業委託を受ける介護サービス会社「愛和」(東京都葛飾区)の寺内裕樹・鎌倉営業所長(44)は「運動のように強制的でなく、非日常空間で自分を解放しながら判断力を磨き、心体の活性化につながる」と話す。
市ではこのほか、男性向け料理教室など十四の介護予防事業を実施。その結果、健康調査などで将来介護が必要となる恐れが高いと判断された「特定高齢者」から、介護の必要のない「一般高齢者」に改善した人の割合は、〇七年度は47・3%だったが、〇八年度は64・5%に増えた。
初年度から利用する渡サダ子さん(92)=和光市南=は「良い刺激で皆とのおしゃべりが楽しみ」とはつらつとした様子。鈴木静江さん(84)=同市下新倉=も「頭の体操になります」と笑顔だった。

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