9/27国民皆保険 形骸化も 安倍政権の社会保障改革【中日メディカル】

これを読みたかった。先週金曜9/27の東京新聞の特報。
色平さんの仰るように「現在までの日本の国民皆保険はほとんど奇跡みたいな制度だった」んだ。

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国民皆保険 形骸化も 安倍政権の社会保障改革

(2013年9月27日) 【北陸中日新聞】【朝刊】【その他】
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20130927145612725

自由診療、領域拡大か 医療難民の増大懸念

保険が適用されない高度先進医療の領域は拡大しつつある=本文とは関係ありません

 「医はカネなり」の風潮が強まっている。安倍政権は先月、患者の自己負担増などを柱とする社会保障制度改革の骨子を閣議決定した。加えて、政府の産業競争力会議は混合診療の導入など、経済活動としての医療という視点を強めている。「いつでもどこでもお医者さんにかかれる」というこの国の安心は風前の灯火(ともしび)だ。格差が拡大する中、経済的理由から受診を控える「医療難民」が一段と増えそうだ。 (荒井六貴)

 「低所得層にとっては経済的な負担感が強く、受診を控える患者さんが一段と増えそうだ」

 日本福祉大学の二木立(にきりゅう)学長(医療経済学)は、安倍政権が先月、閣議決定した社会保障制度改革のための「プログラム法案」の骨子について、そう懸念した。

 この骨子は社会保障制度改革国民会議の報告書を受け、2017年度までの取り組む課題を並べたもので、秋の臨時国会に提出される見通しだ。

 報告書によれば、その中身はこれまで1割だった70〜74歳の医療費の自己負担割合を2割に引き上げるほか、入院給食費の全額自己負担が盛り込まれている。

 骨子は「健康管理や疾病予防など自助努力するインセンティブ(やる気)を持てる仕組み」の検討を挙げるが、要は医者にかからないように自己責任で健康を保て、ということだろう。

 二木学長によると、これまでの改革議論の経緯から、高齢者の2割負担などのみならず、それ以外にも将来的に患者の負担を増やす政策が導入されかねないという。

際限なき自己負担拡大 「かぜなら 患者7割」

 外来受診1回ごとの「定額負担」や、外来1回ごとに500〜1000円までは全額自己負担になる「保険免責制」などだ。「際限なく、患者の負担が増していく。これが国民皆保険制度を形骸化させかねない」

 医療制度改革に加え、産業競争力会議では保険外併用療養費制度の拡大(混合診療の導入)が論議されており、環太平洋連携協定(TPP)の影響による薬価上昇なども予想されている。とりわけ、薬価の上昇は「今そこにある危機」(二木学長)で、これらも患者負担に直結する。

 安倍首相が経済成長のシナリオを示した「日本再興戦略」では、医療は打ち出の小づちとして扱われる。それと連動する産業競争力会議では、混合診療導入のほか、「かぜの自己負担は現在の3割から7割へ」「少額な医療費は全額負担」といった意見も出された。

 混合診療は公的医療保険が適用される保険診療と、保険外の自由診療を併用する仕組み。現在は原則禁止で、診療総額は自己負担扱いだ。

 だが、高度先進医療などでは、例外的に保険診療を併用することが認められている。保険外併用療養費制度だ。通常なら保険対象分が将来的に広がっていく。だが、危ぶまれているのは国の医療費抑制策で保険適用の対象が固定化されてしまうことだ。

 実際、保険外併用療養費の拡大について、厚生労働省は「速やかに先進的な医療を受けられるよう対応する」とするが、保険対象の拡大については言葉を濁している。

「『求める医療をいつでもどこでも』は幻想になりつつある」と懸念を語る多田智裕医師=さいたま市で こうした施策の延長線上には、どんな医療の現実が描かれるのか。さいたま市で胃腸科肛門科の診療所を運営する多田智裕医師は、次のようにシミュレーションする。

 とある男性会社員(50)は、初期とみられる大腸がんの手術を受けることになった。主治医は費用などをこう説明した。

 「通常の開腹手術なら保険適用で20万円。これだけでも大腸がんは切除できる。でも、転移の可能性があるリンパ節を完全に除去できるかは保証できない。残してしまうかもしれません」

 続けて、もうひとつの選択肢も紹介する。

 「最新鋭の手術機材を使えば、リンパ節を正確に除去できる。こちらは保険外併用療養。自己負担の150万円が加わって、計170万円だ」

 男性は悩む。「米国の民間のがん保険会社から勧誘があったけど、保険料が月1万円で高くて、断ってしまった。加入しておけば、よかった」

 医師は「この最新鋭の手術機材に公的保険が適用されれば、費用は約60万円に抑えられる。だが、国は患者の自助を前提に新しい技術が生まれても、公的保険をほぼ適用しない。お気の毒だが」となぐさめた。

 多田医師は「求める医療をいつでもどこでも、お金の心配をせずに受けられることが幻想になりつつある。所得により医療サービスの差が広がって、良質な医療は受けにくくなる」と危ぶむ。

 根幹にあるのが、国の診療報酬の抑制だ。診療報酬は保険適用される医療行為に払われる。このため、経営の苦しい医療機関は保険適用外の自由診療を増やす傾向にあるという。

 「大腸の内視鏡検査は保険適用で、1日15人前後の患者を診ないと割が合わない。医師も体力的に厳しい。保険適用せずに自由診療にし、診療代を高くすれば、4、5人の患者ですむ。患者は減るが、討ち死に覚悟で自由診療に打って出る医師は増えている。もちろん、経済的余裕のない患者は受診できない」

 超高齢化社会を迎える中、財源が限られている以上、こうした事態は諦めるしかないのか。

 全日本民主医療機関連合会(民医連)の藤末衛(まもる)会長は、組合管掌健康保険(組合健保)の保険料率アップを提起する。

 厚労省などの資料によると、外来受診が無料のドイツでは、保険料の負担割合が給与の15.5%なのに対し、日本の組合健保は平均で8.6%と軽い。中小企業中心の協会けんぽでも10%だ。

 「とりわけ、日本の大企業の保険負担は国際的にも小さい。せめて、協会けんぽのレベルまでは引き上げるべきだ」

 国民医療費は年々増加し、37兆4千億円に上る。うち、公費負担の割合は38.1%で増加傾向をたどる一方で、事業主や被保険者の保険料の割合は5割を切り、財源は厳しくなる一方だ。

 前出の二木学長は国民会議の報告書に記された「保険料は負担能力に応じて求め、格差是正に取り組むべきだ」という指摘に注目する。無職の人や非正規労働者らが加入する国民健康保険は、財政的に弱体化している。このため、負担能力のある組合健保に支援してもらおうという趣旨だ。

 医療難民を増やさないためには「これを政治が実現できるかがカギになる」と話す。「経済的理由による受診抑制を防がなくては。医療格差をなくさなくてはならない」

デスクメモ

 内戦の悲惨が伝えられるシリア。息苦しい国だが、感謝したことがある。訪問中に体調を崩した。びくびくしながら公立病院の門をくぐると、外国人旅行者でも薬の実費だけ。無料診療だった。日本では昨年、貧しさから病院に行けず、58人が死亡した(民医連調べ)。戦争とは異なる悲惨がある。 (牧)

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