1/20増殖する原発コスト 廃炉後も電気代に転嫁 【東京新聞・特報】 小出裕章さんコメントあり

増殖する原発コスト 廃炉後も電気代に転嫁

2015年1月20日【東京新聞・特報】

関西電力など電力四社が老朽原発五基を廃炉にする。問題は三百五十億円以上とされる廃炉費用だ。各社は原発稼働中に電気料金に上乗せして積み立ててきたが不足している。そのため、廃炉が決まって発電していない原発の廃炉費用も、電力消費者が負担する制度に移行するという。何ともおかしな新制度が、原発のコストの高さをあらためて浮かび上がらせる。 (沢田千秋、三沢典丈)

 会計制度変更し負担押しつけ

廃炉の方向となっているのは、日本原子力発電の敦賀原発1号機(福井県)、関西電力の美浜原発1、2号機(同)、中国電力の島根原発1号機(島根県)、九州電力の玄海原発1号機(佐賀県)の五基。一九七0~七五年に営業運転を始め、最も新しい玄海原発1号機も今年で稼働開始から四十年を迎える。
福島第一原発の事故後、二O一二年の原子炉等規制法の改正などによって、原発の運転期間は原則四十年と規定された。二十年の延長が可能だが、安全対策には巨額の費用が必要だ。この五基は出力が小さく、費用をかけて運転期間を延ばしても利益を見込めない。
電力各社はもっと早く廃炉を決めてもよかったが、踏み切れない事情があった。
会計上、廃炉と決まった原発の資産価値はゼロになり、減価償却の未償却分を特別損失として一括計上しなければならない。各社は五基について、少なくとも四十五年以上の運転期間を想定していた。経済産業省の試算では、廃炉前倒しで一基当たり二百十億円程度の損失を計上しなければならなくなる。経営の屋台骨を揺るがしかねず、二十~三十年の廃炉作業に支障を来す恐れもある。
経産省が電力会社を救済するために考えたのが、廃炉をめぐる新会計制度だ。廃炉決定後も原発の資産価値を認め、十年分割で損失を計上できるようにする。つまり、発電しない原発の廃炉費用も消費者に負担させるわげだ。
どういうことかというと、現在、電気料金は電力会社の発電コスト(原価)に事業報酬を加えて算出する総括原価方式が取られている。新会計制度になれば、原発の来償却分の特別調失と廃炉賞用は発電コストと認められ、電気料金に上乗せされる公算が大きい。
京都大原子炉実験所助教の小出裕章氏は「問題がようやく自に見える形になってきた」と話す。「原発を止めても安全にはならない。放射能まみれの建物が残り、使用済み核燃料の処分には十万年、百万年かかる。どうやって廃炉にできるか、どれぐらいの金がかかるか全然分からないまま、政府と電力会社は一切を国民に知らせずにきた。どうにもならなくなり、国民に負担を回している」
一六年をめどに、電力の小売りが自由化され、発送電が分離されるが、廃炉費用はその後も付いて回る可能性が大きいという。経産省は「競争が進展する中でも(廃炉)費用回収を着実に行うため」として、全ての電力小売り会社が負担する送電網の利用料金に廃炉費用を上乗せする制度を検討している。風力や太陽光など再生可能エネルギーで作った電気を購入する消費者も、廃炉費用を負担することになる。
小出氏は「あたかも安いように言いながら原発を動かしてきた東電など電力会社に、責任を取らせるべきだ。太陽光発電を活用しようと、新たに生まれた送電会社にも廃炉の費用を払わせるとは、こんなばかげた制度はない」と憤る。

 交付金頼り脱却 支援を

 収入の66%が原発関連 佐賀・玄海町

廃炉によって、影響を受けるのは電力会社だりではない。原発が立地する自治体の経済にも大きな影響を与える。
廃炉の方向となった玄海原発1号機があるのは、佐賀県玄海町。人口約六千百三十人で、県内で最も人口が少ない自治体だが、原発マネーを背景に、一四年度一般会計当初予算は百億八千万円。原発関連の交付金と、原発の固定資産税が総額の66・8%を占めている。
発電実績で金額が決まる電源立地地域対策交付金は福島の原発事故後、停止中の原発にも一律で交付されている。町財政企画課の試算によると、一五年度の同交付金は十七億三千六百万円の見込み。ー号機が廃炉になると、翌一六年度は十三億一千三百万円と、約四億二千万円減る。県から市町村に配分される県電源立地地域対策補助金や核燃料税交付金、固定資産税も減ることになるだろう。
地元の唐津上場商工会は以前、原発一基が地元経済に与える金額を試算した。
原発作業員の宿泊費と食費で年間四億七千万円、地元雇用の作業員の給与が約四億八百五十万円。西尾達也事務局長は「今は原発の安全対策工事などがあるが、廃炉になればこれもゼロになる。地域の経済全体に悪影響が出かねない」と心配する。
玄海原発は4号機まであるが、2号機も二一年に稼働四十年を迎える。「町の財政は立ち行かない。国の支援が必要だ」という地元の声を受け、経産省は一五年度当初予算案で、原発の廃炉に備え、立地自治体の中小企業支援など向けの地域振興費を、前年度当初比から十五億円増の二十三億円に大幅に相やした。
だが、原発が立地自治体にもたらす巨額な資金と比べると見劣りする。
資源エネルギー庁が示すモデルケースでは、出力百三十五万キロワットの原発一基の建設で、初期対策交付金として、建設着工の三年前から運転開始までの十年間、毎年五億二千万円が支給される。
着エした年からは、促進対策交付金が年間二十四億三千万円、原発施設等周辺地域交付金が年三十九億七千万円上乗せされる。運転開始までの七年間、自治体は何もしなくても毎年計八十億~四十億円を受げ取る計算だ。
稼働開始後も、毎年二十億円前後が交付される。運転開始後四十年までの交付金の合計千三百八十四億円が、国民の税金を原資として支出される。
原発を受け入れた自治体に、二基、三基と原発が増えていくのも、この巨額の原発マネーが大きく関わっている。原子力小委員会は昨年十二月の「中間報告」で、老朽原発のリプレース(建て替え)にも言及したが、今後も原発マネーで自治体に建て替えを容認させるのか。
京都大大学院の岡田知弘教授(地域経済学)は「実体経済を見ると、多くの自治体で原発依存度はそれほど高くない」と指摘する。福島の原発事故の後、各地の原発立地自治体を訪ね歩いたところ、原発に依存しない地城づくりを目指した活動が各地で見られたという。
岡田氏は「玄海町では、原発関連の宿泊者が見込めなくなった町内の民宿組合は、小中学生のサッカーなどの合宿を誘致し、地元の食材を使った食事を提供していた。地域の持続的な発展を目指していくのなら、国はリプレースなどより、むしろこうした自発的な試みを支援し、伸ばしていく必要がある」と話している。

(((デスクメモ)))
福島県大熊町の女性が以前言っていた。「原発で国からお金をたくさんもらえて、いい思いをしてきたから言いにくい」。確かに、電源立地地域対策交付金などは巨額だ。だが、故郷を追われるのに見合うほどの金額のわけがない。原発が爆発したらどんなひどい目に遭うか。声を上げ続けてほしい。(文)

首相官邸前で、原発の再稼働反対や廃炉を訴える人たち=16日、東京・永田町で

廃炉の方向となった5基の中では、最も早くから稼働している日本原子力発電の敦賀原発1号機(手前)=昨年11月、福井以敦賀市で

廃炉の方向となった九州電力の玄海原発1号機手前)=2013年6月、佐賀県玄海町で

((廃炉の方向となった老朽原発))

敦賀(福井)
1号機 運転開始 1970年

美浜(福井)
1号機 70年 2号機 72年

島根(島根)
1号機 74年

玄海(佐賀)
1号機 75年

カテゴリー: 小出裕章, 放射能汚染, 中日東京新聞・特報 パーマリンク