【10/21東京新聞】(社会)福島事故後被ばくで初の労災認定 白血病発症の元作業員/(社説)被ばく労災 廃炉の担い手こそ守れ

福島事故後被ばくで初の労災認定 白血病発症の元作業員

【東京新聞・社会】2015年10月21日 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201510/CK2015102102000134.html

写真

厚生労働省は二十日、東京電力福島第一原発事故後の作業で被ばくした後に白血病になった元作業員に、労災保険を認定した。事故収束作業に伴う白血病の発症で労災が認められたのは初めて。

厚労省によると、労災が認められたのは発症時三十代後半だった男性。建設会社の社員として二〇一一年十一月~一三年十二月、複数の原発で作業した。一二年十月以降の一年一カ月間は福島第一を担当。原子炉建屋に覆いを造ったり、使用済みの防護服などを焼却する施設を建設した。

男性は一三年十二月に福島第一を去った後に体の不調を感じ、白血病と診断され労災申請した。現在は通院治療している。

白血病の労災が認められるには、年五ミリシーベルト以上を被ばくし、作業開始から発症まで一年以上あることが基準。男性の累積被ばく線量は一九・八ミリシーベルトで、福島第一での線量は大半の一五・七ミリシーベルトを占めた。

福島県の富岡労働基準監督署は、厚労省の専門家による検討会の見解を聴いた上で、福島第一での被ばくが白血病の大きな原因になった可能性があると判断した。男性には医療費や休業補償が支払われる。

厚労省は「労災認定は補償が欠けることがないよう配慮した行政上の判断で、科学的に被ばくと健康影響の因果関係を証明したわけではない」としている。

事故前に全国の原発で白血病や悪性リンパ腫などの労災を認められた作業員は十三人。福島第一の収束作業で白血病も含むがんを発症したとする申請は八件。今回の男性を除く七件の内訳は三件が不支給、一件が取り下げ、三件が調査中。

福島第一原発での作業をし、白血病となった男性が初めて労災認定されたことに、作業員からは「認められてよかった」との声が上がったが、収束作業の現場が被ばくとの闘いであることは変わりない。他のがんなどの労災認定には高いハードルが設けられていることなど、作業員を取り巻く環境は課題が山積している。

白血病の認定条件の一つは「年五ミリシーベルト以上の被ばく」。東電のまとめによると、事故発生後、福島第一での作業に関わって累積で五ミリシーベルト以上被ばくした人は二万人強いる。二〇一一年度だけで一万人以上が五ミリシーベルト超被ばくしていることなどから、「累積五ミリシーベルト以上」の二万人強の多くが、「年五ミリシーベルト以上」という条件に当てはまるとみられる。

仮に白血病になった場合、救済の道が開けたことは安心材料になる。ただ、胃がんなどでは明確な基準が定まっておらず、一〇〇ミリシーベルト以上の被ばくが認定の一つの目安とされるなど、白血病に比べ厳しい運用がされている。

技術者の作業員は「がんになるのでは、と不安になることもある。どうすれば認定されるのか、決めてほしい」と話した。別の作業員も「福島第一で命をかけて働いている。(国は)家族のためにも救済側に立ってほしい」と訴えた。

胃など三カ所のがんになった元作業員は、高線量の作業をしたが、記録上の線量が一〇〇ミリシーベルトに満たないなどとして労災が認められなかった。この男性を含め、線量計を低線量の場所に置いて作業していたと証言した作業員は少なくない。その場合、実際の被ばく線量は記録より高くなる。

現場では、がれきが除去されるなどして当初よりは線量が下がった。現在はタンク増設や敷地内の舗装が中心のため、作業員の被ばく線量も全般的には低めで推移している。

だが今後、廃炉作業は原子炉へと近づく。ベテラン作業員は「来年はもっと高線量の作業が増える。がんになる人が増えたら、福島第一に来なくなる人が出てくるかもしれない」と懸念した。 (片山夏子)

<東電の広報担当者の話> 作業員の労災申請や認定状況について当社はコメントする立場にない。今後も作業環境改善に取り組み、被ばく管理を徹底していく

10/21被ばく労災 廃炉の担い手こそ守れ【東京新聞・社説】

被ばく労災 廃炉の担い手こそ守れ

【東京新聞・社説】 2015年10月21日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015102102000139.html

東京電力福島第一原発の事故処理で高線量の被ばくを伴う作業が続いている。被ばくによる労災も現実となり、壁が厚い補償認定の見直しが必要だ。廃炉への道は作業員の安全が守られてこそある。

廃炉に向けた過酷な作業が続く現場では、過密な労働環境で事故が相次いでいる。二〇一三年度に三十二件だった死亡・負傷は一四年度には六十四件に倍増した。

各地で原発再稼働を進める政府はさらに、重大事故時に許容される作業員の緊急被ばく限度を、現行の年一〇〇ミリシーベルトから二五〇ミリシーベルトに引き上げようとしている。作業員にさらなる被ばくを強要するのは命の軽視ではないか。

原発労働者の安全対策や補償は不十分だ。がんを発症しても労災認定の壁は厚い。厚生労働省が胃、食道、結腸がんについて、事故翌年の一二年に公表した労災補償の考え方では、がん発症との関連がうかがわれるのは「被ばく線量は一〇〇ミリシーベルト以上」「被ばくから発症までの期間は五年以上」などと高いハードルを課している。

だが、「何ミリシーベルト以下ならがんは発症しないという境界はない」と指摘する専門家は少なくない。厳しい基準を一律に当てはめるだけでは、収束作業で増える労災の認定が進まなくなる。厚労省によると、福島原発事故の作業での労災申請は十一件。認定例は原子炉建屋の覆い設置などに従事後、急性骨髄性白血病を発症した北九州市の元作業員のケースのみ。

現場の安全対策を問う裁判も始まった。事故収束作業に従事し、胃などにがんを発症した元作業員男性が九月、東電と元請け会社などに損害賠償を求める裁判を札幌地裁に起こした。男性は「事業者が安全配慮を怠り無用な被ばくをさせた」と主張。被ばく線量は一一年七月から四カ月で五六・四一ミリシーベルト。線量も発症までの期間も基準に満たないなどとして労災を認められていないが、高線量の作業は線量計を持たずに行ったという。

男性のケースのほかにも、線量計に鉛カバーをして線量を低く抑えたり、被ばく線量をごまかして働かせている問題が発覚した。男性の裁判を通じて、作業実態が明らかになれば全体的な点検、見直しは不可避になる。

国や東電は、がん検診や健康管理手帳の交付について、福島原発事故後の「緊急作業」に従事した人に限らず幅広く、離職後も含めて受けられるようにすべきだ。何十年もかかる廃炉作業は担い手が守られなければ成り立たない。

広告
カテゴリー: ちたりた パーマリンク