10/20東電、切り崩し工作? 飯舘村ADR申立人に不当対応【東京新聞・ふくしま便り】

東電の嫌がらせがこうして発覚した。

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東電、切り崩し工作? 飯舘村ADR申立人に不当対応

2015年10月20日【東京新聞・ふくしま便り】
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/tohokujisin/fukushima_report/list/CK2015102002000201.html

放射性物質除去実験用のミニヒマワリが咲き誇る。住民はいまだに避難生活を強いられている=福島県飯舘村で

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東京電力福島第一原発の事故で全村避難が続く福島県飯舘村。住民約三千人が、生活基盤が破壊されたとして賠償の増額を求めて、原子力損害賠償紛争解決センターに裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し出たのは昨年十一月だった。その後ほぼ一年の間に、東電が申立人に対し「ADR紛争中は直接請求分の賠償金を支払わない」と不当な対応を繰り返していたことがわかった。東電は「業務担当者への周知が不足していた」と非を認めて謝罪しているが、申立人の中には、ADRの取り下げを検討した人もおり、「ADRの切り崩し工作なのではないか」といぶかる声もある。

ADR申立人の男性Aさん(62)は福島市内に家族と住む住宅の建築を検討している。この費用のために東電に住居確保損害の賠償請求をしようと考えた。事故で自宅に住めなくなった飯舘村の村民には誰でも認められている権利だ。ところが友人から「ADRに加わっていると払われない」と聞かされた。

不安に駆られて九月十四日、同社の補償相談室に問い合わせると、二日後に電話で回答が寄せられた。内容は、友人が言った通りに「ADR紛争中はお金は出ません」だったという。

支払いがなければ住宅は買えない。悩んだ末、「ADRをやめるにはどうすればいいのか」と友人に相談した。この話が代理人の弁護士などに伝わり、事態が発覚する契機となった。

調べてみると、同様のケースがほかにもあった。

男性Bさん(61)は事故後、家族が五カ所に分かれて避難生活を続けているが、居住規制が解除になったら、母と妻と自分の三人は村に帰ると決めている。家の横には樹齢五百年を超えるスギの巨樹があった。除染のためといわれ、伐採を受諾したことを今も悔いている。村に帰ったら、切り株だけになったスギを守って暮らしたいという。

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だが四年以上も空き家にした家は、床が抜け、雨漏りがひどく、建て替えの費用を東電に請求した。九月十日に補償相談室に関係書類を持って足を運んだ。そこで担当者は「あっ、ADRに参加していますね。だとすると、受け付けはしますが振り込みはできません」と答えたという。「ADRを取り下げればいいんですか」と問い返すと、「それはBさんが決めることで自由です」と笑ったという。

しかしADRは、慰謝料の増額などを争っているもので、住宅に関する賠償とは別だ。ADRの運用指針となる「総括基準」にも「回答金額を上回る部分の損害主張のみを実質的な審理判断の対象とする」と明記されており、東電担当者の対応は明らかに不当といえる。指針は、ADRの和解を待つことで被害救済に遅れが生じることを防ぐ意味も持っている。

ADR代理人の保田行雄弁護士らは東電に書面で抗議した。すると東電から九月二十五日付で回答が送られてきた。

回答は「(弊社は)ADR手続きと直接請求を並行する方針を取っている」としたうえで、「担当者はその内容を十分に理解しておらず誤った説明をしてしまった」「深くおわび申し上げます」と謝罪。本紙の取材にも同様の見解を示した。

しかし東電は今年五月二十九日にも同様の謝罪文を出し、「ADR申し立てを理由として直接請求の支払いを拒否することはない」と約束している。

このため、保田弁護士は「間違いといって不当対応を繰り返すのは、集団ADRの切り崩しを狙った嫌がらせではないか」と不信感を拭えずにいる。

罪のない山里の住民から穏やかな日常を奪ったのは誰なのか。東電はもう一度、出発点に立ち返ってみるべきだろう。 (福島特別支局長・坂本充孝)

<飯舘村3000人ADR> 2014年11月14日、飯舘村の被災住民2837人が、被ばくを強いられた慰謝料として1人300万円、村での生活が破壊された慰謝料として1人2000万円、精神的慰謝料(月額10万円)を35万円に増額、などを求めて申し立てた。申立人は現在807世帯、3027人に増えている。

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