11/27実戦負傷 備え先行 自衛隊病院新設計画 PTSD対策【中日メディカル】

((((同日同記事、東京新聞での「デスクメモ」))))
いまさら、首相発言の真偽を問うのもむなしいが、安保関連法案審議中の七月、首相は自民党の動画で、法案成立により「自衛隊員のリスクはむしろ下がる」と明言していた。自衛隊ではいま、それとは正反対の準備が粛々と進められている。陸上幕僚監部は最近、留守家族への「戦死」連絡方法を刷新した。(牧)

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実戦負傷 備え先行 自衛隊病院新設計画 PTSD対策

(2015年11月27日) 【中日新聞】【朝刊】
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20151127144923715

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銃に撃たれたと想定した負傷者を米軍の装甲車に搬送する陸自隊員と米兵=今年9月、宮城県の陸上自衛隊王城寺原演習場で

海外での戦闘参加に道を開いた安保関連法の成立と前後し、自衛隊の医療・衛生態勢が強化されている。埼玉県入間市の国有地には航空自衛隊の自衛隊病院の新設計画が浮上した。心的外傷後ストレス障害(PTSD)などのメンタル対策や、感染症への準備も進む。足元では実戦に備えた動きが急ピッチで進んでいる。(榊原崇仁、三沢典丈)

「見事でしょう。いずれ自然公園として、市民に戻ってくると楽しみにしていたのですが・・・」。埼玉県入間市の元市議、山下修子さん(70)はそう話す。

入間市と同県狭山市にまたがる空自入間基地。南端にある入間市の28ヘクタールの国有地に空自の自衛隊病院建設計画が浮上している。西隣の「彩の森入間公園」からフェンス越しに、モミの巨木や美しく紅葉した雑木林が見えた。

一帯は戦中、旧陸軍の航空士官学校だった。戦後は米軍基地となり、1978年までに全面返還。大半は空自基地となったが、米軍の住宅があったこの一角は放置されていた。

2003年、国は同市に利用計画策定を要請。同市は08年、「緑地を主体とした公園が望ましい」との基本方針を示すと同時に、「自然と調和したまちづくり」を目指し、環境基本条例も制定した。市民はいずれ公園になると考えた。

公園化計画押しのけて

ところが昨年9月、防衛省からの病院建設の申し入れがあった。「大規模災害等への対応拠点」をうたっていたが、山下さんは「隣の彩の森入間公園が避難・防災拠点として整備済みなのでまやかし。なぜ、いま市民が受診できない病院を新設するのか。安保関連法が成立し、自衛隊員が負傷したり、感染症にかかるケースが増えかねない。それを見越した措置では」と懸念する。

市の審議会は今年8月、市民が敷地内の運動場を限定的に使えることなどを評価、計画容認の答申を出した。これを受け、田中龍夫市長は9月、受け入れの意向を示した。病院は60床程度で、教育棟が併設されるという。

これに対し、同市内の市民団体などは計画容認は市の基本計画や条例に反するとして、「ストップ入間基地拡張!市民の会」を設立。同会は26日、7900人分の署名を集め、病院の建設計画に反対し、自然公園化を求める請願を市議会に提出した。山下さんは「自衛隊の土地は戦中、旧日本軍が住民から接収したもの。市民に返すべきものだ」と訴える。

市民の会に参加した団体の一つ「平和の声 行動ネットワーク入間」の石毛拓郎代表(69)は「防衛省は海外で負傷した隊員をいったん運ぶ拠点にしたいのだろう。だが、基地の周囲は学校など文教施設が集中している。傷病隊員を乗せたオスプレイが頻繁に飛来するような事態になれば、事故の危険性も増す」と心配する。

一般の市民に自衛隊病院はなじみが薄い。自衛隊法などによれば、隊員や家族らの診療のほか、診療や看護に携わる隊員の養成、医療関連の調査研究を進める場とされている。陸海空の各自衛隊が設けており、全国に計16カ所ある。

防衛省は09年、自衛隊病院のあり方に関する報告書をまとめている。そこでは「弾道ミサイル攻撃やゲリラ、国際平和協力活動、テロへの対応などで自衛隊の任務が多様化」したことに伴い、「人的戦闘力」を維持・増進する自衛隊の衛生機能の強化を提言する。

医官らの臨床体験を増やすべく一部の病院で実施されていた一般患者の受け入れ拡充を挙げたほか、特性を明確にした形での自衛隊病院の整理・統合、新たな病院の設置を求めた。いま、入間で問題となっている計画はこれだ。

安保関連法成立前から

この報告書には、安保関連法成立を先取りしたような記述もある。例えば、メンタルヘルスの問題だ。

インド洋での給油活動やイラク復興活動支援に派遣された自衛隊員のうち、56人が在職中に自殺している。報告書ではメンタルヘルス対策の重要性を認め、自衛隊病院などに専門家を派遣することなどを提案している。

実戦部隊化に備えた動きはそれだけではない。例えば、陸自は01年に「生物兵器対策」という名目で、「部隊医学実験隊」を新設している。活動内容は機密性が高く、見えにくい。

ただ、一般財団法人・防衛技術協会の専門誌「防衛技術ジャーナル」の10年9月号は、この実験隊がコンピューター断層撮影(CT)装置を搭載した大型トラックを導入したことや、放射線や爆風が人体に及ぼす研究などを進めていることなどを報じている。

防衛技術協会が防衛省と近い関係にありながらも、執筆者は「(取材する前まで)海上自衛隊の潜水医学実験隊は聞いたことがあったが(中略)陸海空それぞれに医学実験隊があったとは、恥ずかしながらまったく承知していなかった」と記しており、その機密性の高さがうかがえる。

画像自衛隊病院の建設計画が浮上した土地(奥右側)について話す山下修子さん(右)と石毛拓郎さん=26日、埼玉県入間市で

このように医療・衛生面からも、安保関連法成立前から、自衛隊の実戦部隊化の進行が垣間見えるが、同法成立により、目に見える変化も出てきている。

防衛省は4月から、有事の最前線で自衛隊員が負傷者を救護する上での課題を扱う有識者会議を開催する。さらに来年度予算の概算要求では感染症対策の人材育成費を計上。これはアフリカなどでの活動拡大を踏まえた対応とみられる。

陸自のレンジャー隊員だった井筒高雄さんは「安倍政権は戦争に手を染めようと、前のめりで準備を加速させている」とみる。一方、入間市の山下さんは「戦中、入間周辺には旧陸軍の狭山飛行場など軍事拠点が多数あった。戦災で死亡した人の多くは、その周辺に集中している。入間基地には地対空誘導弾パトリオット(PAC3)も配備され、戦争になれば標的になる可能性が高い」と不安げな表情を見せた。

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カテゴリー: 集団的自衛権, 憲法, 戦争法案, 中日東京新聞・特報 パーマリンク