12/15歌人たちが緊急シンポ 「いま一番言葉が危うい」 短歌の役割問う【東京新聞・夕刊】

『わだつみ』の加古さんが書いておられる!
「去年の加古さんの隆祥館書店でのイベントは良かったですねー」という会話をしたばかり。

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歌人たちが緊急シンポ

「いま一番言葉が危うい」

短歌の役割問う

2015/12/15【東京新聞・夕刊】

歌人たちが六日、東京都新宿区の早稲田大で開催した緊急シンポジウム「時代の危機と向き合う短歌」(「強権に確執を醸す歌人の会」主催)は、当初の予想をはるかに上回る三百九十人が集まる盛況だった。開催の背景にあるのは、政治の乱暴な言葉と、それにより戦後七十年の平和がなし崩しになることへの切実な危機感だ。歌人たちは何を語ったのか、リポートする。(加古陽治)

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パネルディスカッション「平和と戦争のはざまで歌う」で討論する(左から)司会の吉川宏志さん、染野太朗さん、田村元さん、三原由起子さん=東京都新宿区の早大大隈講堂で
http://chuplus.jp/paper/article/detail.php?comment_id=326724&comment_sub_id=0&category_id=203&from=news&category_list=203

「開戦の四カ月前、日本各地のエリートを集めた総力戦研究所が『日本必敗』という提言を政府に出した。時の陸相東条英機は『戦争は机上の空論では成り立たない』とはねつけました。これは『だまれ』というのと同じです」

主催者代表のあいさつで、日本歌人クラブ会長の三枝昂之-さいぐさたかゆき-さん(七一)が静かに語りはじめた。「自民党副総裁の高村(正彦)さんは『安保法案は国民の理解を得られなくていい。国民のためだからやる』とコメントしたが、びっくりした。理解が得られなくてもやるのは東条の『だまれ』とほとんど同じ。今年はさまざまな形で『だまれ』が横行した年だったことを肝に銘じたい」。こう述べ、橋本喜典-よしのり-さん(八七)の歌〈蒼波のわだつみの声に杭を打つ「だまれ」はかつての軍人言葉〉を紹介した。

続いて永田和宏さん(六八)が講演。安保法が成立した今年は「戦後七十年の中で一番危うい」「歴史上の大転換点にある」との見方を示し、自らの作品〈戦後七O年いまがもっとも危ふいとわたしは思ふがあなたはどうか〉を紹介。「どこで自分が『ここだけは譲れない』と思えるか私も考えるし、あなたにも問うてみたいという意味」と解説し「得てして歌人は斜に構え、政治的なことを正面から言うのは高級なことでないと話しがちだが、それでは意味がない」と活発な議論を促した。

特定秘密保護法、武器輸出三原則の改変、安保法の強行採決と、平和主義を揺るがす路線変更を進める現政権。永田さんは懸念を示し、(1)言論抑圧(2)自粛という名の委縮(3)問題発言を繰り返して聞く側を不感症にする(4)(「国益」などの)抵抗できない全能の言葉が民衆を追い立てる、の四つのステップの末に、気が付くとものが言えなくなっている、と警鐘を鳴らす。

現に自民党の文化芸術懇話会で「マスコミを懲らしめるには、広告料収入がなくなるのが一番」と国会議員が促すなど、既に政権側から言論圧力の動きが出ている。

永田さんは〈権力にはきっと容易く-たやすく-屈服するだらう弱きわれゆゑいま発言す〉という自作の歌を紹介した上で「私は怖い。屈しないで発言し続けて投獄されて死ぬのは耐えられない。だから今、発言できるときに発言しておきたい」と吐露。「歌い続けることは、創作するものの一つの責任だと思う」と、歌で時代に向き合っていくよう求めた。

「兵たん」を「後方支援」に言い換えるなどの言葉のすり替えを指摘する今野寿美さん(六三)のミニトークに続き、最後に「塔」短歌会主宰の吉川宏志さん(四六)司会による若手三歌人によるパネルディスカッションが行われた。

吉川さんは「一見平和だが裏では戦争への道が敷かれている」と現状認識を提示。染野太朗さん(三八)は「丸め込むような言葉に対し、いかに踏みとどまれるか。短歌作品に何ができるのかが私の問題意識。思考するための一助としてレトリックが使われることが大事だ」と述べた。

田村元-はじめ-さん(三八)は「短歌は自問自答の小さな詩形だが、思想を歌うことで新しい思想を模索していけるのでは」と、短献の可能性に言及。三原由起子さん(三六)は、読者との双方向の対話の重要性に触れ、(1)頭でっかちにならない(2)ポーズにならない(3)スローガンにならないーという三つのポイントを挙げた。

会場には大学短歌会に所属する歌人の姿も。早稲田短歌会の佐々木遥さん(一九)= 一橋大、さいたま市=は「社会詠を一人で考えるのは難しいので、会に出て考えてみたい」と参加。「政治に対して自分の主張を出すだけなら文学として力を出せない。自分の中を通過させ、独自の感じ方を表せたらいいが、まだ手を出せません」と話していた。

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カテゴリー: 憲法, 戦争法案, 中日東京新聞・特報 タグ: パーマリンク