12/24福井地裁の判決と中日新聞12/25の高橋記者の記事を中心に

林潤というヤツは裁判官ではなく、役者なのだろう。
ポーズだけは住民側の意見を聞き「迷っています」と天を仰ぎみるような演技をしていたとのこと。
今大地さんが「だまされた」
「男を見る目がないんですよ」と井戸弁護士。
そんな対話もあったが、いかに酷い判決だったかというと「多重防護を否定」していることだと河合弁護士が力説しておられた。
国際基準を全く無視しても構わないと言い放っているのだ。
関電の言うがままにコピペした判決文。
住民側の言い分は聞くだけのあとはリップサービスだという。

dadajiji39 ‏@dadajiji · 2015/12/24 21:00頃
麦は踏まれて強くなる。高浜異議審は、川内決定よりお粗末な内容。
壊れることを容認しながら放射能が拡散されるから、それに対応されていれば、社会的通念に許容される。被爆がゆるされるという決定でした。じーじは怒りです。

じーじさんが怒っておられる。まったくだ。
小出さんも「酷い判決でしたね」と仰られた(たまたまメールを受信)。
私は茨木での人身事故の影響で列車が遅れ、米原のシラサギには一時間後に乗れたため14時をまわってから福井駅に到着。これが一つ目の悪いこと。
さらに追い打ちをかけるように「来月再稼働やねんて」というメールで、先に判決を聞いてしまった。これが2つめの悪いこと。

坂元御大151224
そんなこんなで、上牧行動主催者がコールの音頭をとっておられた福井地裁前ではなく、記者会見場所へ直行した。歩いていける場所だ。
そこで、第3の悪いこと。お気に入りの帽子を失くしてしまったのだ。
確かにその帽子を被って入ったはずなのに、「もともとかぶっていませんでしたよ」といい加減なことを仰る受付の方。
結局、そこに落ちていたことを風の旅人さんが連絡してくれたけれど。
行きは特急料金払って3時間、帰りは敦賀から新快速で乗り換えなしで3時間の普通料金。帽子も出てきたことだけが幸せであとは最悪だった福井のクリスマスイブ。

==================

根本昌幸さんの詩『柱を食う』と高浜原発再稼働

2015年12月25日【中日春秋】
http://www.chunichi.co.jp/article/column/syunju/CK2015122502000116.html

『福島・東北の詩的想像力』
http://www.coal-sack.com/syosekis/view/1830/%E9%88%B4%E6%9C%A8%E6%AF%94%E4%BD%90%E9%9B%84%E8%A9%A9%E8%AB%96%E9%9B%86_%E3%80%8E%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E3%83%BB%E6%9D%B1%E5%8C%97%E3%81%AE%E8%A9%A9%E7%9A%84%E6%83%B3%E5%83%8F%E5%8A%9B%E2%80%95%E8%A9%A9%E7%9A%84%E5%8F%8D%E5%BE%A9%E5%8A%9B%E2%85%A4%EF%BC%882011-2015%EF%BC%89%E3%80%8F

<その人はどうしようもなくて/牛を餓死させてきた/と 言った。/可哀想なことをしたが/仕方がない/とも言った。/そして一枚の写真を取り出して見せた。/それは牛が柱を食った写真だった>

▼そんな詩を、詩人で出版社コールサック社代表の鈴木比佐雄さんの新著『福島・東北の詩的想像力』で知った。福島原発事故で故郷の町を奪われ、避難生活を強いられる根本昌幸さんの「柱を食う」である

▼詩は続く。<この写真は自分を戒めるために/離さずに持っているのだ/とも言った。/これはどういうことなのだ。/牛よ/恨め恨め/憎き者を恨め/お前を飼っていた者ではない。/こういうふうにした者たちを>

▼その写真の持ち主はいま、どんな思いで原発再稼働の報を聞いていようか。九州電力の川内(せんだい)原発に続いて、関西電力の高浜原発も再び動く見通しとなった

▼福井県知事は、「政府が責任を持つ」との首相の発言を重くとらえて再稼働に同意したそうだが、本当の「責任」の重さはいかほどのものか

▼『福島・東北の詩的想像力』で、こういう詩も知った。福島県いわき市の芳賀稔幸さんの「もう止まらなくなった原発」だ。<失ったものは永遠に帰っては来ない/元通りに出来ないはずだのに/責任をはたすって?/何の責任をだ/一体責任って何だ?>。この「?」に首相らは、どう答えうるのか。

 

 

高浜再稼働認める、一転「新基準に合理性」 福井地裁/仮処分取り消し/「福島」学んだのか【中日新聞】

2015年12月25日 朝刊 【中日新聞・一面】
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2015122502000073.html

高浜再稼働認める、一転「新基準に合理性」 福井地裁

写真

福井地裁(林潤裁判長)は二十四日、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転を差し止めた四月の仮処分決定を取り消した。関電の異議を認めた。二基の地元同意の手続きは既に完了しており、来年一月下旬にも再稼働する。住民側はこの決定を不服として二十五日、名古屋高裁金沢支部に抗告する。

◆仮処分取り消し

林裁判長は、原子力規制委員会の新規制基準について四月決定から一転「合理性がある」と判断した。四月決定で問題とされた基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)の策定方法などにも不備はないとした。

その上で、高浜原発の基準地震動に関し「極めて厳しく想定されており、信頼に足る」などと支持した。各施設の耐震安全性についても「基準地震動に対して余裕を持っている」とする関電の主張を採用した。

さらに、住民側が主張した津波や土砂災害の危険性に関しても関電の対策を「合理的」と評価。炉心溶融が起きた後の対応などについては「安全性に欠ける点があるとはいえない」として、「判断するまでもない」と退けた。こうしたことから「住民らの人格権が侵される具体的危険があるとはいえない」と結論づけた。

仮処分は昨年十二月、福井や京都など四府県の住民九人が求めた。福井地裁の当時の樋口英明裁判長(名古屋家裁に異動)は四月、関電の想定を超える揺れの地震で炉心が損傷する危険があるとして、再稼働を認めない決定を出し、関電が異議を申し立てていた。

二基は二月に新規制基準に適合。今月三日に高浜町の野瀬豊町長が、二十二日には西川一誠知事が再稼働に同意した。関電は3号機は来年一月下旬、4号機は二月下旬の再稼働を目指している。

福井地裁は二十四日、住民側が関電大飯原発3、4号機(同県おおい町)の運転差し止めを求めた仮処分の申し立てについても「規制委の審査が続いており、再稼働が差し迫っているとはいえない」として却下した。大飯原発は規制委の適合審査中で、住民側は名古屋高裁金沢支部に即時抗告するか、審査に適合した段階で再び仮処分を申し立てるかを検討する。

◆「福島」学んだのか
<解説>

福井地裁の異議審決定は原子力規制委員会の新規制基準の合理性を認め、原発の再稼働を進める政府方針を後押しした。四月の仮処分決定が果たした行政に対するチェック機能は後退し、憲法が定める「司法権の独立」も揺らぎかねない。

決定は「過酷事故が起こる可能性が否定されるものではない」と言いながら、住民側の不安とは向き合っていない。関電と規制委に最新の科学技術を反映し「高いレベルの安全性を目指す努力」を求めはしたが、これは両者に責任を転嫁したにすぎない。

最新の科学技術に照らすだけなら、裁判官は専門家である規制委の判断を追認するしかない。東京電力福島第一原発事故を経験した裁判官に求められるのは、科学技術では明らかになっていない部分を見通し、現在の基準の合理性を判断する姿勢だ。

憲法七六条は「すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される」と定める。地元同意の手続きが一気に進む中で出した判断は、住民側弁護団が言うように「再稼働の日程に配慮した」と疑われかねない。

国民の過半数が原発の再稼働に反対する一方で、政府と電力会社、地元自治体が一体となった原発回帰の動きが加速する。司法は福島原発事故から何を学んだのか。国民の不安の声に耳を傾けない限り、その存在意義は失われていくだろう。

(福井報道部・高橋雅人)

高浜原発再稼働認める 仮処分を取り消し

【中日新聞・福井発】2015年12月25日
http://www.chunichi.co.jp/kenmin-fukui/article/kenmin-news/CK2015122502000211.html

福井地裁 異議審 来月下旬3号機から

福井地裁(林潤裁判長)は二十四日、関西電力高浜原発3、4号機(高浜町)の運転を差し止めた同地裁の仮処分決定に対する関電の異議を認め、仮処分決定を取り消した。二基の地元同意の手続きは完了しており、3号機は来年一月下旬にも再稼働する。住民側はこの決定を不服として、近く名古屋高裁金沢支部に抗告する。

写真
大飯差し止めも却下

林裁判長は四月の仮処分決定が「緩やかにすぎ、合理性を欠く」と結論づけた原子力規制委員会の新規制基準について「合理性がある」と判断。四月決定が問題とした基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)の策定方法などにも不備はないとした。

争点となった高浜原発の基準地震動については、「国際水準に照らしても保守的な評価を行っている」と指摘。「極めて厳しく想定されており、信頼に足る」と認定した。各施設の耐震安全性についても「基準地震動に対して余裕を持っている」とする関電の主張を採用した。

津波や土砂災害など住民側が主張した危険性も「新規制基準に不合理な点はない」と判断。重大事故で炉心融解が起きた後の対応などについては「判断するまでもない」と退けた。その上で「住民らの人格権が侵される具体的危険があるとはいえない」と結論づけた。

仮処分は昨年十二月、福井や京都など四府県の住民九人が申し立てた。福井地裁の樋口英明裁判長(当時)は四月、関電の想定を超える揺れの地震で炉心が損傷する危険があるとして、再稼働を認めない決定を出し、関電が異議を申し立てていた。

二基は二月に新規制基準に適合。今月三日に高浜町の野瀬豊町長が、二十二日には西川一誠知事が再稼働に同意した。関電は3号機は来年一月下旬、4号機は二月下旬の再稼働を目指している。地裁は住民側が関電大飯原発3、4号機(おおい町)の運転差し止めを求めた仮処分の申し立てについては「規制委の審査が続いており、再稼働が差し迫っているとはいえない」として却下した。住民側は名古屋高裁金沢支部に即時抗告するか、規制委の適合性審査に適合した段階で再び仮処分を申し立てるかを検討する。

福井地裁の決定骨子

▼高浜原発3、4号機の運転差し止め仮処分決定を取り消す

▼原子力規制委員会の新規制基準には合理性がある

▼高浜3、4号機の基準地震動は余裕を持って評価してあり、各施設の安全性は確保されている

▼再稼働しても住民の人格権が侵害される具体的危険性は認められない

▼過酷事故の可能性が全く否定されるものではない

▼大飯原発3、4号機の再稼働は差し迫っておらず、仮処分判断の必要性がない

大飯・高浜原発 安全は“神話”のままだ

http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2015122502000118.html
【中日新聞・社説】 2015年12月25日

福井県にある高浜原発、大飯原発の再稼働差し止めを求める司法判断が、覆された。だが待てよ。誰もまだ安全を保証するとは言っていない。大事故が起きた時、責任を取る覚悟も力もないままだ。

逆回転が加速し始めたということか。「原発ゼロ」の歯止めが、また一つ外された。

最大の争点は、3・11後に定められた原子力規制委員会の新たな規制基準を、原発再稼働の“お墨付き”とするか、しないかだ。

規制委は二月、高浜原発3、4号機を新規制基準に適合しているとした。

それを受け、関電は再稼働の準備に着手。しかし、福井地裁は四月、「新規制基準は合理性を欠く」として、周辺住民が求めた再稼働差し止めを認める決定を下していた。新規制基準の効力に根本的な疑問を投げかけたのだ。

関電の不服申し立てを受けた福井地裁は、その決定を百八十度覆したことになる。

安全対策上想定すべき最大の揺れの強さ(基準地震動)、その揺れや津波に対する関電側の対策、使用済み核燃料保管の危険性…。どれをとっても規制委の審査に「不合理な点はない」として、原発が周辺住民の人格権や、個人が暮らしや生命を守る権利を侵害する恐れはないと判断した。

昨年五月、同様に運転差し止めを認めた大飯原発3、4号機に関しても「規制委の審査中であるから」と、差し止めを却下した。

高浜に関しては、西川一誠知事が二十二日再稼働に同意して、地元同意の手続きを終えている。関電は、まず3号機から運転開始を急ぐという。

だが、よく考えてもらいたい。

裁判所は事業者の取った対策が「新規制基準に適合する」という規制委の判断を「合理的」としただけだ。規制委自身が何度も表明しているように、その判断は「安全」を保証するものではない。

今回の福井地裁も「過酷事故の可能性がまったく否定されたものではない」と、はっきり述べているではないか。

知事の判断も同じである。

安全確保は事業者の責務。事業者の規制は国の責務。県は監視するだけという、及び腰の最終同意である。事業者にも国にも“責任能力”などないことは、福島の現状を見れば、明らかではないか。

安全性も責任の所在もあいまいなまま、再稼働へひた走る。その状況が何も変わっていないということを、忘れてはならない。

 

福島忘れたのか 高浜仮処分取り消し

「闘い続ける」誓い新た

2015年12月25日【東京新聞・第二社会面】

高浜原発3、4号機の再稼働差し止め仮処分の取り消しが決まり、垂れ幕を掲げる関係者の横で演説する河合弘之弁護士=24日、

「裁判長は福島原発の事故を忘れてしまったのか」。福井地裁が二十四日、関西電力高浜原発3、4号機や大飯原発3、4号機の再稼働を認める判断を示したことに、地裁周辺で待っていた市民らは重い沈黙に包まれた。福島県の避難住民からは「原発事故の被害者でないと、その恐ろしさは分からないのか」と疑問の声が上がった。( 1面参照)

午後二時すぎ。地裁前で待つ人々の前に「司法の責任どこへ!」などと脅かれた垂れ幕を掲げた人たちが飛び出してきた。
信じられない。まさか・・・。申立人の今大地晴美さん(六五)は幕を手にそんなことを思っていたという。
裁判所前には三百人ほどが朗報を待っていた。神戸市の無職、中井忠さん(七二)は言葉を失ったといい、「司法は自ら裁くことを放棄した」と話した。
その後、福井市の県国際交流会館で聞かれた住民側の記者会見では、三人の裁判官への不満が相次いだ。
異議審が始まった五月、林潤裁判長は「耳目を集める事件なので慎重にやらせてもらう」と宣言。早く審理を終わらせたがる関電を制し、双方によるプレゼンテーションを実施した。両者ともに自由に意見を述べさせるため、記録に残さずに発言させた。
「何のためのプレゼンだったのか、と思わざるを得ない」「関電に厳しい質問をしていたが、今となっては助け舟を出していたようにさえ思える」。弁護士から厳しい言葉が飛ぶ。
申立人の一人、松本なみほさん(四一)は「裁判官は国策に押し切られた。でも電力が自由化されたら、電力会社を選べる。選挙という手段もある」と今後も闘い続けることを誓っていた。
一方、福井県高浜町の野瀬豊町長は「新規制基準が妥当かが論点だったのだと思つが、観念的な部分を外した冷静な判断だと評価したい」と話した。

「司法 やっぱり国民を見ていない」 福島避難者疑問の声

福井地裁の原発再稼働を認める判断に、福島県の避難住民からは疑問の声が相次いだ。
富岡町から避難し、いわき市の仮設住宅に暮らす無職横山正さん(七五)は「外堀が埋められ、裁判所も止められなかったのだろう。福島の補償の問題も解決していないのに、稼働はしてほしくない」と訴える。
仮設暮らしはまもなく五年。「裁判所の歯止めもなくなり、福島が忘れられていく不安がある。福島第二原発も動かすようになるんじゃないか」と憂えた。
飯舘村から福島市に避難する農業菅野哲さん(六七)は「残念。差し止めを認めた時、司法は国民の方を向いていると思ったけど、やっぱり見ていない。裁判官は福島の現実を見てほしい。裁判官も福島を忘れ、日本はどん国なんだと疑ってしまう」と話した。
避難解除された田村市都路地区に住む元原発作業の坪井秀幸さん(三八)は今年四月、三人の子どもを含む家族とともに帰還した。
「線量計を見ながらの生活で元には戻らない。実際に被害者にならないと、気持ちはわからないだろう」と指摘。その上で「原発で地元が潤い、稼働したいのは理解できる。裁判官は、再稼働を認める判断をしたのなら、事故が起きた時の責任を取る覚悟をもってほしい」とくぎを刺した。

 滋賀、京都知事ら不満表明

高浜原発3、4号機の三十キロ圏に一部の自治体が含まれる滋賀県の三日月大造知事は二十四日、「再稼働を容認できる環境にはない」と強調した。京都府の山田啓二知事も「京都府が同意のプロセスから外れているのは遺憾だ」と述べた。
滋賀県は年明けに関西電力と安全協定を締結する方針だが、求めている立地自治体並みの再稼働の同意権は実現していない。三日月知事は「(手続きの問題が)解決していない」と大阪市内で記者団に語り、「多重防護体制の構築も国や事業者に引き続き求めたい」とした。
山田知事も同日、大阪市であった関西広域連合の委員会で「避難計画策定など昨近隣自治体には大きな責務がある。なぜ立地自治体として扱われないのか説明を受けなければならない」と話した。
関西広域連合は同意が必要な自治体の範囲の明確化や近隣自治体への丁寧な説明を国に求める文書を決定。連合長の井戸敏三兵庫県知事は「残されている課題があるのではないか」と指摘した。
一方、関電の筆頭株主である大阪市の吉村洋文市長は、司法判断の中身にはコメントしないとした上で「原発はフェードアウトさせるべきだ」と橋下徹前市長と同様の考えを示した。

 裁判官の独自性見られず 吉岡斉・九州大教綬(科学技術史)

今回の決定は関電と規制委員会の見解をコピーしたような内容で、裁判官が自分の頭で考えた形跡がみられない。福島第一原発の事故後、安全に関する政府や電力会社の主張が信用できないことを多くの裁判官も痛感している。前回の決定は住民側の主張をコピーしたのではなく、自ら考えた独自性に包むものだった。福島のような災害を万が一にも起こさないという観点から新規制基準が不十分であることを正しく指摘していた。裁判官の独自性という点でも今回の決定は残念だ。

 識者決定こう見た  震災以前の基準に戻った 鈴木達治郎・長崎大核兵器廃絶研究センター長 

規制委員会の規制基準とその判断を正当としており、他の原発再稼働にとっても追い風の決定といえる。福島第一原発の事故の反省を踏まえた四月の決定は事故のリスクを司法自らが判断した点で画期的だった。今回の判決は福島以前に司法の判断基準が戻ったことを意味するのではないか。ただ、判決は事故リスクはゼロではなく、避難計画などの重層的対策をとさることも要請しており、行政は住民が納得できる対策を進めていくことが今後も求められる。

 

福島事故前に逆戻り高浜仮処分取り消し 新基準への疑問なく

2015年12月25日【東京新聞・核心】

関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)をめぐる福井地裁の二十四日の異議審決定。住民側の弁護士が「原発訴訟の天王山」と位置付けた司法判断は事実上、再稼働を容認した。最高裁での勤務経験がある三人の裁判官が出した判断は、東京電力福島第一原発事故以前の形に戻るものだった。 (高橋雅人)

「全然進歩していない」。決定通知後に福井市内で行われた住民側の会見。弁護団の共同代表、河合弘之弁護士は怒りを通り越し、あきれた口ぶりで語った。
長年、原発訴訟の判断基準となってきたのは一九九二年の伊方原発訴訟の高裁判決だ。(1)審査基準が合理的で(2)専門家らの審査過程に見過ごせない誤りがない限りは合法とした。
(1)をめぐる見解の違いから司法判断が分かれたのが今年四月だった。福井地裁が新規制基準を「緩やかにすぎ、合理性を欠く」と批判し、再稼働を差し止めたのに対し、八日後の鹿児島地裁は「新規制基準は最新の科学的知見に照らし、不合理な点はない」として、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を認めた。
ただ、二つの判断には共通点もある。福井地裁は基準のあるべき姿として「深刻な災害を引き起こす恐れが万が一にもないといえる厳格な内容」を求めた。鹿児島地裁も「さらに厳しい基準で安全性を審査すべきだとの考え方も成り立ち得ないものではない」と住民側の主張に理解を示した。

■ 単純

これに対し、今回の福井地裁の異議審決定は単純だ。想定される地震の揺れ(基準地震動)や耐震安全性など、個別の争点を判断する中で、いずれも「新規制基準の枠組みには合理性がある」と認定。基準に一層の厳格さを求めることもなく、重大事故によって炉心溶融が起きた後の対応については「判断するまでもない」と一蹴した。
従来、多くの裁判所が伊方判決を踏まえた上で「各分野の専門家が策定した審査基準には誤りはない」との前提に立ち、原発がその基準に適合するか、審査過程は適正だったかを判断の中心に据えてきた。結果、各地の原発訴訟で原告側はことごとく敗れてきた。
今回の決定はまさに従来型。「絶対的安全性は存在しない」と繰り返し、安全神話を否定したが、河合弁護士は「リップサービス」と批判。結論に反映されない限り、意味がないとの見方を示した。

■危惧

林潤裁判長と陪席の山口敦士、中村修輔両裁判官はいずれもエリートコースとされる最高裁勤務を経験している。二OO六年の志賀原発2号機差し止め訴訟で原告勝訴の判決を出した金沢地裁の元裁判長で、現在は弁護団に加わる井戸謙一弁護士は決定前、「最高裁も評価している人たち。原発訴訟の全体の流れを決定付ける」と話していた。
しかし、それは「個々の争点について本格的に結論を出す」と期待したため。決定後には「こんな決定では今後の裁判に与える悪影響はない。重みはない」と断言。「裁判官に国策には抵抗できないという意識があったのかもしれない」と推測する。
元裁判官で、九三年に大阪地裁高浜2号機差し止め訴訟で、裁判長として原発の危険性を初めて指摘した海保寛さん(七ハ)=宮崎市=は司法の信用低下を危慎する。「住民側もレベルの高い意見を出している。検討していないと裁判官の能力が問われてしまう。専門家が根拠とするところの疑問を聞いていけば、専門家でない裁判官でも判断は可能だ」
行政に追随するのがその役割なのか。今、司法が問われている。

(((原発訴訟)))
「脱原発弁弁護士全国連絡会」によると、現在、係争中の差し止め訴訟や仮処分の申し立ては全国で28件。高浜原発をめぐり、滋賀県の住民等が大津地裁に申し立てた別の差し止め仮処分は今月15日に審理が終結し、来春にも決定が出る。

 

高浜原発再稼働認める決定 原発の「地元」とは

【東京新聞・こちら特報部】2015年12月25日

福井地裁前で原発再稼働反対を訴える人たち=24日、福井市で

右)関西電力高浜原発を視察する福井県の西川一誠知事=21日
左)高浜原発を視察する林幹雄経産相(左)。後方は1、2号機=20日、いずれも福井県高浜町で

関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転を禁じた福井地裁の仮処分の取り消しに先立ち、西川一誠福井県知事は再稼働に「同意」していた。取り消しを見越したように再稼働を急ぐ姿勢に、「地元」では不満がくすぶる。原発の立地自治体だけが「地元」ではない。原発事故の被害は「二百五十キロ圏内に及ぶ」と認めた別の司法判断はまだ生きている。あらためて、原発の「地元」について考えた。 (中山洋子、白名正和)

立地自治体早々に「容認」

「福島第一原発事故が起こる前と変わらんのではないですか」
二十四日、福井地裁が高浜3、4号機の再稼働を認めたことを聞き、京都府舞鶴市松尾地区の谷義雄区長(七四)はそう嘆息した。地区は、高浜原発から五キロ圏内にあり、事故があれば影響は避けられない。
司法も行政も原発に前のめりなのは「昔からのこと」なので、福井地裁の判断を「しょうがないのか」とも思う。もっとやり切れないのは、二日前の二十二日、西川知事が早々と再稼働に同意したことだという。「福井にも事情があるんでしょうが、私らの思いはどうなるのか」

30キロ圏 避難計画義務化でも「同意権」なし

東京電力福島第一原発事故後、原発から三十キロ圏内の避難計画を定めることが原子力規制委員会の指針で決まった。高浜原発の場合、福井県の四市町(小浜市、おおい町、高浜町、若狭町)のほか、京都府の七市町(綾部市、南丹市、福知山市、舞鶴市、宮津市、伊根町、京丹波町)、滋賀県の高島市が含まれる。
三十キロ圏内の人口は、福井が計約五万人。京都、滋賀は計約十二万人と多いが、両府県知事も、両府県内の八市町の首長も、立地自治体ではないため、原発再稼働の同意、不同意の権利は認められていない。
関西広域迎合は、三十キロ圏内の府県や市町とも「立地自治体並み」の原子力安全協定を結ぶことを関電などに指導するように、国に要望してきた。二月、京都府が協定を結んだが、再稼働の「同意権」は盛り込まれなかった。来年一月には滋賀県も結ぶ予定だが、同様に「同意権」のくだりはない。
三十キロ圏内への配慮は、福島の事故前より増えているが、形式的でもある。十一月、京都府の七市町で自治体主催の住民説明会が順次開かれた。数少ない対話の機会と注目されたが、参加を区長や町会長らに限る会がほとんどだった。
舞鶴市では参加者の質問を受け付けなかった。谷氏は「昔は危ないのは二キロ圏内と言われたが、福島の事故でいいかげんな線引きと分かった。もう五十キロ圏くらいでも安心できない。口で言うとるだけの避難計画で、隣接の住民は見捨てられている」。南丹市の自営業児玉正人さん(七二)も「同じ市内でも、三十キロを超えると住民説明会の対象にすらならない」と憤る。
高浜3、4号機の再稼働差し止めを求める大津訴訟の弁護団長で、元裁判官の井戸謙一弁護士は「司法判断目前のタイミングでパタパタと行政側が既成事実を積み上げてきた。裁判所への圧力と感じる」と話す。
西川知事に先立ち、野瀬豊高浜町長が三日、再稼働に「同意」している。一方、宮津市の井上正嗣市長が八日、「現状ではとても受け入れられるものではない」と「反対」を表明したが手続き上、顧みられることはない。
井戸氏は「電力事業者との任意協定による『同意権』も問題。立地自治体にだけ被害が限定されることはありえない。大きな被害が予想される地域に『同意権』を与える法整備を急ぐべきだ」と訴える。
原発を稼働させたい電力事業者からすれば、「地元」は狭いほどよいだろう。だが、もともと、原発はトラブルが起きても被害は敷地の周囲に限られるという「安全神話」に基づき、立地自治体が「地元」の基本になった。つまり、損害を受ける可能性のあるエリアが「地元」という考え方も取れなくはない。

250キロ圏 福島事故で放射性物質飛散 人格権侵害の恐れ

では、どこまで被害が及ぶのか。
二O一一年三月の福島第一原発事故では、二百キロ以上離れた東京都で、水道水から乳児の摂取基準の二倍超の放射性ヨウ素が検出された。千葉県で局地的に放射線量の高いホットスポットができ、神奈川県にも放射性物質が飛散した。
福井地裁が二十四日に取り消した高浜3、4号機の運転を禁じた仮処分決定は、原発から「二百五十キロ圏内」まで「人格権が侵害される危険がある」と指摘していた。今回の取り消しでは「危険があるとはいえない」とされたが、「二百五十キロ圏内」について言及した別の司法判断がある。
昨年五月、福井地裁が関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転を禁止した判決。徳島の事故直後、原子力委員会が二百五十キロ圏内の避難勧告を検討し、チェルノブイリ事故の避難区域も同じ圏域だったことを踏まえ、危険を認めている。
ちなみに、裁判長は、高浜3、4号機の運転を禁じた仮処分決定と同じ樋口英明氏。今回、取り消した裁判長は林潤氏。
二百五十キロ圏内を前提とすれば、夏以降に相次いで再稼働した九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の場合、九州のほとんどが含まれる。
川内1、2号機から約二百キロの大分県で活動する市民団体「311いのちのわ」の奥田富美子事務局長は、「川内で何かあったら、大分も住民の健康だけでなく、関サバなどの海産物、別府温泉などの観光産業に大きな被害が出る」と心配する。
大分は、九電玄海原発(佐賀県玄海町)の二百五十キロ圏内でもある。さらに、再稼働の手続きが進む四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)にも近い。豊後水道を挟んだ対岸にあり、近い場所は約五十キロしか離れていない。
「どの原発の再稼働に対しても、何も発言できない。もどかしく、国や電力会社は無責任だと感じる」。奥田さんたちは、大分では身近な伊方原発の再稼働反対を訴えるが「本当はすべての原発が危険だ」と思っている。
その伊方原発に対しては高知県からも不満が出る。「高知県は伊方から二百五十キロ圏に全域が入る。当事者なのに、再稼働に意見を言えないのは不当だ」と「原発をなくし、自然エネルギーを推進する住民連絡会」の山崎秀一共同代表は言う。「愛媛県知事が再稼働に同意したが、高知にも権利があるべきだ」と訴えるが、「蚊帳の外」に置かれたままだ。
脱原発弁護団全国連絡会の共同代表を務める河合弘之弁護士は「『被害地元』という言葉があり、地元は立地自治体だけというのはおかしい。司法が『具体的な危険性がある』としたこ百五十キロ圏、全ての自治体に発言権がないといけない」と訴える。まずは「少なくとも三十キロ圏の自治体は現在、避難計画策定の義務はあるのに、再稼働に発言権がないという理屈に合わない状況にある。ここはただすべきだ」と話す。
「大飯原発の司法判断は生きている。二百五十キロ圏という数字を軽んじてはいけない」と訴えた。

((((デスクメモ)))))
福島第一原発が爆発した直後、「日本はもう駄目だ」と思った。いま、暮らしが成り立っているのは、奇跡的なことだと思う。もう奇跡には頼れない。「原子力ムラ」の人たちが「今後、原発事故は絶対に起きない」と断言しないのなら、「地元」の市民として言わせていただく。「原発稼働には絶対反対」(文)

 

福井地裁高浜原発異議決定を受けての弁護団声明

2015年12月24日

高浜原発3・4号機については、本年4月14日、福井地方裁判所の樋口英明裁判長、原島麻由裁判官、三宅由子裁判官による運転差止仮処分命令が発令されていましたが、本日、同裁判所の林潤裁判長、山口敦士裁判官、中村修輔裁判官により仮処分命令は取り消されました。

私たちは、福島原発事故のような事故を二度と招いてはならないという観点から新規制基準の不合理性、基準地震動の策定手法の不合理性、津波の危険性、工学的安全性の欠如、シビアアクシデント対策・防災対策・テロ対策の不備といった様々な危険性を指摘しました。

これに対して、本決定は、原子力規制委員会の判断に追随するだけの形で私たちの主張立証を排斥しました。

とりわけ、基準地震動に関しては、「最新の知見に従って定めてきたとされる基準地震動を超える地震動が到来しているという事実」は、「当時の基準地震動の想定が十分でなかったことを示すものである」と認めながら、「いずれも福島原発事故を踏まえて策定された新規制基準下での基準地震動を超過したものではない」とし(113頁)、新規制基準下ではこのようなことは起こらないとされています。

しかしながら、一方で、本決定は、「新規制基準の策定に関与した専門家により『基準地震動の具体的な算出ルールは時間切れで作れず,どこまで厳しく規制するかは裁量次第になった』との指摘がされていること」も認めており(105頁)、この認定からすれば、新規制基準における基準地震動の策定手法は見直されていないのですから、上記決定は、論理矛盾を来しているといわざるを得ません。

さらに、本決定は、「あらかじめ判明している活断層と関連付けることが困難な地震でマグニチュード7を超えるものが起こる可能性を完全に否定することはできない」とし(122頁)、「本件原発において燃料体等の損傷ないし溶融に至るような過酷事故が起こる可能性を全く否定するものではないのであり,万が一炉心溶融に至るような過酷事故が生じた場合に備え」なければならないとしています(223頁)。本決定は、福島原発事故の深刻な被害から何も学ぼうとしない、極めて不当な決定であり、原発周辺住民が事故によって被害を受けることを容認していると言わざるを得ません。

林潤裁判長は、11月13日の審尋期日の際に「常識的な時期」に決定を出すと発言しましたが、私たちが指摘したすべての問題点について正面から検討した上で本日12月24日に決定を出すというのは「常識的な時期」とは到底いえず、年末も押し迫った常識外れなこの時期に出した本決定は、高浜原発3・4号機の再稼働スケジュールに配慮した、結論ありきの決定であると言わざるを得ません。高浜原発3,4号機が再稼働して重大事故を起こした場合、その責任の重要部分は再稼働を許した3人の裁判官にあるということになります。

しかし、私たちは、このような不当決定に負けることはありません。なぜなら、理論的正当性も世論も私たちの側にあるからです。福島原発事故のような事故を二度と招いてはならない、豊かな国土とそこに根を下ろした生活を奪われたくない、子ども達の未来を守りたいという国民・市民の思いを遂げ、ひいては失われた司法に対する信頼を再び取り戻すため、最後まで闘い抜くことをお約束します。

2015年(平成27年)12月24日

脱原発弁護団全国連絡会、大飯・高浜原発差止仮処分弁護団
共同代表 河合弘之・海渡雄一

===========

大飯原発3・4号機及び高浜原発3・4号機運転差止仮処分

 申立人声明

司法よ! おまえもか・・・と言わざるを得ない「決定」に対し、強い憤りを覚えました。

しかしながら、わたしたちは決して負けたわけではありません。

司法が、三権分立の砦を守り切れず、政府と原子力ムラに負けてしまっただけのことです。

こんな情けない「決定」を出さざるを得なかった裁判官のみなさんもさぞや、後味の悪い想いに駆られていることでしょう。

裁判官自らが、法の番人であることを放棄し、国民の権利である基本的人権を踏みにじったのですから・・・

裁判官がつけているバッジは、三種の神器のひとつである八咫(やた)の鏡をかたちどったものです。

鏡が非常に清らかで、はっきりと曇りなく真実を映し出すことから、八咫 (やた)の鏡は,裁判の公正を象徴しているものと言われています。

福井地裁の裁判官のみなさんのバッジは、きっと曇っていたのかもしれません。

わたしたちの弁護団の意見陳述は、どのような秤ではかろうとも、「正義」であり、科学的根拠に基づいたプレゼンテーションは、

関西電力をはるかに凌駕するものでした。

その真実をどのような天秤にかけてはかれば、このような「決定」を下すことができるのか信じられません。

わたしたちは今日この日の「怒り」をエネルギーにして、「正義は勝つ!」その日まで、さらに闘い続けます。

全国からご支援してくださったみなさま

わたしたちの闘いはこれからも続きます。

転んでも転んでも立ち上がり続けることこそが、市民運動であり、草の根運動の真の姿です。

福島原発事故を風化させないために、そしてわたしたちの未来を担うこどもたちに

「核のない世界」をプレゼントできるその日まで、ともに闘いぬきましょう。

2015年12月25日
大飯・高浜原発運転差止仮処分申立人一同

 

平成27年(モ)第38号保全異議申立事件 決定要旨

1 事案の概要
本件は,債務者(関西電力株式会社)の設置する高浜発篭所3号機及び4号機(以下「本件原発」 という。)から250km圏内に居住する債権者らが,債務者に対し,人格権に基づく妨害予防詩求として,本件原発の運転差止めを命じる仮処分の申立てをし,当裁判所が平成27年4月14日に上記申立てを認容する原決定をしたのに対し,債務者が保全異議の申立てをし,原決定の取消しを求めていた事案であり,本決定は,債務者の上記異議申立てを認め,原決定を取り消し,債権者らの申立てをいずれも却下するものである。

2 司法審査の在り方
原子炉施設の安全性の判断には,多方面にわたる極めて高度な最新の科学的,専門技術的知見に基づく総合判断が求められるところ,いわゆる新規制基準の趣旨は,専門性・独立性が確保された原子力規制委員会(以下「規制委員会」という。) において十分な審査を行わせることで原子力利用における安全の確保を徹底することにあるものと解されるから,裁判所は,新規制基準の内容及び規制委員会の基準適合性判断に不合理な点があるか否かという観点から原子炉施設の安全性を審理・判断するのが相当であるが,原子炉施設に関する知見等は専ら債務者側が保持していることなどを考慮すると,債務者において,新規制基準の内容及び規制委員会の基準適合性判断に不合理な点がないことの主張疎明を尽くさない場合には,周辺住民の人格権が侵害される具体的危険があることが事実上推認されるというべきである。
そして,原子炉施設に絶対的安全性を想定することはできないが,福島震発事故等の被害の甚大さや深刻さを踏まえれば,裁判所は,福島原発事故の経験等も踏まえた現在の科学技術水準に照らし,原子炉施設の危険性が社会通念上無視し得る程度にまで管理されているか否かという観点から,あくまでも厳格に審理・判断すべきである。

3 基準地震動の合理性について
新規制基準では,基準地震動(施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があり,施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定することが適切な地震動)の策定に当たり,複数の手法を併用し,最新の科学的・技術的知見を踏まえ,不確かさを適切に考慮して評価をすることが求められるとともにこれを規制委員会において専門的・技術的知見に基づき中立公正な立場で個別的かつ具体的に審査する枠組みが採用されているところであり,その内容は合理的である。
また,債務者は,詳細な地盤構造等の調査を行った上で,信頼’性の高い計算手法を用い,かつ,断層の長さや深さを始めとする名種パラメータ等を保守的に設定することで,国際水準に照らしでも保守的な評価を行っているから,債務者が新規制基準下で策定した本件原発の基準地震動(以下「本件基準地震動」 という。) が新規制基準に適合するとした規制委員会の判断に不合理な点はない。なお,責務者の用いた計算手法自体は平均的な地震動を求めるものであるが,債務者は計算の前提となる各種パラメータを十分に保守的な設定としていること、本件原発敷地には硬質な岩盤が均質に広がっており地震動の増幅要員は認められていないことなどを考慮すれば,上記計算手法を用いた債務者の評価を不合理ということはできない。

4 耐震安全性の相当性
新規制基準では,原子炉施設の安全性確保に重要な役観を果たす施設等(以下「耐震重要施設」という。)と安全性確保に不可欠とはいえない施設等(主給水ポンプや外部電源等)の耐震重要度が区別されているが,前者の耐震重要度をSクラスとすることで高度の耐震安全性を確保し,もって原子力発電所全体の安全性の確保を図っている。この新規制基準の基本的な考え方及び内容には十分な合理性がある。
また,債務者は,耐震重要施設の本件基準地震動に対する安全性を保守的に評価するとともに,全交流電源喪失のような厳しい事象を想定した安全対策や,福島原発事故を踏まえて本件基準地震動に対応する耐震補強工事等を実施するなどしでおり,本件原発の耐震安全性は本件基準地震動に対して相応の余裕を有しているといえるから,これを新規制基準に適合するとした規制委員会の判断に不合理な点はない。

5 使用済燃料の危険性
新規制基準では,使用済燃料を冷却する施設の樹震重要度分類がBクラスとされているが,代替的注水・冷却手段に高度の耐震安全性を要求することで使用済燃料の安全性を確保している。このような新規制基準の規制内容には十分な合理性がある。
また,債務者は,使用済燃料を冷却する施設を含め,使用済燃料ピット(貯蔵プール)の安全性を確保する施設等の本件基準地震動に対する耐震安全性を確保するとともに,多様な代替的注水・冷却手段を整備しているから, 使用済燃料ピットの安全性が新規制基準に適合するとした規制委員会の判断に不合理な点はない。
なお,債権者らは,竜巻及びテロ等の危険に対し,原子炉格納容器のような竪固な施設によって使用済撚料ピットの防御を固めるべきと主張するが,債務者は,我が国に発生した過去最大の竜巻を想定し,余裕を持たせた安全性評価を行うとともに,竜巻による飛来物への対策等も講じていること,テロ等による大規模損壊については,放射性物質の放出低減を最優先に考えた対策及び手順の整備等を行っていること,本件原発が具体的にテロ等の標的になっていることもうかがわれないこと等に照らせば,竜巻及びテロ等の危険性を考虚しでも,規制委員会の判断の合理性は左右されない。

6 地震以外の外部事象の危険牲
債権者らは,地震以外の外部事象として,津波,深層崩壊及び土砂災害の危険性を主張する。
しかし,津波については,最新の科学的・技術的知見に裏付けられた基準津波(供用中の施設に大きな影響を及ぼすおそれがある津波)の策定と耐津波安全性の確保を求めた上で,これを規純委員会が専門的・技術的知見に基づき中立公正な立場で個別的かつ具体的に審査するとしづ新規制基準の内容に不合理な点はない。また,債務者は,文献や堆積物調査によって過去の津波を調査した上で,保守的な計算によって基準津設を策定し,その高さを上回る防潮ゲートや訪潮堤の設置等の浸水対策を実施しているから,本件原発の基準津波及び耐津波設計方針が薪規制基準に適合するとした規制委員会の判断に不合理な点はない。
その他の外部事象(深層崩壊及び土砂災害)についても,新規制基準の規制内容に不合理な点は認められず,また,本件原発の敷地周辺の立地条件や自然環境,重大事故対策に必要な設備の配備状況等に照らせば,土砂災害の危険に関する債務者の対策を新規制基準に適合するとした規制委員会の判断に不合理な点はない。なお,深層崩壊の具体的危険性を示す的確な疎明資料はない。

7 安全性確保に関するその他の問題
債権者らは,安全性確保に関するその他の問題として,施設の老朽北,格納容器再循環サンプスクリーン(ろ過装置)の閉塞,計装設備の不備,免震重要棟の不存在による危険性を主張するが,債務者の実施する高経年化対策等の内容や耐震構造を存する緊急時対策所の存在等に照らせば債権者らが主張する危険性を考慮しても,本件原発の安全性に関する規制委員会の判断の合理性は左右されない。

8 その余の主張等
以上によれば,核燃料の損傷・溶融に結び付く危険性が社会通念上無視し得る濃度にまで管理されているか否かという観点からみても,債務者において,新規制基準の内容及び規制委員会の基準適合性判断に不合理な点がないことについて主張疎明を尽くしたと認められ,本件原発の安全性に欠ける点があるとはいえない。したがって,その余の債権者らの主張(核燃料の損傷・溶融が生じた後の対応等)を判断するまでもなく,債権者らの人格権が侵害される具体的危険があると推認することはできない。
なお,新規制基準に合理性が認められるのは,原子力事業者に対し,常に最新の多方面かっ高度な科学的・技術的知見に基づく安全性の確保を求めるとともに,規制委員会において,専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して安全性を審査するという法の趣旨に則った枠組みが機能することが前提である。法の趣旨にもとるような運用がされれば,新規制基準の合理性はその基礎を失うのであるから,債務者及び規制委員会においては,福島原発事故に対する深い反省と絶対的安全性は存在しない(いわゆる「安全神話」に陥らない)という真摯な姿勢の下,常に最新の科学的・技術的知見を反映し,高いレベルの安全性を目指す努力が継続されることが望まれる。また,本件原発において絶対的安全性が想定できない以上,過酷事故が起こる可能性が全く否定されるものではないのであり,万が一過酷事故が発生した場合に備え,避難計画を含めた重麗的な対策を講じておくことが極めて重要であることは論を待たない。
したがって,債務者,国及び関係自治体は,より実効性のある対策を講じるように努力を継続することが求められることは当然である。

9 結論
以上のとおり,債権者らの人格権が侵害される具体的危険があると推認することはできず,債権者らによる主張疎明その他本件に現れた一切の事情を考慮しても,債権者らの人格権が侵害される具体的危険を認めるには足りないから,債権者らの申立ては,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。

以上

 

平成26年(ヨ)第31号大飯原発3. 4号機及び高浜震発3,4号機運転差止仮処分命令申立事件

決定要旨

1 事案の概要
本件は,責務者(関西電力株式会社)の設置する大飯発電所3号機及び4号機(以下「本件原発」という。)から250km圏内に居住する債権者らが,責務者に対し,人格権に基づく妨害予防請求として,本件原発の運転(再稼働)の差止めを命じる仮処分を申し立てた事案であるところ,本決定は,本件申立てには保全の必要性が認められないとして,これをいずれも却下するものである。

2 理由の要旨
現在停止中の原子炉について再稼動の差止めに係る保全の必要性が認められるには,再稼働が差し迫っているという事情が疎明されなければならず,少なくとも原子力規制委員会が設置変更許可(原子炉規制法43条の3の8第1項)をするより前の段階では,再稼働が差し迫っているとはいえないところ,本件原発については,設置変更許可に係る審査も含めて,原子力規制委員会による審査がいまだ継続中であり,他に急迫の危険を避けるため直ちに本件原発の再稼働の差止めを認めるべき特段の事情も認められない。
したがって,本件申立てには保全の必要性が認められないから,その余の点について判断するまでもなく理由がない。なお,本件申立てがされてから既に1年以上が経過していること,本件原発については1年半以上前に当裁判所で運転差止めを認める判決が言い渡されていること(現在,名古屋高等裁判所金沢支部において審理されている。なお,同判決の原告らと本件申立ての債権者らは異なる。)を踏まえれば,現時点で本件申立てについて決定をするのが相当である。

以上

高浜原発3、4号機 再稼働認める決定 福井地裁

毎日新聞2015年12月24日 14時09分(最終更新 12月25日 00時08分)
http://mainichi.jp/articles/20151224/k00/00e/040/222000c

関西電力高浜原発(左から)3号機、4号機=福井県高浜町で、本社ヘリから久保玲撮影

関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止めを命じた4月の福井地裁仮処分決定(樋口英明裁判長=当時)を巡る異議審で同地裁(林潤裁判長)は24日、「安全性に欠ける点はない」などとして関電が申し立てた異議を認め、仮処分を取り消す決定を出した。8カ月余りで司法判断が覆り、2基の再稼働が法的に可能となった。地元同意の手続きは完了しており、関電は25〜29日に核燃料を3号機の原子炉に装着し、来年1月下旬の再稼働を目指す。

【関西電力が想定する高浜原発再稼働のスケジュール】 .

<3、4号機再稼働 福井知事、司法判断待たず同意> .

<高浜で知事同意 不自然な駆け込み表明> .

仮処分を申し立てた住民側は今回の決定を不服として、年内にも名古屋高裁金沢支部に保全抗告する。

決定で、林裁判長は原発について「絶対的安全性は想定できない」と指摘。2011年の東京電力福島第1原発事故の経験なども踏まえた現在の科学技術水準に照らして、「危険性が社会通念上無視できる程度まで管理されているかどうかという観点から判断すべきだ」との考えを示した。

その上で原発事故後に原子力規制委員会が作った新規制基準の内容を検討。基準地震動や津波について「最新の科学的、技術的知見を踏まえた評価を求め、専門性と独立性を持つ規制委が審査する枠組みには合理性がある」と判断した。耐震安全性は「補強工事を実施するなど相応の余裕がある」、使用済み核燃料の管理も「代替の冷却手段に高度な耐震安全性を要求し、合理性がある」などと結論付けた。

一方で「福島原発事故に対する深い反省と『安全神話』に陥らないという真摯(しんし)な姿勢で高いレベルの安全性を目指すことが望まれる」との見解を示し、万一の事故を想定した避難計画など重層的対策の重要性にも言及した。

4月14日の仮処分決定では、新規制基準について「適合しても安全性は確保されていない」などとして再稼働を禁じた。今回は差し止めを命じた樋口裁判長の後任になった林裁判長が担当。当事者が意見陳述する審尋は4回行われた。

2基は再稼働準備の最終段階となる使用前検査に入っている。高浜町長と福井県知事は再稼働に同意しており、今回の決定でハードルがなくなった。3号機に続き4号機は、来年2月下旬再稼働を目指す。

一方、福井地裁は24日、関電大飯原発3、4号機(同県おおい町)の運転を差し止める仮処分を求めていた住民側の申し立てについて「再稼働が差し迫っているとはいえない」として却下した。【岸川弘明】

福井地裁決定の骨子

・高浜原発3、4号機の運転差し止めを認めた仮処分決定を取り消す

・原発の絶対的安全性は想定できず、危険性が社会通念上無視できる程度まで管理されているかの観点で判断すべきだ

・基準地震動や耐震安全性、使用済み核燃料の危険性などに関する原子力規制委員会の判断に不合理な点はない

・常に最新の知見を反映し、高いレベルの安全性を目指す努力の継続が望まれる

関西電力のコメント

高浜、大飯両原発の安全性が確保されているとご理解いただいた結果と考えています。立地地域をはじめ社会のみなさんのご理解を得ながら、安全性が確認された原発の一日も早い再稼働を目指していきます。

大飯・高浜原発差止仮処分弁護団のコメント

福島原発事故の被害から何も学ぼうとしない、極めて不当な決定。再稼働スケジュールに配慮し、結論ありきだ。重大事故を起こした場合、その責任の重要部分は再稼働を許した裁判官にある。失われた司法に対する信頼を再び取り戻すため、最後まで闘い抜く。

高浜原発

福井県高浜町にある関西電力の原発で1〜4号機とも加圧水型(PWR)。1974年に1号機、75年に2号機、85年に3、4号機が営業運転を始めた。東日本大震災前は4基で関電が発電する電力の2割を占め、3号機はウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使う「プルサーマル発電」をしていた。

 

県内反原発団体「司法無視」憤り 福井地裁仮処分中の判断一斉非難

2015年12月23日 10:30【福井新聞】
http://fukunawa.com/fukui/7988.html

「司法無視」「行政の横暴だ」―。西川一誠知事が関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働に同意した22日、県内の反原発団体は、福井地裁が2基の運転を差し止める仮処分を出している中での判断に一斉に非難を浴びせた。

同地裁は24日に仮処分に対する関電の異議に決定を出す。仮処分の申立人事務局長、松田正さん(66)=坂井市=は「決定前の同意は、法の秩序に守られた社会を壊そうとしているのかとすら感じる。知事失格と言わざるを得ず、一県民として恥ずかしい」と語気を強めた。「仮処分は人が原発事故で被ばくしない権利を明確に認めた。東日本大震災後は原発をほとんど利用しておらず、いま動かす理由はない」と語り、24日の決定に期待を寄せた。

「地元としては事故が起きたときの避難が心配」と訴えるのは、「ふるさとを守る高浜・おおいの会」代表の東山幸弘さん(69)=高浜町。「国がまとめた広域避難計画には分からないところが多く、本当に逃げられるとは思えない。原発から30キロ圏内の人口は圧倒的に京都側が多く、周辺の自治体の意見も取り入れて判断すべきだった」と憤った。

「残念で情けない」。原発反対県民会議の代表委員、中嶌哲演さん(73)=小浜市=は、怒りを通り越して悲しさを感じたという。「知事は多くの県民が再稼働を認めていると言うが、それは原発推進の枠組みの中だけ」。県に提出した再稼働反対の県内外約30万人分の署名に触れ、国民的な運動を展開すると決意を新たにした。

高浜原発の再稼働認める、福井地裁が仮処分覆す 大飯も差し止め却下

【ロイター】 2015年 12月 24日 19:29 JST
http://jp.reuters.com/article/takahama-rerun-idJPKBN0U70AC20151224?feedType=RSS&feedName=topNews&utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter&utm_campaign=Feed%3A+reuters%2FJPTopNews+%28News+%2F+JP+%2F+Top+News%29

12月24日、関西電力高浜原発3、4号機の再稼働差し止めを命じた今年4月の仮処分に対する関電からの異議申し立てについて、福井地裁(林潤裁判長)は、4月の判断を覆し、関電の主張を認める判断を示した。2012年1月撮影(2015年 ロイター /Issei Kato)

[福井市 24日 ロイター] – 関西電力(9503.T)高浜原発3、4号機の再稼働差し止めを命じた今年4月の仮処分に対する関電からの異議申し立てについて、福井地裁(林潤裁判長)は24日、4月の判断を覆し、関電の主張を認める判断を示した。この結果、高浜原発は今冬にも再稼働することがほぼ確実になった。

福井地裁は、関西電力が「新規制基準の内容と原子力規制委員会の基準適合性判断に不合理な点はないと主張を尽くした」と認定。今年4月に、樋口英明裁判長(当時)は新規制基準について、「合理性を欠く」として、再稼働差し止めの仮処分の住民請求を認めていた。

住民側が差し止め請求をしていた関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)についても請求を却下。大飯3、4号はまだ原子力規制委の審査に合格しておらず、再稼働が切迫していないため、差し止めの必要性はないことが理由という。

<福島事故に学ばずと住民側>

差し止め請求した住民側弁護団らは、福井市内で記者会見した。河合弘之弁護士は「福島第1原発事故に何ら学ぼうとしない極めて不当な判決だ」などと批判した。高浜3、4号機について今後、速やかに名古屋高裁金沢支部に抗告する考えを示した。大飯3、4号については、新規制基準への合格判定が出た時点で再度、差し止め仮処分を申し立てる方向だ。

<高浜3号、1月下旬にも再稼働へ>

関電は同日、「安全性が確保されていることについて理解いただいた」とコメントした。高浜3、4号は、今月22日までに「地元同意」が成立。大飯3、4号は規制委の審査が続いている。今回の決定により、関電は明日25日に3号機の原子炉に燃料を搬入し、来年1月下旬に再稼働させたい考え。4号機は2月下旬の再開を目指している。

<異議審の決定、元裁判官からは批判も>

元裁判官として、裁判所、裁判官の実態を告発した「ニッポンの裁判」(講談社現代新書)などの著書がある明治大学法科大学院の瀬木比呂志教授は、今回の決定について「基本的に新規制基準に適合していれば、それで問題ないという書き方で疑問がいろいろある」とロイターの取材で述べた。

4月の樋口裁判長の決定では、各地の原発で過去に何度もそれを超える地震が起こっている基準地震動設定の問題や、基準地震動に満たない地震でも外部電源の喪失や主給水ポンプ破損のおそれがあることについて言及している。

瀬木教授は、「そうしたことを始めとする多くの問題点を今回はどうクリアしたのか、この決定からはわからない」と指摘したうえで、「樋口決定は、書き方にはやや粗い点もあるが、大筋からいえば今回の決定よりもずっと説得力がある」と強調した。
(浜田健太郎)

広告
カテゴリー: ちたりた, 裁判 パーマリンク