【1/7中日新聞・福井】原発狙われるのでは? 北朝鮮「水爆実験」で不安の県内/06/01/13『ホームメイド原爆──原爆を設計した学生の手記』ジョン・アリストートル・フィリップス+デービッド・マイケリス( KIWADA Kats-Hiro さんの【Steps to Dolphin Logic】”本あれこれ”より)

昨日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮というなら韓国を南朝鮮と呼ぶのに賛成)が、水爆実験を行った。地下核実験だから福島レベルではないらしいけれど、 心配なのは、高浜3、4号機あたりを狙っているテロリストがいても不思議ではないからだ。
だって、原子爆弾なら大学院生レベルで作れるもの。
細見周さん推薦図書『弁護士・藤田一良─法廷の闘い』に、そう書いてあった。
アメリカの番組で大学院生に原爆製造に関するマンハッタン計画の時の資料や論文、放射性物質を与えたら、その学生が原爆を作ってしまったという、そんな番組があったそうだ。
ウラン濃縮するのはたいへんらしいから、きっと長崎型だろうなと想像した。その番組はわからなかったが、本があるという。
”A-Bomb Kid” ジョン・フィリップス君だ。

ジョン・アリストートル・フィリップス+デービッド・マイケリス
ホームメイド原爆──原爆を設計した学生の手記

1500円くらいで中古で入手可能の本だ。
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原発狙われるのでは? 北朝鮮「水爆実験」で不安の県内

2016年1月7日【中日新聞・福井】
http://www.chunichi.co.jp/article/fukui/20160107/CK2016010702000011.html

北朝鮮が6日、水爆実験を成功させたと発表したことを受け、県内からは核兵器で家族を亡くした市民らが憤りをあらわにした。国際政治の専門家は北朝鮮が孤立を深めると指摘し、拉致問題解決への対応を迫るよう国に注文した。

県民からは核保有を主張する北朝鮮の暴走に不安の声が上がった。

県立大三年の佐々木宏美さん(21)=坂井市丸岡町=は「率直に怖い。日本との関係も悪く、いつか狙われるのでは」と懸念。福井市の美容師三田村渚さん(26)も「核兵器が暴発して放射性物質が飛んできたら防げるのか。次の世代を担う子どもに影響が出ることが心配」と話す。

廃炉中も含め国内最多の十五基の原発を抱える県。再稼働が近い関西電力高浜原発3、4号機のある高浜町で農業を営む池田康信さん(74)は「気に入らない人間を粛清するワンマン体制だと、いつか日本も標的になるかもしれない。原発がテロの標的にならなければいいが…」と困惑する。

「原発があるから、北朝鮮が狙うのはまず福井県だと思う」と指摘するのは絵本作家の大西美穂さん(26)=越前市。「今後のことを考えると恐ろしい」と話した。

大野市の男性(55)は「水爆を持つことは許されない。やるべきことはやるべきだ」と述べ、日本政府に毅然(きぜん)とした対応を求めた。坂井市三国町の主婦(56)は「経済制裁が必要だと思うけど、拉致被害者の生活を考えるとそれが良い方法なのか」と思い悩む。

◆放射性物質の監視強化

北朝鮮が発表した「水爆実験」を受け、県は六日、幹部職員らを集めて連絡会議を開き、放射性物質の測定回数を増やすなど監視強化の方針を決めた。測定結果は毎日午後五時ごろ、県のホームページで公表する。

原子力規制庁が全都道府県にモニタリング強化を求めた。県は県内百十五地点の固定観測局で空間放射線量を測定し、十分ごとに公表している。県原子力安全対策課によると、六日午後三時現在、県内の数値はいずれも平常時の範囲内だった。

これに加え、県原子力環境監視センター福井分析管理室(福井市原目町)では六日から、新たに大気中の放射性ヨウ素を一日一回、測定。セシウムなど放射性物質の量を調べるため、空気中のちりや雨の分析頻度は月一回から一日一回へと増やした。

測定結果は空気中のちりとヨウ素が七日、雨などの降下物は八日から公表する。高島善弘・危機対策監は「引き続き国、政府関係機関からの情報収集に努めてほしい」と指示した。

北朝鮮による過去三回の核実験で、県内の放射線量などに影響はなかった。

(山本洋児)

◆島田・県立大教授「拉致問題交渉の継続を」

「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)副会長で、国際政治学が専門の島田洋一・県立大教授は「外務省による表の協議はできなくても、官邸主導で水面下での日朝交渉は進めてほしい」と、拉致問題解決に向けた交渉の継続を訴える。

二〇一二年には北朝鮮のミサイル発射実験後、協議が延期になるなど影響を免れなかった。

「拉致問題の交渉は断ち切られ、停滞を招いた」と振り返る。

島田教授は、日本が国連安保理で非常任理事国を務める立場から「北朝鮮への制裁強化を主導しなければいけない」と注文した。

一方で、実験に各国が反発し、北朝鮮の国際的な孤立は深まると分析。「食料や薬品などの人道支援をカードとし交渉してほしい」と硬軟両面で北朝鮮に対応を迫るよう求めた。

◆県被団協会長「大反対」

県日本原水爆被害者団体協議会(被団協)「すいせん会」の山岡直文会長(70)=大野市=は「核兵器で家族を亡くし、怖い思いをした体験者としては、どんな目的であろうと大反対」と憤る。

山岡会長は広島に原爆が落とされた一九四五(昭和二十)年、母親の胎内で被爆。爆心地から五百メートル地点にいた兄を亡くした。

昨年にはニューヨークで開かれた核拡散防止条約再検討会議に参加するなど、被団協として核兵器反対の声を上げてきた。「それでも世界から見れば小さな団体。一般の人にも考えてもらい、強く反対する気持ちを持ってほしい」と訴えている。

(取材班)

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『ホームメイド原爆──原爆を設計した学生の手記』ジョン・アリストートル・フィリップス+デービッド・マイケリス

[2006-01-13]
KIWADA Kats-Hiro さんの【Steps to Dolphin Logic】本あれこれより

奥地幹雄+岡田英敏+西俣総平訳、アンヴィエル、1980年
http://www.fuchu.or.jp/~d-logic/jp/books/mushroom.html

プリンストン大学3年生の時に「原子爆弾の自家製造法」をテーマにした論文を提出して、一躍有名人になってしまった学生の手記。
ジョン・アリストートル・フィリップスの方が当人である。共著者は彼のルームメイトで、同じくプリンストンの学生。1976年から77年にかけての話。

原著は、
John A. Phillips and David Michaelis, “Mushroom : The True Story of the A-Bomb Kid”, 1978.

フィリップス君がそんな不穏な論文を書こうと思い立ったのは、普通の大学生にだって原爆が設計できるということを示せれば、プルトニウムの管理をより厳しくする必要があるという証明になる、と考えたからだという(「軍備管理・軍縮」をテーマとした講座への出席がきっかけになった)。

フィリップス君はワシントンへ出かけ、原子力平和利用計画の一環として機密解除された、ロスアラモス計画の記録を25ドルで手に入れてくる。爆薬を製造している会社(デュポン社)にも電話をかけて、アメリカ陸軍が実際に原爆に使っている材料を聞き出すことにも成功。

彼が設計したのは、長崎に投下された原爆(「ファットマン」)と同じタイプで、プルトニウム239を使った爆縮(インプロージョン)型。計算上の爆発力は、「ファットマン」の半分程度。大きさはビーチボールくらい。

指導教官がフリーマン・ダイソンだったという話も、個人的には興味深い。ダイソンはアメリカ政府の軍備管理軍縮局で仕事をしていた経歴もあり、原爆の機密を保持すべき立場にあったので、積極的な指導はしてない。

ダイソンの自伝『宇宙をかき乱すべきか』の中にも、フィリップス君の騒動は出てくる。爆弾の設計図自体は実用に耐えるほど精密なものではなかった、とダイソンは述懐する。しかし、

二十歳の小僧が、こんなに多くの情報を、こんなに速く、こんなにわずかな努力で集めることができたことが、私を震えあがらせた。私は彼の論文を読み通して、彼に「A」の評点をつけた後、彼にそれを燃やしてしまえと言った。[1]

論文は燃やされず、貸金庫にしまわれた。

有名になったフィリップス君はTVのトーク番組に出演し、アシモフにも会っている。

僕はメーキャップを諦め、周囲を見まわした。きょうの番組に出演する他のゲストたちがいろいろなメークの段階にあった。僕はアイザック・アシモフ、あの科学者兼作家を認めた。彼は非常に気難しい顔をして鏡の前にすわっていた(204ページ)。

この日のアシモフは、最初から最後まで気難しい顔だったらしい。

歴史的に(というか時事ネタ的に [2])特筆すべきは、パキスタン大使館の大使補佐役だという人物が接触してきた、というくだりかもしれない。

「フィリップスさん、私はワシントンのパキスタン大使館の者です。ご存知かも知れませんが、わが国では核エネルギーの平和利用の分野の発展に非常に関心を抱いております」彼が、”平和的”を強調したあたりは、まるで化けの皮がはげている。彼は続けた。「したがって、私があちこちで読んだことのあるあなたのすばらしい設計書の写しをたった一部でいいからお送りいただけると非常にありがたいんですが」(177ページ)

当時インドは既に地下核実験に成功しており、パキスタンはフランスから原子力発電所と核処理施設を買い入れようとしている、という話があった。

フィリップス君はこの電話の件を、知り合いの知り合いの上院議員と、デイヴィッド君(共著者)の父親(JFKの科学アドバイザーだった人)に伝える。上院議員は FBI に伝え、FBI が「捜査員を派遣する」とフィリップス君に電話してくる。デイヴィッド君の父親は、元CIA局員に伝え、CIAは「FBI に任せる」と電話してくる。

結局、パキスタン人は、フィリップス君から原爆の設計図を手に入れることは出来なかった。

クリフォード・ストールの『カッコウはコンピュータに卵を生む』(池央耿訳、草思社、1991年)を読んでいるときにも感じたことだが、アメリカで何か事件が起こりそうになると、すぐに(気軽に) FBI や CIA が登場する。

誰か(大抵、何か起こったときに責任を追及されそうな立場の人間)が、「FBI に相談したかい?」とか「CIA に伝えた方がいいかも知れない」とか言い出すのである。アメリカの警察はどこも忙しそうなので、FBI は、困ったときのよろず相談窓口みたいである。CIA は国内問題には干渉しないという建て前なので、「パキスタンのスパイ」や「ドイツのハッカー」等が絡んできても、なかなか腰を上げないようだ。

日本だと、こういう相談はどこに持ち込めばいいのだろう?

CBSがこの話 [3] を2時間ドラマ化することになり、フィリップス君自身が主役(つまり自分の役)を演じることになる。というところでこの手記は終わっている。

このドラマが実際に放映されたのかどうか、よくわからない。フィリップス君の20年後も知りたくて、いくつかのサーチエンジンで「john phillips」を検索してみたけれど、核問題関連の文献リストにこの本の原著が挙げられているくらいで(あまり役に立つとも思えないのに)、めぼしい情報には出会えていない。

久しぶりに、フィリップス君について調べ直してみた。すると Wikipedia に「John Aristotle Phillips」という項目があり、現在は Aristotle International という、政治的キャンペーンや草の根組織のノウハウを指導するコンサルティング会社のCEOをやってるらしい。1983年にこの会社を興したとあるから、一過性の有名人としての名声を楽しんだ後、ビジネスの世界でも成功したようだ。

注:
1.フリーマン・ダイソン『宇宙をかき乱すべきか』(鎮目恭夫訳、ダイヤモンド社、1982年)、229ページ。
2.時事ネタはすぐに古びてしまうな。この部分を書いた1998年の春、パキスタンが核実験に成功して核保有国の仲間に入り、物議をかもしていたのである。
3.「大学生が原爆を設計して有名になり、パキスタンのスパイに追っかけ回されるなんて!」(226ページ)。
フィリップス君の物語をドラマ化してCBSに売り込もうと思いついた、ハリウッドのあるプロデューサーの言葉。

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