1/19【中日新聞・特集「新貧乏物語」第1部・悲しき奨学金】<特集>教育後進国・日本

今までweb上にあがっていなかったのが、(5)以降を含めて一挙アップされていた。
首相はそれほど若者を追いつめて経済的徴兵をしたいわけか。
私の学生時代、私立文系だけれど年間授業料は11万円だったのを覚えている。

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第1部・悲しき奨学金 <特集>教育後進国・日本

http://www.chunichi.co.jp/article/feature/binboustory/list/CK2016011902000222.html
【中日新聞・特集「新貧乏物語」】2016年1月19日

*日本とOECD各国の教育支援の現状を比較した世界地図は、中日新聞プラスの紙面ビューでより鮮明に見ることができます。http://chuplus.jp/local/index_select.php?category_id=426

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◆給付型が世界的標準

京都帝国大(現在の京都大)の教授だった河上肇が「貧乏物語」と題した評論を世に出してから百年を迎えた今年、現代の貧困と向き合うために本紙で始めた連載「新貧乏物語」。年明けからの第1部「悲しき奨学金」では、大学生や大学院生、専門学生らの約四割が利用する日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金を取り上げ、就職難などで返還に苦しむ若者たちに焦点を当てた。奨学金は家庭環境などにかかわらず、学びたい人に等しく進学のチャンスを与える有効な手だてだが、日本の制度は国際基準に追いついていない。機構が返還の重要性を強調する一方で、柔軟な制度運用を求める声もある。

経済協力開発機構(OECD)加盟三十四カ国に色を塗った世界地図。薄紅色の国がほとんどの中で、日本と北欧のアイスランドは黄色だ。地図は、国立国会図書館が昨年七月にまとめた「諸外国における大学の授業料と奨学金」のデータを基に作った。三十四カ国中、日本とアイスランドの二カ国だけ、返還が不要な「給付型奨学金」が整備されていない。

同じデータで加盟各国の国公立大学の年間授業料(平均額)を比べると、日本は英国、米国、カナダなどに続き、三十四カ国の中で七番目に高い。英国は日本の二・八倍、米国は一・六倍と高額だが、それぞれに年額最大五十九万六百円、平均給付額四十六万五千二百円の公的な給付型奨学金があり、両国とも半数近くの大学生が利用している。

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ドイツ、ノルウェー、ギリシャ、トルコなど十三カ国は国公立大の授業料が無料なうえ、「学業奨励」や「生活費」などを名目とする給付型奨学金が用意されている。ドイツの場合、年齢や成績、経済状況などを考慮したうえで、平均月額六万二千七百円を連邦政府が給付している。

OECDが昨年十一月に公表したデータは、日本が抱えるさらに大きな課題を示している。国内総生産(GDP)に占める学校など教育機関への公的支出の割合は、加盟国平均の4・7%に対し、日本は3・5%。比較可能な三十二カ国中、スロバキアと並んで最下位だ。東京大大学総合教育研究センターの小林雅之教授(教育学)は「日本は世界的に見ても、家計に占める教育費の負担が重い」と指摘する。

日本は一九七九年六月、欧米諸国などとともに国連の国際人権規約を批准したが、第一三条の「中等教育(中学、高校)、高等教育(大学、専門学校)における無償教育の漸進的導入」の項目は留保した。二〇〇九年に発足した民主党政権は「高校授業料無償化」と「大学の奨学金拡充」をマニフェストに盛り込み、一二年九月、留保の撤回を国連に通告。ただ、同年末に自民、公明に政権が移ってからは、民主を含めて国政選挙の主要争点にはしていない。

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その一方で大学の授業料は上がり続け、奨学金の利用者も増えている。一二年度は52・5%と、一九九四年度の21・4%から倍以上に。うち八割が日本学生支援機構の奨学金を利用している。

厚生労働省によると、高卒の求人数は九一年度末の百六十七万人に対し、二〇一四年度末は約二割の三十二万人に落ち込んだ。平均初任給は大卒の二十万二千円に対して十六万九百円と、四万一千百円の開きがある。

民主政権時の文部科学副大臣で、自公政権の現在も文科大臣補佐官を務める鈴木寛氏(東大公共政策大学院教授)は「高卒の求人が減っている以上、大学に行かなければ大量の失業者が出るだけだ」と指摘した上で、「奨学金は社会、未来への投資。IT、医療介護分野などの人材育成で世界に後れを取らないためにも、制度の拡充が必要だ」と話している。

◆柔軟な返還制度が必要

京都女子大客員教授 橘木俊詔氏

橘木俊詔・京都女子大客員教授

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日本では教育費を受益者が負担しなければならないという考え方が強く、「教育や社会保障はみんなで恩恵を分け合うもの」という意識が育まれていない。

近年の生活保護バッシングもそうだが、税金の使い道に対して「特定の誰かが甘い汁を吸っている」などと思いがちだ。政治家や官僚も教育投資への意識が低い。特に財務省は赤字を減らすことしか頭にない。

両親の年収と子どもの高校卒業後の進路を調べた東大のデータは、経済的に豊かな家庭でなければ高等教育を受けにくい実態を示している。貧しくても有能な若者を社会が飼い殺しにすることは、将来の日本にとって大きな損失だ。

国は教育への公的支出を増やすべきだが、それには二通りの方法がある。一つは学費を安くする。私が国立大学に通っていた五十年ほど前は年間授業料が一万二千円だったが、今は五十万円を超えている。物価上昇率をはるかにしのぐ異常な高騰だ。

もう一つは奨学金制度の充実。奨学金を利用して大学で学び、個人の資質を高めて希望の職に就く。そして、卒業後にしっかり返還する。社会に支えられて進学し、学んだ成果を社会に還元するという意味では給付より貸与の方が望ましいのかもしれない。

ただ、低所得や就職難に苦しむ若い人に返還を迫るべきではない。背景に社会や経済状況の影響があるにもかかわらず、単に「返せ」と言うだけでは無意味。財政面を考えると全額を給付型にするのは難しいが、卒業後の所得や就業状況に応じ、返還のスケジュールを柔軟に見直す制度があってもいい。

<たちばなき・としあき> 1943(昭和18)年8月、兵庫県出身。小樽商科大、大阪大大学院を経て、米国ジョンズ・ホプキンス大院博士課程修了。京都大、同志社大で教壇に立ち、2014年4月から現職。著書に「貧困大国ニッポンの課題」など。

◆新たな学生のため回収

日本学生支援機構理事長 遠藤勝裕氏

遠藤勝裕・日本学生支援機構理事長

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奨学金事業費は年間一兆一千億円まで膨らんでいる。全てを返還の必要のない給付型に切り替えるのは難しいが、無利子貸与の割合を増やして返還猶予期間を延ばすなど、返還困難者へのセーフティーネットを充実させてきた。

今の制度が最善かどうかはさておき、奨学金がなくなればほとんどの大学がつぶれる。一兆一千億円は国立大への運営費交付金を上回る規模。一方で、機構の奨学金を借りている学生の七割が国公立ではなく私大に通っている。三千億円の私大助成金の倍、およそ七千七百億円が、奨学金による学費収入という形で大学の経営を支えている。

卒業して初年度の新規返還者の回収率は97%で、延滞率は3%にすぎない。私は日銀時代にメガバンクの考査もやっていたが、3%というのは優良金融機関の延滞率とほぼ同じ。そう考えると、奨学金を借りた学生のほとんどは返還に対して極めてまじめだ。

機構の奨学金はローンとの見方もあるが、私は貸与だと言っている。一般的な教育ローンは審査があって親に貸す。奨学金は親の年収、本人の学力などの要件はあるが、無審査で本人に貸す。返還された奨学金の使い道は、新たな学生に貸す奨学金に限られる。その点も、回収したお金を別目的の投資に回せる民間のローンとは違うところだ。

親が貧しいから大学に行けない人を一人でも減らすことが、機構の存在意義。しかし、今の時代、大学に行きさえすれば良い就職があるというのはイリュージョン(幻想)だ。奨学金を借りる以上、「返還しないと、機構はしっかり取りに来る」という意識を持ってほしい。

<えんどう・かつひろ> 1945(昭和20)年6月、東京都出身。早稲田大第一政治経済学部を卒業後、日本銀行入行。神戸支店長、電算情報局長などを歴任。経済同友会で教育問題に携わり、2011年7月から現職。東京都教育委員会委員も務める。

 

第1部・悲しき奨学金 (7)働く意欲を守るため(1月9日)
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/binboustory/list/CK2016010902000209.html

第1部・悲しき奨学金 (6)取り立てねばクビに(1月8日)
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/binboustory/list/CK2016010802000078.html

第1部・悲しき奨学金 (5)親に管理任せ消えた(1月7日)
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/binboustory/list/CK2016010702000232.html

第1部・悲しき奨学金 (4)風俗で働く自分に涙(1月6日)
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/binboustory/list/CK2016010602000225.html

第1部・悲しき奨学金 (3)破産しても消えない(1月5日)
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/binboustory/list/CK2016010502100010.html

第1部・悲しき奨学金 (2)落とし穴(1月4日)
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/binboustory/list/CK2016010402000193.html

第1部・悲しき奨学金 (1)借金1044万円(1月3日)
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/binboustory/list/CK2016010302000158.html

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