6/20「元原子力規制委員が大飯原発の危険性を警告 島崎・東大名誉教授「関電に過小評価の疑い」/老朽原発の運転延長審査が最優先された理由 関西電力・高浜1、2号機が40年超の稼働へ 【東洋経済オンライン】

一昨日の高槻アクションの後の冷たいものタイムで(参加しないくせにこういうのは出席する私)6月号の岩波書店の『科学』をチラ見させてもらった。
田中三彦さん(もいっかい事故調世話人)の「日本の原子力安全を評価する」という特集。 コピーさせてもらったらB4で28枚もあったので、コピーするのがしんどいから書店でお求め下さい。
なお、6月24日発売の岩波書店『科学』(7月号)に島崎先生の論文が掲載されるそうな。これも併せてお求め下さい。
でも「科学」はちょっと難しい。寝ころんで読むものじゃないわよ。

東洋経済オンラインの昨日と今日の記事が面白い。どちらも岡田 広行記者。

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「元原子力規制委員が大飯原発の危険性を警告 島崎・東大名誉教授「関電に過小評価の疑い」

【東洋経済オンライン・岡田 広行 :東洋経済 記者】 2016年06月20日
http://toyokeizai.net/articles/-/123357

関西電力の大飯原発3・4号機。地震の影響が過小に見積もられているおそれがある(写真:共同)

原子力発電所の安全審査で中枢にいた専門家の発言が、原子力業界に衝撃を与えている。

2014年9月まで原子力規制委員会でナンバー2(委員長代理)を務めた島崎邦彦・東大名誉教授(地震学)が、6月16日の田中俊一委員長らとの意見交換の場で、関西電力・大飯原発3、4号機再稼働のための安全審査の根幹をなす基準地震動が「過小に見積もられている可能性がある」と指摘。「基準地震動の算出に問題がないかどうか、もう一度精査してほしい」と強く求めた。

これを受けて6月20日午後2時からの規制委会合では基準地震動の検証をやり直すかどうかについて議論することになった。

関電が用いた計算式に欠陥あり

大飯原発の基準地震動設定のやり方を問題視した島崎邦彦氏

島崎氏は、関電が大飯原発の基準地震動を計算するうえで用いている活断層評価のモデル式に、過小評価を生み出す欠陥があると指摘。

モデルは「入倉・三宅式」と呼ばれるもので、これを西日本で多く見られる横ずれ断層(垂直型断層)や垂直に近い断層に用いた場合には、震源の大きさがほかの式を用いた場合と比べて3.5分の1~4分の1程度の小さな値になると田中委員長らに説明した。

そのうえで島崎氏は、本当の震源の大きさが同式での計算結果の3倍以上だとすると「短周期レベルの地震動は5割増しになる。これはかなり深刻な問題だ」との見方を示した。

大飯原発3、4号機の再稼働をめぐっては、2014年5月に原告住民の勝訴となる運転差し止めを福井地裁が命じている。その判決では次のように指摘されている。

「1260ガルを超える地震によって冷却システムが崩壊し、非常用設備ないし予備的手段による補完もほぼ不可能になり、メルトダウン(炉心溶融)に結びつく。このことは被告(関電)も自認しているところである」

当時、関電が規制委の審査会合で示していた基準地震動は700ガル。その後、規制委との議論を経て856ガルに引き上げて概ね了承を取り付けたものの、今回、島崎氏から「そもそも、関電が基準地震動設定の基礎に用いた式そのものに欠陥がある」との問題が提起された。

しかも驚くべきことに、島崎氏は関電が申し立てた名古屋高裁金沢支部での同裁判の控訴審で、住民側弁護士の依頼で陳述書を提出しており、そこで関電の地震動評価について「過小評価の可能性」を指摘している。こうした流れを踏まえて朝日新聞などが島崎氏の問題提起について報じたことにより、事の重大性が世の中に知られるようになった。

今回、規制委が”すでにやめた人”である島崎氏との面談を設定したのも、こうした経緯によるところが大きい。田中委員長も16日の面談の冒頭で、「本日も大勢のマスコミが集まっている。国民も関心を持っている」などとして、問題が無視できなくなっているとの認識を示した。

このままでは福島の事故が繰り返される

原子力規制委と島崎氏の意見交換面談

「どうされるかは委員会のマター。くちばしをはさむつもりはない」「すでに辞めた人間が申し上げるのも口はばったいのですが」と言いつつも、島崎氏は田中委員長ら規制委に審査のやり直しを強く求めた。

その理由について、意見交換終了後のぶらさがり会見で島崎氏は、「(東日本大震災と同じこと(=想定外の大惨事)が、日本海側で再現されつつある。今であれば(対策の)やり直しがきく」とし、そのうえで「専門家であれば計算し直すのに大して時間はかからないはず」と述べている。

島崎氏の問題提起は、6月24日発売の岩波書店『科学』(7月号)に掲載される論文に詳しい。

そこで島崎氏は国土交通省が2014年9月に策定した『日本海における大規模地震に関する調査検討会報告書』が日本海「最大クラス」の津波を過小評価しており、「津波の対策がこのまま進めば、再び『想定外』の被害を生ずるのではないだろうか。2002年の津波地震の予測を中央防災会議や東京電力が無視し、『想定外』の災害を起こしたことを忘れてはならない」と警鐘を鳴らしている。

「想定外」が繰り返されるのか

島崎氏は、規制委委員長代理を退任した後、日本海側での津波予測について研究を重ねてきた。さらに熊本地震での現地調査を経て、「入倉・三宅式」を横ずれ断層に用いることによる弊害について、確信を持つようになったという。

島崎氏が「過小評価の可能性が高い」として問題にしている日本海最大の活断層は、大飯原発の基準地震動設定の際にも検証の対象となったことから、学会での報告内容を知った原告の弁護士から求められて陳述書を書いたと島崎氏は舞台裏を明らかにしている。

規制委との意見交換では「入倉・三宅式は適用範囲を頭の隅に置きながら(審査を進めてほしい)ということか」との質問が原子力規制庁の幹部から出たが、島崎氏は「(同式に欠陥があることは)頭の隅ではなく、真ん中に置いてほしい」と釘を刺した。田中委員長からの「(安全上余裕度を持たせている)原発よりも建築基準や高層ビルなどのほうがどうなっているか(気になる)」の問いにも、「(入倉・三宅式が)原子力(発電所の基準地震動設定)でも引き続き使われる可能性がある(ことが問題だ)」と警告した。

「想定外を繰り返してはならぬ」との地震学の専門家による問題提起を、田中委員長ら規制委は20日の会合でどう判断するか。国民を原発事故から守る最後の砦としての責任が問われている。

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老朽原発の運転延長審査が最優先された理由

関西電力・高浜1、2号機が40年超の稼働へ

2016年06月21日【東洋経済オンライン】岡田 広行 :東洋経済 記者
http://toyokeizai.net/articles/-/123582

「老朽原発の運転延長審査が最優先された理由 関西電力・高浜1、2号機が40年超の稼働へ

関西電力高浜原子力発電所1号機と2号機(写真:共同)

原子力規制委員会は6月20日、関西電力に高浜原子力発電所1、2号機の40年を超す運転延長を認可した。これにより、関電は同1号機で約18年4カ月、2号機で約19年4カ月先まで稼働させ続けることができる。40年を超す老朽原発の運転延長は福島原発事故後に導入された現行制度の下では初めて。関電は耐震補強などの工事に3年あまりを費やしたうえで、2019年10月以降に再稼働させる考えだ。

老朽原発の運転延長については、原子炉等規制法の改正を進めた当時の民主党政権下で”40年ルール”が設けられ、その際に「例外中の例外」(細野豪志原発担当相=当時)とされた。だが、厳格だと見られていたルールは早くも形骸化しかけている。関電・美浜原発3号機でも40年超の運転に向けての審査が進むほか、今後は関電以外からも40年を迎える原発について、運転延長のための申請が行われる可能性が高い。

他社の申請を差し置き、関電の審査を最優先

高浜原発1、2号機の審査プロセスは異例中の異例だった。

新規制基準が施行された直後の2013年7月に再稼働のための原子炉設置許可変更を申請した各社の原発では、審査手続きがいまだに終わっていない。その一方で関電が高浜1、2号機の設置許可変更申請書を提出したのは2015年3月17日と、まだ日が浅い。40年超の運転を認めてもらうための運転延長認可申請書の提出に至っては同4月30日だった。その後、規制委ははるか前に申請した各原発の審査を後回しにする形で、老朽原発の審査を最優先にした。

「昨年の審査会合では、案件数では7割方が関電の案件」「独占とは言わないが、(関電のために審査のマンパワーの)かなりの部分を使っている」

規制委の更田(ふけた)豊志委員長代理は、関電の八木誠社長が出席した今年6月1日の臨時会合で、関電から持ち込まれた審査の大変さに苦言を呈した。

運転延長を認めた原子力規制委員会の会合(6月20日

現在、関電の原発については美浜原発3号機のほかに、大飯原発3、4号機でも審査が進められている。「大飯についてもぜひバランスよく審査を」と求める八木氏に対して、規制委側からは「(関電ばかり優先できないという)われわれの状況もぜひご理解いただきたい」(田中俊一委員長)、「(審査を独占したことの)責任というべきか、その重みを感じていただきたい」(更田氏)という声が挙がった。

それにしても、なぜかくも関電の原発を優先したのか。

現行ルールのうえでは高浜の2基については今年7月7日までに運転延長の認可を出せなければ、時間切れアウトになり、廃炉に追い込まれるためだ。

そうした事態を避けたかったのは、関電のみならず規制委も同じだった。万が一、時間切れになった場合、政府与党や電力業界からの規制委への風当たりは激烈なものになるうえ、関電から損害賠償請求訴訟を起こされるリスクも取り沙汰されていた。

急ごしらえの対応、合格後に試験も

そうした中で、審査は紆余曲折を繰り返した。プラント部分の審査を指揮した更田委員長代理自身が八木社長との面談で「耐震設計の部分についてはなかなかすんなりいかなかったように思う」「急ごしらえで(関電が)いろんな手法(を編み出してきた)というところもあったのだろうと思う」と語ったように、蒸気発生器など重要機器の耐震評価の前提となる「減衰定数」(揺れが収まるスピード)が関電の都合で、緩和されるいきさつもあった。

審査に際して、「規制委は関電に配慮しているのではないか」と疑われる一幕もあった。

減衰定数を関電が従来の1%から3%に緩和したことに伴い、蒸気発生器を実際に揺らす試験(加振試験)が必要になったが、審査の終盤になって「工事計画認可を出した後の、使用前検査段階で確認できればいい」という進め方が決まったためだ。

当初のやりとりでは、加振試験については工事計画認可を出す前のタイミングで行うという考えを規制委は示していた。しかし、工事計画認可は遅くとも7月7日までに出さなければ時間切れアウトになる。最終的に、再稼働直前の使用前検査で確認すればよいということになったことで、関電は耐震工事終了後の3年後まで時間的猶予を得た。要は40年運転の合格証をもらった後に、試験をやって通ればいいということになったのである。こうしたいきさつがあったことから、設置変更許可に際してのパブリックコメント(意見募集)では「これでは後出しじゃんけんで何でも通ってしまう」との批判も出た。

原発の安全審査に詳しい専門家からも、審査の甘さを指摘する意見が出ている。旧原子力安全委員会事務局で技術参与を務めた滝谷紘一氏は「高浜1、2号機は過酷事故対策でも不十分な点がある」と指摘する。

川内原発と同じ方法で評価すれば水素爆発のおそれ

滝谷氏が問題にしているのは、関電が提示した炉心溶融が起きた際の水素爆発防止対策だ。九州電力・川内原発の対策と見比べて検証した滝谷氏によれば、「川内原発と同じ方法で評価し直した場合、高浜1、2号機では新規制基準で水素爆轟(ばくごう)が生じるおそれがあるとされる水素濃度13%を超えるとの試算結果が出た」という。

高浜1、2号機については、総延長約1300キロメートルに及ぶ電気ケーブルの耐火性能が新規制基準を満たしていないことから、関電はその6割について難燃性ケーブルに張り替える方針だ。その一方で、張り替えが困難な部分については、防火シートでくるむという手法を採用した。これについては、「モックアップ試験(実証試験)で耐火性が確認されている」(原子力規制庁)というが、実際に工事を終えた後の使用前検査できちんと施工されているかを確認しなければならない。

関電によれば、高浜1、2号機の安全対策工事費用は約2000億円。再稼働までのタイムラグを勘案して約16年の運転が可能だとして、年間のコストは約125億円にのぼる。関電の試算ではこれだけのコストを費やしても経済的に成り立つという。だが、高浜1、2号機の運転延長認可をめぐっては、4月14日に住民が規制委などを相手取った認可取り消し訴訟を名古屋地裁に起こしている。関電は被告ではないものの、安全対策の巨額投資のみならず、訴訟リスクも背負い込んだ形だ。老朽原発再稼働の道のりは依然として不透明だ。

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