【6/29・30東京新聞】<参院選 私が選ぶ>(2)ブラックバイト 自分の意思を示して<希望はどこに?くらしと参院選> (4)若者に広がる年金不信

<参院選 私が選ぶ>(2)ブラックバイト 自分の意思を示して

2016年6月29日【東京新聞・埼玉】
http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201606/CK2016062902000204.html

「選挙は政権与党に対するテスト。これまでよくなっているかどうかで判断すればいい」と話す藤田孝典さん=さいたま市で
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◆NPO法人代表理事・藤田孝典さん(33)

NPO法人「ほっとプラス」(さいたま市見沼区)の代表理事として、貧困や労働の相談に耳を傾けてきた。若い世代からは安い時給で過酷な勤務を強いられる「ブラックバイト」の訴えが寄せられる。

飲食店でアルバイトをする都内の男子大学生からは、三カ月連続で休みがほぼゼロとの叫びがあった。時給九百五十円なのに、開店閉店の管理や従業員の勤務シフト作成など、本来は正社員の店長がするようなことまで背負わされている。「辞めたい」と申し出ると、上司から「責任を持ってやれ」と暴言を吐かれたという。

ほかにもある。コンビニのバイトでは、売れ残りのおでんやクリスマスケーキを買わされる。エステ店では休憩時間を取らせない。高給を求めて風俗業界に足を踏み入れる女子学生も少なくない。「ブラックバイトはサービス業全体に広がっている」と懸念する。

過酷な勤務を強いられた揚げ句、メンタルを病んでいく。抑うつ、倦怠(けんたい)感、不眠、不安神経症-。病欠で無収入となった際に健康保険法に基づき補償される傷病手当金のうち、精神疾患の割合は26%に上る。この割合は過去十六年で六倍にも跳ね上がった。「発症したら辞めさせる。若者を部品のように扱っている」

ブラックバイトの広がりは二〇〇八年のリーマン・ショック以降、顕著になった。経済が停滞し、日本型の終身雇用が崩壊した。企業は手厚い福利厚生を切り捨て、人件費を削ってきた。「だけど強い人事権だけは残った」という。

学生がブラックバイトに手を出す背景には、親の貧困がある。「安定した職を求めようとすると、高卒より大卒の方がいい。しかし、親が非正規雇用の家庭も少なくない。仕送りでは足りず、バイトで生活費を稼がざるを得なくなる」と、貧困が連鎖していく現状を指摘する。

ただ、こんな状況に風穴を開けようと立ち上がった若者もいる。県内ではコンビニ勤務の高校生が、タイムカードの勤務時間を実際より短く記録するのは不当だとして、労働組合「ブラックバイトユニオン」とともに経営側と団体交渉し、未払い金を勝ち取った事例もある。

もうすぐ参院選。若者には自分の生活から政治を見つめるよう提言する。保育所不足を訴えた女性のツイッターが世論を巻き込み、政治を動かしたように。「努力が足りないからと自虐的になる若者がいる。そうではない。投票で自分の意思を示してほしい」 (出来田敬司)

 

<希望はどこに?くらしと参院選> (4)若者に広がる年金不信

【東京新聞・暮らし】2016年6月30日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201606/CK2016063002000201.html

銀行預金は利子がほとんど付かなくなり、現物資産の金が注目されている=東京・銀座の「GINZATANAKA」で
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東京都内の情報システム会社に勤める横浜市の男性(34)は、二年前から金の購入を始めた。契約したのは、インターネットを通じて千円から積み立てができる商品。毎月五千円分の地金を買っている。

「現役世代が支える年金制度は、まったく信用していない」。それが始めた理由だ。

共働きの妻(34)と長女(3つ)との三人暮らし。住宅もローンで購入し、現役のうちに完済する見込み。当面、家計に大きな不安があるわけではない。しかし、自分たちの老後を考えると、そうは言っていられない。金のほかにも、ドル建ての終身保険など資産を分散させている。「現物の資産や、円だけでなく他通貨の蓄えがあると安心」

男性が金を購入する先の田中貴金属工業(東京都千代田区)によると、同社の積立商品の会員数は、この十年で三倍となり五十万人以上。マイナス金利の導入で預金離れが加速したこともあり、今年一~三月は大きく伸びた。同社の担当者は「二十代、三十代といった若い世代の人たちに、ネットで気軽に買える点が注目されている」と話す。

六月上旬に名古屋駅前の大名古屋ビルヂングの一室で開かれたセミナーでは、講師の話を熱心に聞く二十~三十代の女性の姿が多くみられた。名古屋銀行(名古屋市)主催の働く女性向けの資産形成セミナーだ。将来の年金制度に対する不信感が高まる中、若い女性にも将来に備える意識が強まっている。同行は三月以降、女性向け金融セミナーを四回開いたが、担当者は「いずれの回も参加者が多く、手応えを感じている」という。

六月の回に参加した、金融関係の会社に勤める女性(29)は「給料も預金も増えていかない。投資信託で増やそうと勉強しています」と話す。まだ始めて間もないというが、将来は株などにも手を広げていくつもりだ。「いつか結婚しても、働き続けて賃金を得て、その一部を投資して将来に備えたい」

愛知県内の人材派遣会社に勤める男性(25)は二年前、生命保険会社の個人年金保険に加入した。数年前、貯蓄もなく、国民年金の月五万円余りが収入の全てで、食費を切り詰めている高齢者の話を聞き、老後の備えの必要性を強く感じたからだ。

昨秋に長女が生まれ、妻は育児休業中。一家の月収は男性が得る約十八万円のみ。そこから妻(25)と合わせ毎月一万四千円の保険料を支払うのは楽ではないが「自分がもらう公的年金は誰が支えてくれるのか。これからの世の中、自分の身は自分で守るしかないですよ」。 (稲田雅文、諏訪慧)

◆「財源の確保、正面から議論を」

会社員が加入する厚生年金の支給開始年齢は、60歳から65歳に段階的に引き上げられている(基礎年金は以前から65歳)。過去には、68歳までの引き上げも議論された。給付水準に関しては2004年に、年金の支給額を実質的に減らす「マクロ経済スライド」を導入。15年に初めて実施され、引き下げられた。

政府は、経済の順調な成長を前提として、今後100年、現役世代の平均手取り収入の50%の給付を維持できるとするが、疑問視する声は根強い。生保各社でつくる生命保険協会(東京都千代田区)によると、個人年金の新規契約件数は20代が特に伸びており、14年度は22万件余り。10年前の1.5倍に伸びている。

早稲田大の植村尚史教授(社会保障政策)は「公的年金は生活保障が本来の目的だが、給付を減らして制度を延命したとしても本来の目的は果たせない。財源をどう確保するか、正面から議論するべきだ」と指摘している。

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