8/2東電 福島原発事故対応費用 上限の9兆円超え確実【東京新聞・特報】

飯舘村の除染費用は毎日3億7500万円、1年で1000億円かかると今中さんが仰っていたから9兆円では済まないだろうと思っていた。

============

東電 福島原発事故対応費用 上限の9兆円超え確実

2016年8月2日【東京新聞・こちら特報部】

東京電力ホールディングスが、政府に「追加支援」を求めている。福島第一原発事故による賠償や除染費用が足りない可能性が高まったからだという。政府が設定した東電支援のための上限は当初五兆円だったが、二〇一四年に九兆円に増え、さらに増えることが確実になった。最終的には一体、いくらになるのか。政府と東電は、国民にきちんと説明する責任がある。 (白名正和、三沢典丈)

取りざたされる「新基金」

 訴訟、電力自由化 「経営環境が激変」

  膨らむ一方の「賠償」+「除染」

   廃炉費用 2兆円どころか「桁違い」

     「税金投入の前に、まず事業者負担」

先月二十八日、全国知事会議は「東日本大震災からの復興を早期に成し遂げるための提言」をまとめた。風評被害対策、財政支援など四十九項目のうち筆頭が原発事故処理だった。

「廃炉など原子力災害のあらゆる課題については、東京電力任せにすることなく、国主導で早期に解決すること」

福島県の内堀雅雄知事は「日本全体に関わる極めて重要な問題」と訴える。

示し合わせたかのように同じ日、東京ホールディングスが政府に追加支援を求める方針を発表した。数土文夫会長は記者会見で、支援要請の理由について「経営環境が激変した」ためと説明した。一三年に賠償額を五兆四千億円と見込んだが、今年三月の時点で六兆円を超えた。各地で訴訟を起こされ、賠償額はまだまだ相えそうだ。除染費用も見込んだ二兆五千億円では足りない。

「追加」の名の通り、東電はこれまでも、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(原賠機構)を通じて政府の支援を受けてきた。原発事故が起きた一一年の時点で、支援の上限は五兆円に設定されたが、一四年に九兆円に拡大された。

今年三月の時点で、東電支緩のための貸与総額は約七兆四千六百億円。実は、まだ、約一兆五千四百億円の余裕がある。なのに、追加支援を求めるのは、九兆円突破は確実と東電が判断したからだろう。

負担しなければならないのは、賠償と除染費用だけではない。総額の見当が付かないのは廃炉費用も同じだ。

「東電は二兆円を用意していたようだが、桁が足りない。これから十兆、二十兆円という規模で必要になってくるだろう」と、九州大の吉岡斉教授(科学技術史)はみる。

先月、2号機の溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の大部分が圧力容器の底に存在することが、ようやく判明したが、1、3号機についてはデブリの状況すら分かっていない。人が近づいたら即死してしまうほどの高い放射線量の中、デブリを取り出せる日が本当に来るのか。

技術の進歩によって、取り出せたとしても、デブリの廃棄場所を確保できるのか。高レベル放射性廃棄物の「ガラス固化体」の最終処分場の候補地すら決まらない。デブリについては、福島県外どころか、福島第一原発の敷地外でさえ搬出するのは困難だろう。

原賠機構は先月十三日、廃炉に向けた戦略プランで、デブリを残したまま福島第一原発を建屋ごとコンクリートで覆う「石棺」に言及した。だが、地元の反発が相次ぎ、二日後、「石棺を検討しているということは全くない」と釈明する事態に追い込まれた。

原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「石棺はデブリを長期間、隔離保管することで放射線量の減衰が期待できる、現実的な手段ではなかったか」と指摘する。「石棺を含めた対応について、機構側は福島県側と冷静に話し合うべきだったと思う。今回、逆に総論をする機会が失われ、政策の選択肢が狭まってしまったのではないか」

政府は東電の追加支援要請に対し、慎重な姿勢を見せた。林幹雄経済産業相は先月二十九日の閣議後の記者会見で「東電自ら行うことが大原則」などと述べた。

その二日後だった。三十一日、廃炉費用を支援するための公的基金を新設することを経産省が検討しているという報道があった。

それによると、原賠機構の上限九兆円の支援とは別に、政府が同機構に東電支援のための基金を設ける。デブりの取り出しなど廃炉の作業状況に応じ、基金から資金を援助する。廃炉費用を政府が一時的に立て替えることになるが、最終的に東電が返済する。

原賠機構の支援上限を一四年に続いて引き上げようとすれば、強い批判が出るだろう。だから、基金の新設なのかもしれないが、国民の税金が投入されることに変わりはない。

だが、基金について、林経産相は三十一日、視察先の福島県南相馬市で、「廃炉は東電が責任を持って行うもの。支援のための制度措置について新たな検討を行っている事実はない」と否定した。

では、「基金新設」は誤報なのか。「単なる誤報ではないだろう」と言うのは立命館大の大島堅一教授(環続経済学)だ。「東電の発表に合わせて、政府が国民の反応を見るために、経産省が情報を流したのではないか」

特に気になるのは、「デブリの取り出しなど廃炉の作業状況に応じ」などの点だ。

大島氏は「廃炉費用は原発を設置した電力事業者が利益などから全額負担すべきものだ。だが、四月の電力の小売り全面白由化で、従来のように利益を上げることは難しくなった。そこで、廃炉資金を継続的に東電に支援する仕組みをひねり出す必要が出てくる」と推測する。

大島氏の試算によると、賠償や除染を含め、東電が負担すべき事故費用総額は十三兆三千億円。原賠機構の支援上限九兆円を上回っている。基金新設は、東電には願ってもないことだが、大島氏は「事故を起こした原子力事業者だけ優遇するのはおかしい。電気料金の自由競争もゆがめてしまう」と批判する。

そもそも、福島の原発事故での資金の使われ方がおかしい。「ゼネコンや原子力関連会社の言いなりに、凍土壁などに巨額の資金が投じられる一方、効果について政府は何の検証も行っていない。政府は第三者委員会などを立ち上げ、廃炉にかかる費用総額を精査し、国民に示すべきだ」

九州電力川内原発に続き、十一日には四国電力伊方原発が再稼働する予定だ。東電も、柏崎刈羽原発の再稼働に向けて動いている。だが、ひとたび原発が過酷事故を起こすと、処理にかかる期間、費用が全く分からない。万一の事故が起きる可能性があるのに、原発の再稼働を進めていいのか。

大阪市立大の除本理史教授(環境経済学)は「廃炉費用の負担で債務超過になるのなら、本来、東電の法的整理を進めるべきだ。費用を国民に負担させるのは本末転倒だ」と指摘し、再稼働の前に、国民が事故のコストに対する意識を高める必要があると訴える。

「福島原発事故のコストが、今後、起きるかもしれない事故に向り、各電力会社へのメッセージとなる。今の制度であれば、原発事故を起こしても、電力会社の経営リスクは発生しない。このうえ、廃炉費用まで負担せずに済めば、事故を抑止しようという動機づけすら働かなくなる。事故のコストを誰がどう負担するのか、曖昧なまま再稼働を進めるべきではない」

((((デスクメモ))))
「原子炉が冷温停止状態に達し、発電所の事故そのものは収束に至った」。二O一一年十二月、当時の野田佳彦首相はそう宣言した。本当にそうならよかったが、あれから約四年八カ月がすぎても、実際には収束できていない。福島県外で避難生活をしている県民は、今も約四万人いる。(文)
2016・8・2

東京電力福島第一原発。(手前から)1号機、2号機、3号機、4号機=昨年9月、福島県大熊町で、本社ヘリ「あさづる」から
(上)記者会見する東京電力ホールデイングスの数土文夫会長、左は広瀬直己社長=7月28日、東京・内幸町で

tky160802_sita(下)原発再稼働に反対する人たち=同22日、東京・永田町で

広告
カテゴリー: ちたりた, 中日東京新聞・特報 タグ: パーマリンク