8/10「原発とテ口」あらためて考える 審査非公開 検証は不能/高浜3・4号機の対処施設 規制委が初了承【東京新聞・特報】

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「原発とテ口」あらためて考える 審査非公開 検証は不能

高浜3・4号機の対処施設 規制委が初了承

2016年8月10日【東京新聞・こちら特報部】

東京電力福島第一原発事故後、原子力規制委員会は原発の新規制基準を設けた。その中にはテロ対策の項目もあるのに、なぜか、実施は猶予されている。そんな中、高浜原発3、4号機のテロ対策施設の設置計画が国内で初めて規制委に了承された。対策は急ぐべきだ。だが、万一を考えるなら、原発を動かすべきではないだろう。あらためて、原発とテロ対策について考えた。 (橋本誠、鈴木伸幸)

「健全性 多分担保できない」

  対策 再稼働後に猶予

    1970~99年 世界でテロ標的167件

 

規制委は今月二日、関西電力が申請した高浜原発3、4号機のテロ対策のための「特定重大事故等対処(特重)施設」の設置計画を了承した。国内の原発で、計画の了承は初めて。特重施設は、航空事故を意図的に衝突させるようなテロ攻撃を受けても、原子炉の炉心冷却を続けて放射性物質の大量放出を防ぐための施設だ。中央制御室の機能が失われた場合の緊急時制御室、予備電源、原子炉注水用ポンプなどを備える。

特重施設は当初、審査が間に合わないこともあって、新基準開始五年後の二O一八年七月まで設置が猶予された。それでも審査が間に合わないため、猶予期間は再稼働の前提となる審査に適合し、設備の工事計画が認可されてから五年以内に延長された。猶予期間中にテロリストが攻撃してくる可能性もあるが、再稼働を優先する形が取られている。

高浜原発では、3号機が二O年八月、4号機が同年十月に特重施設が完成する予定だという。完成までの間に、テロ攻撃を受けたらどうなるのか。九日、関西電力に辱ねると、「確認中で回答できない」と担当者は話した。

現在、国内で唯一稼働中の九州電力川内原発1、2号機も、特重施設は設置されていない。規制委による設置計画の了承自体もまだ得ていないが、1号機は二O年三月、2号機は同年五月に特重施設を完成させる予定でいるという。

では、今、テロ攻撃を受けたらどう対処するのか。九電の広報担当者は「何かあったら、原子炉を止めて燃料を冷やす。冷やせない場合には、放水砲などで水をかけて、放射性物質が飛散しないようにする」と説明した。

原子炉建屋の壁は厚さ九十センチの鉄筋コンクリートで、原子炉格納容器は厚さ四センチの鋼鉄で覆われていると強調した。航空機が建屋に墜落して発生する火災に対しても、十分な耐火性能を備えているという。

また、自衛隊や警察と連携してテロ対策をとっているという。特重施設はさらなる安全対策のために必要なものと位置付けており、設備の具体的な内容については、テロ対策のため明かせないという。

だが、東芝の元原子力プラント設計技術者の後藤政志氏は、航空機が原子炉建屋に意図的に衝突してくれば、建屋だけでなく原子炉格納容器が破損する可能性が高いと指摘する。

「格納容器にまで突っ込んで火災を起こした場合、蒸気発生器や冷却系が一気に壊れる可能性もある。そうなったら、冷却するとか言っている場合ではないだろう。何かの機能を一つ失うだけであれば、特重施設で対処できるかもしれないが、事故の規模や形態によっては意味をなさない」と話す。

現状では、国内の全ての原発が規制委が求める新基準のテロ対策を満たしていないが、満たせば、テロ攻撃に遭っても、放射性物質が外部に拡散することを防ぐことが、本当に可能なのか。

今年六月の記者会見で、規制委の田中俊一委員長は「(特重の審査の結果として)航空機の意図的な衝突があっても、原子炉は安全に止まって冷却継続ができるようになっている、通常の制御室が壊されても遠隔の制御室からコントロールできる、ということを求めている」と話した。

だが、電力会社にそうした対処を求めているものの、「原発は絶対に安全とは申し上げない」「(テロ発生時に原子炉の)安全性を担保できるようにということはやっているが、健全性は多分、担保できない」と付け加えている。

お茶を濁すような表現になるのは、規制委がテロ対策の基準の詳細や審査プロセスを非公開にしていることが影響している。「テロの問題は情報公開すると、余計にテロの危険性が高まる」という考え方に基づく。

だから、「十分なテロ対策を施している」と言われても、外部の第三者には検証のしょうがない。放射性物質が外部に漏れ出す危険性のある圧力容器の破損といった事態を想定しているのかどうか分からない。

また、テロの形態は、航空機を突っ込ませるものだけにとどまらない。米GEの元原発技術者でコンサルタントの佐藤暁氏によれば、一九七0~九九年で、全世界で百六十七件の原発を標的としたテロ事件が報告されている。そのほとんどは武装集団による襲撃型だ。

欧米では、対テロ対策は七0年代から進められている。米国では「各原発に百五十人規模の武装した部隊が二十四時間態勢で警戒し、抜き打ちの戦闘訓練も行われている」(佐藤氏)。こうしたテロ対策の一部をあえて公開し、潜在的なテロリストに対し、堅い守りをアピールしているという。「原発襲撃の成功確率は低い」と思わせるけん制効果を狙うわけだ。

最近はサイバーテロが発生している。原発の制御には外部と接続しない閉鎖系のシステムが使われるため、外部からハッキングで侵入を許すことは考えにくいが、内部協力者をつくればシステムの破壊は可能だ。実際に、イランで攻撃された事例がある。

こうした襲撃型テロやサイバーテロへの対策も必要だが、どこまで対応できるのか、「非公開」の壁によって不明だ。

さらに、万が一他国からミサイルによる攻撃を受けた場合、迎撃できなければ、原子炉建屋は吹っ飛び、放射性物質の拡散は避けられない。

新基準のテロ対策について、佐藤氏は大きく二つの問題があるという。一つは、非公開の内容が多く、妥当な基準か議論をできない。もう一つは、新基準が妥当なものだとしても、猶予期間中の代替措置がないことだ。

「不完全でもテロ対策がないよりましだが、猶予期間を設けて、それを明らかにするのは『テロ対策に不備がある』と自ら宣伝していることになる」と佐藤氏は首をひねる。

「三十年前は確かに原発が経済的だった。だが、大事故もあって、規制が強化され安全対策に膨大な費用が必要になっている。テロの百パーセント防止は不可能だ。脱原発を進める国もある中、不安ながら原発を再稼働させるのは時代錯誤とも思える」

(((デスクメモ))) 福島の原発事故から五年以上たっても、推進派の希望通りに再稼働が進まないのは、脱原発を訴える市民の声が生きているからだ。「安全神話」は崩壊した。事故だろうがテロだろうが、原発が再び爆発すれば、故郷を追われる人がまた出る。誰が、そんなことを求めるというのか。(文) 2016・8・10

関西電力高浜原発3号機(左)と4号機=6月、福井県高浜町で

(上)四国電力伊方原発3号機の重大事故を想定して行われた訓練=7月、愛媛県伊方町で

(下)九州電力川内原発の1号機(左)と2号機=3月、鹿児島県薩摩川内市で

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カテゴリー: 関西電力, 再稼働, 中日東京新聞・特報 パーマリンク