8/13伊方原発の再稼働「企業の論理」色濃く 崩れる「安定供給神話」【高知新聞】

伊方原発の再稼働「企業の論理」色濃く 崩れる「安定供給神話」

2016.08.13 08:05【高知新聞】
https://www.kochinews.co.jp/article/41927/

四国電力は12日、愛媛県伊方町の伊方原発3号機を再稼働させた。これまでの取材の中で愛媛県知事や伊方町長らによる「電力の安定供給のため再稼働はやむを得ない」という説明を何度も耳にした。しかし、2015年春から四国電力の担当となって原発取材を進めるにつれ、次第に違和感が大きくなってきた。東京電力福島第1原発の事故から既に5年以上。「やむを得ない」という考えは「安定供給神話」であり、その神話は電力需給一つとっても、崩れつつあると感じるからだ。

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東京電力福島第1原発の事故後、四国電力管内の電力需要は節電意識の定着や省エネ家電の普及で年々減少している。供給力確保のため繰り延べていた火力発電所の定期点検を2016年2月から通常ペースに戻し、今後10年間の需給見通しでも原発なしで安定的な供給予備力を見込んでいる。それでも四国電力は「トラブルで火力が1基脱落すると、安定供給に支障を及ぼしかねない」(広報担当者)などと説明する。

そうした事態に陥らないよう、全国規模で電力のやりくりを指揮する電力広域的運営推進機関が2015年発足したはずではなかったか。

一方、四国電力は2016年春から首都圏と関西圏の小売り事業に参入。その判断と再稼働について、佐伯勇人社長は「既存の資産を有効活用するのが経営の考え方」「これからは稼ぐ時代。余力が出てくれば、他の地域への電源として活用する」と述べている。安定供給という「公益性」よりも、経営効率の良い原発で利益を求める「企業の論理」が色濃く出た発言だった。

こうした姿勢に対し、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の運転を差し止めた仮処分申請に携わった井戸謙一弁護士の主張は明快だ。

「事故のリスクを否定できない以上、それを受け入れさせる理由があるとすれば公益性しかない。でも、原発ゼロの経験ができた。リスクを受忍する正当性はどこにありますか」

伊方原発も松山地裁、広島地裁、大分地裁の3地裁で運転差し止め訴訟や仮処分の申し立てがある。中央構造線断層帯への熊本地震の影響を懸念する声も根強く、再稼働後も司法判断によって停止する可能性がある。佐伯社長も認める「訴訟リスク」を抱え、安定供給の説得力は揺らいでいる。

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このような状況下で伊方原発3号機は再び動きだした。四国電力は住民の不安や不信の払拭(ふっしょく)に一層努めなければならないはずだ。ただ、この1年余りの取材では、ひたすら目の前の再稼働に全力を注ぐ姿勢が目立った。

例えば、電源構成比率や二酸化炭素排出量の数値目標など中長期的な事業計画や将来像を目に見える形で示し、今後焦点となる2号機の扱いも含めて伊方原発の位置付けを明確にすることが必要ではないか。電力自由化で新電力の参入が進めば、経営環境はさらに変化するからだ。

一方、防災避難計画の実効性向上は、愛媛県や高知県など各県の自治体に課せられたままになった。万が一事故が起きれば、事故収束や損害賠償などは一企業の手に負えない。原発はそういう存在だ。それでもエネルギー政策の中核として原発を維持するなら、本来は国が防災避難計画の実効性を担保する審査制度や、あいまいな「地元同意」の枠組みを変更するなどの実効策に取り組むべきだ。

伊方町の傾斜地に広がるミカン畑を見ると、2015年秋の原子力総合防災訓練に参加していた町民の声を思い出す。「うちのミカンは都会でも人気がある」「古里を離れたくない思いは強いよ」。なし崩し的な原発回帰でこのような日常生活を奪うことがあれば、「やむを得ない」では済まされない。

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