9/16原発事故賠償制度どうなる 無限責任から有限責任!?/ 安全神話崩壊で議論 上限超なら税金で補填/電力会社守り、国民負担強いる/ 除染や廃炉にも税金 原発の高コスト浮き彫り【東京新聞・特報】

東電なんてつぶしてしまえ!誰でもそう思う。

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原発事故賠償制度どうなる

 無限責任から有限責任!?

  安全神話崩壊で議論 上限超なら税金で補填

電力会社守り、国民負担強いる

 除染や廃炉にも税金 原発の高コスト浮き彫り

2016年9月16日【東京新聞・こちら特報部】

東京電力は、福島第一原発事故の賠償について「無限責任」を負っている。だが、今後、原発事故が起きた場合、電力会社の責任は限定されるかもしれない。内閣府の専門部会が、賠償額の上限設定を検討している。「安全神話」が崩壊し、事故発生を前提に議論したら、税金で補填(ほてん)するというおかしな話が浮上してきた。脱原発を実現すれば事故は起きない。必然的に賠償はいらなくなるのだが…。 (沢田千秋、白名正和)

昨年五月、内閣府原子力委員会に原子力損害賠償制度専門部会(部会長・浜田純一東京大名誉教授)が設置された。目的は「今後発生し得る原子力事故に適切に備える」ための賠償制度の見直しだ。構成員は大学教授や弁護士ら十九人。

原子力損害賠償法は、電力会社など原子力事業者が原発事故を起こした時に備え、最大で千二百億円が支払われる政府補償と民間の保険契約を結ぶよう義務付けている。賠償額が千二百億円を超えた分は、過失の有無にかかわらず事業者が負担する「無限責任」となっている。

事業者側は賠償額の上限を設ける「有限責任」への変更を求めており、専門部会で議論してきたが、先月二十三日の中間報告で結論は出なかった。また、政府補償などの千二百億円は「引き上げていく」と明記されたが、具体額はまとまっていない。福島の事故で東電が支払った賠償総額は今月九日現在で、約六兆三千億円。多少の増額では「焼け石に水」でしかない。

専門部会では、無限責任、有限責任を巡り、意見が分かれている。「五兆円程度の責任限度額を設けるべきだ」という意見の一方、「有限責任にすると、安全性向上の投資が減少する」といった反論がある。

大塚直・早稲田大教授は「原子力事業者に故意、過失がある場合、有限責任はおかしいが、故意、過失の完全な判断は最後は裁判所がする。それを待っていては迅速な(賠償)判断ができない」と疑問を呈した。

ジャーナリストで環境カウンセラーの崎田裕子氏は、福島事故の現場を歩いた経験を基に有限責任に理解を示す。「事業者の予見可能性の確保という視点だけでなく、国民にとっても原子力の重大事故の場合、最後に国が支えるという制度設計があるのが安心感につながる。有限責任という新しい方向性も検討してほしい」。国民の負担増については「税金は少ない方がいいが、国民として支えるべき時は支えないと社会は成り立たない。一般財源による負担を考えるべきだ。責任限度額はできるだけ高めるとか、なんらかの意見交換は大事」と述べた。

日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会常任顧問の辰巳菊子氏は「被害者に対して無限の賠償責任を事業者が負うのが基本だというのは間違いない」と断言する。「事業者の損害賠償の実施が困難な時、国が緊急避難的に立て替え払いを行うことの必要性は認めるが、福島事故では、東電から何年かかって返還されるかもよく分からない」などと指摘し、原発事故におりる政府の立ち位置の明確化を求める。

さらに、議論の根本に切り込んだ。「再稼働が始まっているが、原子力の安全性、必要性に疑問を持ち、今度こそだまされないと思っている国民はとても多い。事故が起こらないならば、こんな損害賠償は必要ないと言いたい。(事故が)起こる可能性があるという前提で(賠償)制度を設けているので、国民が理解できるようにしてもらいたい」

事故を起こせば、企業は当然、被害賠償の義務を負う。

ニOO八年八月、東京都板橋区の首都高5号下りで、タンクローリーが横転して炎上した。路面が沈んだり橋桁が溶けたりし、復旧に二カ月以上を要した。今年七月、東京地裁判決は運送会社などに三十二億円余の損害賠償を命じ、運送会社は払いきれずに破産手続きを開始した。

大きな事故を起こした場合、企業が資産を整理して倒産することもあり得るが、原発事故に特例として「有限責任」を認めれば、電力会社は倒産しないで存続できる。

 ドイツと真逆

「何があっても電力会社がつぶれないようにする仕組みだ。事業者が特権的に守られるケースは、ほかに例がない」と、脱原発弁護団全国連絡会共同代表の海渡雄一弁議士は問題視する。また、「有限責任」によって「モラル・ハザード」を招き、電力会社が原発の安全対策を怠ることも危ぶむ。さらに、「ドイツは有限責任から無限責任へと転換し、原発をやめようとしている」と指摘し、「日本は真逆の道を歩んでいる」と批判した。

「国策」の原発で万が一事故が起きた場合、賠償を途中で打ち切るわけにはいかないだろう。残りの賠償の面倒は、政府がみるしかない。つまり、国民の税金を投入することになる。

「国民の反対が多いのに原発を強引に進め、賠償は国民が税金で負担するというのはおかしい」と、東電に賠償や除染などを求める「生業-なりわい-を返せ」訴訟の中島孝原告団長(福島県相馬市)は憤る。

昨年九月、日本世論調査会が九州電力川内原発1号機の再稼働直後にアンケートしたところ、原発再稼働に「反対」は58・2%で、「賛成」の37・3%を上回った。反対理由は「原発の安全対策や事故時の防災対策が不十分」など。

七月の都知事選で行った本紙の有権者調査でも、原発を「時間をかけてゼロに」「すぐゼロに」が計55・6%。「活用する」「減らすがゼロにはしない」の計43・6%を上回った。

「無限とも言えるる原発事故の被害に対する責任が有限でいいはずがない。今も続く福島の被害に向き合えば、とても有限責任とは言い出せないはずだ。とんでもない制度の改悪だ」(中島団長)

そもそも、福島の事故でも、賠償以外の事故処理に相当額の税金が使われている。飛散した放射性物質の中間貯蔵施設の整備や、福島県内の農作物の放射能検査、県民の健康診断など、その総額はまだまだ増える。

政府は先月三十一日、復興推進会議と原子力災害対策本部の合同会合で、福島県内の帰還困難区域の市町村ごとに「復興拠点」を設け、除染をインフラ整備と一体で行う方針を決めた。この整備にも、もちろん税金が使われる。

現在の「無限責任」を負う制度でも、税金が湯水のように使われるのに、今後、福島の事故を上回る過酷事故が起きたら、税金はいくら使われるのか。

「原発の安全神話が崩れ、賠償や除染費用に向き合うために議論を始めた結果、原発のコストが高く一企業では手に負えないことがあらためて浮き彫りになった」。立命館大の大島堅一教授(環境経済学)はそう指摘し、「国民の多数が反対する中で原発を動かすのに、政府も電力会社も国民に寄り掛かり過ぎている」と批判した。

(((デスクメモ)))
使用済み核燃料を捨てる場所がない。廃炉、解体で出るごみを捨てる場所もない。そうした、ごみ処理の費用がいくらか判然としない。原発が抱える問題点を真剣に考えれば、人の手に負えないことが、よく分かる。少なくとも現在の技術力では。分からないふりは、もう許されない。(文) 2016・9・16

福島第一原発の敷地内に建造された汚染水用のタンク=いずれも8月26日

防護服を着用して福島第一原発で働く作業員

水素爆発で崩れた福島第一原発3号機

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