【9/20東京新聞1面・2面・社説】「戦争する国、反対」訴え続ける 安保法成立1年 国会前デモ・安保法成立1年/政府 新任務へ準備加速/市民 廃止訴え「共闘」導く・【社説】安保法成立1年 違憲性は拭い去れない

「戦争する国、反対」訴え続ける 安保法成立1年 国会前デモ

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201609/CK2016092002000116.html
2016年9月20日 朝刊【東京新聞・社会】1面

雨の中、国会前で安保関連法の廃止を訴える人たち=19日午後3時28分、東京・永田町で(中西祥子撮影)
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安全保障関連法が成立して一年となった十九日、国会前で安保法廃止を求めるデモがあり、二万三千人(主催者発表)が集まった。雨の中、市民団体メンバーや野党幹部が次々スピーチし、参加者たちは「戦争する国、絶対反対」などと抗議の声を上げた。

デモは複数の市民団体でつくる「戦争させない・九条壊すな!総がかり行動実行委員会」が主催。

解散した「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)」元メンバーの林田光弘さんは「安倍首相は安保法の説明を続けていくと言ったが、いまだにされていない」と批判。解散メッセージを引用して「(民主主義が)終わったのなら始めましょう」と抗議活動の継続を訴えた。

憲法学者らでつくる「立憲デモクラシーの会」呼び掛け人の西谷修・立教大特任教授(思想史)は「成立から一年の間、反対の原動力になってきたのは、普通の人たちだ」と語りかけた。

民進党の岡田克也前代表は「一年たったが憲法違反なのは変わらない」と安保法を批判。共産党の志位和夫委員長は「野党共闘をさらに発展させて、新しい政治をつくろう」と呼び掛けた。

 

 

安保法成立1年

 政府 新任務へ準備加速

  市民 廃止訴え「共闘」導く

2016年9月20日【東京新聞・2面】

他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を往とした安全保障関連法の成立から、19日で1年となった。この間を振り返ると、政府は米国と軍事的な連携を強めながら、安保法に基づき自衛隊が海外で活動するための準備を加速した。市民団体は廃止に向けて粘り強く活動を続け、野党共闘を後押しする役割も演じた。(安藤美由紀、北條香子)=1面参照

安保法は昨年九月十九日に成立し、今年三月二十九日に施行された。日米両政府は昨年十一月、米軍と自衛隊の運用一体化に向けた「同盟調整メカニズム」の運用を開始した。安倍晋三首相は同月、マニラでの日米首脳会談で、安保法成立を受け「新たな協力の序章にしたい」と強調した。

昨年十月には、武器の輸出・購入、他国との共同開発を一元的に行う防衛装備庁が発足した。

二O一六年度予算の防衛は当初予算で初めて五兆円を突破。一七年度予算の概算要求額も、安保法の新任務に対応できる新型兵器の取得費が盛り込まれ、約五兆一千七百億円と過去最大になった。

防衛省は今月十四日から、安保法の新任務の実動訓練を開始。南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に派遣される交代部隊への「駆け付け警護」などの任務付与が検討されている。十月の日米共同統合演習「キーン・ソード」、十一月の日米共同方面隊指揮所演習「ヤマサクラ」でも新任務を反映させた訓練が検討される。安保法は本格的な運用段階に入りつつある。

これに対して市民団体は、安保法の成立直後から廃止に向けて動きだした。

「戦争させない・九条壊すな!総がかり行動実行委員会」は毎月十九日、国会周辺などで反対の声を上げる活動を継続。昨年十二月には「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」が発足した。

市民連合は今年七月の参院選一人区で、安保法に反対する野党による統一候補擁立を後押し。統一候補は三十二の一人区のうち十一選挙区で勝ち、一定の成果を挙げたと指摘される。市民が関与する野党共闘は同月の東京都知事選でも実現した。

今月十五日に就任した民進党の蓮舫代表は、安保法について「集団的自衛権行使の部分で憲法に抵触する。ほかの野党と協力してきた経緯がある」と、引き続き野党で連携して廃止を目指す考えを示した。

反安保法の動きは司法の場に持ち込まれた。今年四月、憲法が保障する「平和的生存権」が侵害されたなどとして、計約七百人が自衛隊出動の差し止めや賠償を求め、東京地裁などに集団提訴した。

 

【社説】安保法成立1年 違憲性は拭い去れない

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016092002000123.html
2016年9月20日【東京新聞・社説】

安全保障関連法の成立から一年。「違憲立法」の疑いは消えず、既成事実化だけが進む。戦後日本の平和主義とは何か。その原点に立ち返るべきである。

与野党議員が入り乱れる混乱の中、安倍政権が委員会採決を強行し、昨年九月十九日に「成立」したと強弁する安保関連法。今年三月に施行され、参院選後の八月には自衛隊が、同法に基づく新たな任務に関する訓練を始めた。

政権は既成事実を積み重ねようとしているのだろうが、その土台が揺らいでいれば、いつかは崩れてしまう。その土台とは当然、日本国憲法である。

◆他衛認めぬ政府解釈

七月の参院選では、安保関連法の廃止と立憲主義の回復を訴えた民進、共産両党など野党側を、自民、公明両党の与党側が圧倒したが、そのことをもって、安保関連法の合憲性が認められたと考えるのは早計だろう。

同法には、「数の力」を理由として見過ごすわけにはいかない違憲性があるからだ。

安保関連法には、武力で他国を守ったり、他国同士の戦争に参加する「集団的自衛権の行使」に該当する部分が盛り込まれている。

安倍内閣が二〇一四年七月一日の閣議決定に基づいて自ら認めたものだが、歴代内閣が長年にわたって憲法違反との立場を堅持してきた「集団的自衛権の行使」を、なぜ一内閣の判断で合憲とすることができるのか。

憲法の法的安定性を損ない、戦後日本が貫いてきた安保政策の根幹をゆがめる、との批判は免れまい。成立から一年がたっても、多くの憲法学者ら専門家が、安保関連法を「憲法違反」と指摘し続けるのは当然である。

現行憲法がなぜ集団的自衛権の行使を認めているとは言えないのか、あらためて検証してみたい。

◆血肉と化す専守防衛

戦後制定された日本国憲法は九条で、戦争や武力の行使、武力による威嚇について、国際紛争を解決する手段としては永久に放棄することを定めている。

これは、日本国民だけで三百十万人の犠牲を出し、交戦国にとどまらず、近隣諸国にも多大な犠牲を強いた先の大戦に対する痛切な反省に基づく、国際的な宣言と言っていいだろう。

その後、日米安全保障条約で米軍の日本駐留を認め、実力組織である自衛隊を持つには至ったが、自衛権の行使は、日本防衛のための必要最小限の範囲にとどめる「専守防衛」を貫いてきた。

自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力で阻止する集団的自衛権については、主権国家として有してはいるが、その行使は専守防衛の範囲を超え、許されない、というのが歴代内閣の立場である。

日本に対する武力攻撃は実力で排除しても、日本が攻撃されていなければ、海外で武力を行使することはない。日本国民の血肉と化した専守防衛の平和主義は、戦後日本の「国のかたち」でもある。

しかし、安倍内閣は日本が直接攻撃されていなくても「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」には集団的自衛権の行使が可能だと、憲法を読み替えてしまった。

その根拠とするのが、内閣法制局が一九七二年十月十四日に参院決算委員会に提出した資料「集団的自衛権と憲法との関係」だ。

安倍内閣は、自衛権行使の要件として挙げている「外国の武力攻撃」の対象から「わが国」が抜けていることに着目。攻撃対象が他国であっても、自衛権を行使できる場合があると解釈し、「法理としてはまさに(七二年)当時から含まれている」(横畠裕介内閣法制局長官)と強弁している。

しかし、それはあまりにも乱暴で、粗雑な議論である。当時、この見解作成に関わった人は、集団的自衛権を想定したものではないことを証言している。

国会での長年にわたる議論を経て確立した政府の憲法解釈には重みがあり、一内閣による恣意(しい)的な解釈が認められないのは当然だ。それを許せば、国民が憲法を通じて権力を律する立憲主義は根底から覆る。安倍内閣の手法は、歴史の検証には到底、耐えられない。

◆憲法の危機直視せよ

日本の安保政策を、専守防衛という本来の在り方に戻すには、集団的自衛権の行使を認めた閣議決定を撤回し、安保関連法を全面的に見直すしかあるまい。

安倍政権は、自民党が悲願としてきた憲法改正に向けて、衆参両院に置かれた憲法審査会での議論を加速させたい意向のようだが、政府の恣意的な憲法解釈を正すことが先決だ。与野党ともに「憲法の危機」を直視すべきである。

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