9/27もんじゅ廃炉なら…高速炉撤退考える時/実用化ヘ見通し立たず/維持費 年200億円 基礎研究なら1桁減/仏と協力 活路開ける?/ASTRID計画 主導企業は経営難 計画遅延/「開発継続の是非議論が先決」【東京新聞・特報】

もんじゅだけじゃなくて核燃サイクル全体のことを考えなくては。。
団藤保晴氏「もんじゅ廃炉より深刻な再処理工場の迷走」も一読されたし。

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もんじゅ廃炉なら…高速炉撤退考える時

2016年9月27日【東京新聞・こちら特報部】

実用化ヘ見通し立たず

 維持費 年200億円 基礎研究なら1桁減

仏と協力 活路開ける?

 ASTRID計画 主導企業は経営難 計画遅延

  「開発継続の是非議論が先決」

政府は高速増殖原型炉「もんじゅ」を廃炉にする方向性を固める一方、新たに官民の「高速炉開発会議」を設置し、核燃料サイクル政策を維持しようとしている。フランスとの共同開発などに活路を見いだそうとするが、日本側の都合だけでうまく事が運ぶのか。もんじゅの頓挫が明らかになっているのに、勝算のないまま研究開発を続けていけば、今後も無駄に国費が失われていく恐れがある。(沢田千秋、池田悌一)

「電力会社が支援できないと表明した時点で、もんじゅの継続は難しいと思っていた。高速増殖炉の研究開発を見直すなら、当然、日本の核燃料サイクルの見直しもすべきだ」

元内閣府原子力委員会委員長代理で、長崎大核兵器廃絶研究センター長(原子力工学)の鈴木達治郎氏はそう話す。

原子力規制委員会は昨年十一月、もんじゅを運営する日本原子力研究開発機構に「安全に運転する資質がない」と「最後通告」を突き付け、代わりの運営主体を探すように求めた。規制委は、名称変更にすぎない組織改編も認めないとクギを刺し、電気事業連合会も「電力会社は引き受けない」と突き放した。この時点で、もんじゅの廃炉は避けられない運命となっていた。

政府は今後、フランスとの高速増殖炉の共同開発を模索する一方、使用済み核燃料を再処理し、加工したMOX(プルトニウムとウランを混ぜた混合酸化物)燃料を一般的な原発で使うプルサーマル発電を続けようとしている。

このプルサーマル発電に、鈴木氏は疑問を呈する。「MOX燃料は一回使用すると、プルトニウムの質が悪くなり、二回目はほとんど使えなくなる。プルサーマルだけで核燃料サイクルを確立するというのは理論的に破綻している」

MOX燃料の廃棄処分にこそ、目を向けるべきだという。「高速増殖炉の実用化が見えない中、使用済みMOX燃料はもう再利用できない。高速増殖炉を切り離してプルサーマルでサイクルを回すというのはあり得ない。原子力の専門家も電力業界も経産省も分かっているのに、国民をごまかしている。MOX燃料をどう捨てるか、いつかは必ず扱わなければならない」

ただし、高速増殖炉から一切、手を引くべきだという意見には、鈴木氏はくみしない。「高速増殖炉には優秀な人材が多く携わっている。維持するに値する技術やノウハウを、世界の研究で活用できる」と説く。

「もはや一国ではやっていけないが、次世代炉として有力な選択肢の一つ。この先、百年、二百年単位で原子力を扱うなら、資源効率という持続可能性を追求するため増殖炉は必要になるかもしれない。日本がいつまで原子力をやるか分からないが、新しいアイデアにつながる研究開発手続けることは、人材確保にもつながる」

また、世界では、増殖炉とは別に、プルトニウム処分用の高速炉の開発も進んでいるという。「核燃料の処分、廃棄のための新しい研究分野はいくらでもある。世界を見ても、もはや高速増殖炉という目標は優先順位としては低い。MOX燃料の地下への直接廃棄を検討しながら、使用済み核燃料処理の新しい技術開発について、基礎基盤研究の国際協力を進める道は残されている」

そうした研究は、もんじゅの年間維待貨二百億円より一桁少ない予算で十分可能だという。「直接廃棄と研究開発の両輪を並行すればよいのではないか」

高速増殖炉は冷却材に液体ナトリウムを使い、中性子を減速させずに高速で利用し、MOX燃料を核分裂させる。消費する燃料よりも多く核燃料を作り出す次世代原子炉として期待されてきた。

その実用化には、高度な知見、技術が必要だ。そのため、まず、発電設備のない「実験炉」で基礎的な研究を行う。次いで、発電できる「原型炉」を稼働させる。経済性を検証する「実証炉」を安定的に運転させることができるようになれば、一般的な発電所と同様に電気を供給する「商用炉」の運転が可能になる。

日本の研究開発は一九六0年代に本格化した。原子力機構が七四年に実験炉「常陽」(茨城県)を完成させ、計七万時間の運転を実現した。第一段階はクリアしたといえるが、二OO七年に原子炉内でトラブルを起こし、現在は停止中。

続いたもんじゅは九一年に試験運転を始めたが、九五年にナトリウム漏れの火災事故を起こし、開発が滞った。一兆円以上の国費をかけたが成果はなく、第二段階の「原型炉」でつまずいたというわけだ。

年内には、もんじゅの廃炉が決まる方向だが、世耕弘成経済産業相は「高速炉開発の方針は堅持する」と明言した。官民の「高速炉開発会議」を新設して、今後も高速増殖炉開発を続けるという。見据えるのが、高速増殖実証炉「ASTRID(アストリッド)」計画のあるフランスとの共同研究だ。

アストリッドは、フランス政府と原子力大手アレバが、原子力施設が集中するマルクール地区で建設を進める。二O一九年をめどに基本設計を終え、三O年ごろに運転開始予定という。

実は既に、一四年八月、原子力機構がアストリッド計画で技術協力手することで合意している。その三カ月前、安倍晋三首相がフランスを訪問し、共同研究の推進を約束していた。

アストリッドの開発はどこまで進んだのか。原子力機構報道課の担当者は「職員をフランスに派遣するなどして、昨年までに概念設計を終えた。今年から基本設計に移り、予定通り一九年までに設計を完成させる方向だ」と話す。これまでに技術協力で使われた総額は、「手元の資料では分からない」という。

この先の技術協力は不透明だ。フランス側が求めているのは、もんじゅによる燃焼テスト。世耕民は「常陽も再稼働していく」と発言しているが、原型炉でなく実験炉のデータで、フランス側は納得するのか。原子力機構の担当者は「フランス側がどのような条件でのテストを想定しているかにもよるが、常陽で対応できるものは協力していく」と話す。

だが、規制委が「資質」を問題視した原子力機構が技術協力を続けてよいのか。また、高速増殖炉開発の第二段階を越えられなかった日本が、第三段階に進む必要があるのか。

原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「高速増殖炉は研究を重ねても、実用レベルに達する見通しが全く立たない。もんじゅがダメだからアストリッドに軸足を移すと安易に考えるのではなく、開発継続の是非をきちんと議論することが先ではないか」と指摘する。
「アレバは赤字続きで経営危機に陥っており、アストリッド計画は当初より五年遅れている。共同研究で、日本は資金だけ引っ張り出されることになりかねない」と警告し、政策転換を求める。「高速増殖炉は原発と比べ、はるかにコントロールしにくい。福島の原発事故後、受け入れる自治体があるとは考えにくい。撤退が合理的だ」

(写真)
1995年12月、もんじゅで起きたナトリウム漏れ事故現場=福井県敦賀市で

フランス政府が廃炉、解体を正式に決定した高速増殖実証炉「スーパーフェニックス」=AP・共同

2011年9月、フランス南部マルクール地区で、核施設を警備する憲兵隊員=共同
(((デスクメモ)))
フランス国境近くの原発の運転停止を、隣国のスイスやルクセンブルクが求めている。高速増殖実証炉「スーパーフェニックス」はナトリウム漏れ事故を起こした。そして、民間終処分場が決まらない。フランスも似た問題を抱えている。日本が寄り掛かるだけなら、事態は改善しない。(文)
2016・9・27

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