【10/5東京新聞・特報】「罵詈雑言」市場にどう対抗するべきか

いつだったか、BLOGOSでこの長谷川の記事を読んだ時、気持ちが悪くなった覚えがある。
「こいつ、ネトウヨか!」でチラ読みしただけだったが、たしか、一度BLOGOSに上がったけれどあまりにもひどいから抗議して掲載おろしたんじゃなかっただろうか。
http://blog.livedoor.jp/hasegawa_yutaka/archives/48479701.html

ダンディ・ハリマオ氏の【カレイドスコープ】も面白い。↓

他人の命の値決めをした「人工透析・殺せ!大炎上」の惨劇

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「罵詈雑言」市場にどう対抗するべきか

2016年10月5日【東京新聞・こちら特報部】

広がる 罵詈雑言市場

 炎上商法 断ち切れ

過激であればあるほどウケル!?

中間層崩壊 不満の受け皿

トランプ氏・ドゥテルテ氏…世界でも

メディアは静観を・人間関係を密に

 

ブログで人工透析患者を中傷する記事を書いたフリーアナウンサーの長谷川豊氏が、テレビ大阪の報道番組から降ろされた。長谷川氏に限らず、社会的弱者を攻撃することで、注目を集めようとする例は後を絶たない。背景には暴言を求める需要があり、それが供給側と併せて「市場」と化している。こうした現象は日本に限らないが、暴言が社会に及ぼす傷は深い。この「市場」は解体できるのか。 (沢田千秋、三沢典丈)

 

 

人工透析患者についての記事で批判を受け、長谷川豊氏が謝罪文を掲載した公式ブログ

(右)1日、米ペンシルベニア州で演説する大統領選共和党候補トランプ氏(AP・共同)
(左)生活保護受給者への圧力も増している。大分県別府市は受給者がパチンコ店を使ってないか調べていた=今年6月、同市で

 

ブログの題名は「自業自得の人工透析患者なんて、全員実質負担にさせよ!無理だと波くならそのまま殺せよ「のシステムは日本を滅ぼすだけだ」。その内容は、まず「透析患者には一人年間500万円かかります」と指摘。「アリとキリギリス」の物認に沿って、一部の透析患者をキリギリスに例え「寝そべってグウタラしていたバカキリギリスたちが、(中路)アりさんの食糧庫から(中略)我が物顔で、食料を取りまくっていっている」とし、「キリギリスは餓死しなければいけない」と断言した。

このように透析患者には死を迫る一方、長谷川氏は二月、子どもを保育園に入れられなかった母親の「日本死ね!」という書き込みには「母親が『死ね』などという言葉を使うのは論外」などと書いていた。さらに今回はブログの一部が、他人の文章のコピーだったことが判明。当然ながら、全国腎臓病協議会からは厳しい抗議を受げた。

レギュラー番組の降板と引き換えに「知名度」を上げた長谷川氏だが、障害者や生活保護受給者、高齢者らをやり玉に挙げ、人気を得ようとする著名人はこれまでも少なくなかった。

真っ先に思い浮かぶのは元東京都知事の石原慎太郎氏。石原氏は知車当時の一九九九年、重度障害者施設を訪れ「ああいう人ってのは人格あるのかね」と話して物議を醸した。「三国人」発言などもあった。

橋下徹氏もだ。大阪府知事時代の二00八年十月、私立高校の助成金削減をやめるよう訴える高校生を「今の白本は自己責任が原則」「(嫌なら)日本から出るか、国を変えるしかない」と突き放した。

貧困問題では、片山さつき参院議員のツイッターでの発信も議論を呼んだ。

こうした発言が繰り返されるのは、一方で社会の中に聞きたいという需要もあるからだろう。いわば「罵詈雑言市場」ともいうべき空間が存在しているといえる。それが生まれた原因について、聖学院大の藤田孝典客員准教授(社会福祉学)は「(新自由主義による)中間層の崩壊のひと言に尽きる」と話す。

「この二十年間、労働者の給与所得は上がらず、努力しているのに稼げない、働いても報われないという不満がある。重病患者、生活保護、障害者に使うなら自分に使ってくれという思いでいる人が多い」

税金の使途のみならず、自己を中流と確認したい欲求も影響しているという。「中間層が崩壊し、客観的にはすでに下層に含まれるが、中の下や中の中にいたいと思う人たちが、社会で一番大きなパイを占めている。下層にいることを認められず、より下か同じぐらいの層の人への批判によって、自分の立ち位置を確認しようとする心理が、罵詈雑言市場を支えている」

暴言で注目を集めようという手法は、日本に限った話ではない。格差を広げる新自由主義の風が世界中で吹き荒れている以上、当然といえば当然だ。典型例は米大統領選の共和党候補、ドナルド・トランプ氏だ。

トランプ氏のターゲットは低所得の白人層。従来は学歴の有無にかかわらず、特権的な地位にあったが、黒人やヒスパニック系など少数派の進出により、自分たちの地位が脅かされると感じるようになった。

それを意識して、トランプ氏はこの層に向け「イスラム教徒の米国入国の全面禁止」「国境沿いに『万里の長城』を築き、(建設費は)メキシコに払わせる」といった排外主義丸出しの発言で支持を集めた。

フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領も同じタイプだ。五月の大統領選で「国民を不幸にする人間を皆殺しにする。(その遺体で)マニラ湾の魚は肥える」といったアジテーションが、治安悪化を不安視する中間・貧困層に受けた。

北海道大の吉田徹教授(政治学)は「どちらも知識人ら既成の権威層を侮辱することで、彼らの犠牲になっていると信じる低所得層の支持を集めた。発言は既存メディアから批判されたが、そのことがメディアの権力性を浮き立たせ、支持を固めた」と説く。

問題はこうした暴言が人気集めの手法を超え、人びとの思考や行動に影響してくることだ。それはときに「ミイラ取りがミイラになる」という状況を生む。

今回の米大統領選は中傷合戦の様相を見せ、有権者から「史上最低の戦い」とあきれられた。日本でも昨年、へイトスピーチ(憎悪表現)に反対してきた新潟日報の支社報道部長(当時)が、反へイト団体の活動を批判した弁護士に対し、匿名でへイト団体並みの差別表現を使い、執拗に攻撃。事実関係が明らかにされ、事実上、更迭された。

こうした暴言の感染が社会に蔓延すれば、誰もが攻撃的になり、社会が冷静さを失いかねない。「罵詈雑言市場」の根をどう断ち切ったらよいのだろうか。

容易な方法は見つかっていない。情報を主体的に判断できるメディア・リテラシーを鍛えるべきだという指摘がある。正論だろうが、即効性には乏しい。

吉田教授は新聞などの既存メディアに、一定の役割を期待する。「世論調査などを読む限り、国民の多数は罵詈雑言にそう関心はない。既存メディアは確実な事実を基にした報道で、ネット上での暴言に対応するべきだ。ネット上で『炎上(否定的なコメントが殺到すること)』が起きても無視したり、沈静化してから取り上げるなど、無害化する努力を意識すべきだ」

コラムニストの小田嶋隆氏は、暴言がネット上で生まれがちな点について「閲覧回数を増やすことが、ブログ運営者の広告料収入に結び付く以上、内容は二の次になる。長谷川氏のように『悪目立ち』を目指す人は、これからも後を絶たないだろう」と懸念する。

閲覧数稼ぎを狙い、最近のネット上の記事は奇をてらった見出しを付ける傾向が強いという。「『まとめサイト』などはネット上の情報を引用しているだけ。見出しにつられて記事を見ると、ただの暴言だけということも。炎上商法を許さないためにも、安易に記事を閲覧しない勇気も持つべきだ」と注意を促す。

前出の藤田氏は、現実の人間関係を密にすることが大切だと強調する。

「家族形態が縮小し、おじいちゃんやおばあちゃんの声を身近に聞く機会が減った。さらに創造力が欠如して、病気や障害がある人の立場で考えられない人が増えている。現実の世界でいろいろな境遇の人と出会うことが重要だ」

(((デスクメモ)))
伝統芸能や宗教で「形から入れ」という言葉を聞くことがある。理屈で考えず、繰り返すうちに身に付き、分かるという意味だ。それは負のことでも同じだろう。善かれあしかれ、人は環境に適応する。電車で見かけるスマホを読む人たち。日常の光景だが、暴言の影響が危ぶまれる。(牧) 2016・10・5

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