10/18法廷通訳 問題だらけ ジャカルタ事件公判 内容鑑定へ【東京新聞・特報】

同志社の浅野謙一教授は元共同通信ジャカルタ支局長だったんだわ!

「ジャカルタ事件」裁判、通訳鑑定へ…誤訳か
【讀賣新聞】2016/10/18
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法廷通訳 問題だらけ ジャカルタ事件公判 内容鑑定へ

2016年10月18日【東京新聞・こちら特報部】

誤訳を連発■選んだ裁判所が「ダメ出し」

1986年にインドネシアの日米両大使館に迫撃弾が発射されたジャカルタ事件の裁判員裁判で、インドネシア人の証人尋問を担当した日本人の法廷通訳人の通訳に疑義があるとして、東京地裁はその内容を鑑定する手続きを取った。裁判所が選任した通訳人の適性を自ら問題視する異例の措置だ。国際化が進む中、日本語の分からない外国人が日本の裁判にきちんと関与するために通訳人の存在は欠かせない。しかし、資格や資質などを明記した法律はなく、裁判所の裁量に委ねられているのが現状だ。 (池田悌一、三沢典丈)

ジャカルタ事件で殺人未遂などの罪に関われているのは、日本赤軍メンバー城崎勉被告(六八)だ。八六年五月、何者かと共謀し、ジャカルタのホテル客室から金属製の砲弾型爆発物二個を日本大使館に向けて発射したなどとして起訴された。

城崎被告は先月二十一日の初公判で「まったくのでっち上げ」と無罪を主張した。来月一日の結審まで二十一回の公判期日が指定されており、予定される証人数も二十三人と膨大だ。

「こちら特報部」は十七日の公判を傍聴した。過激派の公安事件が裁判員裁判で審理されるのは初めてとあって、法廷内外で厳戒態勢が敷かれていた。警備員や東京地裁職員が十数人態勢で警戒に当たり、金属探知機や素手でのボディーチェックに加え、小銭入れの中まで調べられた。

この日は、事件当時インドネシア警察の鑑識課員だった男性の証人尋問などがあった。検察側や弁護側が質問するたびに、日本人男性の法廷通訳人が流ちょうなインドネシア語で証人に問い掛ける。証人がインドネシア語で答えると、すぐさま日本語に訳した。

東京地裁が城崎被告の公判で選任したインドネシア語の通訳人はもう一人いる。先月二十九、三十両日の通訳を担当した日本人男性だ。初公判から傍聴を続けている元共同通信ジャカルタ支局長でジャーナリストの浅野健一氏は「誤訳だらけで、あまりにもお粗末だった」とあきれる。

両日に出廷したインドネシア人の証人は、城崎被告が宿泊したとされるホテルのフロント係と客室係、地元警察の別の鑑識課員の三人だった。浅野氏によると、通訳人は冷蔵庫やテレビ、紙など基本的な単語を理解していない様子だった。「八三年」との証言を「八五年」、「一千ルピア」を「百ルピア」と誤って訳すなどしていたという。

この裁判にかかわる法曹関係者によると、地裁、検察側、弁護側は三者協議で、この通釈人の資質を疑問視。辻川靖夫裁判長は今月十三日、誤訳や訳し漏れの疑いがあるとして、通訳内容を鑑定する手続きを取った。鑑定人に選ばれた別の通訳人が今後鑑定書を提出し、二十五日の公判で審理する。

浅野氏は今回の異例の鑑定について「重大な公安事件なので、後々問題になったら因るという役人根性が働いたのだろう」と推測した上で、「選任責任は裁判所にある」と強調する。

「うその証言をすれば偽証罪に問われるように、法廷での言葉は裁判の板幹にかかわる。外国人の証人の発言も客観的な証拠として残すべきなのに、裁判所は、一定のレベルに達していない通訳人を選んだ。なぜこのような選任になったのか、検証すべきだ」

法律に「質」の規定なし■全国で疑問例

  「量刑 大きな影響」

    「ミス 氷山の一角」

     「資格制度 導入を」

ジャカルタ事件の裁判では鉦人の発言が焦点になっているが、法廷通訳人の資質が疑われるのは、外国人が被告のケースが多い。例えば、一九八九年に松山市内でタイ人女性が殺害された事件だ。

九六年二月、三人の同居人のうち一人のタイ人女性が逮捕された。検察側の調書では、犯行の際に被告が被害者を殴った時、「生きていると思った」と殺意を認める内容だったが、公判で被告は「そんなことは言ってない。死んでいると思った」などと殺意を否定。弁護側は、タイ語による調書の続み聞かせがなかったとして信用性を争った。

松山地裁はタイの滞在経験が二年の日本人主婦を通訳人に選任。裁判官がタイ語で書かれた質問を被告に渡し、被告が書いた答えを通訳人が辞書を引きながら訳す形で公判は進んだ。市民団体は「等しく裁判を受ける権利が侵害されている」と避難したが、松山地裁は殺意を認定し、懲役八年の実刑判決を言い渡した。被告は「一審の通訳は不十分」と控訴したが、高松高裁も訴えを退けた。

問題は少数言語にとどまらない。二O一O年、南アフリカ生まれでドイツ国籍の女性が知人の依頼で覚醒剤を輸入しようとしたとして、覚醒剤取締法違反の罪に関われた裁判員裁判には英語の通訳人が付いた。被告は無罪を主張したが、公判で「結果として覚醒剤を日本に持ち込んだことをどう思うか」と質問されると、通訳人は被告の鉦言を「深く反省している」と訳し、大阪地裁は実刑判決を言い渡した。

ところが地裁判決後、弁護側が独自に鑑定したところ、この証言は被告の反省ではなく、「心が打ち砕かれた」の意味と指摘された。弁護側は「通訳ミスが裁判員の判断に影響を与えた」と控訴したものの、大阪高裁は「裁判所が選任した通訳人に問題はない」と請求を楽却した。

鑑定した水野真木子・金城学院大教授(法言語学)は「通訳は六割が訳し漏れや不適切な訳などのミスだった」と振り返る。「適切な通訳ができないと分かったら、通訳人が申し出るべきだが、そんな例は聞いたことがない。こうしたミスは氷山の一角で、全国で起きているのではないか」

法廷通訳の根拠は刑事訴訟法一七五条だ。公判で日本語が分からない被告や鉦人などに陳述させる場合に「通訳人に通訳をさせなければならない」と定められている。だが、質の確保や、資格、身分保障、公判での誤訳防止策などを規定した法律は一切ない。

通訳人は地裁が面接などを実施した上で全国共通の名簿に掲載し、必要に応じて各裁判所が選任する。報酬は時給六千~一万円程度。一五年四月現在、名簿には全国で六十一言語、三千九百九人が登録されているが、数年前は四千人台だったのと比べると、近年はやや減少傾向にある。一四年に地裁、簡裁で被告となった五万八千人余りのうち、法廷通訳が付いた被告は二千三百八十三人と、決して少なくない。

日本弁護士連合会は一三年、「法廷通訳についての立法提案に関する意見書」を最高裁長官などに提出し、資格制度の創設などを促した。作成に当たった水野英樹弁護士は「多くの先進国では資格制度を採用している。日本でも制度化するべきだ」と力を込める。

ジャカルタ事件の公判は、法廷通訳人のあり方を問い直す契機となるか。

広島女学院大の元学長で、英語の法廷通釈を長年務めた長尾ひろみ氏は「法廷通訳は被告の人生を左右しかねない。司法関係者は真剣にこの問題に取り組むべきだ」と説く。「通訳人は検察側、弁護側の意図を即座に理解し、訳し分ける高度な能力が求められる。検察官が外国人の被告に対し、犯行について『取ったのか』と尋ねた時、『rob』と訳せば強盗、『steal』なら窃盗の意味になり、刑の重さに大きな差が出る。どちらか分からないのなら『take』と訳さなければならない」

前出の水野教授は「裁判員裁判では、通訳人の訳をそのまま被告の言葉と受け取る可能性が高く、質の向上は今後、ますます重要になる。公判中に鑑定をした東京地裁の判断は前例を聞いたことがなく、画期的だ。ぜひ他の裁判官も採用してほしい」と期待した。

(((デスクメモ)))
浅野健一氏は、東京地裁の広報担当者に通訳人や検察官の氏名などを聞いたが、拒否されたという。浅野氏は、容疑者や被害者ら犯罪関係者の匿名報道主義の提唱者として知られるが、公人は「顕名」報道主義である。「あらゆる場面で公人の名前が表に出なくなっている」と危倶する。(圭)   2016・10・18

インドネシアの日米両大使館に迫撃弾が発射されたジャカルタ事件で、ジャカルタのホテル客室を捜索するインドネシアの公安当局者=1986年5月15日(AP・共同)

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法廷通訳向けガイド用DVDの画面

通訳人が付いた法廷で使用された言語
(2014年 最高裁まとめ)

中国語 34.8%
ベトナム語 11.5%
ポルトガル語 9.4
フィリピノ(タガログ語) 9.1
英語 7.0
韓国・朝鮮語 6.6
スペイン語 6.4
タイ語 4.3
ペルシャ語 1.8
シンハラ語 1.1
その他 8.0

総数2383人

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