【10/20東京新聞】原発処理に総額30兆円 既に国民負担14兆円 本紙調べ(第一面)/福島第一だけで12兆円以上 原発処理30兆円を検証・吉岡斉・九州大大学院教授に聞く 原発は自立できない技術【経済】

原発処理に総額30兆円 既に国民負担14兆円 本紙調べ

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016102090070405.html
【東京新聞・経済・第1面】 2016年10月20日 07時04分

原発政策を進めるには原発建設費、地元補助金を除き、関連処理費用として東京電力福島第一原発の事故処理、廃炉、最終処分場建設、核燃サイクルに最低でも約三十兆円かかることが本紙の調べで分かった。十九日には、経済産業省が有識者会合の作業部会を開き、規制変更によって廃炉が決まった原発の廃炉費用を電気料金に上乗せする方針を固めた。高速増殖炉もんじゅの行き詰まりなど原発政策の矛盾が拡大する中、政府が国民負担を増やそうとする論議が本格化する。すでに国民は電気料金や税金で十四兆円を負担しており、今後、さらに十六兆円以上の負担を迫られる可能性がある。

新潟県や鹿児島県知事選で原発慎重派の候補が当選するなど原発への厳しい民意が強まる中で、政府が国民負担を増やしながら原発を推進するかが問われそうだ。

福島第一原発の処理に必要なお金は、二〇一三年時点の見積もりを超過。二・五兆円を見込んでいた除染費が来年度予算の概算要求では三・三兆円に、被災者への賠償金がすでに六・三兆円にのぼっている。廃炉費用の見込み額も二兆円となっており、総額で十二兆円以上かかりそう。東電は自力で払うのは困難とみて政府に支援を求めた。

経産省が財界人らとつくった「東京電力改革・1F(福島第一原発)問題委員会」で検討しているが、東電の経営努力で賄えない分は、電気代などを通じ国民に負担を求める方針だ。

東電を除く原発の廃炉費用問題では、福島第一原発の事故後、原発の規制基準が変わったため関西電力美浜原発1号機など六基が廃炉を決定。予定より早い廃炉決定などで計三百二十八億円の積み立て不足(一三年三月末時点)が生じている。経産省は原発による電力を販売していない新電力の契約者も含めすべての利用者の電気料金に上乗せし、回収する意向だ。他の原発も合わせると合計二・九兆円(福島第一などを除く)の廃炉費用が必要だ。

また、使用済み核燃料をリサイクルする計画の柱だった高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉方針に伴い、経産省は代わりの高速炉を開発する。政府はすでに核燃サイクルに十一兆円(最終処分場を除く)を費やし、電気代や税金で国民が負担している。もんじゅの後継が決まれば、さらに国民負担は膨らみそうだ。

核のごみの最終処分場は場所が決まっていないが、政府試算では最低三・七兆円かかる。このうち積み立て済みは国民が支払った電気代をもとにした一兆円だけ。政府は年末にかけ候補地選定作業を急ぐ予定で具体化すればさらに国民負担が増える可能性がある。

政府は福島第一原発の処理問題やもんじゅの後継問題でも、年末までに方針を決める意向だ。

(東京新聞)

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福島第一だけで12兆円以上 原発処理30兆円を検証

【東京新聞・経済】 2016年10月20日

東日本大震災から五年半。ここに来て原発政策の矛盾が噴出している。高速増殖炉もんじゅが行き詰まる一方で、福島第一原発など廃炉費用は膨張しそう。新潟や鹿児島知事選で原発に慎重な民意が強まっていることが鮮明になったにもかかわらず、政府は国民負担を増やし原発を推進するのか。行き詰まりの現状をときほぐした。=1面参照

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原発は「国策民営」として国が税金投入し、電力各社間の競争制限も認めて、手厚く保護してきた。だが、この形があだとなり矛盾が拡大すればするほど、税金や電気代上昇で国民負担が膨らむ構造だ。

うまくいっていないのはもんじゅだりではない。

政府は九州電力・川内原発など原発再稼働を進めるが、使用済み核燃料は最終処分もリサイクルもできず、各原発にたまり続ける。

廃炉費用も膨らむ公算。特に福島第一原発で事故を起こした東京電力は、普通の企業なら破綻するはずだが、政府は東電を助け続け、電気料金への上乗せなどで国民負担が増える可能性が高まっている。原発事故による電力行政批判を受け、四月から家庭も電力会社を選べる電力自由化が始まった。だが、原発エネルギーを使いたくない人まで原発費用負担を迫られ、自由化が骨抜きになるおそれが強まっている。「核のごみ」の最終処分場がない究極の矛盾も拡大するばかりだ。

これらをまかなう費用を足し合わせると、原発建設費や地元補助金とは別に最低でも約三十兆円かかる計算。国民はすでに十四兆円を税金や電気料金で払っており、今後さらに十六兆円の負担がのしかかる可能性がある。核燃サイクル継続などが決まればさらに負担は膨らむ。

「いつかリサイクルも最終処分も可能になり、原子力政策がスムーズに回る」という政府の言い分を信じて税金負担や電気料金アップを受け入れるのか。わたしたち国民も真剣に考えなければならない時にある。

 新電力利用者も人ごとじゃない

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廃炉・福島第一処理
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Q 東京電力福島第一原発の事故の処理に必要な費用はどれぐらい?

A 政府は「合理的に見積もることはできない」とお手上げ状態です。二O一三年に、廃炉や損害賠償、除染に必要な費用を計十一兆円と見込み、一部を国民負担にしました。ところが、損害賠償と除染に必要な費用はすでに見込み額を超えており、総額で少なくとも十二兆円以上かかる見込みです。
しかし、それでも足りない見通しです。大手電力会社でつくる電気事業連合会の試算では、賠償と除染だけで五兆四千億円も不足します。廃炉に必要な費用も数兆円規模で足りなくなることが確実とみられています。

Q だれが負担するの?

A 政府は財界人らと負担のあり方を検討しています。できるだけ東電に用意させようとしていますが、足りなければ国民の負担が検討される見込みです。
電力利用者はほかの原発の廃炉費用も負担してきました。三月末までに廃炉が決まった原発を除き、将来的に必要と見込まれる二兆九千億円のうち一兆七千億円を支払いました。不足分は大手電力会社が工面することになりますが、見込みを上回って電気料金が高くなる可能性もあります。
四月からは一般家庭も原発による電力を売らない会社を選べるようになりました。しかし、原発への規制の変更に伴って予定より早い廃炉が決まった原発については、廃炉費用を、新電力の利用者にも負担させる方向です。

 地震が多い日本 不安消せない

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最終処分場
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Q 原発を動かして出るごみはどこへ?

A 決まっていません。使い終わった燃料はリサイクルする方針ですが、この過程で廃液など「高レベル放射性廃棄物」が出ます。
人が近づくと数十秒で死亡するほど危険です。政府は溶けたガラスに混ぜて固め、三百メートル以上の地下に埋めようとしていますが、場所は決まっていません。
さらに、まだ日本ではリサイクルできないので、使い終わった燃料が原発にある保管用のプールにたまり続けています。このまま動かすと三年ほどで満杯になる原発もあります。

Q 高レベル廃棄物の最終処分場をつくるのに、いくらかかるの?

A 政府は必要額を約三兆七千億円と見込み、大手電力各社は積み立て中です。電気料金に含められ利用者が払っています。海底につくる案も出ていますが世界に例がなく、いくらかかるか分かりません。

Q いつできるの?

A 政府は年末に最終処分場の候補地域を色分けした日本地図を公表する予定です。公表自体先送りする可能性もありますが、その中から受け入れに前向きな自治体を探します。しかし、地震の多い日本では国民の不安が根強く、見つけるのは難しそうです。
核のごみは、廃炉になる原発の廃材もありますが、多くは行き場が決まっていません。だから電力会社は廃炉が決まった原発もなかなか解体できていません。

 

 見えない「夢」へ つぎ込み続け

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核燃料サイクル
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A 簡単に言うと核燃料をリサイクルする設備です。ウラン燃料で発電すると、使用済みの核燃料が出ます。
日本はウランがほとんど採れないので、政府は使用済み燃料をリサイクルしたいと考えたのです。もんじゅはそのための試験的な原子炉です。使った以上の燃料が取り出せる「夢の原子炉」になると、もてはやされたのですが・・・。

Q だめだったの?

A 発電まではこぎ着けましたが、一九九五年に冷却に使っている爆発しやすいナトリウムが漏れて大問題になったのです。トラブルが多く、稼働から二十年以上たつのに二百五十日しか動いていません。

Q リサイクル方法は他にもあると聞いたけど。

A 「プルサーマル発電」です。使用済み核燃料から取り出したプルトニウムをウランと混ぜて「MOX(モックス)」という燃料を作ります。国内では二00九年から一部の原発で発電が始まりました。ただこの方式ではMOX燃料が使えるのは一回こっきり。もんじゅが狙ったみたいに燃料が増えません。だから、政府は理想の原子炉までの「つなぎ」技術と位置付けているんです。

Q そちらは順調?

A こちらも難航しています。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す工場はトラブル続き。ウランと混ぜる工場も未完成。フランスなどにお願いしているのですが、値段は普通の核燃料の五倍です。
さらに使用済み核燃料から取り出したプルトニウムはMOX燃料に少ししか混ぜられません。原子炉に入れられるMOX燃料も燃料全体の三分の一まで。だから、使い切れないプルトニウムが海外や国内に四十八トンたまっています。核兵器もつくれる物質だけに海外から警戒されています。

Q 核燃料サイクル実現の可能性は?

A 可能性がゼロとは言いません。でも、このために十一兆円も使い、電気代や税金で国民が負担してきました。政府はもんじゅに代わる次世代原発を、仏と共同で研究することを検討していますが、いくらかかるか分かりません。高速増殖技術は米国、英国、ドイツなどは困難とみてすでに撤退しています。巨額費用をかけ日本が突き進むのかが問われています。

 

 吉岡斉・九州大大学院教授に聞く

  原発は自立できない技術

原発政策の現状について、九州大大学院の吉岡斉教授(科学史)に聞いた。

x  x

-福島第一原発の事故から5年半の原発政策をどう見ているか。

政府の原発事故調査・検証委員会委員として福島第一原発を視察した。めくれ上がった鉄骨など悲惨な姿は、原子力技術の未熟さを後世に伝える遺産にするべきだと思った。しかし2012年に自民党が政権復帰し原発回帰を決めた。事故が忘れられるのが心配だ。

-国民負担論議は。

原発は政府による手厚い支援が必要で自立できていない技術。財政支援額がどんどん膨らんでいる。差し迫っているのは福島第一原発の廃炉費用。それを工面するついでに除染や賠償、ほかの原発の廃炉質用まで大手電力以外の電力利用者からも集めてしまおうと付け加えるのではないか。
もっと高いのは核燃料のリサイクルだ。私の見立てでは、再処理を担う日本原燃が計画通りに今後40年間で使用済み燃料3万2000トンを処理するには200兆円もかかる。高速増殖炉も実現のめどはない。「原発は安い」 という言葉は、計り知れない費用を安く見積もった空文だ。

-国民は原発とどう向き合うべきか。

人口が減るので国民は負担しきれず、放射性物質を安全管理できなくなる心配がある。後世に負の遺産を残さないよう早く原発から脱し、放射性物質を人々の生活から隔離するべきだ。

よしおか・ひとし
1953年富山県生ま才、東京大理学部卒。同大院理学系研究科博士課程単位取得退学。和歌山大助教綬などを経て現職。著書に「日本の科学技術」「原子力の社会史-その日本的展開」など。

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 年末までに出される方針と議論の場

課題               政府の審議会・・・・・    年内にまとめる結論

福島第一処理と廃炉問題 東京電力・1F問題委員会・・・・・・・福島第一原発の廃炉tp損害賠償、除染費用の国民負担
電力システム改革貫徹小委員会・・・・その他の原発の廃炉費用の国民負担

最終処分場   放射性廃棄物ワークンググループ・・・・・・建設できる区域を色分けした地図発表

核燃料サイクル   高速炉開発会議・・・・・・「もんじゅ」に代わる高速炉の開発方針

文・吉田通夫、山川剛史、池尾伸一
デザイン・佐藤圭美
レイアウト・宮崎雅仁

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カテゴリー: 再稼働, 最終処分場, 核燃サイクル, 中日東京新聞・特報 パーマリンク