10/20原発温存のムダ 廃炉で維持費削れ/福島第二/柏崎刈羽【東京新聞・特報】

原発温存のムダ 廃炉で維持費削れ

 福島第二-冷温停止 管理ミス相次ぐ

   第一の事故後も再稼働含み

 柏崎刈羽-県民反対 知事選であらわ

   東電解体し原子力部門分離を

2016年10月20日【東京新聞・こちら特報部】

新潟県知事選で、原発再稼働に慎重な候補が当選した。背景にあるのは、隠蔽(いんぺい)体質、ずさんな管理を続ける東京電力への強い「不信」だ。福島の事故処理費捻出、つまり、東電を救済するためという再稼働の目的がそもそもおかしい。もはや再稼働のめどは立たない。資金不足なら、まずは柏崎刈羽と福島第二原発を廃炉にし、無駄な維持管理費を削ってはどうか-。 (沢田千秋、安藤恭子)

福島第二原発は一九八二~八七年、最大出力百十万キロワットの1~4号機が営業運転を開始した。楢葉町と富岡町沿岸に立地し、福島第一原発からは南に約十二キロ。

二O一一年三月十一日の東日本大震災発生時、福島第二原発は全四基が稼働していたが、大きな揺れで、全基が自動停止した。その約四十五分後、津波に襲われ、海抜十五メートル以上にある1号機の原子炉建屋や海水熱交換器建屋が浸水し、1、2、4号機の原子炉冷却機能が失われた。

復水貯蔵タンクによる代替注水をしたが、水を冷やせず、原子炉内の圧力が上昇した。翌十二日、1号機の圧力抑制室の水温は一OO度を突破し、メルトダウンと爆発の危機にひんした。爆発を防ぐため放射性物質の放出を伴うベント(排気)が検討され、政府は付近の住民に避難指示を出した。

混乱の中、外部電源四回線のうち一回線を使用できることが判明した。職員約二百人が八百メートル以上離れた場所から建屋まで巨大なケーブルを担ぎ、送電を再開し、最悪の事態が回避された。地震発生から四日後の十五日、福島第二原発の全四基は冷温停止した。

原子炉内の核燃料棒の燃料プール移転作撲は、一五年三月に全四基で完了。だが、燃料棒が発する崩壊熱が落ち着くには三十~五十年かかるため、事故から五年以上たった今でも冷却作業は欠かせない。東電は燃料プールの水温を三O度以下に保つなど維持管理を続ける。

東電は、福島県で原発の過酷事故を起こしたにもかかわらず、福島第二原発の再稼働の可能性を残している。一方、県や県議会は廃炉を求めている。世耕弘成経済産業相は八月、「福島県民の心情を察すると、他の原発と同列に扱うことは難しい」と述べたが、最終的な判断は東電に任せると暖昧な姿勢を取る。

そんな福島第二原発では今年、東電の危機意識の欠如ともとれる保安規定違反が相次いでいる。ケーブルの敷設ミスや、侵入者の警報装置の解除、保全計画の未策定など、さほど大きな問題ではないかもしれないが、積み重なれば大きな事故を招く可能性もある。

また、新規制基準への適合審査申請はしていないが、七月には新オフサイトセンターが完成した。福島第二原発の再稼働はあり得るのか。

東電の広報担当者は「広く社会の意見と国のエネルギー政策の動向、福島第一原発の廃炉作業のバックアップ機能としての役割を総合的に勘案し、事業者として判断したい」と話す。オフサイトセンターは「問題が起きた際の対応拠点」と説明した。

福島原発訴訟原告団の中島孝団長は「第一原発の爆発で、原発は物騒と誰しも分かった。東電は再稼働したいから、第二原発を維持しているのだろうが、ミスが相次ぎ、不信感は一層高まっている。安全神話などない。東電に限らず、取り返しのつかない地域崩壊を起こす原発依存から早く脱却してほしい」と訴える。

新潟県知事選で再稼働の是非が争点となった柏崎刈羽原発は計七基あり、総出カは八一二 ・二万キロワットと、世界最大級の規模だ。一九八五~九七年に1~7号機が営業運転を雨開始し、二OO七年七月に中越沖地震に見舞われた。

揺れは想定を上回り、建屋の一部が懐れ、変圧器の火災が発生した。東電は自力で消火できず、被害状況の発表が遅れ、批判を浴びた。また、放射性物質を含む水が海に流れた。地震後の処理は遅れ、7号機が再稼働したのはO九年十二月。1、5、6号機が続いたが、2~4号機はずっと止まったままだ。

東電は6、7号機について、規制委の新基準の適合審査を申請したが、問題が相次いでいる。先月、発電機の地下タンクなどの設置・変更工事の届け出不備が発覚し、今月十三日には、防潮堤の一部が地震時に液状化して壊れる恐れがあることが分かった。

東電は何を急いでいるのか。柏崎刈羽原発の再稼働によって年間二千数百億円の利益が見込まれるという。福島第一原発の事故処理費用は膨らみ続け、想定の十一兆円を超し、八兆円程度の追加が必要という試算が出ている。その費用が必要というわけだ。

知事選を前にした五日、経産省の有識者会議「東電改革・1F(福島第一)問題委員会」が初会合を開き、再編を含む改革を東電に求める方針を示した。同時に、事故処理費用を東電が自力で賄えない場合、税金を支出する国による肩代わりや、送電費用への上乗せによって新電力にも負担させる仕組みも検討することも明らかにした。

柏崎刈羽原発の再稼働をできないと、国民負担が増すという図式のようだが、おかしくないか。

なくそう原発新潟市民ネットの上野邦雄さん(六六)は「東電は福島事故の責任も取らず、トラブルを起こしては謝罪を繰り返すばかり。知事選の結果は、県民の不信の表れだ」と指摘し、早期の廃炉を求める。

国際環境NGO「FoEJapan」の満田夏花理事は「被災地支援につながるようにもみえるが、相当額は東電救済へ流れていくだろう」と非難する。「脱原発の世論は熟している。再稼働できない原発をそのままにすると、維持管理コストが膨らむだけ」と政治主導による廃炉を求める。

一三年三月、経産省は全国五十基の原発が発電しなくても年間の維持費に計一兆二千億円が必要と試算した。単純計算で一基二百四十億円、福島第二と柏崎刈羽両原発は計十一基だから、計二千六百四十億円になる。

金子勝慶応大教授(財政学)は「原発の電気を享受してきた全ての国民が悪いといって、負担させるなんてまるで『一億総ざんげ』だ。再生可能エネルギーを進める新電力に、原発の廃炉負担を押しつけるのも虫が良すぎる」と指摘する。

「福島事故後も東電は原発推進の姿勢を維待し、核燃料サイクルに金をつぎ込んでいる」と不要のものに無駄な資金が使われていると批判する。十二日には、首都圏で大規模停電を起こしており、「安全対策について、東電にどれほどの余力があるか不安だ」と、東電の解体を提言する。

「資本主義の原点に立ち返り、東電は資産を清算し、新会社として再出発すべきだ。他の電力会社も含め、原子力施設と核燃料を切り離し、残存簿価と廃炉費用を洗い出した上で新株を発行し、国が引き受けて原発を廃炉にしていく。脱原発にかじを切らない限り、国民負担の増大を抑える道はない」

(((デスクメモ)))
福島の原発事故の処理に、東電は全責任を負う。だが、破綻したら、被害者への補償は滞る。打ち切りか、政府が肩代わりするのか。除染や廃炉作業は、やはり、政府が代わってやるのか。電気料金に上乗せしても同じだ。原発事故が起きたら、最後は必ず国民につけが回ってくる。(文)2016・10・20

遺骨や遺品の捜索を行う讐察官や消防隊員ら。奥は、東京電力福島第二原発=3月、福島県富岡町で

(右)新潟県知事選で当選を決め、万歳する米山隆一氏(中)=16日、新潟市で(左)柏崎刈羽原発6、7号機の現地調査をする原子力規制委の更田豊志委員長代理(右から2人目)=7月、新潟県で

広告
カテゴリー: 再稼働, 中日東京新聞・特報 パーマリンク