【10/29東京新聞】独シュタインマイヤー外相寄稿全文「世界規模のエネルギーシフト-太陽や風は決して請求書をよこさない-」/2050年目標エネルギー消費半減/温暖化対策で協力を 産業コスト削減や雇用創出チャンス

中日新聞は下記の内容で第一面だった。

2016年10月29日 朝刊【東京新聞・国際】
太陽や風は決して請求書をよこさない 独シュタインマイヤー外相 本紙寄稿

このせいで10/29は中日には特報がなかった。

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独シュタインマイヤー外相寄稿全文

「世界規模のエネルギーシフト-太陽や風は決して請求書をよこさない-」

2050年目標エネルギー消費半減

温暖化対策で協力を 産業コスト削減や雇用創出チャンス

2016年10月29日【東京新聞・朝刊】

 廃炉・廃棄物独も課題

日本語になったドイツの単語は、例えば「バウムクーヘン」や「アルバイト」のように少なからずありますが、最近では「エネルギーウェンデ(転換)」もその仲間に加わりつつあります。この「エネルギーウェンデ」は、原子力に頼らず再生可能エネルギーで供給を賄うグリーン経済へ移行していくというドイツの政策、「エネルギーシフト」を意味しています。

ドイツ政府が二O一一年春に脱原発を表明したことは、当時日本では大きな衝撃をもって受け止められました。ドイツ政府の決定は、東日本大震災の福島第一原発事故を受けて急きょ下されたかのように思われがちですが、そうではありません。エネルギーシフトの萌芽は、実際のところそのずっと前にさかのぼり、重要な契機となったのは一九八六年に起きたチェルノブイリ原発事故でした。多くのドイツ人は、事故から数カ月もの間、放射性降下物(フォールアウト〉を恐れて子供たちが雨の日に遊べなかったり、牛乳が飲めなくなったりしたことを今でも記憶しています。

当時のドイツ人の不安は、二十五年後に日本の皆さまが経験された圧倒的な恐怖の比では決してないでしょう。しかし、それ以降、多くの国民の間で原子力エネルギーより低リスクで環境に配慮したエネルギー源に変えていかなくてはという意識が高まりました。ドイツのエネルギーシフトは東日本大震災により始まったものではありませんが、それにより決定的な影響を受けました。

ドイツにとって日本がグリーン経済ヘ移行するための重要なパートナーである理由は、これだけではありません。日独両国は、百五十年以上にわたる友好関係で結ばれており、強い絆や心の友といった言葉でよく表現されています。技術イノベーション(刷新)に対する熱意も両国の持つ共通点であり、これは私が日本を訪問した際にも折に触れて確信しました。

 ドイツの野心的目標

二OOO年以降、エネルギー部門の抜本的な改革が進められています。ドイツは段階的に原子力から撤退し、二O五O年までにエネルギー消費を半減させ、再生可能エネルギーとスマートグリッド(次世代送電網)に移行していくことを目指しています。

ドイツは二O二二年までに全ての原子力発電所の稼働を停止し、二O五O年までに温室効果ガスの排出を95%削減し、また総電力消費に占める再生可能エネルギーの割合を80%と大幅に高めることを目標として定めていますが、重要なのは、効率的なエネルギーの利用を新たなエネルギー源の創出より優先させることです。つまり、電力量の一番優れた状態は、電力を消費しないということです。

 世界規模で問題解決

世界規模のエネルギーシフトはさまざまな問題を一手に解決するでしょう。野心的な計画ではありますが、とても順調に進展しています。ドイツは次の三つの理由から国際的にも世界規模のエネルギーシフト推進に取り組んでいます。

①持続可能性に配慮しないエネルギー供給の国際的なコストは甚大です。不均衡でしばしば不安定化する化石燃料の輸入、原子力エネルギーの想定不可能で高い潜在リスク、そして従来型エネルギー製造に伴う大量の温室効果ガス排出、これら全ては再生可能エネルギーによって削減または回避することができます。

②エネルギーシフトは国際的な開発目標にも重要な役割を果たしていますが、これは国連の持続可能な開発目標(SDGs)にも反映され、二O三O年までに「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」ことが定められました。

③エネルギーシフトにより、経済拠点としての競争力が向上します。急速な技術の進歩により、太陽と風カエネルギーの価格は低下し、またエネルギーの高効率化は産業界のコスト削減につながっています。さらには、エネルギーシフトに伴い過去二十年間に巨大な研究開発投資が行われたことにより、ドイツには今日この部門で世界をリードする企業が多数存在し、三十七万人を上回る規模の雇用創出という誇るべき成果が表れています。

結論として、世界規模のエネルギーシフトは壮大なチャンスであり、企業と国家の双方に資する環境を生み、技術発展に貢献するといえるでしょう。その効果はまた、自国だけではなくパートナー国にも波及します。

 日本でも成果を生む

エネルギーシフトに向けた国際協力に対する関心の高さは、特に本年春に開催された国際会議「エネルギーシフトに向けたベルリン対話」において、世界中から千人以上の政策決定者を歓迎した際に感じました。

国際的なエネルギーシフトの潮流は、特にその指針となるパリ協定が合意されて以降、世界中で勢いを増しています。

日本とドイツは先進工業国として共通の責任を負っており、世界では先駆者として認識されています。先進七カ国(G7)富山環境相会合のコミュニケの中で温暖化対策技術における協力がうたわれたことは、各国政府に対してだけではなく、財界、産業界や研究機関に対しても重要なメッセージとなりました。共に協力をして温室効果ガス削減に向けた新たな道を切り開いていきましょう。

もう一つ重要なことは、全ての国民が関与していくことです。ドイツ国民の八割以上が再生可能エネルギーの拡大に賛同しています。多くの自治体は自らのイニシアチブで再生可能エネルギーへの移行を進めています。日本でも多くの自治体でエネルギーシフトの動向への関心が高く、対話が強く望まれています。このテーマでの日本との協力も全力を尽くして支援していきたいと考えています。私たちの将来と次世代の子供たちのためにも、あらゆる面でカを合わせ、環境に配慮したクリーンなエネルギーを勝ち取りましょう。

(フランクワルター・シュタインマイヤー=ドイツ連邦共和国外務大臣)

 

福島第一原発事故の発生を受けドイツ政府は2011年、原発延命の従来方針を一転、22年末までの全原発の運転停止を決めた。ただ将来の廃炉や放射性廃棄物の処分にかかる巨額の費用負担は、今後に解決を要する課題だ。代替として期待される風力や太陽光の再生可能エネルギーも、送電網整備が進まず普及のペースは上がっていない。

11年に17基だった運転中の原発は現在8基。11年と14年のドイツ全体の電源構成を比べると、原子力は18%から15 .8%に減り、再生エネは20%から26.2%に増えた。原発を運転する電力会社は今後、1基当たりの廃炉と取り壊しに10億ユーロ(1100億円)が必要。また放射性廃棄物の処分費として、電力会社全体で国に計230億ユーロ(2兆6000億円)以上を拠出しなければならない。一方、再生エネ発電の供給過剰による卸売価格の下落が電力会社の経営を圧迫しており、脱原発に伴う巨額の費用を負担できるか見通せない状況だ。  (ベルリン・垣見洋樹)

ドイツ・ベルリンで12日、メルケル首相(右)とともに閣議に臨むシュタインマイヤー外相=AFP・時事
(右)ドイツ北西部カルカーの原発跡地に造られた遊園地。高速増殖炉として建般されたが、一度も運転することなく廃止され、オランダの実業家が1995年に買収し、テーマパークを建設した=AFP・時事
(中)ドイツ北西部オスナブリュック市で、石炭採掘場跡に立つ風力発電施設=同市提供=その風力発電施設内で、発電状況について説明する市職員=垣見洋樹撮影

ドイツのエネルギー政策

1961年 西ドイツで最初の原発が送電
70年~ 反原発運動活発化
80年  緑の党結成
86年  チェルノブイリ原発事故
90年  ドイツ統一
2000年 シュレーダー政権が大手電力会社と原発全廃で合意。再生可能エネルギーを市価より高く買い取る固定価格買い取り制度を導入
10年  メルケル政権が原発の延命を決定
11年3月 東日本大震災 福島第一原発事故
6月   メルケル政権が2022年末までの脱原発を決定
14年  メルケル政権が再生エネの導入制限と買い取り価格引き下げを決定

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