11/11筝の一音感じる六段 野坂操寿「聖歌との酷似説も魅力」【東京新聞・邦楽】

六段の作曲者・八橋検校は、三味線で野川検校に叶わないと思って、長崎県諫早市の慶厳寺で筝曲の「六段の調」を作られたのだと、祖母から聞いた覚えがある。
桂三枝(文枝)が、古典落語で桂枝雀に叶わないから創作落語に情熱を傾けたのも、八橋検校みたいやなぁと思ったものだ。
六段は嫌になるほど暗譜させられたもので、たぶん今でもソラで弾けると思う。

昔、バロック音楽なんて六段よりずっとあとの時代だと教えて下さったのが、この野坂恵子(操寿)さんだった。

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筝の一音感じる六段 野坂操寿「聖歌との酷似説も魅力」

【東京新聞・邦楽 二〇一六年鑑賞のススメ はじめの一本!】
2016年11月11日

のさか・そうじゅ
本名恵子 1938年生まれ。東京芸術大邦楽科卒業。65年から始めた自身のリサイタルは今春で27回。欧米での公演活動も豊富。86年から3年、東京・渋谷にあった小劇場「渋谷ジアン・ジアン」で自作曲のライブを続けた。2003年、二代目操寿を襲名。15年文化功労者。今年10月に発売された伊福部昭さんの作品を集めたアルバム「『協奏四題』熱狂ライヴ」にも演奏で参加している。
六段とクレドの比較は、野坂も参加したアルバム「筝曲『六段」とグレゴリオ聖歌「クレド」』(11年発売)で聴ける。

 

優雅で美しい音色の筆は奈良時代に伝来し、邦楽に欠かせない楽器として定着している。近年は日常的に聴くこともあまりないが、繊細な音は聴く人の心を癒やす。そんな筝曲-そうきょく-について、日本を代表する演奏家の二代田野坂操寿はこれから親しんでほしいとの願いを込めて「六段の調(六段)」を手始めの一曲に挙げる。

野坂は六段を「基礎の基礎となる大切な曲」と位置付ける。江戸時代初期の八橋検校(一六一四~八五年)の作曲で、筝を習う人には必須の作品だ。「入門から一年ぐらいで弾き始め、一生続ける。最初はゆっくりと弾き、上達するにつれ、速く演奏していく」と説明する。シンプルな曲だが、力のこもった一音一音の「間」に味わいがあるという。聴く側にとっても、筝曲らしさを感じ取れるという。

そんな六段には、魅力がもう一つあると野坂は言う。それは、カトリック教会のミサなどで昔から歌われる「グレゴリオ聖歌」の中の一曲「クレド」と「実にそっくり」な点だ。十数年前に福岡県の女性が見つけ、音楽学者の皆川達夫さんがその説を補強しニO一O年に発表、話題を集めた。

この説では、六段が完成した江戸初期、弾圧の対象だったキリスト教の信者がひそかに信仰のために聴いたのだという。メロディーの酷似ぶりに加え、キリストの「受難」と「復活」をテーマにしたクレドは、この二つのメロディーを三回ずつ繰り返す。筝曲は奇数のパートからなるのが一般的だが、六段は異例ともいえる偶数の六つのパートから構成され、ぴったりくるという。

証拠となる文献や資料は存在せず、邦楽界にはこの説を異端視する向きもある。しかし、キリスト教の洗礼を受けている野坂は「この説を知り、もともと好きだった曲が私の中で『祈り』の意味を持つようになった」と大いに共鳴する。

説の真偽はさておき「古今東西、音楽もどこかで影響し合っている」と野坂。筝曲の正統な薫りもする六段だが、この謎めいた説に興味をそそられる人も多いという。

プロ歴半世紀以上の野坂は幼少期から、母で名手の初代操寿さん(一九O五~ニOO二年)に手ほどきを受けた。自由な感覚で筝と向き合ってきたが、戦後、新しい音楽家たちが複雑な筝曲を次々手掛けると、オーソドックスな十三絃では「出せない音が多い」と実感。「音色を維持したまま音域を広げたい」と研究を続け、一九六九年に二十絃、九一年に二十五絃の筝を開発した。筝に穴を開けるなどして、新たな音域が出せるよう工夫を続けた執念が実った。

高度な演奏技術にはもとより定評があったが津軽三味線の初代高橋竹山さん(一九一O~九八年)、「ゴジラ」のテーマ曲などで知られる作曲家の伊福部昭さん(一九一四~二OO六年)らと出会い、独創性や筝曲の普遍性を深めていった。

多角的に筝と向き合ってきた第一人者は「最近、日本の文化が見直されている」と感じている。邦楽の再興に「希望を捨てていない」と語り、これからも魅力を発信していく。そんな中で鑑賞初心者には「六段」で筝の音のエネルギーに、特に子どもたちに「筝の一音」を感じてもらいたいという。(藤浪繁雄)

独創的な演奏活動を続ける野坂操寿(2003年)(c)木之下晃

「六段は真っすぐで力強い曲」と話す野坂操寿=東京都渋谷区で

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—関連—

箏曲「六段」がグレゴリオ聖歌?

http://d.hatena.ne.jp/japojp/20111221/1324452872
2011年12月21日【公益財団法人日本伝統文化振興財団】

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