11/22科学者今こそ訴える 核に頼らない世界を/日本パグウォッシュ会議 組織強化しスタート【東京新聞・特報】

去年の年末に中日新聞の県民福井に載っていた記事。↓

12/30「プルトニウムもう増やすな」 パグウォッシュ会議声明/”日本産”が世界の2割【日刊県民福井】

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科学者今こそ訴える 核に頼らない世界を

 日本パグウォッシュ会議 組織強化しスタート

  アジアで強まる核依存に危機感

【東京新聞・こちら特報部】2016年11月22日

世界で紛争がやまず、米ロなどの核軍縮は進まない。日印原子力協定が結ばれ、国内では軍事研究に接近する科学者が増えている。危機感を抱く科学者が「日本パグウォッシュ会議」の体制を強化し、二十七日に東京都内で初の総会を開く。核兵器と戦争の廃絶を目指す科学者らの国際団体「パグウォッシュ会議」の国内組織という位置付けで、個人の集まりという従来の枠組みを発展させ、平和に対する科学者の使命を果たすという。 (白名正和)

 27日に初の総会 鈴木代表に聞く

「北朝鮮の核開発問題などを巡って、世界は危機感を増している。科学者として、もっと積極的に意見をしたり、政策を鑓雷同したりして働き掛けていかなければならない」

九月に規約を作り、約四十人の会員でスタートを切る「日本パグウォッシュ会議」代表で、長崎大核兵総廃絶研究センター長の鈴木達治郎氏は強調する。

きっかけは、昨年十一月に長崎で開かれた「パグウォッシユ会議」の大会だ。多くの学者が議論を積み重ね、「後につなげるため、もっと国内の組織をしっかりしなくてはいけない。せっかく生まれた学者同士のつながりが、切れてしまってはいけない」という意見が相次いだ。

パグウォッシュ会議には科学者が個人として参加しており、日本国内ではこれまで明確に組織化されていなかった。戦後五十年の一九九五年、国内初の年次総会が広島で開かれた際、二OO五年に広島で再び開かれた際に「つくろう」という意見が出たが、旗振り役がおらず、手つかずのままだった。

二十年越しで、ようやく組織化を実現できたのは、なぜか。国内の科学者が核や戦争への危機感を強めていることが背景にある。冷戦時代に市民が恐れた核戦争は起きず、二十一世紀になった。「核戦争はもう起きない」と信じる人も少なくないが、鈴木氏の感覚は異なる。

「現在は国家間の緊張が増し、核が使われる危険は変わらずに存在している。欧米、南アジア、中東、北東アジアなど世界各地で、核兵器に依存する傾向、思想的、宗教的とも言える核信仰が強まっている」

日本も例外ではない。「昨年秋に成立した安全保障関連法制には、国家間の信頼関係によってではなく、軍事で国を守るという意味合いがある。国家間の緊張を高めることにつながっており、パグウォッシュ会議の目指す『軍事に頼らない世界』とは逆に向かっている」

鈴木氏は、米大統領選でトランプ氏が当選したことも緊張感を持って受け止めている。選挙運動中、日本の核武装を容認する発言をした人物だけに、「彼の言動には予測できない恐怖感がある。オバマ大統領でさえ核軍縮を進めることはできなかった。トランプ大統領になったらどうなってしまうか」。

核問題について日本では、北朝鮮が最も注目されているが、南アジアの「連鎖」を忘れてはいけないという。「中国の軍事力に刺激されたインドが核開発を拡大し、それに刺激を受けたパキスタンが核開発を拡大している」

今月、インドへの原発輸出を可能にする日印原子力協定が結ばれた。日本政府は平和目的の技術提供に限定すると強調しているが、「インドが核実験を行った場合に協定を破棄するという条件が明文化されておらず、協定が続くようにも受け止められる。玉虫色の内容になっている」と問題視する。

鈴木氏は近年、国内で科学者と軍事研究の距離が縮まっていることを危ぶむ。「お金がないと研究できないというジレンマはある。基礎研究は軍民の区別がなく、やめるわけにもいかない。だが、最終的な研究目的が『軍事』なら、そう明確にするルール作りが必要だ。科学者は、研究は人類のためと自覚し、軍事目的であれば断っていただきたい」

今後、日本パグウォッシュ会議は、どう情報発信をしていくのか。核の問題は議論の内容が専門的になりすぎ、市民に関心を持ってもらえないこともままあるが、鈴木氏は「市民との連携は重要だが、日本パグウォッシュ会議はあくまで専門家の集まりで、市民教育団体ではない。組織運営の中で、メッセージを伝える方法を考えていく」。

人類最後までの時間を示す米科学誌の「終末時計」は昨年、「残り三分」になった。核廃絶の停滞などを理由に一四年から二分進んだ。

鈴木氏は「核ばかりでなく、温暖化なども影響している。時計は、各国が自分の国益ばかり考えていると、グローバルな問題は解決できないというメッセージだと思う。国益を超えて人類に貢献をすることが、私たち科学者の使命だ」。

((デスクメモ)) 子どものころ、「ノストラダムスの大予言」が大流行していた。一九九九年七月、「恐怖の大王」が降ってくるという予言があり、子どもながらに「核戦争で世界が滅ぶのか」と心配した覚えがある。無事に二十一世紀を迎えられてよかった。二十二世紀は核を廃絶して迎えたい。(文)
2016・11・22

冷戦下 核廃絶と平和的解決希求

■ 1957年 世界の科学者がカナダに結集

平和運動などで知られる哲学者バートランド・ラッセル(英)と物理学者アルバート・アインシュタインらが1955年、核兵器廃絶と科学技術の平和利用を訴える「ラッセル・アインシユタイン宣言」を発表した。署名をした11人には湯川秀樹博士も名を連ねる。

発表直前にに亡くなったアインシュタインの遺言とも呼ばれる。広島への原爆投下や、ビキニ環礁の水爆実験による第五福竜丸の被爆などに触れ、核が「人類に絶滅をもたらす」危険性を指摘する。各国政府が核に頼らず、平和的解決を目指すように勧告する決議に賛同するように、科学者と市民に呼び掛けている。

2年後の57年7月、核と戦争のない世界の実現のための国際会議を聞き、米ソなどに原水爆実験の全面中止を求め、科学者の社会的責任を話し合った。

正式名称、は「科学と世界の諸問題に関するパグウォッシュ会議」で、初会合の開催地、カナダ・パグウォッシュ村にちなむ。その後、年次大会のほかシンポジウムや研究分野ごとの会合を1年に数回の頻度で開いている。

日本では75年に京都で初のシンポが開催された。89年には東京で、「アジア・太平洋地域における平和と安全」がテーマのシンポがあり、「核抑止の考えは捨て去るべきである」などとする有志の宣言があった。

しかし、核保有国は「巨大な破壊力を持つ核の保有によって、かえって戦争の抑止力となる」という抑止論を捨てなかった。実際、大国間の均衡は保たれたこともあり、パグウォッシュ会識は廃絶に向けた明確なメッセージを打ち出すことが次第に難しくなった。

その後、冷戦終結で核戦争への危機感は薄らいだが、96年の包括的核実験禁止条約(CTBT)の採択が迫る中、フランスと中国が核実験を強行して状況が変わる。95年、ノーベル平和仰を受賞し、再び注目を浴びた。

戦後70年の昨年、長崎で開かれた大会では、米ロ関係者が従来の核抑止論を繰り返す一方被爆者らは核廃絶を訴えた。東京電力福島第一原発事故の被害の深刻さを挙げ、「科学者の社会的責任はかつてないほど重大だ」という指摘もあった。
(三沢典丈)

日本パグウォッシュ会議代表の鈴木達治郎=東京都文京区で

パグウォッシュ会議の歴史を紹介するホームページ

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