12/2審議わずか6時間 カジノ法案を可決【東京新聞・政治】/11/30カジノ法案 きょう審議入り 地域振興 ギャンブル頼み【東京新聞・特報】

審議わずか6時間 カジノ法案を可決

2016年12月2日 13時57分【東京新聞・政治】
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016120290135752.html

カジノを含む「統合型リゾート施設(IR)」整備推進法案(カジノ解禁法案)は二日午後の衆院内閣委員会で採決され、自民党、日本維新の会などの賛成多数で可決された。連立与党の公明党は自主投票で、三人の委員は賛成一、反対二と対応が分かれた。公明党が党議拘束を外して議員個人の判断で採決に臨むのは二〇〇九年の改正臓器移植法以来。民進党は採決に加わらず、共産党は反対した。(大野暢子)

カジノ以外も含むギャンブル依存症対策を強化することを盛り込んだ付帯決議も自民、公明、維新の賛成多数で可決された。

カジノ解禁法案は昨年四月に自民党や、維新の党と次世代の党(いずれも当時)が議員立法として提出。継続審議になっていたが、先月三十日に審議入りした。自民党は六日の衆院本会議で可決、参院に送付する方針。公明党は党内にカジノ解禁への反対論があり、執行部に対応を一任。二日午前に山口那津男代表ら幹部が出席した常任役員会を開き、自主投票とすることを決めた。

民進党の山井和則国対委員長は二日の記者会見で「国民の不安について議論せずに強行採決することはあってはならない」と自民党を批判した。民進党内にはカジノ解禁への賛成、反対両派がおり、法案への対応を明確にしていない。

二日の質疑で、法案提出者の一人の岩屋毅氏(自民)は「政府も観光産業を成長戦略の柱に据えている。観光振興、観光立国の起爆剤にしたい」と、カジノ解禁による経済効果を強調した。池内沙織氏(共産)は反対討論で「新たなギャンブル依存症を生み出す」などと問題点を指摘した。

◆賛成1、反対2 公明割れる

公明党はカジノ解禁法案の採決を容認する一方、賛否の党議拘束を外し、議員個人の判断に委ねる自主投票という異例の対応となった。賛否も公明党委員三人のうち賛成一人、反対二人と割れた。

「カジノ解禁」には、公明党の支持母体である創価学会の婦人部を中心に、ギャンブルの推奨につながるとの批判があり、党幹部に反対意見が強かった。しかし、連立を組む自民党が先月三十日、強引に審議入りさせ、さらに採決まで決めたことで党としての対応を迫られた。

公明党内の論議では、依存症対策を実施法に先送りしている法案の内容や本格審議がわずか二日だったことなどへの批判が出た。一方、カジノ施設の誘致を目指す一部議員らは賛成で、まとめることができなかった。

自主投票の理由について井上義久幹事長は二日の記者会見で「賭博を一部でも合法化する道を開くわけだから、社会のありようにかかわるわけで議員個々の判断に委ねることにした」と説明した。

来年六月には公明党が最も重視する東京都議選がある。支持母体に反発の強い同法案の採決が都議選に近づく前に今国会での採決に応じたとの見方もある。また、自民党がカジノ法案を推進する日本維新の会との関係を強めつつあり、公明党がてんびんにかけられているとの指摘もある。(金杉貴雄)

<解説> 刑法が禁じるカジノ解禁につながる法案は、わずか二日間の質疑で委員会採決が行われ、可決された。審議時間は計六時間程度にとどまり、カジノ解禁への国民の疑問や不安が解消されたとは到底言えない。

二〇一三年に自民党などが提出した同様の法案は反発を受けて審議が進まず、一四年の衆院解散で廃案になった。今回の法案は昨年四月に提出されたが、継続審議となっていた。審議入りは十一月三十日。自民党は翌十二月一日、連立を組む公明党が党として賛否を決められない段階で、二日の衆院内閣委員会での採決を提案した。異例と言える拙速な対応だ。

一五年六月の日本世論調査会の世論調査では、国内のカジノ設置に反対する人が65%に上り、賛成の30%を大きく上回った。

一四年に厚生労働省研究班が、ギャンブル依存症の疑いがある成人は全体の5%弱の五百三十六万人に上るとの推計を示した。賭け金が高額で、射幸性や依存性の高さが指摘されるカジノの解禁で、さらに依存症が増える恐れがある。こうした指摘に、提案者側は「依存症対策は政府において対応していく」(自民党の西村康稔氏)と、具体的な対応を示さなかった。

自民党議員らは、カジノを含む統合型リゾート施設を整備することで観光産業が伸びるなどと経済効果を強調した。しかし、地元経済に悪影響を与えるとの指摘には「政府が総合的に判断して(候補地などを)絞り込めば、期待した効果を生じさせられる」と答えるにとどまった。

カジノを観光立国の目玉にしたいのなら、国民の不安に応える丁寧な議論が不可欠だ。(篠ケ瀬祐司)

(東京新聞)

民進党議員らが採決をとどまるよう抗議するなか、カジノ解禁法案を可決した衆院内閣委=2日午後0時29分、国会で

 

カジノ法案 きょう審議入り
「イメージ悪くなる」
横浜に誘致の動き 住民懸念
市が試算「経済効果4100億円」

地域振興 ギャンブル頼み!?
周辺の商店衰退/格差拡大 米国では問題化
狙われる日本人の財布

2016年11月30日【東京新聞・こちら特報部】

カジノ解禁の議論がにわかに動きだした。カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)整備推進法案が、野党の反発をよそに三十日に審議入りする。政財界は莫大(ばくだい)な経済効果が得られるとそろばんをはじくが、ギャンブル頼みの経済活性化には異論が根強い。カジノ構想が何度も浮かんでは消えたのも、治安の悪化などへの懸念がぬぐえないからだ。カジノ解禁は本当に地域振興につながるのか。 (池田悌一、白名正和)

港をバックに記念撮影をする観光客らでにぎわう横浜市中区の山下公園。公園の端から海にせり出すように浮かぶ山下ふ頭では、リゾート空間への再開発が進められている。そのリゾートの目玉として取り沙汰さているのがカジノだ。

山下公園にはランニングや散歩をする市民の姿もあった。二歳の孫を芝生で遊ばせていた同市保土ケ谷区の女性(六二)は「そこにカジノができるかもしれないんですか?ギャンブル目的で横浜に来る人が増えるでしょうね。イメージが悪くなるし、治安面も心配。赤レンガ倉庫や中華街など観光資源は既にたくさんあるわけだし、カジノは必要ないと思う」と顔をしかめた。

高層マンションが立ち並ぶみなとみらいでは、三歳の娘を連れた女性(三六)が「カジノって結局賭け事でしょ。客層もちょっと怖そうだし、『夜のお店』も増えるんじゃないかしら。家族で楽しめる娯楽施設ならうれしいのですが・・・」。どうもカジノは市民にあまり歓迎されていないようだ。

横浜市がカジノ誘致を正式に表明したわけではないが、林文子市長は「税収確保のための有力な手段」と前向きだ。昨年二月に公表した市都心臨海部再生マスタープランでは、山下ふ頭やみなとみらいでの大規模集客施設の整備を掲げ、IRのイメージの一つとしてカジノを紹介した。

市が昨年はじき出した試算では、カジノの年間訪問客数は七百万人で、うち外国人が百四十万人。総額八百五十億円の売り上げを見込む。カジノを含むIR全体の経済効果は四千百億円で、税収も六十一億円増えると想定している。

市の担当者は「カジノの可能性を含め総合的に検討している」と慎重だが、経済界は前のめりだ。

横浜商工会議所は、カジノなどのIRを整備すれば少なくとも五千六百億円の経済効果があると独自に試算。「経済活性化にIRは必要」(担当者)という立場だ。今月二十一日、上野孝会頭が横浜を地盤とする菅義偉官房長官を訪ね、IR整備推進法の早期成立と候補地として横浜市の選定を求める要望書を手渡した。

カジノを巡っては、都知事だった石原慎太郎氏が一九九九年、お台場カジノ構想を提唱。二00二年、自民党議員がカジノ議連を発足させ、一O年には超党派のIR議連に発展した。

IR推進法案は一三年に国会に提出されたものの、廃案や継続審議を繰り返し、審議は進まなかった。だが、自民党幹事長にIR容認派の二階俊博氏が就任。衆院議院運営委員会は二十九日、昨年四月に再提出されたIR推進法案を衆院内閣委員会に付託。野党は反対したが、内閣委の秋元司委員長(自民)の職権で三十日の審議入りを決めた。

カジノを含むIRを目指すのは横浜市だけではない。関西経済同友会は、大阪市内の人工島「夢洲-ゆめしま-」で設備すれば、七千六百億円の経済効果があると試算。「大阪もやる気があると伝えるため」(担当者)、九日には二階幹事長を訪ね、法整備後は夢洲を選定するよう求めた。

各地の自治体が色めき立つカジノ構想は、「推進派」の小池百合子東京都知事の誕生も追い風となり、にわかに盛り上がりを見せている。「豊洲に誘致を」との声も上がるほど。だが、本当にうまい話なのか。

カジノ問題に詳しい静岡大の鳥畑与一教授(国際金融論)は「カジノは周辺地域からお金を吸い上げるだけの施設で、周辺の商店が衰退する恐れがある」とクギを刺した。二O一四年に視察した米国東部のリゾート地アトランティックシティーでは、有名なレストランやホテルが閉鎖され、空き地が目立ったという。

「栄えているのは海岸沿いのカジノがある場所だけだった。レストランやホテルなどすべてがそろっているので、観光客はカジノ施設だけで満足するためだ」

しかもカジノでもうかるのは運営企業だけ。利用者側は続ければ続けるほど負ける仕組みといい「格差が拡大することになる」。

そのカジノ自体も厳しい競争にさらされているという。鳥畑氏によると、アトランティックシティーには以前十二のカジノ施設があったが、近くの町にカジノができて客が減り、現在は七つになった。閉鎖された五つの施設には、トランプ米次期大統領が経営していた施設も含まれている。

「カジノ施設は、いうなれば狩猟民族のようなものだ。その地域で利用者を探して、飽きられたり利用者のお金がなくなったりしたら次の土地に行く。米国はすでに飽和状態で、海外に進出している」。現地のカジノコンサルタントは烏畑氏に「日本は富裕層がおり、国民の可処分所得も大きく、未開拓のマーケットだ。もうかるだろう」と話した。鳥畑氏は「カジノ解禁の狙いは中国の富裕層だろうがどこまで呼び込めるかは不透明」とし、むしろ海外のカジノ資本が狙っているのは日本人の財布と指摘する。

また、経済効果を考えるときに忘れてはならないのは治安の悪化に対する対策や、ギャンブル依存症のケア、離婚や子どもの放棄などに対する社会的コスト。「公害企業が利益を上げたまま補償もなく去るかのように、社会的コストを日本社会に押しつけたまま、もうけたカジノが撤収することも起こりうる」と危ぶむ。

だが、IRを成長戦略に位置付ける安倍政権はカジノ解禁に前のめりだ。「成長戦略をギャンブルに頼る発想がそもそもおかしい」と批判するのは、経済ジャーナリストの荻原博子氏。加えて「日本の観光資源はたくさんある。和食や歴史的な木造建築物だけでなく、きれいな空気やそのまま飲める水道水も貴重だ。こういったものを外国人観光客は日本に望んでいるはず。カジノは日本のイメージには合わない」と断じ、観光振興の効果も疑問視する。

実際、本社加盟の日本世論調査会が一五年六月に行った面接調査では、国内のカジノ設置に反対が65・4%と、賛成を大きく上回った。「ギャンブル依存症の人が増える」「設置した地域の治安が悪化する」「子どもの成長に悪影響を及ぼす」などが主な理由だ。

弁護士らでつくる「全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会」事務局長の吉田哲也弁護士も「ギャンブルが公認されれば、未来を担うこどもたちにも悪影響が出る。地域経済自体がカジノに依存してしまうことにもなりかねない」と危機感を募らせる。

一四年夏、沖縄で持ち上がったカジノ構想に反対し、沖縄ハム総合食品の長濱徳松会長は地元紙に「如何なる事があっても『カジノ賭博』だけは導入してはいけない」という意見広告を出した。翁長雄志知事が誕生し、カジノ誘致はしないと表明した。長濱氏は、国民の理解もなしに進むカジノ法案を批判し、こう力を込めた。「日本は米国のトランプ氏のように、何が何でももうかればいいという国ではないはずだ。まじめに働く気持ちも失われ、国が滅びることになる」

(デスクメモ)
夫や妻が家計を支えるため「賭博で一山当ててくる」と言い出したら、止めない家族はいないだろう。どう見ても熱くなっている「カモ」。国民のギャンブル依存も心配だが、ばくちのような地域振興に走る国や自治体の「ギャンブル依存」はもっと怖い。己を見失わないでほしい。(洋)2016・11・30

カジノ誘致話が持ち上がっている山下ふ頭(後方)。手前は観光客らでにぎわう山下公園=29日、横浜市中区で

トランプ米次期大統領が 1990年に開業し、経営難で営業を停止したカジノ「トランプ・タージマハル」=今月10日、米東部アトランティックシティーで(AP •共同)

2015年10月、ロシア極東ウラジオストク郊外にオープンしたカジノでルーレットを楽しむ招待客(共同)

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