12/8科学に有益性だけを求めず、基礎科学は文化と考えて/ノーベル医学生理学賞 大隅良典・東京工業大栄誉教授 受賞記念講演要旨【東京新聞・朝刊】

あんなのが首相ならもうこの国から受賞者は居なくなるだろう。

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科学に有益性だけを求めず、基礎科学は文化と考えて

ノーベル医学生理学賞 大隅良典・東京工業大栄誉教授 受賞記念講演要旨

2016年12月8日【東京新聞・朝刊】

大隅良典・東京工業大学栄誉教授のノーベル受賞記念講演の要旨は次の通り(1面参照)

 

私は一九四五年、終戦の半年前に福岡市で生まれた。食料事情の悪い時代で、病弱な子どもだった。母は私を生んだあと結核にかかり、長いこと病気で寝ていたが、運良く抗生物質が輸入され、奇跡的に回復した。私は抗生物質のことを知らないのに、ストレプトマイシンという言葉を覚えた。

小学生のころ、自然豊かな川や海で遊び、魚や昆虫の採集に夢中になった。高校では化学部に入り、化学反応に魅せられた。

化学者になりたいと思い東京大に入ったが、当時は分子生物学が確立していく時代で、私も分子生物学を志した。大学院での研究対象は、タンパク質の合成装置であるリボソーム。生命の基本はタンパク質の合成にあると考えるようになった。七六年に米ロックフェラー大に留学、DNAの複製の研究で酵母と出合った。

七七年に東京大助手になり、細胞の中にある液胞という小器官の研究を始めた。細胞内の「ごみため」と思われており、競争相手もいなかった。

しかし研究を進めると、細胞の恒常性を保つ重要な役割をしていると分かった。八八年、自分の研究室を持ち、液胞が働く仕組みを研究することにした。

東大の講義では学生に「一秒間に、体内でいくつの赤血球ができるか?」と聞いた。簡単な計算で三百万個という答えが出る。ちょうど一秒間に壊れる数に等しい。合成と分解が同じ数だ。

日本には四季があり「生々流転」「諸行無常」と言われる。秋の紅葉にも、タンパク質の分解が関わっている。

人体は毎日約二百グラムのタンパク質を作る。食事で取るのは七十~八十グラム。体内では分解されたタンパク質がうまくリサイクルされている。二、三カ月で体内のタンパク質は全て入れ替わる。分解はダイナミックで大切な仕組みだ。

オートファジーまだ解明途上

私自身の研究の話をする。酵母の液胞には、いつ、どうやって何が入っていくのかが課題だった。飢餓状態にすると細胞が劇的に変化する。このとき大規模にタンパク質が分解されると考えた。

私は競争を好む入間ではなかったが、顕微鏡をのぞいて観察する時間は誰よりも長かった。飢餓状態にした酵母の液胞を見ると、何かが動き回っているのが見えた。新しい現象の発見で、これが私の研究の出発点となった。

数多くの酵母を調べ、オートファジーに関わる遺伝子を十四個見つけた。基礎生物学研究所(愛知県)に移り、吉森保氏(現・大阪大特別教授)や水島昇氏(現・東京大教授)らが加わった。植物や哺乳類にも同様の遺伝子があり、オートファジーは生物の長い進化の歴史とともにあったことが分かった。

オートファジーはリサイクルだけでなく、不要なタンパク質の分解や細菌から身を守ることにも関わっていた。最近では人間の病気との関連も調べられている。だが私たちは今後も酵母を研究したい。まだ解明すべきことは多いからだ。

常に好奇心に駆られ研究してきた。始めたころは、オートファジーが神経疾患や感染症、がんに関わっているとこれほど早く示されるとは思わなかったが、今この研究は生物学の一大分野になった。世界中の研究者のおかげだ。この栄誉を分かち合いたい。

科学者はすぐに役に立つ成果を求められている。科学に有益性だけを求めるのではなく、社会は基礎科学を文化と考えてほしい。ノーベル財団が基礎研究の成果を取り上げてくれてうれしい。素晴らしい同僚や友人、家族、特に妻・萬里子にありがとうを言いたい。(共同)

tky161208nobel7日、ストックホルムで記念講演を終え、写真に納まる大隅良典東京工業大栄誉教授(右) と妻の萬里子さん=共同

 

大隅氏ストックホルムで公式会見 「素朴な疑問を追究してほしい」

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016120701001713.html
2016年12月8日 07時19分【東京新聞・社会】

ストックホルムのカロリンスカ研究所で記念講演する大隅良典東京工業大栄誉教授=7日(共同)

【ストックホルム共同】ノーベル医学生理学賞の授賞式出席のためスウェーデンを訪れている大隅良典・東京工業大栄誉教授(71)は7日、ストックホルムのカロリンスカ研究所で公式記者会見と記念講演に臨んだ。会見では「興味を持てる分野で、最初に持った素朴な疑問を追究してほしい」と若者にメッセージを送った。

「細胞内のリサイクルシステム」と題した英語の記念講演では「科学に有益性だけを求めるのではなく、社会は基礎科学を一つの文化と考えてほしい」と訴えた。

 

大隅さん「まだ多くの疑問。研究は続く」 ノーベル賞記念講演

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016120802000129.html
2016年12月8日 朝刊【東京新聞・社会】

【ストックホルム=小嶋麻友美】ノーベル医学生理学賞を受賞する大隅良典・東京工業大栄誉教授(71)が七日、ストックホルムのカロリンスカ研究所で「細胞内のリサイクルシステム」と題して記念講演をした。授賞理由となったオートファジー(細胞の自食作用)の研究を振り返り、「まだ多くの疑問が残されており、研究は続く」と述べた。

オートファジーは、動物や植物の細胞が内部で不要になったタンパク質を分解し、栄養として再利用する仕組み。講演は、魚や昆虫など自然に親しんだ幼少期の思い出から始まり、「流行ではない研究をしようと思った」と酵母に着目した経緯を説明。「いつも酵母を見るのに夢中で、誰よりも長く顕微鏡の前に座っていた」と振り返った。

一九九六年からの愛知県岡崎市の基礎生物学研究所時代は「良い結果を生み出す環境を与えてくれた」と指摘。「素晴らしい仲間や家族の支えに感謝したい」と締めくくった。

講演に先立ち、カロリンスカ研究所で行われた記者会見では「純粋な心で、疑問を持ち続けることが大切」と次世代にエール。オートファジーが授賞対象になったことが「基礎研究の大事さを語っていると思う」と述べ、「謎が解かれた時、新たな謎が生まれるのが科学。こんなに分からないことがたくさんあるんだ、と知ってもらうことが大切だと思う」と述べた。大隅さんは十日の授賞式などのイベントを控え「とても緊張している。まだお酒を楽しめる状況ではないが、いつそんな心境になれるのか楽しみ」と話した。

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