【3/3東京新聞】危険行為でなくても処罰 「共謀罪」のテロ準備罪 どう違う?従来の準備罪【核心】「共謀罪」法案に「テロ」明記検討 市民対象の懸念変わらず【一面・政治】

危険行為でなくても処罰 「共謀罪」のテロ準備罪 どう違う?従来の準備罪

2017年3月3日【東京新聞・核心】

 準備行為に「その他」

  メールや弁当買い出しも

犯罪に合意したことを処罰対象とする「共謀罪」と趣旨が同じ「テロ等準備罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案。政府・与党は今国会での成立を目指し、議論を進めている。しかし、現行法にも予備罪や準備罪がある。新たなテロ等準備罪は名前は似ているが、処罰対象は大きく拡大する。どう違うのか。 (山田祐一郎、西田義洋)=1面参照

 ■現行法

犯罪は心の中で考えただけでは処罰されず、既遂や未遂など現実的な危険が生じて初めて処罰対象となるのが原則だが、殺人や強盗などの重大犯罪は例外的に、未遂より前の準備段階の行為、共謀・陰謀を処罰できる。
現行法の準備罪(予備罪)には殺人予備や航空機強取等予備、放射線発散予備などがある。準備行為そのものが処罰対象になり、殺人予備の場合、殺人目的で凶器や毒物を用意して下見をするなどの行為が処罰される。危険な行為が対象となる。
しかし、政府は危険な行為に対象を限定しては、テロや組織犯罪を未然に防ぐことはできないと主張。現行法で対応できない例として、テ口組織が複数の飛行機を乗っ取って高層ビルに突撃させるテロを計画し、搭乗予定の飛行機の航空券を予約した場合などを挙げ、テロ等準備罪が必要な理由の一つとして説明している。
ちなみに、国会では、航空券予約が現行のハイジャック防止法の航空機強取等予備罪を適用できる準備行為なのかどうかが争点になった。現行法で対応できるとする野党に、政府は「航空券予約という行為があったとしても、客観的に相当の危険性が認められる程度の準備が整えられた段階に当たらないと裁判所に判断される場合があるので、直ちに検挙できない」と反論している。

 

 ■不明確

テロ等準備罪を新設し、対象を危険な行為以外に広げた場合、歯止めが必要になるが、テロ等準備罪の「準備行為」は「資金または物品の手配、関係場所の下見その他」と規定。政府はハイジャックテロの航空券予約や、犯行資金をATMで下ろすことがこれに当たる場合があると説明する。
しかし、「その他」となっているため、準備行為の範囲は極めて不明確だ。
例えば、「社長の譲歩が得られるまで徹夜も辞さない」と決めた労組が、捜査機関の裁量で組織的強要を目的とする組織的犯罪集団と認定された場合、入手を集めるために電話やメールで連絡したり、誰か一人が弁当の買い出しに行ったりすれば、それが準備行為とされる可能性がある。
テロ等準備罪の準備行為は日常的な行為にすぎず、具体的・現実的な危険はないので、政府はそれだりでは逮捕も起訴もできないと説明。犯罪として処罰されるのはあくまで「合意」だが、目配せだりでも合意とみなされることがあるため、捜査当局が意のままに解釈する恐れもある。
立命館大の渕野貴生教授(刑事訴訟法)は「準備行為自体に一定の危険がある場合に処罰するのが準備罪。新たな法案では、お金を引き出すなど、日常生活上の何げない行為が処罰につながる可能性がある。それなのに、テロに直接つながるような危険な準備行為だけが処罰されるかのようにイメージを作り出している点で非常に問題だ」と指摘する。

 

 犯罪の発生段階での「テロ等準備罪」と「準備罪」の違い

「共謀・陰謀」 犯罪の合意

準 備 行 為

「予備・準備」具体的な準備

「未遂」犯罪の実行の着手
-----------
テロ等準備罪

処罰対象は準備行為でなく合憲

「準備行為」そのものは犯罪とはされない程度の行為で処罰対ではない。「犯罪の合意」が処罰対象なのに「準備罪」という呼称を使用

【準備行為の例】
タクシーに乗る
ATMでお金を下ろす

現行法の準備罪・予備罪

準備行為が処罰対象となる

犯行に着手する前の段階で行われ、犯行に直接結びつく「準備行為」を処罰する

【準備行為の例】
殺人目的で凶器や毒物を用意

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「共謀罪」法案に「テロ」明記検討 市民対象の懸念変わらず

2017年3月3日 朝刊【東京新聞・政治】
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201703/CK2017030302000126.html

政府は二日、与党の要請を受けて「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案に「テロ」の文言を明記する検討に入った。「テロ」の表記なしでは国民の理解が得られにくいとの指摘に配慮した。修正されても、内心の処罰につながる恐れや一般市民が対象になる余地が残ることは変わらない。

法案を審査した二日の自民党法務部会では、出席議員から「このままでは、『テロ等準備罪』の呼称が使われなくなる」「国民に説明するには(処罰対象が)テロリズム集団だと入れ込むのが大前提だ」などの意見が出され、法務省側が検討を明言した。

このほか法務部会では、対象犯罪を二百七十七にした理由が曖昧な点や、現場を下見するなどの「準備行為」が処罰の対象になるかどうかを巡る法務省側の説明が不明確なことへの不満が相次いだ。

公明党の漆原良夫中央幹事会会長も会見で「テロ」と明記することに「やぶさかではない」と述べた。

民進党の山井和則国対委員長は二日、「『テロ』という言葉が入っていないのは(法案は)テロ対策が中心でないということだ。それを覆い隠すために『テロ』という言葉を入れるのは本末転倒だ」と批判した。

政府が法案を二〇二〇年の東京五輪・パラリンピックでのテロ対策の柱と位置付け、共謀罪の呼称を「テロ等準備罪」に変えたが、与党に示した条文には「テロ」の文言がなかった。

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