3/10「レベル7」から6年 学ばぬ電力会社 東電 続く安全後回し 免震重要棟 耐震不足3年未報告 「隠蔽変わらぬ」あきれる地元【東京新聞・特報】

なるほど!
-免震重要棟にこだわっていた新潟県知事が辞めたから、柏崎刈羽は耐震でいいとでも思ったー

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「レベル7」から6年 学ばぬ電力会社

東電 続く安全後回し

免震重要棟 耐震不足3年未報告

「隠蔽変わらぬ」あきれる地元

2017年3月10日【東京新聞・こちら特報部】

東京電力の「安全文化」は大丈夫か。そう疑わせる問題がまたしても噴出した。先月、柏崎刈羽原発(新潟県)の免震重要棟の耐震性不足を三年近くも報告していなかったことが発覚。原子力規制委員会から、再稼働を目指す6、7号機の審査申請書の出し直しを求められた。前代未聞の事態に、新潟県や地元自治体も反発を強めている。この六年、レベル7事故から何を学んだのか。 (佐藤大、沢田千秋)

「隠蔽-いんぺい-体質はこうも変わらないものか」。路肩に雪が残る柏崎市の中心部で九日、市内の画家岩下尊弘さん(八五)が嘆息した。

東電の免震重要棟の耐震性不足問題にはあきれかえった様子。「大企業というのはこういうものなのか。原発事故前の景気が良かったころは、絵を買ってくれる人も多くて、私なんかも恩恵を受けた。でもこんなんじゃ再稼働に反対するしかない」

柏崎刈羽の免震重要棟は二OO九年に設けられた。O七年の新潟県中越沖地震で、緊急時の対応拠点が使えなかったのをきっかけに東電が導入。福島第一原発では東日本大震災の八カ月前に完成し、事故収束の前線基地として威力を発揮した。

一三年九月に柏崎刈羽原発6、7号機の審査を申請した東電は、新規制基準が求める緊急時対策所として、その免震重要棟を使うとしてきた。だが、先月中旬、耐震構造の施設で対応するとして方針を撤回。その中で急浮上したのが「耐震性不足」問題だ。

東電によると、一三年十二月に行った免震重要棟の耐震性の解析で、新規制基準が想定する七パターンの地震の揺れのうち五つで耐震性不足が判明。この件については規制委にも説明し、別の対応拠点と使い分げるとしてきた。だが、一四年四月の再解析で全ての揺れに耐えられない可能性を確認したことは伝えず、東電側は「一部の地震では基準を満足できない」という曖昧な言い方を続けた。

報告を受けた原子力規制委の田中俊一委員長は「情報遅絡が大事なところで抜けているのは、かなりの重症だ」と企業体質を批判。東電の広瀬直己社長に審査申請書を総点検し、出し直すよう要請した。

「こちら特報部」の取材に東電の広報担当者は「一四年の解析は極端な数字が出たため信頼性に劣ると考えた。一三年にすでに新基準を満たさないことを報告しており、報告しなくても影響は少ないと考えた」と説明している。

だが、三年近くも事実を隠された地元の怒りは大きい。新潟県の米山隆一知事はもとより、再稼働を条件付きで容認する姿勢を示している桜井雅浩・柏崎市長も「再稼働を認めないという立場に考えが変わる可能性もある」と不信感を隠さない。

地域住民らによる「柏崎刈羽原発の透明性を確保する地域の会」の一日の会合では、推進派からも厳しい意見が上がった。出席した「原発反対刈羽村を守る会」の高桑千恵さん(七一)は「東電側は『説明が悪かった』という趣旨の釈明を繰り返したが、そんな問題なのか。これまで免震重要棟の重要性を強調してきたのは何だったのか」と憤る。

東電は翌二日、広瀬社長、木村公一新潟本社代表の連名で「新潟県の皆さまへのお詫び」を発表。「組織内の情報共有が不十分」で審査の混乱を招いたとし、「意識改革の取り組みが、まだまだ不足しているという事実を重く受け止める」などと謝罪した。

備え「後退」九電でも

 緊急時対策所 免震撤回し耐震に

  「コストや工期優先」

   規制委も追認「意識に緩み」

だが、東電の「反省」を額面どおりに受け止める住民は多くない。

福島第一原発事故の当事者にもかかわらず、柏崎刈羽の再稼働を急ぐ姿勢に、「安全」を後回ししているとの疑念は深まる一方だ。

一五年に敷地内のケーブルが不適切に敷設されていた問題でも、東電は昨年十月、金号機の中央制御室床下のケーブルを是正し終えたと発表したが、その後も不適切な敷設が相次いで見つかっている。

6、7号機の審査中の「方針変更」も今回が初めてではないのだ。

そもそも、東電は事故前の二OO二年に、自主点検で見つかった炉内機器のひび割れなどのトラブル記録を改ざんし、記録隠しをするなどの「トラブル隠し」が大問題となっている。その教訓は福島第一原発事故に生かされなかった。

柏崎刈羽原発反対地元三団体共同代表で柏崎市議の矢部忠夫氏は「ニOO二年のトラブル隠し後、『しない風土、させない仕組み、言い出す仕組み』を構築すると約束した。でも、それ以降も次から次へと問題を起こしている。福島第一原発事故では炉心溶融すら隠蔽した。あり得ないことを平気でやる企業だ、とあらためて分かった」と突き放すように話す。

前出の高桑さんも「東電は何かあると『福島の事故の原点に戻って』と言うが、原点に戻ったら、再稼働はできない。言葉が遊んでいる。経済を優先して再稼働した結果、福島のような事故が起こったらいったいどうするのか。根本からちゃんと考えていないのではないのか」と訴える。

免震重要棟を巡る電力会社の「翻意」は東電にとどまらない。日本の商業用原発四十二基のうち、原子力規制委員会は、六原発十二基を新規制基準に「適合」とした。

新基準で初めて、二O一五年に再稼働した九州電力川内原発l、2号機(鹿児島県)は再稼働後に、緊対所を免震ではなく耐震構造にすると転換した。同じく九電の玄海原発3、4号機(佐賀県)は審査の最中、緊対所を免震から耐震に変更し「適合」を得た。

関西電力大飯原発3、4号機は一四年に福井地裁で運転差し止め判決が出て、耐震性などが不安視される中、控訴審判決を待たずに、今年二月、規制委から「適合」の判断が出た。

新基準には緊急時対策所が免震か耐震か構造上の規定はないが、審査の最中にそう簡単に方針が変更されてよいものなのか。

原発の技術的問題点を研究する「プラント技術者の会」の筒井哲郎氏は「耐震は建物が壊れない強度を持つことで、内部は大きく揺れる。免震はゴム製免震装置の上に建物を載せ、地面が揺れても建物の揺れは少ない。原発事故時、作業員には冷静な判断と操作が求められるため、緊急時対策所は免震であるべきだ」と主張する。

なぜ電力会社は耐震を採用するのか。筒井氏は「免震は一から建設するため費用がかかるが、耐震なら既存の建物の補強で済む。コスト削減目的だろう」として、電力会社の判断を許容する規制委にも批判を向ける。「当初は電力会社の耐震への変更に不快感を示した規制委も最近は妥協している。震災から六年がたち、両者とも安全意識がゆるんでいるのではないか」

原子力資料情報室の伴英幸事務局長も「福島事故時、東電も免震重要棟の有用性を認め、他社も免震の効果を分かっているのに、最近は金や工期など経済性を優先してしまっている。免震重要棟にこだわっていた新潟県知事が辞めたから、柏崎刈羽は耐震でいいとでも思ったのか」と批判した。

デスクメモ

「連絡不足」という東電の説明を信じれば、現場の判断ミスということになる。やっちゃいけないときに失敗するのが人間だから、それもありうる。そもそも、レベル7事故の責任さえ問われない組織の緊張感はどれほどか。人と組織の弱さを前提にしない「安全」は空論にすぎない。(洋) 2017・3・10

 

免震重要棟の耐震問題に揺れる新潟県の東京電力柏崎刈羽原発=2016年4月

(右)原子力規制委の臨時会合後、取材に応じる東京電力の広瀬直己。規制委から柏崎刈羽原発6、7号機の審査申請書の出し直しを求められた=2月28日、東京都港区で
(左)東京電力福島第一原発の免震重要棟で、災害対策本部会議に集まった作業員ら=2011年4月1日(東京電力提供)

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カテゴリー: 関西電力, 再稼働, 地震, 中日東京新聞・特報 タグ: パーマリンク