3/29新基準そのまま追認 高裁、高浜再稼働認める/住民側に立証責任 弁護団「新たな安全神話だ」【東京新聞・核心】

新基準そのまま追認 高裁、高浜再稼働認める

住民側に立証責任

弁護団「新たな安全神話だ」

2017年3月29日【東京新聞・核心】

関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止めを命じた大津地裁の仮処分決定に対し、大阪高裁は二十八日、正反対の結論を導いた。原子力規制委員会の新規制基準をそのまま追認し、再稼働を認めた。原発の安全性をどこまで主体的に判断しているのか。(角雄記、井本拓志、中崎裕)

 

 ■規制当局の資料

「新たな安全神話と言うしかない。新規制基準に盲従する姿勢は本当に残念」。仮処分を申し立てた住民側の井戸謙一弁護団長は、大阪市内の記者会見で怒りをあらわにした。

明暗を分けたのは、東京電力福島第一原発事故後に策定された新規制基準への評価だった。大津地裁の決定は基準に適合しても、それだけでは「安全性の主張・立証は不十分」とし、基準の妥当性などの立証を関電に求めた。

だが、高裁決定は新規制基準を「福島原発事故を踏まえ、地震や津波に対する安全性や重大事故対策の検討が重ねられている」と認定。「不合理とはいえない」と言い切ったうえ「原発が新規制基準に適合している場合は、住民側が基準自体が合理性を欠くことを立証する必要がある」と責任を住民に押し付けた。

大きく判断が分かれた一つの鍵は、原子力規制委員会が「一般の人に広く知ってもらうため」として昨夏公表した「新規制基準の考え方」だ。基準が求める対策などをQ&A方式で、三百ページ以上にわたって解説しており、地裁では基準の合理性の詳述を避けた関電が高裁に提出した。

今回の決定を読んだ井戸弁護団長は「ほとんどが『考え方』の引き写し」と指摘。規制当局が作成した資料が、規制される側の電力会社への「援護射撃」となった。旧原子力安全委員会事務局で技術参与を務めた滝谷紘一さん(七四)は「裁判官を説得するトーンに読める。規制委自体が原発を推進する国の政策に沿って進んでいる印象で、事業者を支えている側面は否定できない」とみる。

 ■被害風化を懸念

一審の大津地裁は、住民の避難計画が規制委の審査に含まれない点について、「計画を視野に入れた規制基準が望まれる」と指摘した。ところが、高裁は避難計画は電力会社だけで担うものではないという理由で、規制対象から除外することを妥当と判断した。

昨年八月に高浜原発での事故を想定した訓練では、計画でマイカーでの避難が基本とされるのに、大半がバスで避難。へリで避難する予定が、悪天候で飛べないなど多くの課題が浮き彫りとなり、実効性が担保されているかは疑問が残る。

高裁は避難計画について「さまざまな点においていまだ改善の余地がある」と認めながら「内容は適切」と判示。「周辺環境への放射性物質の異常な放出に至ることはまず想定しがたい」との見解も示した。住民側の河合弘之弁護士は「過酷事故なんて起きないから大丈夫という考えで、多理防護という思想の否定だ」と批判する。

立命館大大学院法務研究科の吉村良一特任教授(環境法)は、福島原発事故の風化が裁判所の判断に影響している可能性を指摘。

「どの裁判官も、原発事故の被害の大きさを目の当たりにして思うところがあったはずだ。『重大事故は二度と起こさせない』という気待ちをどれだけの裁判官が持ち続けているのか」と懸念した。

 

(図)関西電力の手続きの流れ

高浜原発と運転差し止め

関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)は1985年に営業運転を開始した。避難計画の策定が必要な半径30キロ圏には福井県だけでなく滋賀県や京都府の一部を含む。東京電力福島第一原発事故後に再稼働や運転の是非が争われ、福井地裁は2015年4月に再嫁働差し止めの仮処分決定を出したが、関電の異議で同年12月に覆った。半径約70キロまでの範囲に住む滋賀県の住民が申し立てた2度目の仮処分で大津地裁が昨年3月に運転差し止めを訣定.その後法的に運転できない状態が続き、関電は2基の核燃斜を取り出した。40年超の運転を自指す1、2号機は、原子力規制委員会が運転延長を昨年認可した。

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