三好達治の『灰が降る』を読む-正気の詩には社会性が出る-(三好龍孝 記)

都市クリエイトの弁護士があまりにも物知らずなので、ここに載せておこうと思う。

四年前に上牧の本澄寺で『三好達治没後49年 詩の朗読会』があり、本澄寺のご住職・三好龍孝師に、この評論を頂戴したからである。

「高槻のゴミ焼却場のある地区で暮らすばあちゃんの日記」の4年前を覗いてみたら載っていた。

三好達治没後49年 詩の朗読会   2013年03月29日    三好龍孝住職が故三好達治氏の甥だとこのチラシでわかるはず。

詩の朗読会  2013年04月21日

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 灰が降る  三好達治

灰が降る灰が降る

成層圏から灰が降る

灰が降る灰が降る

 

世界一列灰が降る

北極熊もペンギンも

榔子も董も鶯も

知らぬが仏でいるうちに

世界一列店だてだ  (注1)

 

一つの胡桃をわけあって

彼らが何をするだろう

死の総計の灰をまく

とんだ花咲爺さんだ

蛍いっぴき飛ぶでなく

いっそさっぱりするだろか

学校という学校が

それから休みになるだろう

銀行の窓こじあける

ギャングもいなくなるだろう

 

それから六千五百年     (注2)

地球はぐっすり寝るだろう

それから六万五千年

それでも地球は寝てるだろう

 

小さな胡桃をとりあって

彼らが何をしただろう

お月さまが

囁いた

昔々あの星に

利巧な猿が住んでいた

※「フクシマ」に合わせて原作の行間を改変した。
漢字・かなも現代表記とした。

(注1)店だて=たなだて・借家人を借家[店]から追い立てること

(注2)六千五百年はプルトニウム240の半減期です。
半減期の十倍の六万五千年で放射能は2の十乗分の1(約千分の一)になり、影響はやっと少なくなります。

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  三好達治の『灰が降る』を読む      -正気の詩には社会性が出る-

 

1954(昭29)年4月刊の「別冊文芸春秋」に発表されたこの詩は、その直前の3月1日にアメリカのビキニ水爆実験で第五福竜丸以下の数百・千隻の漁船が死の灰で被曝したことによる。「灰が降る灰が降る/成層圏から灰が降る//灰が降る灰が降る/世界一列灰が降る」「北極熊も(南極の)ペンギンも(南洋の)榔子も(日本の)菫も鶯も」「知らぬが佛でいるうちに」人間よりも純真なあらゆる生物たちが、「世界一列店(たな)だてだ(借家人を店[借家〕から追い立てること)」。近くのロンゲラップ環礁の住民は被曝で避難し今も帰れず、さて歌舞伎のせりふでは、“店子(たなこ)といえば子も同然”、それを皆んな立ち退かせる。「知らぬが佛」がやがて「店だて」、今の福島の日本のことです。

「一つの胡桃(クルミ)をわけあって/彼らが何をするだろう」は地球が「胡桃」で、「彼ら」米・英・ソ連(ロシア)の連合国が1945年のヤルタ会談で国連を設立する戦後世界の分割を決め、ドイツ降伏3カ月後のソ連の日本侵攻開始を密約した。アメリカはその間に(特に実用兵器として優秀なプルトニウム型の)原爆完成を急ぎ、プルトニウム型原爆の唯一保持を誇示して戦後の主導権を握ろうと考えた。それでアメリカは、日本で原爆使用の実演をすべく、原爆完成前に日本が降伏しないよう、日本の戦力を温存させて兵器工場等への爆撃はしばし控え(例えば大阪造兵工廠は焼け野原の大阪の街中に、敗戦前日の8月14日に空爆されるまで健在に残された)、降伏を迫る7月26日のポツダム宣言も、わざと天皇制の存廃を暖昧にして、日本がすぐには受諾降伏しないようにした。この間やっと7月16日にプルトニウム型原爆の実験に成功、投下予定は8月20日とした。ところがソ連軍が予想より迅速に極東に展開、ドイツ降伏のきっちり3カ月後の8月8日に日本侵攻開始となった。アメリカはソ連の進出域にはらはらしたが、原爆投下を最優先して限界にまで日を急ぎ、広島に次いで8月9日にプルトニウム型原爆を長崎に投下した。共産主義ソ連の急な侵攻に日本は天皇制の危機を見、あわてて9日早朝に閣議でポツダム宣言受諾を決し、長崎投下はそのあと午前11時2分だった。(原爆で受諾したのではない。)その後1949年にソ連も原爆実験に成功、次いで米・ソ両国は水爆実験の競争に入った。

「死の総計の灰をまく/とんだ花咲爺さんだ//蛍いっぴき飛ぶでなく/いっそさっぱりするだろか//学校という学校が/それから休みになるだろう//銀行の窓こじあける/ギャングもいなくなるだろう」、この60年前の透視が、今の福島の日本の現実となった。

人間が降らせた放射性物質、その代表の、自然界にほぼ存在しないプルトニウム同位体-Pu240の半減期(量的影響が半分になる期間)が6500年かかる。その間「それから六千五百年/地球はぐっすり寝るだろう」。そして半減期の10倍「それから六萬五千年」、やっと影響は千分のーになる。だがもはや遅いのだ、「それでも地球は寝てるだろう」。

今日の原発問題の本質は、戦後世界支配の核武装競争に始まり、憲法9条の問題でもあります。「小さな胡桃をとりあって/彼らが何をしただろう//お月さまが/囁いた//昔々あの星に/利巧な猿が住んでいた」、現代詩は三好達治を越えているか。

(三好龍孝 記)

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