4/12根底に切り捨て政策 「自己責任」発言謝罪、撤回でも 今村復興相に収まらぬ怒り/存在の耐えられない軽さ 「被災者に向き合わず」 歴代の復興相 暴言、疑惑…【東京新聞・特報】

根底に切り捨て政策

 「自己責任」発言謝罪、撤回でも

  今村復興相に収まらぬ怒り

2017年4月12日【東京新聞・こちら特報部】

今村雅弘復興相(70)は、東京電力福島第一原発事故の自主避難者を巡る「自己責任」発言を撤回したものの、辞任を求める声はやまない。今村氏は過去にも被災地の思いを踏みにじる発言を繰り返し、その資質が問われてきた。そもそも国や福島県は、自主避難者への住宅無償提供を三月末で打ち切ったことからも分かるとおり、帰還しないのは「自己責任」と言わんばかりの態度だ。今村氏や安倍晋三首相が、今回の騒動を本当に反省しているのなら、震災復興のあり方を抜本的に見直すべきではないのか。 (木村留美、池田悌一)

(右)復興庁が入る合同庁舎4号館の前で今村復興相の発言うに抗議する人たち=5日、東京・霞が関で

(左)衆院東日本大震災復興特別委で答弁する今村復興相=11日、国会で

 

十一日の衆院東日本大震災復興特別委員会では、野党側から「辞任に値する」などと厳しい指摘が相次いだ。今村氏は「私の表現の仕方が結果的に迷惑を掛けていることは十分に反省している」とあらためて謝罪する一方、辞任しない考えも重ねて強調した。

「自己責任」発言は、ちょうど一週間前の四日の閣議後会見で飛び出した。フリー記者の西中誠一郎氏が、国と福島県が三月三十一日で住宅の無償提供を打ち切る中、今も故郷に帰れない自主避難者について「自己責任か」と追及したところ、今村氏は「基本はそうだと思う」と発言。「国は責任をとらないのか」との質問にも「裁判でも何でもやればいいじゃない」と言い放ち、最後は「うるさい」と怒鳴り散らしながら退席してしまった。

この言動を自主避難者や野党は当然問題視した。避難者の支援団体「避難の協同センター」や、原発訴訟を起こした原告らでつくる「原発事故避難者団体連絡会」など四団体は六日、発言の撤回と大臣辞任を求める約二万八千人分の署名を今村氏に宛てて提出した。

今村氏は四日夕の段階では「客観的に言ったつもりだ」と釈明するにとどまったが、六日の衆院復興特別委で「皆さまにご迷感をかけたことをおわびする」と謝罪。続く七日の閣議後会見で、「自己責任」発言について「誤解を与えた」「徹回と理解してもらって結構だ」と渋々撤回した。安倍首相は八日、視察先の福島県南相馬市で記者団に「復興相から既に謝罪をしているが、私からも率直におわびを申し上げたい」と陳謝した。

だが、怒りは収まらない。十一日の衆院復興特別委で質問に立った民進党の金子恵美衆院議員(比例東北)は「こちら特報部」の取材に「撤回と言うが『撤回と理解してもらって結構』という言い方で謝罪したとは言えないものだった。きちんと被災者に向き合い、自分の言葉で謝罪や発言徹回をすべきだ。それができないなら辞任するしかない」と断じる。

四団体は引き続き今村氏の辞任を要求している。「原発事故被害者団体連絡会」共同代表の武藤類子さんは「撤回したとはいえ、責任を感じているように伝わってこない」と批判した上で、「今村氏個人も問題だが、根底にあるのは政府の考え方ではないか」と唱える。「避難者の多くが生活困窮に陥りながら、避難の理由である放射能被害から家族を守るために奮闘している。今村氏も政府もそうした実情を知ろうとせず、見せかげの復興のために帰還を促している」

「避難の協同センター」世話人の満田夏花-かんな-さんも「大臣の舌禍事件に見えるが、自己責任論は復興庁の政策の延長線上にある」と説く。

「復興庁にとって避難者を減らすことは復興のバロメーター。復興庁は、自主避難者の県別の数や居住する住宅の種類すら十分に把握していない状態で、県任せ。支援や賠償を打ち切って追い込むことで、帰還を促進するような政策は被災者を踏みにじっている」

存在の耐えられない軽さ

 「被災者に向き合わず」

 歴代の復興相 暴言、疑惑…

今村氏の暴言・放言は今に始まったことではない。福島県産の農産物は原発事故の「風評被害」が拭いきれていないが、今村氏は昨年十一月の記者会見で「生産者の努力がまだまだ必要だ」と突き放した。

今年一月に福島市で開催された福島復興再生協議会では、会議の冒頭、「福島の復興はマラソンでいうと三十キロ地点。ここが勝負どころだ」と発言。同席した内堀雅雄知事は会議後、記者団に「避難指示区域ではまだスタートラインに立っていない地域もある。解除された地域の復興も序の口だ」と苦言を呈した。

三月には、NHKの討論番組で自主避難者への見解を問われ、「故郷を捨てるというのは簡単。(故郷に)戻って頑張っていく気持ちをもってほしい」と言ってのけた。

そもそも今村氏は、経歴からして「復興」とは縁遠い。佐賀県出身の今村氏は旧国鉄、JR九州を経て、一九九六年の衆院選で初当選。国土交通や農水関係の役職を歴任した後、七期目の昨年八月、復興相として初入閣した。自身のホームページには「信条・政策」として教育や農水など六つのキーワードが並ぶが、「福島」や「復興」などの文言は見当たらない。

福島の復興問題に詳しい除本-よけもと -理史・大阪市立大教授(環境政策論)は「今村氏は今回の失言の前から問題発言を連発しているように、被災地の現状を知らないことは明らか。そういった人が復興行政のトップに就くことが、施策が実態とかみ合わない一因になっている」とみる。

復興相ポストの軽さも今回の騒動で露呈した。

「被災地に寄り添いながら、果断に復興を実施するための組織」を掲げる復興庁のトップは本来、「震災復興の司令塔」である。ところが、歴代の大臣は暴言、放言、スキャンダルのオンパレードだ。

復興相ポストは、民主党政権時代のニO一一年六月に設けられた復興対策担当相が前身だ。最初に就いたのは民主の松本龍氏だが、被災地訪問の際に岩手、宮城の県知事にそれぞれ「知恵を出さないヤツは助けない」「自分が入ってからお客さんを呼べ」と放言。在任九日で辞任した。

今村氏の前任の高木毅氏は、過去に女性の下着を盗んだ疑惑を週刊誌で報じられ、その後も選挙区内の香典支出問題などに揺れた。

第二次安倍政権になって以降、四人誕生した復興相はいずれも初入閣組だ。

金子勝・慶応大教授(財政学)は「安倍政権は復興型ポストを大臣経験の場としか考えていないのではないか。被災者に十分に向き合おうとする姿勢がない表れだ」とあきれる。

特に今村氏については、東京電力ホールディングスの株式保有を問題視する。就任時の会見で八千株保有していることを明らかにしたが、金子氏は「避難者の帰還を進めることは、東電にとってもプラスになる。今回の発言は利益相反が疑われても仕方がない行為で、安倍政権が国を私物化しょうとしている表れとも言える」と指弾する。

「国の私物化」は森友騒動でもたびたび言及されている。金子氏はメディアの奮起を促す。「森友騒動では、国有地の格安売却と安倍首相夫人との関係が取り沙汰され、稲田朋美防衛相の虚偽答弁まで飛び出した。いまや政権は何でもありになりつつある。国民がしっかりとした問題意識を持つためにも、メディアは徹底的に追及すべきだ」

 「それは本人の責任でしょう」

   「裁判でも何でもやればいい」

今村雅弘復興相の4日の記者会見で、フリーの西中誠一郎記者との質疑の要旨は以下の通り。

記者  (3月)31日に自主遜雛者の住宅無償提供が打ち切られた。自主避難者に対する国の責任をどう感じているか。
今村氏 国として、福島県をサポートしながらやっていく。
記者   福島県外から避難している人もいる。
今村氏 福島県が現地の事情に詳しいのでお願いし、それを国がサポートする図式でいきたい。
記者   国が率先して責任をとらなげれば、路頭に迷う家族がでてくる。その責任をどうとるのか。
今村氏 国がどうだこうだと言うよりも、基本的には本人が判断することだ。
記者   帰れない人はどうするのか。
今村氏 それは本人の責任でしょう。本人の判断でしょう.
記者   自己責任か。
今村氏 基本はそうだと思う。
記者   国は責任をとらない(ということか)。
今村氏 裁判でも何でもやればいいじゃない。また、やったじゃないですか。それなりに国の責任もありますねと言った。舗償の金額もご存じの通りの状況でしょう。
記者   自主避難者にはお金は出ていない。
今村氏  ここは論争の場ではないから。
記者   責任持って回答してください。
今村氏  責任持ってやっているじゃないですか。何て無礼なことを言うんだ。撤回しなさい。
記者    撤回しない。
今村氏  出て行きなさい。二度と来ないでください、人を中傷、誹誘{ひぼう)するようなことは許さない。
記者   避難者を困らせているのはあなたです。
今村氏  うるさい。

歴代の復興相

大臣名   党名 時期
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平野達男  民主 2012年2月~12月
根本 匠   自民 12年12月~14年9月
竹下 亘   自民 14年9月~15年10月
高木 毅   自民 15年10月~16年8月
今村雅弘  自民 16年8月~

デスクメモ

最近の記者は、ろくに相手の顔も見ず、速記者のごとくパソコンに発言内容を打ち込んでいく。動画サイトにアップされた会見場にパチパチと耳障りな音が響くのはそのためだ。当然、微妙な表情の動きから感情の揺れを察知できず、二の矢、三の矢の質問を浴びせることも難しい。(圭) 2017・4・12

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