「原発に抗う―『プロメテウスの罠』で問うたこと」 (著:本田雅和) 

昨夏著者(本田雅和記者)に受賞のお祝いを申し上げた際「『プロメテウスの罠』の本にはならないのですか」と問うてみたら、本田記者はご自分で刊行されるおつもりだと仰られた。
でも、それがいつなのかわからず、鬱勃としていたのだが(鬱勃の原因は高浜再稼働の可能性だったり、都市クリの産廃焼却炉建設計画のせいだったり、変な小出・今中ファンのコメントの荒らしや深夜早朝に亘る無言電話やらだったり)
本田記者のお名前で検索したら、新著はすでに発行されているのがわかった。
書評もWeb上でみつかった。さっそく買わなくては!

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「原発に抗う~本田雅和『プロメテウスの罠』で問うたこと」を読む

2017年02月05日14:06 【志村建世のブログ】
http://blog.livedoor.jp/shimuratakeyo/archives/55721980.html

2016年12月31日、つまり昨年の大晦日が発行日になっている新刊です。著者の本田雅和は朝日新聞記者として連載「プロメテウスの罠」にかかわりました。発行所は緑風出版・単行本2000円。福島原発事故からすでに5年あまりが経過していますが、問題は何も解決していません。原発の存在とその事故の後始末とが、すぐれて現代的な課題であることを教えてくれます。写真を多用した読みやすい作りになっており、もっともっと話題になるべき本だと思いました。

扱われている大きなテーマは3つ、第一は汚染地区で「殺処分」に抵抗して牛を飼い続けている「希望の牧場」の話。第二は「原子力明るい未来のエネルギー」と掲げたスローガンの話。第三は自殺した妻と、怨念を抱えて権力に抗(あらが)う未来への話です。それらは過去の話としてではなく、現在進行中の緊迫感をもって報告されるので、読者は「起きてしまったことの取り返しのつかなさ」に、否応なく対面させられるのです。

原発事故による汚染地区に指定された中で、「牛を殺すことはできない」と、300頭の牛とともに居残った酪農家がいました。自身も覚悟を決めて避難せず、汚染で使い道のなくなった周辺の飼料を集めて牛に食べさせ続けました。牛も乳も、もうどこにも売ることは不可能です。それでも人間の不始末の結果を押し付けて牛を殺すのは、正義に反すると考えるのです。牛は結果としては放射能の影響を長期的に調査するために役立つのですが、それが目的ではありませんでした。「希望の牧場」と名乗ったのは、生き物の命を、一片の権力の行使で奪うことへの抗議を込めているのです。

町の募集に応じて「原子力時代」を迎える標語を考えたのは、当時小学校の6年生だった少年でした。入選して表彰されたのは、1988年春のことです。その後不動産経営者として成功していましたが、原発事故以降は避難生活の連続に翻弄され、事業を含めた生活の一切が破壊されました。そんな中で「原子力明るい未来のエネルギー」の標語は、「原子力『破滅』未来のエネルギー」であったことを知るのです。そして、町がこの看板の撤去を計画していると知って、その現場保存の運動に乗り出しました。やがて危険防止の理由で看板は撤去されるのですが、町は復元可能を前提にして倉庫に保管しています。

原発事故は、無数の悲劇を引き起こして家庭生活を破壊しました。妻を焼身自殺で失った夫の悲しみは尽きません。原発問題は、すでに「取り返しのつかない」段階になっているのです。そして最後に著者はジャーナリストとしての深刻な警告を発しています。つまり、脱原発は自明のこととしても、経験が風化し関心が薄れるとともに実力のある技術者がいなくなり、廃炉段階での大事故の危険性が増すというのです。私たちはすでに、回復不能の重荷を、次の世代に残してしまったのです。

 

 

原発に抗う─『プロメテウスの罠』で問うたこと

http://www.ryokufu.com/isbn978-4-8461-1621-7n.html

本田雅和[著]
四六判上製/232頁/2000円
ISBN978-4-8461-1621-7 C0036

私の足下には「津波犠牲者」と呼ばれる死者たちが、今や骨の断片と化して眠っているはずだ。実はその多くが、原発事故により、捜索から取り残された犠牲者でもある。原発的なるものが、いかに故郷を奪い、人間を奪っていったか……。
しかし、5年を経て、何も解決していない。
フクシマに生きる記者の現場からの報告。(2016.10)

■目次
プロローグ
第1章 希望の牧場
国が殺せと言っている牛/被曝した牛とともに/3・11
汚染された牧草ロール/国は俺たちを棄民にしたんだ
東電本社へ直接抗議へ行く/東電本店で/牧場通い
同意書の提出/記者会見/訃報/被曝牛/白い斑点/獣医
牛は見せ物じゃないぞ/最後のエサだよ、ごめんね
原発一揆/親指の傷跡/見捨てない
生き残ったことが地獄/何しに来たんだ
自分で判断するように/命というものが最優先
あなたも子どもの父親でしょ/しなくてもいいのか
モリモリ食って、クソたれろ/菅原です
そうか、気をつけてな/牛はものを言えないから
望郷の牛/なぜ、こんなことに/慰霊の日
支え続けたのは/カネより命
第2章 原発スローガン「明るい未来」99一枚の写真
看板の撤去/大切に保存はウソなのか
優秀賞おめでとう/原発が危ないから逃げろ
会津若松の実家へ行きたい/自分たちは難民になったのだ
生まれる命、守り抜く/いたたまれない後ろめたさ
初の一時帰宅/世界一、間違った標語/ネットの中傷
加害者とは思えない東電の姿勢
「原子力 破滅を招くエネルギー」/二十六年目の訂正
過ちは訂正しなければ/もう帰れないね/なぜ撤去
修繕を求める要望書/署名集め
望郷の いよよ遙かに いわし雲/「何やってんだ 東電は」
後世に残していくのも我々の役割/そんなケチな人じゃあない
よほどの理由があったんです/原発は人間をバラバラにしてしまう
神隠しされた街/僕の標語の書き換えと同じですね
町民は関心も興味もあまりないんです/町は再び過ちを重ねるのでは
むごい現実であろうとも/その後……
第3章 妻よ……
謝罪して欲しい/ 花咲く山里/計画的避難区域に
家族がばらばらになっちゃって/やっぱり我が家はいいね
私はここに残る/すぐに帰宅するように/たべらっしぇ
死んだ者への責任は取らないのか/星降る山里で
第4章 抗いの声
南相馬、覚悟の若女将 避難解除で旅館再開
南相馬 五年四カ月後の避難指示解除、川房地区の住民 居住制限区域も解除に憤り
夫と娘を失った七十五歳・黒沢さん
十三年前のインタビュー・「真実を隠す国家が被害を広げている」
エピローグ
追記/惜別

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