6/20「共謀罪」も米国追従? 大量監視社会到来か【東京新聞・特報】

「共謀罪」も米国追従?

 拙速審議で来月にも施行

元CIAスノーデン氏証言が波紋

 「既に極秘システム提供」

2017年6月20日【東京新聞・こちら特報部】

 

成立した今も、多くの国民が理解できないでいる「共謀罪」法が七月に早くも施行される見通しだ。疑問は山積するが、とりわけ共謀罪による監視社会強化を懸念する声は強い。背後には、テロ対策名目で大量監視が進む米国の思惑も見え隠れする。明治以来の法体系をひっくりかえし、共謀罪は日本に何をもたらすのか。 (池田悌一、木村留美)

 

共謀罪法案が参院法務委員会で審議されていた今月初旬、共同通信が衝撃的なインタビューを報じた。

証言者は元CIA職員エドワード・スノーデン氏。亡命先のロシアで取材に応じたスノーデン氏は、米国家安全保障局(NSA)が極秘の情報監視システムを「日本側に供与していた」と明かした。

この情報監視システムは「XKEYSCORE(エックスキースコア)」と呼ばれるもの。メールや通話の内容、SNSの利用履歴などの情報を大量に収集するシステムで、ひとたびターゲットにされれば「私生活の完壁な記録を作ることができる」(スノーデン氏)とされる。

つまり日本政府も米政府と同様、個人のメールや通話などの大量監視が可能な状態にあるというわけだ。

スノーデン氏は、このような状況下で共謀罪まで新設されれば、「個人情報の大規模収集を公認することになる。日本における大量監視の始まりだ。政府と一般人の力関係が、支配者と家臣のような関係に近づくのは危険」と警告した。

インタビューを受け、民進党の逢坂誠二衆院議員は二日、エックスキースコア供与の有無などをただす質問主意書を政府に提出した。だが、政府が十三日に閣議決定した答弁書は「真偽不明の文書等に基づいた質問にお答えすることは差し控えたい」というものだった。逢坂氏は「事実上の無回答だ。米国は同盟国などを巻き込み、世界監視ネットワークを築こうとしている。スノーデン氏の証言通りなら、米国は日本語でのやりとりの解説は日本側に任せようと、エックスキースコアを供与したのだろう。共謀罪ができた今、このシステムの威力が発揮されかねない」と警戒する。

政府は共謀罪が必要な根拠として、「国連の国際組織犯罪防止条約批准のため」と訴えてきた。だが、国連で条約原案を審議していた一九九九年、当の政府が共謀罪や参加罪の導入は「日本の法体系になじまない」と異論を唱えていた。

なぜ方針転換したのか。共謀罪に詳しい海渡雄一弁護士は「二000年に米国やカナダと非公式会合を持った後、共謀罪にかじを切った。開示された議事録は黒塗りで中身は不明だが、米側から暗に促された可能性はある」と推察する。

スノーデン氏は昨年五月、ジャーナリスト小笠原みどり氏の取材に「米国は情報を国民の目から隠す立法を日本政府に提案していた。特定秘密保護法は米国がデザインしたものだ」と証言している。海渡氏はこのことからも「共謀罪も米国の存在抜きに語れない」と強調する。

元外務官僚の外交評論家天木直人氏は「米国はあらゆる情報を得ようとしているが、日本に関わる情報は日本政府を通した方が入手しやすいと考えているはずだ。日本政府があそこまで共謀罪に固執したのは、米国の意向がちらついていたからにほかならない」と指摘した。

「大量監視社会」到来か

 ・・・それでもテロは防げず

米 目立つ「適用拡大」

日本企業狙い撃ちも

実際、米政府は、日本の共謀罪創設を歓迎する姿勢を隠さない。共謀罪法案が再浮上していた昨年九月、米国のキャロライン・ケネディ前駐日大使は金田勝年法相に「大変勇気づけられた。米国としても協力する」と伝えている。

英米法には昔から共謀罪がある。だが、それでも米国は9・11の中枢同時テロを防げないでいる。

スノーデン氏のネットインタビューの翻訳にも携わった福田健治弁護士は「日本と米国ではそもそも法体系が違う。米国の共謀罪は本来、テロ対策と結びつくものではない。日本政府は多くの国民が説得力を持って受け取るから『テロ対策』を税明に使ってきたのだろう」と説明する。

米国では9・11をきっかりに大量監視が始まったという。この間、イスラム教徒への違法な監視捜査も発覚。およそテロとは関係ない人びとにも、米政府が監視の網を広げている実態の一端が明らかになっている。

福田氏は「共謀罪法をつくり、日本側が国内の情報を集めて米国に提供すれば、米国が集めている情報を受け取ることができると考えているのではないか」と推し量る。

一方、もともと米国の共謀罪は罪を認める代わりに、刑罰を軽くしてもらう司法取引によく利用される犯罪だ。米連邦刑事法などに詳しい荒井喜美弁護士は「近年、あらゆる犯罪に対し拡大されてきている」とみる。「米司法省にとって、申告で情報を得ることができる共謀罪での適用は人を割かずに処理件数を増やすことができる。起訴せずに司法取引することも多く、制裁金といった『成果』も得られるため、当局にはいいことずくめだ。だが、本来司法が判断することを法廷に持ち込む前に行政官が行っていることを問題視する声も出ている」

この「適用拡大」は企業犯罪に顕著で、日本企業が米司法当局から独占禁止法違反などで摘発されるケースも増えている。荒井氏は「二O一O年ごろから日本企業が狙い撃ちにされている印象は強い」と話す。自動車部品の「価格カルテル」に加わったとして、デンソーの米国法人が米FBIの捜査対象となるなどした。一一年にはブリヂストンが石油の搬出入などに用いる「マリンホース」の販売をめぐる国際的な価格カルテルに関与したとして二千八百万ドル(約二十一億円)の罰金を支払った。

カルテルの立件にはとりわけ「共謀罪が使いやすい」と指摘する。「共謀行為を立証するより、実行に及ばない、合意していない場合でも共謀罪なら成立させられる」とする。

日本企業の摘発が相次ぐ背景には、企業風土の違いもある。荒井氏は「もともと日本には談合を悪いと思わない、談合によって共存しようとする文化がある」と指摘する。「国と国の競争となっていて互いに処罰している部分もあるが、日本企業に罰金を科しているのは、日本企業が米国から撤退できないことを知っていて強気に出ている。難癖のようなものも見受けられる」とみる。このため、日本の大企業の企業風土も変わりつつあるという。

「日本の法体系にはなじまない」共謀罪への懸念は尽きない。

前出の天木氏は「『米国が情報監視システムを日本側に供与した』というスノーデン氏の証言は深刻だ。政府が『受け取った』と認めることはあり得ないだろうが、もっと追及されるべきだった。うやむやにしてしまえば、権力側が自分たちに都合のいい手段で国民を監視することが、正当化されかねない」と危ぶんだ上で、国民全体が問題意識を持つように促す。

「政府にとって共謀罪はもろ刃の剣でもある。もし行き過ぎた監視などの悪用が明るみに出れば、政府は転覆するだろう。メディアや市民が権力をしっかり監視することが大切だ」

(((デスクメモ)))
米国流の大量監視社会の到来は怖いが、中国商務に群しい弁議士は「共謀罪が暴走すると、日本は中国ですらなく一足飛びに北朝鮮になる怖さがある」。権力の怖さを知る中国人は、政府の猫なで声など無防備に信じないとか。「民主主義が成熟しているから心配無用」など論外か。(洋) 2017・6・20

モスクワで、大量監視システムの供与を示す書類を手に「この文書は本物」と説明するスノーデン氏=共同

トランプ政権の移民政策に抗議してデモ行進をする人たち=1日、ワシントンで(共同)

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