9/27・28 東京新聞の「東電 柏崎刈羽原発 適合」記事

「何のための避難か」 新潟市で暮らす避難者「東電が再稼働 許せない」

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201709/CK2017092702000261.html
2017年9月27日 夕刊【東京新聞・社会】

 

左から高橋真由美さん、高島詠子さん、菅野正志さん
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東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)について、新規制基準への事実上の適合判断が示された二十七日、同じ東電の福島第一原発事故によって福島県郡山市を離れ、新潟市内に家族で暮らす避難者は「再稼働なんてありえない」と口々に話した。 (片山夏子)

雇用促進住宅に家族と一緒に避難する菅野正志さん(43)は「原発の再稼働だけでも嫌なのに、自分たちを苦しめている東電が、避難してきた新潟で再稼働するなんて許せない」と憤る。

郡山は空間線量が高い地点もあり、二〇一一年八月に妻と幼い娘二人が先に新潟に移った。週末、家族に会うため、片道百六十キロの往復を繰り返し、心身ともにぼろぼろになった。二年半前に避難先近くで就職し、やっと家族一緒に。だが家計は厳しく、将来の見通しは立たない。「避難計画というが、計画通り本当に逃げられるのか。そもそも事故を起こさないと言っていて福島の事故が起きた。国も東電も、誰も責任を取らないまま再稼働するのか」

夫と子ども三人で避難中の高島詠子さん(48)は「原発事故で、故郷も、福島で思い描いていた生活もすべて奪われた」と話す。事故後、木造の自宅の放射線量が高いのに驚き、避難を決めた。自宅が大好きだった子どもたちは、避難先になじむのに苦労した。

暮らす家は柏崎刈羽から約六十キロ。ちょうど福島第一から自宅と同じ距離だ。事故後、もう原発は再稼働しないと思っていたのに次々再稼働をするのをみて、柏崎刈羽の再稼働差し止め訴訟の原告になった。「これでは何のために新潟に避難してきたのか。あれほどの原発事故が起き、事故処理も終わっていないのに、もう原発を動かすのか。再稼働は不安でしかない」

高橋真由美さん(45)は、3号機が爆発したのを見て、恐怖を覚えた。当時四歳と七歳の子どもたちのことを考え「今できる精いっぱいのことをしよう」と夫婦で話し合い、母子避難をした。慣れぬ環境、新しい仕事…。三年前に夫と一緒に暮らせるようになるが、心身共に疲れがたまり一時パニック障害にも。故郷を離れ、人間関係もバラバラになった。

「もうあの事故を忘れてしまうのか。私たちがこんな思いをしているのに、再稼働なんてありえない。適合というが、規制委は福島のような事故が100%起きないと本当に言えるのか。起きてしまった事故を学び、二度と起きないようにするのではないのか。自分たちのような思いは誰にもさせたくない」

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柏崎刈羽 事実上の適合 東電「福島」と同じ沸騰水型

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201709/CK2017092702000265.html
2017年9月27日 夕刊【東京新聞・社会】

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原子力規制委員会は二十七日、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)について、原発の新規制基準に「適合」するとの審査書案を定例会合に示した。東電は福島第一原発事故の当事者で、事故収束も被害者への賠償も終わっていないが、「原発を運転する資格がある」と認定。事実上の適合判断となるが、了承は次回十月四日以降に持ち越した。 (小川慎一)

柏崎刈羽6、7号機は、福島第一と同じ沸騰水型。この型では初の適合となり、東電の原発としての適合も初めて。

東電は、二〇一三年九月に審査を申請。想定する津波の高さを約三メートルから約七メートルに引き上げ、海抜十五メートルの高さの防潮堤(長さ約二・五キロ)を整備した。重大事故時に原子炉格納容器が破裂するのを防ぐため、内部の蒸気を抜くフィルター付きベント(排気)設備も設置。新たな非常用冷却装置も導入する。

審査の過程では、防潮堤の地盤が液状化する恐れや、事故時に対策拠点となる免震重要棟の耐震性不足について、東電は把握しながら規制委に事実と異なる説明をしていたことが発覚。規制委は、東電に申請書を総点検させ、六月に再提出させた。

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規制委は当初、東電に原発の運転資格があるかについて疑問視していた。東電側が、文書や口頭で福島事故を収束させ、柏崎刈羽を安全第一に運営する決意を表明したことで、一転して態度を軟化。田中俊一前委員長の任期(十八日まで)中に、適合にめどをつけようと急いだ。

審査書案が了承されれば、国民から意見募集(パブリックコメント)を一カ月間実施し、年内には審査書を正式決定する見通し。

東電は柏崎刈羽を再稼働させ、福島事故の処理費用や、住民への損害賠償の費用を工面する方針。

しかし、立地する新潟県の米山隆一知事は「福島事故の検証には三、四年かかる」と明言している。東電は当面、地元同意を得られず、再稼働できる状況にない。

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◆規制委審査 甘い仮定

福島の原発事故の収束は緒に就いたばかりで、被害住民への損害賠償も終わっていない。そんな状況を百も承知の原子力規制委員会が、東京電力に再び原発を動かすことを許そうとしている。何をそんなに急ぐのか。規制委の対応は奇異と言うほかない。

「現時点での安全性がどれくらいかを確かめてもらうのが、今回の審査申請」

四年前、新基準による柏崎刈羽原発の審査を申請する前、東電の広瀬直己社長(当時)は、新潟県の泉田裕彦知事(同)にこう強調した。原発再稼働による金もうけのためだ、と指摘した泉田氏への反論だった。

だとすれば、規制委が今やることは、新たな対策で柏崎刈羽の安全性はどうかを審査することだけだ。

にもかかわらず、規制委は、東電経営陣から福島の事故収束や賠償と、柏崎刈羽の安全性を両立する旨の決意を聞いただけで、「東電に運転資格あり」とまで踏み込んだ。もし柏崎刈羽でも事故を抱えることになったら対処できるのか。この重要な点を、審査しようともしなかった。

新基準を満たした原発では、事故は一定程度で収束する-。規制委の審査は、甘い仮定を置いている。だから、国民負担がなければ破綻している東電であっても、運転資格ありとなってしまう。そんな姿勢では、審査への信頼は到底得られない。 (山川剛史)

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柏崎刈羽原発「適合」 フクシマが認めない

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017092802000138.html
2017年9月28日【東京新聞・社説】

「ほかとは審査のレベルが違う」と言いながら、原子力規制委員会はすんなり、柏崎刈羽原発再稼働への道を開いた。フクシマは認めてくれるだろうか。

規制委は東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非にかかわる審査に際し、原発運転の「適格性」という、法律に定めのない領域に踏み込んだ。

福島の事故を引き起こした東電に再び原発を動かす資格があるかないかの判断だ。

◆私たちも忘れていない

東電の隠蔽(いんぺい)体質の根深さを、私たちも忘れていない。

二〇〇二年、原子炉内のひび割れを隠すなど点検記録の改ざんが長年続いていたことが、内部告発で発覚した。

3・11後も変わらなかった。柏崎刈羽で昨年十月、東電が「ない」と主張していた液状化による防潮堤損傷の恐れが「ある」と分かった。

この二月には、災害時の指揮所になる免震重要棟の耐震不足を約三年間、規制委に報告していなかったことが明るみに出た。

そもそも福島第一原発で、十五メートル超の津波が予想されながら、十分な対策を怠った隠蔽と安全軽視の体質こそ、長い悲劇の始まりだった。時間をかけて、よほどの覚悟と具体的根拠を見せないと、国民の不信と不安はぬぐえまい。

一昨年暮れ、本紙と新潟日報の共同世論調査では、東電を「信頼できない」と答えた人が、新潟でも東京でもほぼ五割、新潟では信頼派の四倍以上に上っていた。

つい先ごろまでは規制委も、福島の事故を起こした東電には、特別に厳しい顔を見せていた。

七月に、東電のトップを呼んで柏崎刈羽の安全対策に取り組む姿勢をただした際、当時の田中俊一委員長は「福島の廃炉をやりきらなければ、柏崎刈羽を動かす資格はない」と言い切った。

◆なぜ君子は豹変(ひょうへん)したか

これに対し、東電側が「廃炉をやり遂げる」という一片の文書を提出するや、風向きは一変した。

かつて求めた福島第一原発の汚染水処理や溶融核燃料(デブリ)の取り出しなどに関する解決策も示されぬまま、安全に対する東電の決意を保安規定に盛り込むことを条件に、原発運転の適格性を認めてしまう形になった。

その間何があったのか。議論の透明性と説明責任-。3・11の教訓に立つ原発規制の基本ではなかったか。規制委の判断の的確さにも疑問の声が相次ぐ中、なぜ再稼働を急ぐのか。

福島の事故処理にかかる費用は、現時点で二十二兆円近くに上ると試算され、さらに膨らむ見込みという。そのうち十六兆円を東電が負担する。

膨大な負債を抱えた中で進める経営改善の柱になるのが、唯一残された柏崎刈羽原発なのだ。

再稼働が実現すれば、一年で一千億~二千億円の増益が見込まれる。補償のための再稼働と言いたいのなら本末転倒だ。

新潟日報が一昨年秋、柏崎刈羽地域の企業百社を対象に実施した調査によると、七割近くが「原発停止の影響はない」と回答した。

調査に参加した新潟大の藤堂史明准教授は「原発には長期的に地域経済を拡大させる効果はない」と断じている。

福島の事故は教えている。原発は巨大な経営リスクにほかならない。一企業はおろか、政府にさえ、背負いきれるものではない。福島の賠償や除染費用も、電気料金や税金に転嫁され、結局、国民全体で穴埋めしていくことになる。

この上新たな事故が起きればどうなるか。民間の保険の支払い限度は、一原発千二百億円だ。補償がなされる保証はない。

そしてさらに、福島の事故原因は未解明、日本は世界有数の地震国…。今、東電に原発運転の適格性を認めるということは、国民の目線で見れば、納得のできるものではない。不安と不信はなお募る。

九州電力川内原発などの時とは違い、新潟県の米山隆一知事は「福島第一原発事故の県独自の検証に三~四年はかかる。それまでは(再稼働を)認めるつもりはない」との立場を崩していない。

◆審査体制の再構築を

そう、今回、はっきりしたことが二つある。

一つは、規制委の審査適合は再稼働の合格証ではないということ。このことは規制委自体も「安全を保証するものではない」(田中前委員長)と示唆してきた。

もう一つは、原発事業者の適格性や安全文化を審査するには、技術者ばかりの規制委の現陣容では不十分だということだ。

指針づくり、法整備に加えて審査体制の再構築が、必要になったということだ。

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