10/31立憲民主 躍進の理由/下からの民主主義 共感/「草の根」で、1強 に挑む【東京新聞・特報】

「枝野を総理大臣に!」というステッカーとかTシャツがあったらいいのに。
指輪物語のファンたちの Gandalf for president (ガンダルフを大統領に)という運動を思い出したから。

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立憲民主 躍進の理由

 下からの民主主義 共感

  自民、希望と対照的「一緒に戦おう」

「草の根」で、1強 に挑む

 地域で対話組織票を崩す

  すでに「擬似的」に危機感

【東京新聞・こちら特報部】2017年10月31日

 

衆院選から一週間すぎ、大勝した自民党から謙虚さはすっかり消えた。安保関連法成立時などの横暴も記憶に新しいが、安倍政権は今、居丈高に野党の質問時間の削減を求めている。こんな国が民主主義国家と言えるのか。実は、立憲民主党が躍進した最大の理由は、多くの国民がこの危機を憂い、「草の根民主主義」に基づく「まっとうな政治」を取り戻そうとの訴えに共感したからではないか。選挙を振り返り、民主主義復権のために今、何をなすべきか考えた。 (池田悌一、安藤恭子)

 

 

立憲民主党の枝野幸男代表は選挙戦中盤、東京・新宿でマイクを握るとこう力説した。「右とか左とかではない。いま、民主主義は上からのものになってしまっていないか。草の根の、暮らしの声に支えられた下からの民主主義にしていかなければならない」

群衆からは「頑張れ、枝野!」の声が飛び、大きな拍手が湧き起こった。

そして枝野氏はこう続けた。「立憲民主党ができたのは、枝野幸男が立ったからではありません。私の背中を押した国民の皆さんがつくったのです。新しい民主主義に踏み出す選挙を一緒に戦ってください」

枝野氏が選挙戦で再三、有権者らに「戦おう」「参加を」と自立を促したのに対し、自民党総裁の安倍晋三首相は「先頭に立って国難に立ち向かう」「安定した政治のもと、この国を守り抜く」などと、リーダーシップを前面に押し出す場面が目立った。

希望の党の小池百合子代表も最終日の二十一日、「真の意味での新しい日本の設計図を私たちに描かせてほしい」と自らに政治を託すよう訴えた。

上からか下からか、が問われた選挙戦を象徴するように、立民の街頭演説には「右とか左とか」関係なく応援弁士が駆け付けた。

新右翼「一水会」元代表の鈴木邦男氏は街頭で「立権民主党は名前がいい。かつての自由民権運動を思いだす。夢と希望を持った党名ですよ。ものすごく人気なのは、ただの判宮びいきではない。排外主義ではない自由な言論を取り戻そうということだ」と熱弁を振るった。

保守派の論客として知られる漫画家の小林よしのり氏は「民主主義というものは暴走するんです。安倍政権を見れば分かるでしょ。いちおう民主主義で選ばれたが、暴走している。それをどうやって防ぐか。立憲主義ですよ」と強調した。

「こちら特報部」が三十日、小林氏にあらためて真意を尋ねると、「安倍政権を見ていると、権力を縛るための立憲主義が今こそ大切だと思う」と語った。

どうやら、言論の自由や立憲主義が守られなければ、との思いが、彼らを応援に駆り立てたようだ。

立民の躍進をどうみるか。小林氏は「党ができた発端は、『枝野、立て』という声だった。『つくってほしい』と求められてできた政党は聞いたことがない。国民に押されてできたということ自体が、まさに『下から』の動きと言えるもので、ワシは勝てると確信していた」と指摘した。

立民については公約以前に、党のフレンドリーな姿勢に共鳴する人が少なくない。「SEALDs(シールズ)」元メンバーの大学院一年、本間信和さん(二二)は「安倍首相や小池代表のトップダウン型の政治が、自分の悲願のためのように感じられるのに対し、枝野代表は有権者をお客さま扱いせず、『一緒に戦おう』と呼び掛けた。ブラックボックス化している政治が変わりそう」と期待する。千葉県松戸市のパート職員の女性(六三)も投開票日の二十二日、「意見を言えなくなる世の中にしたくないから」と立民に投票した理由を語っていた。

安倍政権は、安保関連法や「共謀罪」法の成立を強行するなど、強引な国会運営を続けてきた。八月には改造内閣が発足したが、その後も憲法に基づく野党側の臨時国会召集の要求を無視し、衆院解散に踏み切った。各閣僚は今も国会で所信を語らないままだ。

安倍首相は衆院選後の記者会見で「謙虚な姿勢で真摯な政権運営に全力を尽くさなければならない」と述べたが、わずか四日後には萩生田光一幹事長代行と会談し、国会質疑で野党の質問時間を減らし、与党に振り分ける方針を確認した。

果たして今の日本は、民主主義国家と言えるのか。小林正弥・千葉大教授(政治学)は「形式的には選挙で選ばれた代表者による議会制民主主義をとっているが、政権の有利な時期に解散し、メディアを威嚇し、強権的な国会運営を行ってきた。現状をみれば、東欧各国と似た『疑似的民主主義』になりつつある」と指摘する。アジアでは、シンガポールが一九五九年から普通選挙手行っているが、圧倒的多数の与党に対し、野党の言論は制限されており、同様の政治形態の代表例とされる。

小林教授によれば、民主主義はさまざまな概念を内包する。「国会で少数派の意見を尊重し、熟議することは理念としての民主主義。安保関連法に反対したデモも、為政者にはじゃまかもしれないが運動としての民主主義だ」と語る。

枝野氏は街頭演説で「草の根の国民の声に基づいた政治へ変えていこう」と訴えた。市民が会員制交流サイト(SNS)で演説を拡散し、カンパで支援した立憲民主党の成り立ちもまた「国政政党で初めて登場した『草の根民主主義』だ」(小林教授)とみる。

野党の分裂で、与党が三分の二を維持し、改憲に向かう可能性が高まったが、一方で、改憲となれば国民投票で過半数の賛成が必要となる。「政治の世界は、専制化の危険と民主主義の再生がせめぎ合う時期に入る。多くの国民は、権利を奪う専制化をいやがるものだ。ならば『草の根』を大切にしたい国民は、周囲にどんどん憲法や政治の話をすればいい」と提案する。

米大統領選で民主党のクリントン陣営のボランティアに加わった海野素央-うんのもとお・明治大教授(異文化コミュニケーション論)は十州の三千軒以上に戸別訪問をし「あなたの一票に頼っていいですか」と相手の意見を尊重した対話を心掛けた。

「米国で戸別訪問は『草の根』の最大の武器だ。高校生や大学生がインターンシップ(就業体験)で参加し、政治対話を学ぶ場になっているが、日本には、日常的に政治を学べる場がない」と、選挙運動での戸別訪問を禁じる公職選挙法の見直しを求める。

枝野氏の理念を「私が大統領選で見た『草の根民主主義』そのものだが、日本社会では熟していない。立民にも『草の根』を宣言した責任がある。今日からでも地域を回って対話し、組織票に守られた一強政治に挑む努力を」と求める。

市民の側も模索している。都内の駅頭で週末に活動する市民グループ「私達の街頭活動チーム」の吉田順一さん(四九)は、3・11以降の原発再稼働や集団的自衛権の容認に疑問を待ち、政治を考えるシール投票を通じて、知らない人との対話を重ねてきた。

年金暮らしでパートを掛け持ちする女性が、切羽詰まった様子で話し掛けてくるなど、昨年後半から「政権批判風」が強まったという。「政治への無関心は、いずれ自分の首を絞める。
投票の『受け皿』がほしいという声も増えた。こうした人たちが立民を支持したのでは」と感じている。

「今、街頭で政治を語れば、聞こうという空気感は増していると思う。政治家も町に出て、有権者と対話を続けるべきだ。政治を自分ごととしてとらえるのが『草の根民主主義』の一歩ではないか」

 

選挙戦最終日、集まった多くの有権者らを前に街頭演説する立憲民主党の枝野代表(上)=21日、東京都新宿区で

参院特別委で安保関違法案の採決をめぐり、委員長席でもみ合う与野党議員ら=2015年9月17日、国会で

2015年9月、シンガポールの総選挙での勝利を支持者らと祝うリー首相。1959年からの普通選挙が行われているが、人民行動党の一党独裁が続いている=ロイター・共同

 

(((デスクメモ)))
立憲民主党は三十日、特別国会に備え、党本部を開設した。一方、ツイッター上では支援者らが立ち上げた「#立憲BACKERS」を通じて、思い思いに「草の根」活動の模索を始めている。与党が勝ち「意味がない選挙」との世評を、ひっくり返すチャンスなのかもしれない。(典) 2017・10・31

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