12/19伊方差し止め判断 地元ルポ 火山列島の原発に衝撃 朗報 亡き友に届け【東京新聞・こちら特報部】

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伊方差し止め判断 地元ルポ 火山列島の原発に衝撃 朗報 亡き友に届け

2017年12月19日【東京新聞・こちら特報部】

愛媛県の四国電力伊方原発から100キロ離れた広島高裁で、3号機の運転を差し止める決定がでた。阿蘇山噴火の被害を過小評価しているとの判断だ。地元で原発のリスクを訴え続けてきた人々は「涙が出るほどうれしい」と歓迎する。一方、火山被害を注視した判断に戸惑う住民も少なくない。突き付けられたのは、火山列島に生きる現実だ。火山の影響を免れない原発は伊方だけではない。 (佐藤大、加藤裕治)

伊方差し止め判断 地元ルポ

 朗報 亡き友に届け

  「地震や津波リスクは…」戸惑いも

伊方原発前で廃炉を訴えるマスク姿の故近藤誠さん(左) と座り込みを続ける斉間淳子さん=2012年2月、愛媛県伊方町で

阿蘇山噴火の影容が過小野価されているとされた四国電力伊方原発=18日、愛媛県伊方町で

広島高裁が四国電力伊方原発3号機の運転差し止めの決定をし、報告に喜ぶ住民側の支援者ら=13日、広島市で

「よくここまで書いてくれた」。伊方原発から半径十キロ圏内に入る愛媛県八幡浜市で、伊方原発への反対運動を続ける斉間淳子さん(七四)は、広島高裁の差し止め決定に感慨深げだ。

亡き失の満さんは、県紙「新愛媛」(廃刊)の記者だったが、正面から原発批判をするため退職、一九七五年に市域紙「南海日日新聞」を創刊した。同紙は原発に反対する人たちのよりどころとなってきた。淳子さんも「八幡浜・原発から子どもを守る女の会」代表として声を上げてきた。

脳梗塞を患った満さんは二OO六年に死去。同紙はO八年にやむなく休刊したが、最後の記者だった近藤誠さんが原発の危険性について警鐘を鳴らし続けた。近藤さんは「こちら特報部」でも一二年三月から「別冊南海日日新聞」を執筆。一五年に六十八歳で亡くなる直前まで、計五十六回にわたり、伊方原発の現状を報告した。「近藤君も満さんも、よう頑張った。地元の人間として原発はいらないと言い続けなければ、という決意でやってきた」

満さんや近藤さんは、全国で初めて国を原発裁判に引っ張り出し、本人訴訟でも法廷闘争を続けたが、敗訴が続いた。一緒に反対運動を続けた秦左子さん(六O)=同県新居浜市=も「二人は命を削るようにして裁判に取り組んできた。差し止め決定が出たこの日を一緒に迎えたかった」としのぶ。

ただ、火山被害のリスクのみを認めた決定に、不安も漏れる。近藤さんらが主に訴えたのは、原発近くの瀬戸内海を走る「中央構造線」の危険性。斉間さんも「地震や津波に対してどうすればいいかが具体的に示されていない。それが何とも不安定な感じ。覆される恐れもあり、安心はできない」と警戒する。

伊方原発のゲートには十八日も職員を乗せたバスが吸い込まれ、そばの「伊方ビジターズハウス」には、原発の有用性を強調する展示が並んでいた。人口九千六百人余の伊方町では復維な思いが交錯していた。

伊方原発の建設に携わったという男性(八O)は「火砕流が来とるんだったらとっくに来とる。電気がいらんというのやったら、原発やめればいいんや」とまくし立てた。タクシー運転手の男性(六一)は「原発が止まり、経済的にはみんな我慢してきた。それが続くと思うと、げっそりする」と肩を落とした。

町内に掲げられていた「伊方町避難所MAP」には、地震と津波を想定した注意があったが、火山についてのそれはない。町原子力政策室の担当者は「決定を厳粛に受け止めるが、正直なところ、重要度からすれば地震の方だと思っていた」と戸惑いを隠さない。避難計画を見直そうにも「何から手をつけたらいいのか」と途方に暮れる。

一方、六十代の自営業の女性は「いい判断だった。半島が狭いここには逃げ場がない。原発が絶対安全ではない、とはもう決着がついているじゃないですか。子どもたちの未来を考えると、廃炉にしてもらいたい」と声を潜めて語った。

 

火山列島の原発に衝撃

 国内すベて「160キロ圏内」

  各地訴訟に追い風「我々の主張も」

 

福島第一原発事故後、原発差し止めを求める訴えが全国で相次いでいる。愛媛県内の市民らも二O一一年十二月、伊方原発運転差し止め訴訟を松山地裁で起こした。近藤さんも原告の一人だった。残された仲間たちが「勝訴判決を墓前に供えたい」と現在も係争中だ。一六年五月には運転差し止めの仮処分申し立ても松山地裁に行い、今年七月に却下されたため、高松高裁に即時抗告している。

広島裁判と同様の主張を展開しているだけに、弁護団の薦田伸夫弁護士は「火山だけが理由なのは残念だが、高裁レベルでの差し止め決定を高く評価している。こちらにもそのまま当てはまる」と力を得る。

実際、火山列島の日本には、世界の7%にあたる百十一の活火山がある。原子力規制委員会が「火山影響評価ガイドライン」で調査を求めている「百六十キロ圏内の活火山」は、国内すべての原発にある。

中でも、九州電力玄海(佐賀県)、同川内(鹿児島県)、北海道電カ泊(北海道)、東北電力東通原発(青森県)、建設中の電源開発大間(同)の五原発と、日本原燃六ケ所再処理工場(同)は火山の影響が心配されている。九州や北海道、東北には、過去に巨大噴火を起こし「カルデラ」と呼ばれるくぼ地ができた火山が集中しているからだ。

事業者はいずれも「問題ない」という立場。規制委も火山を理由に「アウト」としたことはない。

しかし、伊方原発の仮処分で広島高裁は、約百三十キロ離れたカルデラ火山の阿蘇山が大噴火すれば、火砕流が原発に達しかねないと指摘。ガイドラインに違反し、原発を建ててはならない場所になるとした。

「鹿児島地裁に向かって行進しようとしていたところだった。拍手がわいた」。十三日、川内原発の運転差し止めを求める「原発なくそう!九州川内訴訟」はちょうど、法廷が開かれる日だった。直前に届いた伊方の決定の一報を、原告団長の森永明子さんが喜びとともに振り返る。川内原発がある九州南部は、国内でもとりわけ巨大カルデラが集中。訴訟の争点になっているからだ。

川内原発から約四十キロ離れた姶良-あいら-カルデラについて、九州電力は「巨大噴火の予兆を察知し、対応できる」と主張。規制委も認めている。一方、火山の専門家のほとんどは「予知はできない」と批判している。森永さんは「伊方の決定で、こちらにもいい風が吹いてほしい」と期待する。

ほかの差し止め訴訟の原告も追い風を感じる。

「泊原発の廃炉をめざす会」の共同代表で弁護団長の市川守弘弁護士は、仮処分について「火山の問題を慎重かつ丁寧に判断している点を高く評価したい」と語る。泊訴訟では規制委のガイドライン自体の問題点を指摘。「国際的な基準に照らし、不合理な内容だ」と述べた。

「国民の一人としてうれしい。それと同時に当たり前の決定が出たなと思う」。「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」代表の石丸初美さんは事ぶ。玄海原発を巡り四つの裁判を起こしている。「訴訟では地震の揺れが争点。廃炉を求める運動で火砕流の問題を訴える。伊方より玄海は阿蘇山に近い」と語った。

大間原発の凍結を求め、自治体として唯一原発訴松を続ける北海道函館市の担当者は「仮処分のニュースには注目していた。われわれの弁護団にも伊方とかかわっている人がいる。当然、向こうと連携していくことになるだろう」という。訴訟では、大間原発から約二十五キロの海底にある「銭亀カルデラ」が争点の一つ。市は「敷地に多量の火山灰が降る可能性がある」という趣旨の火山学者の陳述書を出している。

市民の立場から別の裁判で大間原発の阻止を目指す「大間原発訴訟の会」。結審し、今年度内の判決が予想される。事務局長の中森司さんは「銭亀以外にも、洞爺カルデラ、北海道駒ヶ岳などの火山がある。私たちはきちんと危険性を述べた。今回の仮処分のように主張を取り上げてもらいたい」と期待する。

(((デスクメモ)))
なぜ惨事が起きたのかを知りたくて、震災直後に「こちら特報部」は全国の原発を取材した。その連載「新日本原発紀行」の初回は伊方原発。斉間満さんがたった一人でつくった反原発の新聞があり、その遺志を継ぐ近藤誠さんがいた。未来を締めない人々がつないでくれた「今」を思う。(洋)
2017・12・19

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