1/22福島第一作業員 労務単価下げ【東京新聞・特報】

東電、4月から敷地の95%対象

 福島第一作業員 労務単価下げ

  「危険手当」 半減にも

   「これ以上なら通常工事水準に」

【東京新聞・こちら特報部】2018年1月22日

福島第一原発で働く作業員の賃金が4月から下がる。東京電力が「危険手当」の意味合いで加算していた割り増し分を、「労働環境が改善された」という理由で大幅に減額するからだ。だが、そもそも1日2万円程度というこの手当をきちんともらえていない作業員もいる。東電が仕事をしぼり、雇用も不安定に。廃炉への道のりは長いのに、こんな状況で必要な作業員を確保していけるのだろうか。 (片山夏子)

 

水素爆発で壁が飛び、骨組みがひしゃげた3号機の原子炉建屋。がれきが取り除かれ、建屋の上に筒状の燃料取り出し用の屋根カバーが姿を見せた。毎時四00ミリシーベルトだった建屋上部の放射線量は除染などの効果で下がり、作業員が普通に仕事をできるようになった。

1号機は原子炉建屋のカバー上部が解体され、がれき撤去が進む。水漏れを繰り返した汚染水タンクも、漏れにくい溶接型への交換が進んだ。敷地内では地面が舗装された結果「建屋周辺を除く全域で平均毎時五マイクロシーベルト以下を達成した」と廃炉推進カンパニーの増田尚宏最高責任者は胸を張る。

廃炉までの道のりは果てしなく長いとはいえ、福島第一原発は少しずつ歩みを進める。作撲が進むのはいいことだが、それが作業員にとって悩みのタネに。敷地の汚染や放射線量が下がったことを理由に、手当が減らされるからだ。

職責や技術、作業場所によって異なるが日当に、東電によると平均二万円が加算される。敷地内は放射線量が高く、作業に危険がともなうための手当になる。ところが東電は昨年末、「環境に応じた労務単価にする」と発表した。放射線量が下がったので減額するということだ。

東電は二年前の三月、敷地を汚染の度合いなどで、三色に区分けした。減額はこの区分に基づいて行われる。大幅減額されるのは、敷地の95%を占める低線量エリアのグリーン(G)ゾーンで働く人だ。これ以外の二色は、最も汚染が高い原子炉建屋やタービン建屋がレッド(R)、次いで危険性が高い汚染水処理設備などがイエロー(Y)ゾーンとなっている。

実際の削減額は明かされていないが、平均額から見当をつけると二万円から半減する可能性がある。

区分けは当初から作業員に不評で、「建屋外の区分けはまったく意味がない。装備を軽装にし、安全になったと、また手当が減らされるのではないか」と不安視されていた。

地元作業員の一人は「敷地内で重機や大型車両が通ればGゾーンでもホコリが舞うし、原子炉建屋のがれき撤去作業をすれば、放射性物質が飛んでくる」と懸念を漏らし、今回の引き下げに「これより下がったら、通常の工事現場と変わらないか、それより低くなる」と悲鳴を上げた。

作業員の装備も徹底される。Gゾーンは使い捨てマスクと一般の作業服で作業できる。だが、放射性物質の飛散を心配し、顔全部を覆う全面マスクや防護服をつけるよう作業員に指示している企業もある。これに対し、増田最高責任者は引き下げの発表時に「元請けを指導していく」と発言。手当削減に加え、装備も選べなくなる可能性が高い。

柏崎刈羽の再稼働準備影響

 細る発注 現場に不安

  収束なお途上「作業の国営化を」

実は、東電のいう一日平均二万円の手当が払われていなかったケースもある。

地元の二次下請け企業は一次下請けから一日一万円しかもらえなかった。二年前の敷地区分後にはさらに三千~五千円に。別の二次下請けの社長も、上の企業から「売り上げが大きく下がった。理解してくれ」と言われ、一日一万円弱の手当が半分以下になった。

今春の引き下げでさらに減る恐れがある。社長は「割り増し分が一日二千円になるかも。基本の賃金を含め一日一万数千円が払える精いっぱい」という。

福島第一では、人不足で人件費の高騰に悩む世間とは逆の現象が起きている。「仕事も少なく、会社の存続を考えると夜、眠れなくなる」と、この社長が訴えるように、どうやら東電発注の仕事が減っていることが原因のようだ。

発注を企業同士で取り合い、安価で請け負わざるを得ず、経費や手当を削って帳尻を合わせる。取れる仕事が減り、人を減らし始める会社もある。

事故前から原発を専門とする会社は、宿泊費など経費のかかる作業員から削り、福島第一の作業員を九百人から四百人に削減。大手原発メーカーも昨夏以降、年末までに九百人超から三百人まで減らした。

東電子会社の下請け幹部すら「月の三分の一は休み。トラブルが起きたときのために人は必要で、以前の倍以上の人数で同じ作業をする。会社に入る金は変わらないのに」と嘆く。小さな企業がもたずに、上の会社に吸収合併される例も相次ぐ。廃業も目立つ。

事故直後から現場で復旧作業にあたり、その状況をツイッターで伝え続けるハッピーさんも、東電の発注渋りを感じている。

例に挙げたのは、建屋を調査するロボット。今から開発しないと作業工程や廃炉が遅れる恐れがある。「費用の一部を元締けが持ち出し、開発を進めている」ほど喫緊の課題なのに、東電はまだ発注していない。

ほかにも「事故前は一億円以下の作業は現地で決められた。今は本社決裁。元請けや現場の東電社員とで必要な作業の計画を立てても、本社で却下されてしまう」と説明する。

Rゾーンの建屋内やYゾーンの危険性が高い仕事は比較的あるが、被ばく線量の上限に達して現場を去る作業員も少なくない。ハッピーさんは「汚染水のくみ上げ作業をした作業員は、ニカ月で企業が定める年間被ばく線量限度の二Oミリシーベルト近くになり、次々解雇されていった」と指摘する。

本来なら高線量の作業はより多くの作業員で分担し、一人当たりの仕事量を減らして被ばく線量を抑える。さらに高線量と低線量の仕事を組み合わせて作業員が長く働けるようにする。作業員の長期雇用の安定は東電の方針でもあった。だが、ハッピーさんは「(全体的に仕事が少なく)現湯はそんな状況ではない」と話す。

予算が出なくなった背景の一つとハッピーさんがみるのが、柏崎刈羽原発の再稼働。東電と関係の深い日本原子力発電にからむ負担も不安材料の一つ。収束作業と賠償にかかると試算されている年間五千億円の資金も十分に確保できていない。こういった事情のしわ寄せが福島に響いていると推測する。

発注渋りが続けば、廃炉の完了、そして福島の復興は先延ばしになりかねない。それを支える作業員も現場を去りかねない。

ハッピーさんは「現場のモチベーションが下がっている。これでは次に人が必要なときは集まらない。福島第一の作業は東電から切り離して、国営として安定して続けられるようにしないと企業も作業員ももたない」と訴える。

(((デスクメモ)))
都内は入手不足で、飲食店やコンビニはアルバイトの確保に苔しむ。少子化でこれから働き手は減る。外国人技能実習生にお願いもできないだろう。そんな時に賃金を下げれば、どうなるか。結果は火を見るより明らかだ。廃炉に向けた取り組みは、長い視点でお願いしたい。(裕) 2018・1・22

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福島第一原発の汚染による区分

Gゾーン 一般作業服 + 使い捨てマスク

Yゾーン 防護服    + 半面や全面マスク

Rゾーン 防護服2重か1重とかっぱ + 全面マスク

(写真)

2号機格納容器の調査で、全面マスクや防護服、かっぱなどの重装備で作業をする作業員=国際廃炉研究開発機構提供

線量の低い場所での作業。作業員は使い捨てマスクと作業服で働く=東京電力提供

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カテゴリー: 放射能汚染, 中日東京新聞・特報 タグ: パーマリンク