1/25名護市長選直前ルポ 「辺野古」争点化で攻防 政権側大物続々/本音は嫌だけど・・・「暮らしが良くなるなら」/憤る住民「基地なくても暮らせる」【東京新聞・特報】

上牧行動主催者夫人が来月辺野古へ行かれるというので、この名護市長選が一気に近所の選挙のように思えてきた。

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名護市長選直前ルポ

 「辺野古」争点化で攻防

   本音は嫌だけど・・・「暮らしが良くなるなら」

2018年1月25日【東京新聞・こちら特報部】

 

秋に県知事選を控える「選挙イヤー」の沖縄で、まもなく名護市長選(二十八日告示、二月四日投開票)の火ぶたが切られる。市内で進む辺野古の新基地建設の是非を最大の争点に、現職の稲嶺進氏(72)と、自公が推す新人渡具知(とぐち)武豊氏(56)の一騎打ちになる見込みだ。安倍政権と翁長県政の「代理対決」と目され、激戦は必至。四年前、稲嶺氏を大差で勝たせた「民意」はどこへ向かうのか。揺れる基地の街を歩いた。 (池田悌一、安藤恭子)

 

二十四日朝、名護市辺野古の海岸に立つと、遠くの沿岸で巨大なクレーン車やショベルカーが、せわしなく動いているのが見えた。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設に伴う新基地建設工事だ。重機が大きな音を立てながら資材を運搬する傍ら、カヌーに乗って海上から抗議する人たちが「工事をやめろ」「今すぐ!」と声をからしている。

浜辺を散歩していた近くの男性(六五)らは、その様子をうつろな目で見つめていた。「基地にどれだけ反対しても、なるようにしかならない。だったら国からお金をもっともらった方がいい。確かに海が壊されるのは悔しいよ。でも市長選では基地に反対しない候補者に入れる」

辺野古の新基地計画に反対するのか、そうでないのかl。人口六万三千人の名護市で二十八日に告示される市長選では、基地へのスタンスが最大の争点となる。反対する「オール沖縄」の全面支援を受けて三選を目指す現職稲嶺進氏に、自民や公明、維新が推薦する元市議の新人渡具知武豊氏が挑む公算だ。

辺野古地区を歩くと、古びた家屋が並ぶ中、道路脇のあちこちに両氏の真新しいのぼり旗が立っていた。商店の女性(六七)に基地について尋ねると「しっ、誰が聞いてるか分からん。住民は反対派と賛成派が半々だからね」と声を潜めつつ、集落の女の人まで米兵に襲われるかもしれない。でも見ての通り、道はガタガタだし下水道も遅れている。暮らしが良くなるなら基地を選ぶ」とつぶやいた。

車いじりをしていた七十代男性は「地元には基地関係者も多く、生活がかかっている。自分もここに生まれ育ち、他に行きようがない」とうなだれ、「国がやると言ったら基地はできるだろう。その後の危険な環境が心配だ」と強調した。

実際、オール沖縄が支える翁長雄志知事は、新基地建設を巡り国と法廷闘争を続けているが、工事停止には至っていない。一方で最近は、普天間所属の米軍機による事故などが相次ぐ。二十三日には渡名喜村で今月三回目の不時着があったばかりだ。

このような状況下ではあるが、基地の是非を前面に争われる選挙かと言えば、そうでもない。稲嶺氏は二十三日の総決起大会で「辺野古に新しい基地をつくらせない。安全安心、平和のまちをつくることが子どもたちの未来につながる」と訴えたが、渡具知氏が先月二十八日に記者会見で発表した政策には、「辺野古」の文言うがなかった。

記者にそのことを問われた渡具知氏は、「私のスタンスは司法の判断を注視すること」と述べるにとどめたが、どういうことなのか。選挙事務所の幹部は「数カ月前まで稲嶺氏の背中も見えなかった。ここに来て視界に入ってきたのは、公明から推薦を得られたことが大きい。公明の県本部は新基地に反対で、そういったことへの配慮があるのだと思う」と話した。

 政権側の大物続々

   憤る住民「基地なくても暮らせる」

 

市民が新基地建設に反対の「民意」を示したのは一度や二度ではない。

名護市辺野古が普天間飛行場の移設先として浮上したのは一九九六年。九七年、移設の賛否を問う市民投票があり、反対が賛成を上回ったものの、当時の市長は受け入れを表明し辞任。その後、新基地を容認する候補者が当選を続け、稲嶺氏が二O一O年、反対派として初当選した。

一四年の前回市長選では、推進を明確に主張する候補者との対決となり、稲嶺氏は四千票差をつけて圧勝した。このときは公明が自主投票を選択し、市内に二千の基礎票を持つとされる公明支持者の票は分散した。しかし今回は自公連立が優先される格好となった。

昨年末から、菅義偉官房長官や二階俊博幹事長ら自民の大物が続々と沖縄に駆け付け、公明の支持母体・創価学会の原田稔会長も沖縄入りした。政権側がてこ入れに全力を注ぐのは、今年十一月に想定される知事選の「前哨戦」の意味合いを帯びているためだ。

一方、稲嶺陣営も「この市長選は稲嶺進、翁長知事を支えるオール沖縄と政府の全面対決だ」(渡具知武明後援会長)と位置付ける。「一致団結し奮闘しなければならない」と危機感も漏れる背景には、県内の三市長選で昨年、オール沖縄が全敗したことがある。

だが、今月二十一日に投開票された南城市長選では、オール沖縄が推す候補が自公推薦の現職を僅差で破り、初当選した。

渡具知陣営は「油断があったのでは」と選挙戦術に問題があったとみるが、稲嶺陣営の幹部は「米軍機の事故が多発していることが影響していると思う。南城市に米軍基地はないが、基地は沖縄全体の問題だ。市民が『危険な基地はいらない』との思いを新たにした結果では」と推察する。

実際、名護市安部の浅瀬では一六年十二月、普天間のオスプレイが不時着し、大破する事故も起きている。事故現場から一キロ弱の集落に住む自然ガイドの坂井満さん(四三)は「事故後も米軍機は低空飛行を続けている」と表情を曇らせ、「国家間の問題で、名護市が解決できる話ではないのかもしれない。でも、私はこの美しいやんばるの海に新基地は似合わないと思う。その意思を伝えるため投票に行く」と語る。

辺野古から北西に十数キロ、本島西岸の中心市街地で四歳と生後六カ月の娘をあやしていた漁師の仲村茂樹さん(三七)は「普天間が危険なのはよく分かる。しかし、なぜ県内で悪いものをグルグル回さないといけないのか。この子たちに新基地を引き継ぐわけにはいかない」と険しい表情を見せ、憤った。「渡具知氏は新基地への賛否を明らかにしないまま選挙をするつもりなのか」

辺野古の沿岸では午後も工事が続き、近くの米軍演習場からは爆撃音が断続的に響いていた。庭に花を植えていた女性(六四)は「これ以上、騒音には耐えられない」と顔をゆがめる。

海岸沿いで暮らす保育士の比嘉徳子さん(五九)は「今月亡くなった母はずっと、『二度と戦争を起こしてはいけない』と言い続けてきた。でも告別式の日にもオスプレイは飛び、騒音をまき散らしていった。沖縄の人は人間扱いしてもらえないんですか。こんな差別がなんで許されているんですか」と声を震わせる。「基地なんかなくても暮らせますよ。これまでもそうだったし、これからもそう。本土の人たちは沖縄の苦しみを本当に分かってくれているんでしょうか。辺野古の工事は始まってしまったけど、まだ滑走路ができたわけではない。あきらめませんよ」

(((((デスクメモ))))
故郷の海岸が埋め立てられる図を想像してみる。夕日が沈む美しい海が奪われ、米軍機がわが物顔で飛び回っていたら、どれだげ情けない思いになるだろう。部品落下や米兵の素行を心配しなくていい日常は幸運だが、誰かの犠牲に目をつむるなら「共犯」。ひきょうな国でいいのか。(洋)2018・1・25

(写真)

米軍キャンプ・シュワブ前で、ゲートを出入りする工事車両に抗議する人たち=24日、沖縄県名護市で

支援者と握手する渡具知武豊氏=22日、いずれも沖縄県名護市で

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