1/30規制委、識者の主張聞かず 大飯 地震想定を「過小評価」【東京新聞・3面】審査のやり直しが必要

規制委、識者の主張聞かず 大飯 地震想定を「過小評価」

【東京新聞・3面】2018年1月30日

「原子力の安全審査は問題がある」。本紙が入手した政府の地震調査委員会の部会や分科会の議事録では、揺れの算定方式(レシピ)に関し、原子力規制委員会の姿勢に批判や疑問が続出していた。関西電力大飯原発の地震想定を巡っては地震学者で元規制委員長代理の島崎邦彦東大名誉教授が「過小評価」と主張していたが、規制委は聞き入れなかった。今回、複数の専門家からの疑問の声が明らかになったことで、規制委の姿勢や審査のあり方が改めて問われる。
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大飯原発で関電が想定した地震の揺れは、島崎氏が規制委の委員長代理だった時に出されたものだ。島崎氏は審査途中で退任したが、一昨年の熊本地震後「過小評価の恐れがある」と主張を始めた。

規制委と島崎氏が議論を交わしていた二O一六年七月、地震調査の強震動予測手法検討分科会。委員の一人は「この場と原子力審査の間で考え方に相違がある」と述べていた。別の委員も「現在の原子力安全審査の不確実さの扱いについては個人的に問題点があると考えている」と規制委の審査に疑問を投げ掛けた。

島崎氏や地震調査委の委員たちの発言の背景には、断層の長さや深さを正確に把握できないことがある。大飯原発の安全審査で、関電は二つある地震の大きさの計算手法のうち一つの手法しか使っていないが、熊本地慢の観測データは、その手法では事前予測が難しいことを示した。それでも関電は、地表ではつながっていない三つの断層を連動させるなど調査の不確実性を考慮していると主張し、規制委も追認した。

規制委は、関電が採用しなかったもう一つの手法では、つながっていない断層の連動などを考慮しにくいとの見解を示している。だが、複数の地震動専門家は本紙の取材に「工夫すれば可能だ」と話す。

規制委の地震に関する審査ガイド策定に携わった防災科学技術研究所の藤原広行・社会防災システム研究部門長(応用地震学)は「(関電の想定は)ある程度の不確かさを見ているが、その線引きで本当にいいのか検証できていない」と指摘し、「規制委は審査の妥当性を純粋な技術論で評価する場をつくるべきだ」と語った。

審査のやり直しが必要

【解説】 地震調査委員会の検討会合の議事録から見えてくるのは、地震学者のいない原子力規制委員会が揺れの大きさの是非を判断する危うさだ。適切な審査を尽くさずに再稼働が進めば、再び放射能汚染の惨禍を生みかねない。

規制委が大飯原発の適合を認めた二O一七年五月、田中俊一委員長(当時)は、「(レシピについて)随分、議論したが私ではついていけない」と率直に語った。規制委に原子力の専門家は多いが、島崎氏の退任後、地震学者はいない。

議事録によると、地震調査委の内部では、熊本地震の経験を基に、二つの計算手法の併用などの慎重な運用を求めていた。しかし関西力大飯原発の審査で、規制委は地震の専門家たちの考え方の変化に目を向けないまま審査を終えてしまった。

地震調査委は、より精度の高い計算手法の確立に向けて、今も検討を続けている。大飯原発の再稼働を認めた際、規制委は「新たな知見が出れば議論する」という姿勢を示したが、今ある知見そのものが揺らいでいるのは明らかだ。これで審査が尽くされたと言えるだろうか。

東日本大震災と東京電力福島第一原発事故は、科学の未熟さと人々の過信を戒めた。拙速に再稼働させる必要はない。科学的な議論が決着した上で、審査をやり直すのが筋だろう。(中崎裕)

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