<始まる民泊> ヤミ営業(上・中・下)【3/7-9中日新聞・暮らし】

「みんぱく」と聞くと民族学博物館(民博)だと思っていたら、バラバラ殺人事件の民泊のことらしい。

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<始まる民泊> ヤミ営業(上)

【中日新聞・暮らし】2018年3月7日
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2018030702000004.html

六月から施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)により、民泊の全面解禁が近づく中、対策が急がれるのが無許可の「ヤミ民泊」問題だ。国の調査によると、すでに国内で運営されている民泊の実に八割以上で違法営業のおそれがあり、周辺住民とのトラブルは絶えないという。今後、民泊が市民権を得るためには、一刻も早い規制が必要だが、果たして新法によりどこまで進むのか。ヤミ民泊の実態を踏まえ、三回にわたって検証する。

「隣の部屋から昼も夜も大きな騒ぎ声がしてうるさい。ドアを思い切り開け閉めしているらしく、その音まで響いてくる」

東京都内の十二階建て分譲マンション。管理組合の理事長を務める四十代の男性が苦情を耳にしたのは、二〇一五年夏のことだった。苦情があったのはワンルームの部屋。持ち主が仲介業者を通じて賃貸に出していた部屋で、当初は借り主が騒いでいるのだと思い込んでいた。

ほどなくして、今度は管理人から「最近、ごみ出しのルールを守らない住民がいる」と苦情が。マンションの中にあるごみ置き場を調べると、ビールの空き缶や空き瓶、お菓子の袋などを一緒に入れたコンビニのポリ袋が放置されていることが何度もあった。「普段、見ない外国人が最近、キャリーケースを提げて出入りしている」とも。マンションには百人以上が住んでいたが、日中、エントランスの管理室に座って住民の出入りを見ている管理人には、違いがすぐ目に付いた。

「郵便受けの前で、旅行者らしき大柄の白人がうろうろしている」。見慣れぬ外国人の姿は住民たちの目に留まり始めていた。管理会社の担当者は「旅行者は欧米系、アジア系と国籍を問わなかった」と振り返る。

手がかりを探ろうと、男性たちは試しにインターネットで自分たちのマンションの名前を検索すると、民泊の大手仲介(予約)サイトに、問題の部屋が掲載されていることが分かった。ダブルベッドが置かれた室内の写真とともに「一泊八千円、宿泊人数四人まで」と紹介されている。「very good location(非常に立地がいい)」。宿泊したとみられる外国人のレビュー(評価)も寄せられていた。

確かに、マンションは駅から徒歩圏内で都心へのアクセスも悪くない。しかし、民泊を始めるとの報告を管理組合で受けたおぼえはない。民泊は旅館業法にのっとって、保健所の許可が必要だったが、フロントを設置しないといけないなど、許可を得ていないのは明らかだった。

六月から施行される民泊新法では、都道府県に届け出さえすれば、民泊は手軽に営業できるようになる。ただ、営業日数が年間百八十日に制限されるなど規制は厳しく、届け出をしないヤミ営業が残る不安はつきまとう。

「まさか自分たちのマンションの一室が、知らない間に民泊に使われているとは」。苦情の原因を突き止めたという気持ち以上に、男性はあぜんとした。

営業をやめさせようと、管理会社とともに、持ち主に連絡を取ったが、「誰が借りているかも知らない。仲介業者に聞いてくれ」。だが、事情を知っているだろう借り主とは連絡さえ付かなかった。借り主には居住実態すらなく、民泊を営業する目的で部屋を契約した疑いがある。

手をこまねいている余裕はなかった。さらに驚く事態が発覚した。

(添田隆典)

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<始まる民泊> ヤミ営業(中)

http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2018030802000002.html
【中日新聞・暮らし】2018年3月8日

ヤミ民泊の騒動以降、マンション入り口には「民泊禁止」と3カ国語で表記した張り紙を掲示している=東京都内で(一部画像処理)

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二〇一五年の師走。東京都内の分譲マンションで、管理人がいつものようにエントランスの管理室にいると、外国人旅行者が近づいてきた。マンションではその年の夏、無断で民泊が営まれていることが発覚し、宿泊客らによる騒音やゴミの問題に頭を悩ませているところだった。

管理人に近寄ってきたその旅行者は何かに困った様子で、スマートフォンのメール画面を差し出してきた。それを見て、管理人は言葉を失った。画面には、マンション裏口のオートロックを解除する暗証番号、民泊に使われている部屋の郵便受けのダイヤルロックを開ける方法が日本語で書かれていた。文面の通りに郵便受けを開けると、小さな箱の中に部屋の鍵が入っていた。

メールに書かれていたのは、“チェックイン”の手順。民泊を無断営業する部屋の借り主が、旅行者に送ったようだが、旅行者は日本語が読めないため、その場にいた管理人に助けを求めてきたのだ。説明文は、管理人の目に触れないよう、マンションの表玄関ではなく裏口から入るよう周到に指示もしていた。

住民しか知らないはずのオートロックの番号が宿泊客に筒抜けになっている。鍵の管理も宿泊客に任せきりとなれば、合鍵を作られたり、第三者の手に渡って悪用される恐れもある。

「これ以上は見過ごせない」。管理組合の理事長を務める四十代の男性や管理会社は弁護士に相談。本人確認をせずに鍵を受け渡すのは旅館業法違反にあたり、防犯・防災面の安全を脅かしているのは管理規約にも反するとの助言を受け、民泊の即時中止を求める文書を、部屋の持ち主と借り主宛てに送った。先方が「受け取っていない」と、しらを切れないよう内容証明郵便の形にして。

効果はすぐに表れた。数日後に民泊の予約サイトを確認したところ、部屋の情報はなくなっていた。借り主がサイトに掲載していた情報を削除したようだ。ほどなく旅行者の出入りもなくなり、問題の部屋から生活音もしなくなった。それまで知らぬ存ぜぬの対応だったことを考えるとあっけなかったが、半年間に及んだ民泊騒動にようやく終止符が打たれた。

管理組合では、再発防止のため管理規約の改正にも着手した。臨時総会を開き、部屋の所有者全体の八割以上の賛成を得て、民泊やシェアハウスなど営利目的で宿泊や滞在に部屋を提供することを禁止する文言を盛り込んだ。マンションの掲示板には日本語、英語、中国語の三カ国語で「民泊禁止」と書いた張り紙も掲示。幸い、あの一件以外、マンション内で民泊は行われていないという。

管理会社によると、民泊停止後、借り主は早々に部屋を引き払ったという。ただ、理事長の男性らは最後まで借り主と接触できずじまい。一体、どんな人間だったのかいまもって分からないという。

男性は言う。「家主と顔を合わせなくても泊まれるなら、宿泊客は隠れて何だってできる。これから民泊がやりやすくなるということは、それだけ犯罪に悪用される危険も増えるということではないのか」

(添田隆典)

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<始まる民泊> ヤミ営業(下)

http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2018030902000003.html
【中日新聞・暮らし】2018年3月9日

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これまでに取材したヤミ民泊の実態からは、主に四つの問題点が浮かび上がった。(1)違法にもかかわらず仲介(予約)サイトに掲載されている(2)違法営業をしている家主の正体がつかめない(3)旅行者による騒音やごみ出し(4)部屋の鍵などセキュリティー管理-。これらの問題点は、六月から施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)で対策が進むのか。専門家などの意見も交えて、考えてみた。

◆登録制で規制へ 仲介サイト

厚生労働省が二〇一六年に主要なサイトから一万五千件の物件を抽出調査したところ、旅館業法に基づき保健所の営業許可を得ていたのはわずか17%。一方、無許可は31%、正確な住所が記載されていないなど「特定不可・調査中」は53%に上った。同省の担当者は「許可されていれば住所はすぐ分かるはず。特定不可の物件も合法とは考えにくい」と話す。

はびこるヤミ民泊を締め出そうと、新法は仲介サイトの規制を強める。仲介サイトを観光庁への登録制とし、登録サイト以外への掲載を禁止したほか、届け出のない違法民泊を繰り返し掲載した場合は、登録の取り消しや業務停止となり、さらに続けた場合は懲役などの罰則もある。

世界最大の民泊サイトで、日本の物件を六万二千件掲載する「Airbnb(エアビーアンドビー)」は、観光庁に登録して運営することを表明。同庁の担当者は「違法な民泊が普通に掲載される状況は、間違いなく改善される」と話す。違法のままでは大手サイトに掲載できなくなるため、ヤミ民泊を大幅に減らせる効果があると見込んでいる。

ただ、それでもヤミ民泊は残り続けるとの見方もある。新法では年間で営業できる日数は最大で百八十日。加えて、各地で民泊への規制が進む。年間五千五百万人の観光客が訪れる京都市が、住居専用地域での営業を観光閑散期の一月半ばから三月半ばの二カ月間に限定するなど、全国の四十四自治体が条例で区域や曜日に独自の制限を設ける予定だ。

民泊に詳しい立教大観光学部(埼玉県新座市)の東徹教授は「百八十日の営業日数では割に合わないと考える人間は、違法で営業するだろうし、受け皿となる未登録のサイトも一部で出てくるだろう。そうなると、特定は容易ではなくなる」と指摘する。

◆保安管理が課題 集合住宅

新法では、民泊に家主が同居する場合は家主、業者に管理を委託する場合は業者に二十四時間の苦情対応が義務付けられ、業者は連絡先を公開しなければならない。苦情には騒音やごみ出しのマナーも含まれるため、周辺住民からも改善を求めやすくなる。

ただ、新法は、集合住宅のセキュリティーについての条文はなく、解決策に触れていない。入り口のオートロック暗証番号を旅行者に教えていいのか、部屋の鍵をどう管理するかといった問題が残り、個別にルールを定める必要がある。

このため、民泊そのものを敬遠するマンションは多い。マンション管理業協会(東京都港区)によると、全国の分譲マンションのうち、管理規約の改正や、管理組合の総会・理事会での決議で民泊を禁止したマンションは二月時点で八割。残り二割弱はまだ意思決定していないが、容認は0・3%にとどまる。

(添田隆典)

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