4/7森友疑惑の渦中 安倍昭恵氏 言動考察【東京新聞・特報】

森友疑惑の渦中 安倍昭恵氏 言動考察

2018年4月7日【東京新聞・こちら特報部】

復古の使命感

 「神さまに動かされている」

「総理夫人の仕事」意識

 「目指すところは首相と一緒」

  政府の私人解釈と矛盾

世論調査でも6割証人喚問求める声

森友疑惑の国会審議も1年以上となり、現在は財務省の文書改ざんに焦点が当たっている。ただ、この疑惑を要約すれば「政府が極右系の学校に国有地を破格の安値で払い下げ、その経緯を隠そうとした」ということになるだろう。そのいくつかの重要な場面に姿を現すのが、安倍首相夫人の昭恵氏だ。国会での証人喚問実現は難航しているが、なぜ彼女がそこにいたのか。その原点を整理した。 (安藤恭子、白名正和)

 復古の使命感

「昭恵さんは天真爛漫(てんしんらんまん)な人だ。人のためになりたいという一心で、ご協力いただいてきた。生まれが良くて疑うことを知らないから、利用されたのだろう」

最近、昭恵氏の秘書から「名誉会長辞退」の連絡を受けたというNPO法人「iPSコミュニティー」の鳥越孝理事長(七五)は残念がる。関西でチャリティーゴルフ大会などを主催することで、iPS細胞研究に寄付をしてきた。五十五に上る昭恵氏の名誉職について、安倍首相が「ほとんど辞退する」と述べたのを受けた対応だ。

「神さまに動かされている」

昭恵氏は「脱原発」「防潮堤見直し」などの意見を公言し「家庭内野党」を自任。二O一六年には沖縄・高江の米軍ヘリパッド建設に反対する住民のテントを訪れ、世間を篤かせた。

「主人が最初に総理になってからの一年間は、自分をガチガチの『型』にはめていた」と、昭恵氏は自著に記した。夫の首相辞任で「どん底」に落ちたことが「自分の考えを言える出発点」となったという。同時に顕著になったのが、神道や精神世界への傾倒だ。

「麻は波動の高い植物。日本の根幹の神道の中で使われる麻は、国産であるべきなんです」。一六年秋に対談した東京工業大の西田亮介准教授(社会学)は、昭恵氏のこんな発言に面食らったという。

昭恵氏は連合国軍総司令部(GHQ)の占領政策で大麻栽培が禁じられ、日本の良い点が失われたと主張。自らを「神さまに動かされている」とし、宗教は「どちらかというと神道」。東京・神田で開店した居酒屋「UZU」の名も、古事記に登場する神アメノウズメに由来するという。

西田准教授は「神道の知識や歴史に裏付けられた発言ではない、と感じた。日本の伝統が好きで、スピリチュアルにはまる人はたくさんいる。ただ、本人は索朴で無自覚でも、首相夫人の存在は権力性を帯びている。保守や国粋主義と結び付いて利用され、現状の混乱を招いた」とみる。

この対談では「日本の精神性が世界をリードしないと地球が終わる」とも発言している。この考えは戦前の「八紘一宇」に通じる危うさがある。これは「天を盟主に世界を一つの家にする」という思想で、日本のアジア侵略を正当化するスローガンとなった。

昭恵氏は「論語」などを音読する「素読」にも熱心だ。素読を「主人の提唱する『美しい国』づくりに参画するもの」と、普及団体の名誉会長にも就いた。

その論語の儒教論理を取り入れたものが、戦前の「教育勅語」だった。これは神話的な国体観に基づき、明治天皇が「臣民」に「徳目」を示したものだ。

昭恵氏は教育勅語を暗唱させていた森友学闘の塚本幼稚園を絶賛。そこでの講演で「せっかくここで芯ができたものが(公立の小)学校に入った途端に揺らいでしまう」と発言した。

 

「総理夫人の仕事」意識

 

昭恵氏が私人であれば、どんな思想信条を語ろうと問題はない。しかし、「総理夫人」となれば別だ。

「目指すところは首相と一緒」

「夫の立場によって今の自分の立場がある」。二O一四年に、昭恵氏が自身のフェイスブックで発したコメントだ。ある対談では「目指すところは(首相と)一緒で、日本を取り戻したい」とも話している。

自著では「自分がいいと思う活動団体を支援したりするのも『総理夫人の仕事』のうち」と記している。一方で、居酒屋の運営などを「完全に私人としての仕事」と表現しており、「総理夫人の仕事」の公性をはっきり意識している。

ところが、政府は昨年三月に閣議決定した答弁書で首相夫人は「私人であると認識している」とした。

夫人付きの職員については「夫人が内閣総理大臣の公務の遂行を補助すること(総理公務補助)」を支援するためにいるという。

政府の私人解釈と矛盾

そこで問題になるのが夫人付き職員の一人だった谷査恵子氏(現・在イタリア日本大使館一等書記官)が一五年十一月、財務省の国有財産審理室長に、国有地賃料の優遇制度を問合わせ、その結果を森友学園前理長籠池泰典被告=詐欺罪などで起訴=にファクス送信していた件だ。

政府は「谷氏個人」の活動として、昭恵氏との関与を否定するが、これはあまりに不自然な解釈だ。谷氏の役割はあくまで「総理公務補助」のための支援。となれば昭恵氏の森友学園への支援も少なくとも「総理夫人の仕事」で純粋な私的行為ではあり得ない。

私的な信条と、「公」の性格を帯びた「総理夫人の仕事」の混同。それは森友学園とのかかわりに限らない。昭恵氏は一五、一六年に富士山麓で開かれた「FUJISAN地球(ちだま) フェスタ”WA”」というイベントでも名誉顧問を務めた。

実行委員長は「日本最古の神社で、富士山麓に栄えた超古代文明の富士王朝の中心」の再建を進める新興宗教の代表だった。

内閣府や総務省などが後援したが、内閣府の担当者は「規定にのっとって審査し、後援をしている」と昭恵氏の影響を否定した。

 

世論調査でも6割 証人喚問求める声

決裁文書の改ざんなど一連の森友学園問題を受け、国民は昭恵氏に厳しい目を向けている。共同通信社が三月三十一日~四月一日に実施した緊急の電話世論調査では、昭恵氏の国会招致が「必要だ」と答えた人は60・7%に上った。

そもそも一四年四月十五日、森友学園前理事長の籠池泰典被告が小学校設置の認可答申に先行して国有地を貸し付けてほしいと要望したのに対し、財務省近畿財務局は断っていた。

だが、改ざん前の財務省決裁文書によれば、その直後、財務局と森友学側が打ち合わせた際、学園側は「昭恵氏が学園を訪れ『いい土地ですから前に進めてください』と言われた」と説明し、籠池被告と昭恵氏が並んで写っている写真を示した。財務局はその後、方針を一転し、売却を前提とした貸し付けに協力すると伝えてきた。

この学園側の昭恵夫人の発言部分について、安倍首相は「妻に確認をいたしました。そのようなことは申し上げていないということでございました」と否定する一方、籠池被告は三月下旬の大阪拘置所での野党議員の面会で「間違いない」と主張している。

さらに籠池被告は一六年三月建設定地のトラブルで財務省と直談判した直後、昭恵氏から「どうなりましたか」と尋ねる電話があったと国交省職員らに説明している音声データも存在する。この籠池被告の発言も首相は否定している。

こうした点の真偽を解明するためにも、昭恵氏の証人喚問が求められている。

((((デスクメモ))))
自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)問題で与党も憤りを示している。いわく「官僚はけしからん」。情報隠蔽、改ざんは厚生労働省や財務省でも発覚し、結果「官僚が悪い」なのだが、その怒りっぷりは森友疑惑の責任を官僚に押しつけ、幕引きを図るための芝居くさい。警戒しなくては。(牧) 2018・4・7

(写真)
教育勅語発布40年式典に参加する女生徒たち=1930年10月、皇居前広場で(日本電報通信社撮影)

安倍昭恵氏容と写真に収まる谷査恵子氏=昭恵氏のフェイスブックから

2015年9月5日の安倍昭恵氏のフイスブック。森友学園が、運営する塚本幼稚園で講演したことが記されている。

2014年4月、小学校の建設予定地で撮影したとされ」前理事長の籠池泰典被告(左) 、妻諄子被告(右)と安倍昭恵氏の写真=著述家・菅野完氏提供

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