6/10アストリッド計画縮小の衝撃 なぜ、政府は核燃料サイクルに固執するのか【東京新聞・特報】

 

 

日仏共同 高速炉開発に黄信号

 仏が計画規模縮小へ

核燃サイクルなお固執

 もんじゅ失敗 反省なく

2018年6月10日【東京新聞・こちら特報部】

 

一兆円の費用をかけながら、運転はわずか二百五十日。失敗に終わって、ようやく一昨年、廃炉が決定した高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)。その反省もないまま、政府はフランスと新たな高速実証炉「ASTRID(アストリッド)」を共同開発するとしてきたが、ここにきて当の仏政府が計画の大幅縮小を表明した。この黄信号を無視して、日本はまだ核燃料サイクルへの道を進み続けるのか。 (大村歩)

 

「現在のウラン市場の状況をみると、高速炉実用化の必要性はそれほど緊急ではない」「出力は(当初予定の六十万キロワットから)十万~二十万キロワットに縮小を検討」

経済産策省で、今月一日に開かれた「高速炉開発会議戦略ワーキンググループ(WG)」。その場で、来日したフランス原子力庁原子力部門プログラムマネジャーのニコラ・ドビクトール氏はそう説明した。

経産省や文部科学省、原発メーカーなど日本側の関係者からは「国内には規模縮小に懸念の声がある」といった声も出た。出力十万~二十万キロワットでは、もんじゅ(同二十八万キロワット)より規模が小さく、新規開発の意味が薄れるからだ。

だが、ドビクトール氏は「コンピューターを使ったシミュレーションなどと組み合わせることを計画しており、出力規模は十分」と突き放した。さらに建設可否の判断時期について、従来の二O一九年から二四年ヘ、五年遅らせることも言い添えた。

経産省原子力政策課の担当者は「フランス側は検討状況を説明しただけで、縮小が決まったわけではない」と強調、「今後、相手方とよく協議していきたい」と語った。とはいえ、国は年内中に高速炉開発のロードマップを作成する方針。この時期の縮小表明に動揺がないはずがない。

昨年三月にフランスで原子力関係者に取材を重ねた福井県敦賀市議の今大地晴美氏は「フランスは電力の75%を原発が占める原子力天国。原発メーカーのアレバもフランス電力も事実上の国営企業だが、新型原発建設の大幅な遅れなどで大さな損失を抱え、財政的に余裕がないというのが共通認識だった」と、フランス側の事情を解説する。

アストリッド開発計画は0六年に始まり、一九年に基本設計、三0年代に運転開始が見込まれてきた。日本は一四年から開発協力を開始。総費用は数千億~一兆円に上り、フランス側は折半での費用負担を求めているとされる。

今大地氏に対し、仏下院議員のノエル・マメール氏は「アストリッド計画は政府の失策。実用化も商業化も無理だが、政府が深く介入している」とも語っていたという。ただ、一七年にマクロン政権が誕生し、原発依存度を50%に下げる方針を明確にした。アストリッドの縮小も、そのこととは無縁ではなさそうだ。

それにしても、日本の電力供給には一切役立たない原発に、なぜ経産省や電力会社はご執心本のか。

こんな事実も疑問に輪を掛ける。もんじゅは高速増殖炉で、日本が進めてきた核燃料サイクルの一部だ。通常原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、高速炉内で燃やして増殖させるのが究極の狙いだ。しかし、アストリッドは増殖を目的としない、プルトニウムを燃やすだけの高速炉なのだ。

原発ありきのツケ

稼働するば使用済み燃料 → 再処理すればプルトニウム生産→プルトニウム消費先に高速炉

「本末転倒」

 

元原子力委会委員長代理で、長崎大核兵器廃絶研究センター長の鈴木達治郎氏は「経産省などは高速炉によって、核のごみが減ると説明している。たしかに高速炉の核燃料サイクルシステムが完全にできれば、そのシステムで出る核のごみは、今の高速炉なしの通常原発から出るごみより減るかもしれない」という。

「しかし、その話と、現在抱える核のごみの話は全く別問題。経産省はそこを説明していない」

どういうことか。

日本には現在、使用済み核燃料を再処理し、高レベル放射性廃棄物を閉じ込めたガラス固化体が二千本以上ある。さらに再処理されないままで、もし再処理されればガラス固化体二万四千本に相当する使用済み核燃料がある。これらが現在抱えている核のごみだ。

では、これらがアストリッド計画が成功すれば消えるのかというと、答えはノーだ。というのも、これらは高速炉では燃やせないからだ。つまり、現在抱えている核のごみは減らない。

さらに鈴木氏は「そもそも『原型炉』のもんじゅが失敗したのに、それよりも一段階レベルが高い『実証炉』のアストリッドを開発する合理性がどこにあるのか』と首をかしげる。

もんじゅでは開発伝使った一兆円以上は無駄伝なったうえ、廃炉には今後三十年間で三千七百五十億円もかかる。その反省もないまま、まだ高速炉に固執する姿勢について、龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は「高いコストをかサてプルトニウムを取り出し、それを増殖しない高速炉で燃やしたところで一回限りの燃料となるだけで、経済性がまるでない。まったく理解しがたい」と話す。

大島氏は先月三十一日に参院経済産業委員会に参考人として出席し、経産省が四月に発表したエネルギー基本計画で原子力を「準国産エネルギー」と位置付けている点について、「準国産エネルギーという経済的財はない。用語自体が非科学的だ」と批判した。

「どうしても核燃料サイクルの看板を下ろせない事情があるが、説明がつかないので『準国産エネルギー」という言葉を使い続けるのだろう」(大島氏)

では、その事情とは何なのか。鈴木氏は「国や電力は原発を動かし、六ケ所村(青森県)の再処理工場を動かしたいだけではないのか」と推測する。

青森県は六ケ所村が最終処分場にならないよう「再処理しないなら、使用済み燃料は各電力会社に送り返す」と公言している。そうなれば、すでに使用済み核燃料プールが飽和気味となっている各地の原発は稼働できない。だから電力各社は何としても、再処理工場を稼働させたい。

だが、再処理工場を稼働させれば、プルトニウムができてしまう。プルトニウムは原爆の材料となりうるため、核不拡散条約体制の下では原発で燃やす目的以外で所有は許されない。

日本はすでに原爆五千発以上に相当する四十七トンものプルトニウムを抱えている。この先、年八トンのプルトニウムを分離できる再処理工場を稼働させれば、大口の消費先が必要だ。

つまり、既存の原発を動かし続けるには、多くのプルトニウムを消費できる高速炉を開発し、そこで燃やすと言い続けなければならない。その結果、としてのアストリッドの開発計画というわけだ。

大島氏もこの見立てに同調した上で「本末転倒な話であり、目的自体が腐っている。政府は青森県などとも率直に議論し、誰がみても分かるウソをつくのはやめるべきだ」とする。

鈴木氏は「核燃料サイクルは、もんじゅの破綻で合理性がなくなった。国や自治体が当事者になっていて動けないなら、科学的に合理的かつ公正な判断のできる第三者組織を作り、その意見をもとに政策決定すべきだ」と提言している。

((((デスクメモ))))
言い古されたとはいえ「原発はトイレのないマンション」という形容はけだし名言だ。後先考えずに、目先の利益で事業に乗り出す。そして、泥沼へ。「やめよう」と言う勇気がない。でもヘタレと言われるとキレる。戦争も原発も根は一つ。不幸にも、この幼児性は増幅するばかりだ。(牧) 2018.6.10

(写真)
1兆円が投入されながら、トラブル続きで計250日しか運転されず、政府が廃炉を決めた高速増殖原型炉「もんじゅ」=今年2月、福井県敦賀市で

(上)パリで、フランスのオランド大統領(当時) (右)との間で高速炉の技術開発協力に関する取り決めに署名した安倍晋三首相=2014年5月(共同)
(下)経産省の作業部会に出席し、高速炉開発計画の縮小について説明するフランス原子力庁の担当者(前列右端の2人)=今月1日、東京・霞が関で

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カテゴリー: もんじゅ, 核燃サイクル, 中日東京新聞・特報 タグ: パーマリンク