6/22原発ありき 英で着々 日立 300ヘクタール既に買収・地元対策 年1200万円/予定地ーアングルシー島/土地守る反対住民「屈しない」【東京新聞・核心】

原発ありき 英で着々

 日立 300ヘクタール既に買収・地元対策 年1200万円

  予定地ーアングルシー島

    土地守る反対住民「屈しない」

2018年6月22日【東京新聞・核心】

 

日立製作所は英国で計画する原発新設を巡り、英政府と本格協議に入った。二〇一九年度には「原発輸出」の可否の最終判断をするとし、一定の収益が上がらなければ撤退することにも言及する日立。資金的な全体像について二十日の株主総会で「守秘義務がある」として情報開示に後ろ向きだが、建設予定地のアングルシー島では、大規模な用地買収と念入りな地元対策が着々と進んでいた。(英アングルシー島で、阿部伸哉)

 

■ アメ

「日立は、原発を通じて今後百年にわたり島に関わると約束している」

島の役場でエネルギー開発計画の担当者であるリズ・デービーズさんは日立撤退のシナリオを打ち消した上で、英政府との協議開始や建設許可申請を「非常に前向きなニュース」と歓迎した。

青々としたアイリッシユ海に沿って広がる牧草地を、鉄柵が囲い込む。その広さは東京ドーム六十四個分に当たる約三百ヘクタール。日立の事業子会社が原発新設のために確保した。

島の人口は約七万人。0九年、島最大の雇用主の一つだったアルミニウム製錬工場が撤退して五百人以上の技術職が失われ、島の経済を揺るがせた。

日立側は原発建設に伴い最大九千人が雇われ、運転開始後も千七百人の正規雇用が生まれるとPR。「日立は農業主体の島に給料のいい技術臓を根付かせてくれる」とデービーズさんは強調した。

日立は用地の取得だけでなく、地域の住民から建設への理解を得る「アメ」も怠らない。地元対策費として昨年度、八万ポンド(約千二百万円)を投じ、地域のサッカーチlムや巡回映画、祭りなどを助成。また毎年、地元の若者十人程度を二週間ほど日本に派遣し、原発の基本技術を教える。

用地買収もほぼ完了しており、地元自治体を含め賛成派の闘で日立への期待感はいや応なしに高まっている。英電力産業関係者の一人は「日立は鉄道事業でも英国に大きな投資をしており、しがらみが多い。英政府の意に反して撤退できるかは疑わしい」と指摘した。

 

■抵 抗

「近所の家は二十軒は懐されたかな」。近所の農家は十年ほど前から始まった買収に次々と応じ、去っていった。最後に東北西の三方を建設予定地に囲まれてしまった農家のリチャード.・ジョーンズさん(六三)は険しい表情で見回した。

リチャードさんは自分の牧草地に風力発電のタービンを一基、自前で設置。「原発には屈しない」という意思表示だ。買収に応じず、地元メディアで「わがまま」呼ばわりされたこともあったというが、「うちは何百年もこの土地で生きている」。家の壁には十七世紀からの先祖の肖像画が並んで掛かる。

建設予定地のすぐ隣には一五年いっぱいで閉鎖された原発がある。だが一一年の福島第一原発の事故が認識を変えた。「映像を見て「あんなことが起こり得るのか」とショックを受けた」と振り返る。

妻のグウェンダさん(六三)は日立側の土地買収の規模に驚いた。敷地面積は閉鎖された原発の十倍以上。「使用済み核燃料も敷地内で保管するって、これまでとは次元が違う」と言い、「そんな島に誰が来るの」と、島の主要産業である観光への影響を恐れた。

【日立と英政府の協議】

日立は英子会社「ホライズン・ニュークリア・パワー」を通じ、英アングルシー島に2基の原発を建建設する計画を進める。日立側が英政府に提出した建設許可申請は、1年半以内に認可される見通し。総事業費が3兆円ほどに膨らみ、英政府の強力な支援が前提条件となっている。焦点の一つは、英政府が保証する電力買い取り価格。日立側は前例にならい1メガワット時当たり92・5ポンド(約1万4000円)並みを要望するが、英国では洋上風力の買い取り価格は60ポンドを下回っており、英政府も原発の電力を優遇するのは難しくなっている。

写真

(上)取り壊される旧原発(右後方}と、その周囲に広がる日立の原発新設予定地を指すリチャード・ジョーンズさん
(下)「原発は地元雇用に必要」と歓迎するアングルシ一役場のデービーズさん=いずれも英アングルシ一島で

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