6/23トルコへの原発輸出 暗雲/三菱重など計画 伊藤忠は撤退決定【東京新聞】

トルコへの原発輸出 暗雲

 三菱重など計画 伊藤忠は撤退決定

  膨らむ総事業費 地元反対派勢い

2018年6月23日【東京新聞】

日本からトルコへの原発輸出計画に暗雲が漂っている。安全対策費の増加で総事業費が想定の二倍以上に膨らんでいるためだ。事業化調査に加わっていた伊藤忠商事は計画参加の見送りを決定。建設予定地の黒海沿岸の北部シノップでは原発反対派が勢いづく一方、賛成派は「地域振興になる」と実現を要望し、地元の意見は割れている。

シノップ中心部から約十五キロ。トルコ最北端のインジェ岬周辺の建設予定地は樹木が切り倒され、荒れ地が広がる。

原発輸出は二0一三年に両政府間で合意。だが東京電力福島第一原発事故などの影響で安全対策費が増え、採算確保が難しい状況だ。計画に加わる原発メーカーの三菱重工業は今夏に完了見通しの事前調査の結果を踏まえ、事業化への方針を両政府と協議する考えだ。

シノップは県人口が約二十万人。漁業や農業以外に大きな産業はない。与党、公正発展党(AKP)のシェプケット・カヤ県副代表(六O)は「雇用が増え、産業も盛んになる」と計画推進を求める。男性運転手(六七)も「原発効果でインフラも整備される」ど期待する。

しかし、現地では反原発デモの実施など反対運動が続いてきた。市民には、黒海対岸の旧ソ連ウクライナで一九八六年に起きたチェルノブイリ原発事故の記憶が強く残る。事故のためがん患者が増えたと語る人も。トルコは地図で福島の事故も知られている。

漁師ジュムフル・ギョルドゥさん(六三)は「政府の決定には何も言えないが、不安だ」。漁師アティラ・トゥランさん(六三)も「原発は海水温度を上げると聞く」と漁業への影響を心配する。

原発問題は二十四日の大統領選と議会選で全国的な争点になっていないが、シノップでは最大野党の共和人民党(CHP)などが反対を訴えていた。

原発輸出は日本が成長戦略の柱に据えるインフラ輸出の一環だ。仮に両国の連携が行き詰まると計画はどうなるのか。AKPのムスタファ・エルジャン県副代表(四八)は「エルドアン大統領は造ると言ったら必ず造る」と語り、ロシアや中国が日本の代わりに参加する可能性を指摘した。

地元選出のCHPのパルシュ・カラデニズ議員(四二)は「原発は国の経済や環境にも負担となる。別の国が来ても絶対造らせない」。

反対組織「シノップ反核プラットフォーム」のカイハン・コヌクチュさん(五0)も「計画がなくなるまで闘う」と強調した。 (シノップ・共同)

原発建設予定地のトルコ最北端インジェ岬を歩くシノップ反核プラットフォーム」のメンバー9日(共同)

■ シノップ原発計画 トルコ北部シノップに原発4基を建設する計画。日本とトルコは2013年、日本の原発輸出を可能とする原子力協定締結で合意。三菱重工業とフランスの原子力大手アレバの合弁会社が開発した出力110万キロワット級の加圧水型原子炉を採用予定だが、総事業費が膨らみ、目標とした23年の稼働は難しい情勢。トルコでは初となる南部アックユ原発の建設をロシア企業が受注したほか、3カ所目の計画に中国が協力する可能性が出ている。(共同)

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