7/4エネルギー基本計画 閣議決定 原発ありき 国際潮流逆行/再生エネ軽視、太陽光成長抑え込む【東京新聞・核心】

エネルギー基本計画 閣議決定

 原発ありき 国際潮流逆行

  再生エネ軽視、太陽光成長抑え込む

2018年7月4日【東京新聞・核心】

政府は三日、四年ぶりにエネルギー基本計画を閣議決定した。世界的な逆風にさらされている原発の維持にこだわるあまり、伸び盛りの再生可能エネルギーを抑え付けかねない内容となった。米国が懸念するプルトニウムの大量保有についても、具体策を示せないまま。激動するエネルギー情勢を乗り切るための指針としては、説得力を欠く計画となった。 (伊藤弘喜)

■ 危惧

「この目標では再生エネつぶしになる」。三日、脱原発を求める市民団体の連合「eシフト」が東京都内で開いた記者会見で、登壇した再生エネ推進のNPO法人、環境エネルギー政策研究所(ISEP、東京)の松原弘直・主席研究員は強調した。

松原氏が危惧するのは、基本計画がニO三0年度の全電力量に占める再生エネの比率目標を従来通り、22~24%に据え置いた点だ。これはいまの世界平均と同水準。三0年度の計画として見劣りがすることは明確だ。

基本計画は太陽光発電が三0年度で7%程度を占めるとした。だが、ISEPの調べでは一七年時点ですでに6%近くを達成。このままでは逆に「太陽光発電(の成長)を7%に抑え込むことになる」と警鐘を鳴らした。

一方、一六年度実績で1・7%にとどまる原発は三0年度に20~22%まで引き上げるとする。基本計画が言及していない原発の新設や建て替えが行われないと達成が難しい目標だ。しかも原発は最も安い電源としている。NPO法人、市民電力連絡会(東京)の竹村英明理事長は、福島第一原発事故後の安全対策費の高騰などで原発のコストは世界的に上がっているとし「原発が安いという神話を基にしている」と批判した。

 ■ 影 響

基本計画の完成版には、「プルトニウム保有量の削減に取り組む」の一文が突如、加わった。経済産業省が五月にまとめた当初案では「利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を堅持する」と従来の政府見解を記すにとどめていた。米国の意向に配慮した外務省の要請で加わったとみられる。

米国は現トランプ政権やオバマ前政権などが、日本が大量のプルトニウムを保有している点に懸念を示してきた。

「日本はプルトニウムを核兵器に利用するのではないか」との疑念も米議会内に根強く、北朝鮮の非核化交渉への影響も懸念されている。カントリーマン元米国務次官補は六月末、本紙の取材に「北朝鮮に核兵器保有を断念させようとしている時に日本はプルトニウム抽出を続けている」と言われかねない」と指摘。北朝鮮との交渉の「弱み」になることを懸念した。

基本計画はプルトニウムを抽出し、再利用を図る核燃料サイクル政策は引き続き「推進する」とした。だが再利用のめどが立っていない中、削減の道筋は見えず、場当たり的な政策を印象づけている。

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プルトニウムなぜ削減?

政府は3日に閣議決定したエネルギー基本計画で、保有するプルトニウムの削減を掲げました。なぜプルトニウムがたまるのか、本当に減らせるのか。考えてみました。(吉田通夫)

Q そもそも「プルトニウム」とは。

A  強い放射線を出す核物質の一つです。ウランは天然の鉱石ですが、プルトニウムは自然界にほとんど存在しません。原発でウラン燃料を使うことで、化学反応によりプルトニウムが生まれます。ウランよりも放射線が強く、扱いも難しいとされます。

Q なぜ日本はプルトニウムを保有しているのですか。

A 日本政府は「資源の有効活用」として、すべての使い終わったウラン燃料からプルトニウムを回収し、ウランと混ぜた混合酸化物(MOX=モックス)燃料にして原発で再利用する計画です。使い終わった燃料から回収したプルトニウムは現在、約四十七トンあります。日本では回収するための工場ができておらず、ほとんどは英仏両国に取り出してもらいました。

Q  米国は、日本の保有をよく思っていないようですね。

A プルトニウムは大きなエネルギーと強い放射線を発するので、危険な核兵器の材料になります。長崎市に落とされた原子爆弾「ファットマン」にも使われました。日本の保有量は、原爆六千発分とも言われます。警戒する北朝鮮が核開発を続ける理由にもなってしまうので、米国は削減を求めてきました。

Q どうすれば減らせるのでしょうか。

A エネルギー基本計画では、これまで通りMOX燃料にして使う方策を示しました。しかしMOX燃料は出力の制御が難しく、利用できる原子炉が現在三十五基のうち四基に限られるうえ、少しずつしか使えません。また、プルトニウムを大量に消費できるとされる高速炉の開発も掲げていますが、研究のための「もんじゅ」が失敗に終わり、実現のめどは立っていません。必要な費用も見通せない状態です。
それでも政府と大手電力会社は原発を動かして使用済み燃料からプルトニウムを回収する方針なので、このままでは減らすどころか増えてしまう恐れがあります。政府の方針は破綻しているのだから、計画を見直してプルトニウムの回収をやめるべきだと指摘する専門家もいます。

 

■核燃料サイクル■ 原子力発電所で使い終わったウラン燃料からプルトニウムを取り出し、ウランと混ぜた混合酸化物(MOX)燃料に加工して再び原発で利用する政策。プルトニウムは核兵器に利用できるため、国際的に厳しい管理が求められるが、日本は米国との原子力協定で取り出しが認められている。現在は通常の原発で少しずつ利用する「プルサーマル」を進めるが、プルトニウムがたまってしまうため、政府にとっては大量に消費できる「高速炉」計画が本命とされる。

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