8/27同時被災、避難に壁 大飯・高浜事故訓練2日目/大飯からの避難ルート 高浜に接近【中日新聞・核心】ぐったり5時間200キロ 大飯・高浜 避難ルポ/「案内悪すぎ」 スクリーニング混乱必至【中日新聞・社会】

同時被災、避難に壁 大飯・高浜事故訓練2日目

http://www.chunichi.co.jp/article/kakushin/list/CK2018082702000057.html
【中日新聞・核心】2018年8月27日

 

関電大飯原発と高浜原発が同時に事故を起こすケースを想定して政府が初めて実施した原子力防災訓練。 26日の広域避難訓練は、高浜原発の事故を想定して2年前に実施された訓練よりも避難住民の数を2倍に増やすなど規模は拡大されたが、放射性物質が外部に放出されたのは大飯のみという設定。実際の避難ルートをたどると、同時に放射性物質漏れという事故が起きた際の避難に課題が浮かぶ。    (今井智文)

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県外に避難するため、地域ごとに分かれてバスに載り込む住民たち=26日午前、福井県おおい町本郷で

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大飯からの避難ルート 高浜に接近

関西電力大飯原発(福井県おおい町)と高浜原発(同県高浜町)の同時事故を想定した国による原子力総合防災訓練は二日目の二十六日、福井、滋賀、京都の三府県の住民が参加した避難訓練などが行われた。住民の参加者数は二日間で一万七千三百人と過去最多。二十六日は、自家用車やバスによる避難をはじめ、孤立の恐れがある福井県内の半島部でヘリコプターや船など複数の手段による訓練が繰り広げられた。

両原発からいずれも三千キロ圏にある福井県内の四つの半島部では、道路が土砂崩れだ通行不能になったと想定し、陸上自衛隊の大型ヘリや車両、海上自衛隊の船舶などを使って住民を輸送した。敦賀湾には医療設備を備えた海自の掃海母艦一「ぶんご」を停泊させ、負傷者を搬送して応急処置する初の訓練もあった。

福井県からは千五百三十四人がバスや自家用車で県内外に避難し、そのうち六百三十四人は兵庫県の宝塚市など五市町へ移動。途中の京都府綾部市などでは、放射性物質が付着していないかを調べるスクリー二ングや、甲状腺被ばくを防ぐ作用のある安定ヨウ素剤に見立てたあめを受け取る訓練にも加わった。

京都府では約九千人が屋内退避し、宮津市と京丹波町の住民がバスで兵庫県に避難。滋賀県高島市でも住民が避難訓練に参加した。

訓練後の講評で、西川一誠・福井県知事は「受け入れ自治体の拡大や内容の向上が行えた」と評価。荒木真一・内閣府大臣官房審議官は「最低限のことはトラブルなくできた。細かい部分で向上するためにやるべきことはある」と述べた。

 ■原発に接近

おおい町では午前八時すぎ、原発最寄りの大島地区や、町役場のある本郷地区などから住民二百八十人がバスや自家用車で避難を開始した。県外避難先に指定されている兵庫県川西市と伊丹市を目指し、県道や舞鶴若狭自動車道を使って西へ。出発から四十分ほどで高浜町の山間部にさしかかると、高浜原発に五・五キロまで近づいた。

今回の訓練は、大飯3号機と高浜4号機でともに原子炉.への注水が不能となったとの想定で首相が原子力緊急事態を宣言した。ただ、二日目は府県や地域ごとに条件を設定して避難を開始。福井県は、大飯のみ放射性物質が放出されたという条件で訓練をした。

実際に同時事故で両方の原発から放射性物質が放出された場合にはどうするのか。訓練参加者からは「行政が判断してくれる避難経路を信じたい」(六十代男性)という声もある一方、兵庫県川西市まで避難した二十代の男性漁師は「自分の判断であっち(東側)に逃げるかも」と打ち明ける。

 ■「状況踏まえて」

両原発ごとの広域避難計画では、福井県内の原発から半径三十キロ圏内の住民は、東側の県内市町に避難するのを基本とするが、風向きなどで難しい場合は兵庫県に向かうとしており、今回の訓練も兵庫に向かう設定だった。

福井県危機対策・防災課の担当者は「避難者として問題が生じている原発に近づくのは難しいだろう。二つの原発の事故があった場合には、状況を踏まえて避難先を決めるしかない」と述べるにとどまる。

二O一一年の東京電力福島第一原発事故では、南に約十一キロ離れた福島第二原発も一時は危機的な状況になった。 両原発の間の福島県富岡町から西の川内村に逃げた経験のある主婦青山総子さん(六九)=滋賀県高島市=は「当時、原発に近づく方向に逃げるというのは考えもしなかった。混乱の中では、家族で一つ、決めたコースで逃げるのが精いっぱいではないか」と振り返る。

 ■温度差

だが、福井県の西川一誠知事は同時事故を想定した訓練について「想定として適当なのか」と懐疑的な姿勢を示してきた。県幹部は「新規制基準で多重防護がなされているという前提なので、同時に複数の原発が事故に至るという想定は受け入れがたい」と語る。西川知事は今回の訓練後も「(同時事故の)想定が必要かというとそうでもない」と述べた。

政府も原発ごとの避難計画で、同時事故でも対応できるとの姿勢。訓練終了後に講評した内閣府の荒木真一・大臣官房審議官は「(原発ごとに単独に作ったものが)実際にうまくいくのか、訓練で検証し、教訓を踏まえて次を検討したい」と説明したが、今後の対応にどう生かされるかは未知数といえる。

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ぐったり5時間200キロ

    大飯・高浜 避難ルポ

    「案内悪すぎ」 スクリーニング混乱必至

2018年8月27日【中日新聞・社会】

関西電力大飯原発(福井県おおい町)と高浜原発(同県高浜町)で、同時に事故が起こったと想定した原子力総合防災訓練。二日目の二十六日は、両原発の南に位置する福耕県の山村集落から、京都府、兵庫県へと二つの県境を越える広域避難訓練があった。記者も、自家用車で避難する住民とともに、山道でハンドルを握った。              (山谷柾裕)

 

午前八時。林業が盛んだったおおい町名田庄地区に、防災無線が流れた。「自動車での避難が困難な人は、至急、公民館ヘ」。公民館では、安定ヨウ素剤に見立てたあめやゼリーが配られた。午前九時、バス三台、自家用車五台に分乗し、五十五人が約二百キロ先の避難先を目指して出発した。

目的地は、山道を五十五キロ、高速道路を約百五十キロ進んだ先にある兵庫県伊丹市。かなりの、道のりに思えるが、神戸市近郊のショッピングモールを利用するなど、このルートになじみがある住民は多い。「舞鶴若狭自動車道を通ると原発に近づいてしまう。一般道が自然な選択だ」と五十代男性。ただ、自然災害による寸断がないことが前提だ。

曲線のかなりきつい山道を、快調に進む。出発から二十分ほどで京都府に入った。放射性物質が付着していないかを調べる「スクリーニング」をする美山長谷運動広場(京都府南丹市)近くに着いたが、明確な運動広場の位置が分からない。訓練の運営スタッフの案内に従ったが、.車列は狭い路地に迷い込んだ。先頭のバスは何度もハンドルを切り返し、ようやく運動広場のグラウンドに出た。

広い場所でのスクリーニングはさすがにスムーズだったが、そこにたどり着くまでの「案内が悪すぎる」と六十代男性。本当の事故なら混乱は必至で、スクリーニングをしないまま、そのまま京都方面広向かう車が出るだろう。

高速に乗ってからほ混乱はなかったが、予想以上に時間を要した。バスを乗り換える三木総合防災公園(兵庫県三木市)に到着したころには、皆ぐったり。避難所として想定する伊丹市立南小学校に着いたのは、午後二時。出発から五時間たっていた。

小学校体育館では、ビニールシートの床や、熱中症対策の扇風機など、実際の避難生活に即したものが用意され、ようやく一息。地区の代表として参加した六十代男性は「自分でルートをしっかり把握していなければならないと身に染みた。経験を皆に広めたい」と語った。

(図)
福井県おおい町名田庄地区の住民が避難したルート

(写真)
スクリーニングを受ける自家用車=26日、京都府南丹市の美山長谷運動広場で(一部画像処理)

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