10/16「電力過多」の九州電力 太陽光発電一時停止の愚【東京新聞・特報】

「電力過多」の九州電力 太陽光発電一時停止の愚

 対象リストも非公開

2018年10月16日【東京新聞・こちら特報】

 

再生可能エネルギーの一つの太陽光発電があふれそうになり、九州電力は先週末、一部の太陽光発電を一時的に止めた。9月の北海道地震で記憶に残る、ブラックアウト(大規模停電)を避けるための供給調整だという。原発の発電が優先され、太陽光の発電が調整弁にされるのは本末転倒だ。これでは再生エネルギー普及の機運もしぼみかねない。同社の原発は4基が再稼働しており、発電過多の背景にある。止めるべきは危険な原発ではないか。 (中山岳、大村歩)

 

九州電力が実施した出力制御の二日間を振り返る。

十三日は午前十一時半から午後四時まで、九千七百五十九カ所の太陽光発電を送電線から切り離した。国も電力が余った午後零時半からの三十分間は、最大四十三万キロワットの発電を抑えた。

十四日は最大五十四万キロワットを抑えた。両日とも制御が必要になったのは、九州地方で電力需要に対し、供給が大幅に上回る見通しになったためだ。電力は需要(利用)と供給(発電)のバランスが崩れると、大停電が起きる恐れがあるため出力制御が認められている。

一方、再稼働中の川内原発(鹿児島)と玄海原発(佐賀)の計四基ほ通常運転を続けた。国のルールで出力抑制の順番があり、原発は水力や地熱とともに、太陽光よりも優先して発電が認められているからだ。

事業者はどう受け止めたのか。長崎県を中心に太陽光発電を手がけるチョープロ(同県長与町)の定富-さだとみ-勉・新エネルギー事業部長は「どこの発電所でどれだけ発電を抑えたか分からんですね。(事業者は)公平に選ばれたんですか」と疑問をロにする。同社は両日で運営する太陽光発電のうち計七力所で送電できなくなったが、対象事業者のリストが非公開なのは不満だ。

定富さんは「国の政策で原発を動かしているので仕方ないが、放射性廃棄物の最終処分も決まっていない原発より太陽光など再生可能エネルギーをもっと活用してほしい」と求める。

小泉純一郎元首相も十四日に岐阜市内で開かれた講演会で「原発が要らなくなると困るからと、太陽光発電を減らすのはおかしい」と九電の姿勢を批判した。

今回の出力制御は避けられなかったのか。九電の担当者によると、両日とも余剰電力を生かすため、九州と本州をつなぐ送電線「関門連系線」で百九十二万キロワットを送るなどしたが、「それでも余ったので出力制御した」と説明する。

同社の和仁-わに-寛・系統運用部長は直前の十二日の記者会見で、今後も太陽光の出力制御が行われる可能性を問われ、「秋や春などはあり得る」と述べている。

太陽光発電より、原発の発電を優先するルールは変えられないものなのか。

資源エネルギー庁の省エネルギー・新エネルギー部政策課制度審議室の河合賢矢室長補佐は「原子力発電は出力を一度下げると、戻すのに時間がかかる」と説明する。仮に原発を止めて太陽光発電を維持しても、夜間は発電できず火力発電で補わなければならない。「二酸化炭素(CO2)の排出やコストが上がる」

原発の出力制御は、なぜ難しいのか。プラント技術者で原子力市民委員会委員の筒井哲郎氏は「原発は核燃料が密閉された圧力容器や格納容器内にあり、炉内で燃焼量を調整するのが難しい。炉外でも出力調整を考えた設計になっていない」と指摘する。

筒井氏によれば、かつては電力業界も原発の出力調整をしたがっていた時期があった。実際に四国電力伊方原発2号機では、一九八七年と翌年の二回にわたり出力調整運転試験が行われている。「しかし、原発は出力が変動する過渡期の運転がもっとも注意が必要で、事故の原因になりうる。」 一九八六年のチェルノブイリ原発事故でも、人為的ミスが主因だったとはいえ、出力調整運転実験中の出来事だった。「何度も出力調整をすると、だんだん核燃料の組成が不安定になる問題もある」という。

再稼働4基は通常運転

 原発優先のルールに問題

  「全道停電」脅威あおる材料に

原発で臨機応変の出力調整が難しいというのは確かにそうかもしれないが、全くできないわけでもない。

NPO法人「環境エネルギー政策研究所」の飯田哲也-てつなり-所長は「原発は二十四~四十八時間前から準備すれば、出力を下げられる」と話す。実際、ドイツやフランスでも原発の出力調整は行われているという。今回、九州電力が出力制御の見通しを発表したのは実施二日前の十一日で、「この時点で原発の出力を下げれば、太陽光発電の出力制御をしなくても済んだはずだ」

そもそも、九電はニO一四年に太陽光発電停止の可能性を公表し、さらに今年初めごろから今秋の太陽光発電停止の可能性をにおわせてきた。余ることが予測できたなら、今年三月に玄海原発3号機を、六月に同4号機を再稼働させたりせず、停止させておけばよかったのではないか。

自然エネルギー普及を目指して政策提言などを行っている自然エネルギー財団の大林ミカ事業局長は「九電も経産省も「やるぞ」と言い続けてきた。むしろ、電力が余ると大変だが、原発は止められない、だから太陽光発電を停止するというパターンを既成事実化するための公開実験的な意味合いだったのではないか。北海道で全道停電が起きたことも脅威をあおる材料にした感がある」と指摘する。

龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)も「現在稼働中の九電の原発の計四基のうち、一基分を停止させておけば、電力過剰となる事態を防げた。せっかく燃料費ゼロでできた太陽光の電力を捨てて、燃料費のかかる原発の電力を優先するのは、経済的にはまったくおかしい」と指摘する。

大島氏は、そもそも、今年七月に閣議決定されたエネルギー基本計画で「主力電源」と位置付けられた再生可能エネルギーと、長期固定電源(ベースロード電源)と位置付けられた原発とで、「どちらを優先したいのか、はっきりしていない」と批判する。

長期固定電源となっているため、電力需給を広域的に調整する電力広域的運営推進機関(OCCTO)の業務指針でも、原発の出力調盤は最終手段と位置付けられている。風力、太陽光、バイオマスなど再生可能エネルギーはそれより以前に調整対象とされている。「結果的に、再生エネルギーを主力電源にすると言いながら、いざとなれば棄てる。これでは主力電源化というのも掛け声だけではないかと疑問視されて当然だ」

さらに、前出の大林氏は、このベースロード電源イコール原発という考え方自体に疑問符を投げかける。

「再生可能エネルギー普及が進む欧米の国では、需要と供給の予測をITにより正確に行い、供配電のマネジメントをきちんとやることで、再生エネで日本のベースロード需要に相当する電力を賄っている。停止すると一気にエリアが停電しかねない原発など大規模発電所は、ベースロード電源とは言えない」

今回、いざとなれば太陽光発電を止めるという九電の姿勢が明確になったことで、少なくとも九州では再生可能エネルギーが余剰電力になる恐れがある。それが補償もされず捨てられるとなれば、「九州での再生可能エネルギーの普及にストップがかかるのは必至だし、他の地域への影響も大きい」(大島氏)。

やはり、電力が余るというなら、よりコストが高く危険な電源から削っていく方向に、政策転換をすべきではないか。前出の飯田氏はこう語る。「ドイツでは、太陽光発電の出力を抑制した場合は事業者に補償している。放射性廃棄物を出す原発より、再生可能エネルギーが環境的にも社会的にも優先されているからだ。太陽光より原発を優先する日本のルールを変え、まず原発を止めるべきだ」

デスクメモ
政府と司法が両輪となって原発再種働へと突き進む傍らで、太陽光の電力が捨てられる。まるでブラックアウトを招き入れる悪者みたいに。本当の悪はどっちだ?動き続ける限り核のごみを出し、事故になれば回復不能な被害をもたらす原発の方だ。敵と味方を間違えたくない。   (直) 2018.10.6

(図)再生可能エネルギー出力制御の仕組み

九州電力
①九電が電力需給のバランスを予測
②供給力が需要を上回りそうな場合は事前にメールで連絡

太陽光など再エネ事業者
③連絡を受けた事業者は送電網への接続を停止

(写真)
九州電力のメガソーラー大牟田発電所=福岡県大牟田市で(同社提供)

九州電力川内原発2号機(手前)と1号機=鹿児島県薩摩川内市で、本社機「おおたか弐世」から
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九州電力の太陽光発電出力制御を批判する小泉純一郎元首相=14日、岐阜市内で

出力制御について脱明する九州電力の和仁寛・系統運用部長=12日、福岡市で

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