10/4死人に口なしか。故人の元助役に責任なすりつけ逃げる関電の卑劣【まぐまぐ・新恭(あらたきょう)】

死人に口なしか。故人の元助役に責任なすりつけ逃げる関電の卑劣

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arata20191003【まぐまぐ】

2019.10.04 27 by 新恭(あらたきょう)『国家権力&メディア一刀両断』

関西電力の役員らが、高浜原発立地自治体の助役だった人物から多額の金品を受け取っていた事実が発覚し、批判が渦を巻いています。関電サイドは故人である元助役男性の「異常性」を強調し、「受け取りを無理強いされていたが返した」と逃げ切る姿勢を見せていますが、果たして真相はどこにあるのでしょうか。元全国紙社会部記者の新 恭さんは自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、明らかになっている当問題の全容を整理するとともに、件の助役男性のような「モンスター」を生んだ存在についても考察しています。

亡くなった高浜町元助役ひとりに罪をなすりつける関西電力経営陣の卑劣

関西電力ともあろう企業の、会長、社長を含む20人の役員らが、町役場の助役だった人物から7年間にわたり合わせて3億2,000万円分の金品をもらっていたそうである。

現金、米ドル、金貨、金杯、小判、仕立券付きスーツ生地…。よくぞこれだけバリエーションを考えられるものだし、受け取る方も受け取る方だ。一人で1億円以上も懐に入れたツワモノもいるらしい。

関電のドンともいうべき八木誠会長や岩根茂樹社長が出席した10月2日の記者会見では、「預かって、個人で保管していただけで、すでに返した。不適切だが違法ではない」と全員が口裏を合わせるかまえを示し、なんと、高額な金品をもらっていた理由についても「恫喝が怖くて返せなかった」と豪華ギフトの贈り主のせいにしてしまった。

今年3月、90歳で亡くなった森山栄治氏がすべての罪をなすりつけられた気の毒な方である。1975年に高浜原発が立地する福井県高浜町の収入役となり、77年から約10年間、助役を務めた。押し出しの強さも手伝って、昔から町の有力者として知られていたらしい。

過疎化が進むなか、高浜町が地域活性化の手段として選択したのが原発誘致だった。その推進役として森山氏は獅子奮迅の活躍をしたようだ。

八木会長は言う。「高浜3、4号機の建設のさいに協力いただいた。地域全体のとりまとめに影響力があり、機嫌を損ねたくなかった」。

金品を受け取っていた側には会見した岩根社長と八木会長も含まれている。岩根社長の場合は、森山氏と会ったさい、受け取ったお菓子の袋の下に金貨が入っていたという。

今回公表された報告書の調査期間は2011年~18年の7年間に限られているが、八木会長はそれより前の06年から10年までの4年間にわたって何度か金品を受け取っていた。つまり、かなり前から金品の授受がおこなわれていたということだ。

豊松秀己元副社長も朝日新聞の取材に対し「(原子力事業本部内で)歴代大事にしてきた方だが、お会いする度に(金品を)持ってこられた」と語った。豊松氏ら2人はなんと1億円をこえる金品をもらっている。

このとんでもない事実が明るみに出たわけは、昨年1月、地元の建設会社「吉田開発」に金沢国税局の税務調査が入り、同社と縁が深く顧問をつとめたこともある森山氏への不透明なカネの流れが発覚したからだ。このため八木会長、岩根社長ともに、あわてて同年2月に金品を返した。

なんらかの手を打つ必要に迫られた関電は、不祥事が起きた時にどこの大企業もやるように、「社外の弁護士らを含む調査委員会」とやらを立ち上げて、実態把握に乗り出した。その結果出てきたのが、20人が合わせて3億2,000万円分も受け取っていた事実である。

とはいえ、調査するまでもなく上層部ではあるていど周知の「袖の下」だったはずなのだ。事実、会見のなかで岩根社長は「森山さんのことは連綿として引き継がれてきた」と語っている。

大枚を懐にしのばせたのは原子力本部長をつとめた役員がほとんどのようである。面談、会食のさいに受け取ったこともあれば、郵送で送られてきたことも。

電力会社の接待好きは記者なら知らぬ者はない。森山氏を宴席に招いたことも多かったのではないか。長きにわたって続いてきた隠し事だから、まだまだ闇は深い。

会見で岩根社長は「返そうと思いそれぞれ個人で管理していた。無理に返したら人間関係が悪くなることを恐れた」と言って、自らのケースも含めて言い訳をくりかえした。

「個人で管理」とは、自宅や銀行の貸金庫で保管したことというが、要するにフトコロに入れたのと同じだろう。それに、本気で返そうと思えば、相手に失礼にならない言い方で返せるはずだ。

なぜ森山氏をそれほど恐れたのか。むしろ、関電のおかげでカネや地位や権勢を手中にできた森山氏のほうが、頭が上がらないはずである。だからこその付け届けだ。関電のおかげで吉田開発などの関係企業に仕事をまわせたし、その工事規模や概算見積りといった情報までも事前に教えてもらえる特別待遇を受けていたのである。

たしかに世の中には、ボスとか、頭目とか、フィクサーと呼ばれるような、何ごとにも有無を言わさないオーラを放つ人物がいる。記者会見で関電側は森山氏から恫喝や脅迫を受けて病気になった社員の事例をあげ、いかに森山氏が異常な人格であったかを強調したが、それほどのことがあるのなら警察沙汰にしてもいいのではないか。

贈った金品を返してきたからといって、たとえば再稼働を邪魔するなどということが考えられるだろうか。「俺の顔を潰す気か」と一時的に憤慨することがあったとしても、である。町の顔役か有力者か知らないが、それで損をするのは森山氏自身である。森山氏の望む業者に原発関連工事を発注してくれないほうが困るはずではないか。

その事情をいちばん知っているのは関電である。高額すぎるので返したかったが怖くて返せなかったのではなく、高額ゆえに黙っておさめておこうという気が少しもなかったといえるだろうか。もちろん、関電の経営陣ともなれば高額の給料をもらっているだろう。だから、金品など欲しくはないかというと、そうでもあるまい。人間の欲には限りがないのだ。

金品を受け取った20人のうち4人は「預かっていた」という言い訳が通用せず、税務署に修正申告して追加納税をしている。そもそも「預かっていた」は不自然な言い草だ。

もうひとつ不思議なことがある。2011年~18年の7年間に合計3億2,000万円が森山氏から20人の手に渡っていると関電自身の調査で判明したわけだが、これだけの額を「吉田開発」一社の儲けのなかから拠出しているとすれば、よほど利益が出ていなければならない。

共同通信によると、「吉田開発」は、2013年8月期の売上高は3億5,000万円だったが、15年8月期は10億円を超え、18年8月期には21億円を上回った。

関電の調査によると、2018年に関電が吉田開発に直接発注したのは2億5000万円
で、ゼネコンを通して吉田開発が間接受注した額はピーク時の2017年に21億円にのぼったという。

ものすごい売り上げの伸びなのは確かだ。それでも3億2,000万円は事業の規模に比べると、あまりに多額ではないか。森山氏が吉田開発から受け取っていた裏金は3億円と言われるが、それ以外にも相当な収入がないと、勘定が合わない。

朝日新聞によると、森山氏は原発警備を請け負う地元企業の取締役や兵庫県内に本社を置く原発メンテナンス会社の相談役に就いていた。

この原発メンテナンス会社は、関電や関電と契約している大手重工メーカーを通じるなどして約86億円(2016~19年)を受注しており、森山氏が吉田開発のみならず数社からかなり多額の収入を得ていたと考えられる。

民間の金品のやりとりとはいえ、森山氏を仲介役としたワイロがかなり前から常習化していたのではないのだろうか。キックバックやリベートといえば幾分、聞こえはいいが、その場合も原資は利用者の支払った電気料金なのである。実質的にはネコババと言っていい。

株式会社における取締役などの役員については、会社法967条で賄賂の処罰規定がある。「その職務に関し、不正の請託を受けて、財産上の利益を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処する」。

民間人だから、贈収賄罪と無関係とはいえない。ましてや、大手電力会社は公的な性格が強く、それゆえに国から様々な恩典に浴してきたのだ。

電力会社が原発の立地する地域にカネをばらまく話はよく耳にするが、今回のように、電力会社側が金品を受け取る利権構図は、ほとんど聞いたためしがない。大概は、自治体や住民を納得させるため電力会社が協力金や寄付金と称してカネをばらまく構図だ。

誰のための「原発再稼働」なのか

ジャーナリスト、今西憲之氏が2012年3月、原発取材で高浜町を訪ねたさい、地元の建設業者から聞いた話を次のように記している。

「森山おじいさんのすごいところは、高浜町から関電に請求書のようなものを送りつけて『○○億円、ください』って平気でやること。もちろんその前に、関西電力のトップとは話をつけているのでしょうが、現場はびっくりですよ。高浜町への寄付なんて、億単位でバンバンとってくる」(中略)「森山さんの紹介がなきゃ、地元で工事も入れてもらえんよ。町長や町議の選挙だって、森山さんのところに挨拶にいかなきゃ当選できない。イベントでは一番の貴賓席に森山さんが座っていて、町長がわざわざ、挨拶していたさ。影の町長と呼ぶ人もいる」(前出の業者)
(アエラ・ドットより)

森山氏は関電から高浜町への寄付を億単位でとったうえ、地元の工事業者を関電に斡旋し、町長、町議選の票集めにまで影響を及ぼしていたというのだ。

岩根社長は「森山氏の呪縛から逃れたかったができなかった」とまで言い切った。実に奇怪きわまる話だ。

原発訴訟の中心的存在である河合弘之弁護士はこう推測する。「原発の安全対策工事は数百億円の大盤振る舞いだし、金額査定も非常に甘い。水増しした超過利益が元助役のところに行き、自分だけでもらってはまずいし、今後きちんと押さえておく必要があると考えた元助役が八木会長やその他に渡したというのが実態だと考えられる」(AbemaTIMES)

弁護士の郷原信郎氏も手厳しい。「ここまで来ると、あらゆる法令を使って刑事罰を科すことを検討するしかないと思う。大阪地検特捜部は寝ている場合ではない。」(同)。

福島第一原発の事故が起きた後、新規制基準に対応するため、関電は高浜原発だけで5,000億円をこえる安全対策工事費を投じたといわれ、「特需」の恵みにあずかった地元企業の一つが吉田開発である。

こうした新基準対応工事の「特需」は原発再稼働が予定される地域ならどこでも生まれていたはずで、各地に森山氏のような剛腕がいたかどうかはともかく、原発利権をめぐる“強欲伝染病”が日本じゅうで猛威を振るってきたに違いない。

水増しした工事代金の一部が森山氏を通じて、関電経営陣のもとへ戻ってくる仕組みだったとまでは思わないが、疑われても仕方がないのではないか。森山氏個人にも問題はあっただろうが、亡くなった人から弁明を聞くことはできない。

そもそも、森山氏のようなモンスターを生んだのは電力会社や経産省や政治家ではないのだろうか。

こうなってくると、政府と財界が推し進める原発再稼働が、国や国民のためではなく、ひたすら目先のカネを追い求める胡散臭い動きに見えてくる。

原発推進の財界総本山・経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は今後の影響を心配するのか、いつもの歯切れの良さを引っ込めた。

「八木さんも岩根さんもお友達で、うっかり変な悪口も言えないし、いいことも言えない。コメントは勘弁してください」。

お友達だから批判できない財界トップ。お友達だから権力乱用で破格の優遇をする総理大臣。アンフェアな社会づくりに長けたリーダーたちのもとで、いつまでも古色蒼然たる原発利権がはびこり、国力は他国にどんどん追い越されてゆく。

image by: Flickr

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