1/16使用済みMOXの悪夢/伊方原発でMOX燃料取り出し 行き場ないまま/次は高浜原発/再処理技術の確立幻想/「究極の高レベル放射性廃棄物」/まず製造中止【東京新聞・特報】

使用済みMOXの悪夢 伊方原発で取り出し

https://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2020011602000153.html
2020年1月16日【東京新聞・こちら特報部】

十四日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)から、使用済みのプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料が取り出された。国内の原発で営業運転に使われたMOX燃料が原子炉から取り出されたのは初めて。しかし、この使用済みMOX燃料、正真正銘、行き場がない。国や電力会社がその場しのぎでついてきたウソが濃縮されたともいえるこの核のごみをどうすべきか。 (佐藤直子、安藤恭子)

使用済みMOXの悪夢

 伊方原発でMOX燃料取り出し 行き場ないまま

  搬出困難 プールで半永久的に

「行き場のない核のごみがいよいよ伊方にとどめ置かれることになってしまう」。伊方原発の運転中止と廃炉を求める「伊方原発をとめる会」(松山市)メンバーの和田宰-つかさ-さんは不安をこう語った。

四国電力広報部によると、同原発3号機で十三日から士ハ日までに取り出しが行われる使用済みの核燃料は計百五十七体。そのうちMOX燃料は十六体ある。同社は「当面の間」とあくまで一時的な保管であることを強調するが、原子炉から貯蔵プールに移される核燃料が今後、別の場所に移される見込みはない。

さらに和田さんが懸念するのは、十五年ほど冷却すれば運び出せる通常のウラン燃料と違い、MOX燃料は放射線が強く、発熱量が大きいことだ。ウラン燃料と同レベルまで貯蔵プールで冷却するためには百年以上が必要と言われるが、プールの耐用年数は五十~六十年とされ百年に足りない。プールは壁や天井などの補強も行われていない。

「伊方原発は活断層が直近を走っている。大地震などが起きて万が一にもプールから水が抜けてしまったら…。燃料溶融事故が起きたらもう終わりだ。MOX燃料は2009年にフランスから搬入したときから、いつ処理技術が完成するのかわからなかったシロモノだが、とんでもない話だ」と憤る。

四国電力はさらに新規のMOX燃料五体を持っており、今回取り出した核燃料に換えて装填する予定だ。核燃料は十三カ月に一度の定期検査を三回経て使用済みとなるため、三年後にまたさらに使用済みのMOX燃料が出ることになる。

危機感を募らせるのは「インマヌエル松山キリスト教会」牧師の須藤昭男さん(七七)も同じ。福島県西会津町出身の須藤さんは、牧師として社会的発言を控えてきたが、一一年の福島原発車故後は「第二のふるさと(の愛媛)まで原発事故に遭わせるわけにいかない」と伊方原発の運転差し止めを求める集団訴訟を起こした。原告は千四百人を超える。「国や電力会社は住民に危険を押しつけるだけだ。一刻も早く廃炉にするしかない」

次は高浜原発

次に使用済みのMOX燃料が取り出されるのは、関西電力高浜原発3号機(福井県高浜町)だ。作業は今月下旬から予定されている。だが、高浜原発といえば、同町元助役(故人)が関電幹部らに長年にわたり金品を不正提供した問題が残っている。

「美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)」の小山英之代表は「高浜原発の焦点はどこに使用済み燃料を保管するかだ」という。「伊方と違うのは、福井県知事が県内に使用済み核燃料を置かせないと表明し、関電が県外に中間貯蔵施設をつくると約束していること。だが、そのめどが立たないまま使用済み燃料の取り出しの時期を迎える。結局は原発内の貯蔵プールに保管する可能性もあるが、元助役らの問題が解決しないと燃料の保管問題も進められないはず」と厳しい目を向ける。

再処理技術の確立幻想

 「究極の高レベル放射性廃棄物」

国や電力会社は、MOX燃料を通常原発で燃焼させるプルサーマル発電で、もとのウラン燃料の15%程度が再生利用でき、資源の節約になる上、高レベル放射性廃棄物の量も節約できるとして、推進してきた。だが、使用済みMOX燃料は、通常の使用済み核燃料よりもずっと危険で厄介な存在だ。放射線を出す期間の長い超ウラン元素が多く含まれ、中性子線量は通常の使用慣み核燃料の十倍だ。

民間シンクタンク「原子力資料情報室」の松久保肇事務局長によれば、通常の使用済み核燃料の三~五倍の発熱量が、数百年間にわたって保たれるという。松久保氏は「使用済みMOX燃料を地下で最終処分しようとすれば、発熱量に見合った巨大な処分場が必要となる。減容化にはつながらない」と指摘する。

長年、使用演み核燃料は全量再処理して再利用するという「核燃料サイクル政策」を掲げてきた国や電力会社は、この厄介な使用済みMOX燃料をも再処理するという方針を崩していないが、それは全くの絵空事だ。

そもそも、通常の核燃料の再処理を担う青森県六ケ所村の再処理工場さえ、一九九三年に着工以来、稼働前の試験段階からトラブルが続き、これまでに二十四回、完成を延期するなど技術的困難が露呈。はるかに扱いにくい使用済みMOX燃料を再処理する技術の開発は進んでいない。MOX燃料のための第二再処理工場は、具体的な構想さえ浮かんでいない。

元原子炉格納容器技術者の後藤政志氏は「六ケ所村再処理工場がいまだ完成しない現状を見れば、再処理の技術的困難は明らか。その先の使用済みMOX燃料の再処理なんて幻想にすぎない」と断言する。したがって、長期間水冷する必要があり、かつ第二再処理工場がほぼ絶望的な状況では、使用済みMOX燃料は、半永久的に原発敷地内にとどまる可能性が高い。

だが、それでもMOX燃料を燃やさなげればならない国側の事情がある。

プルトニウムは核兵器の原料となるが、日本はこれを、国内外で原爆五千発分・四五・七トン保有する。核燃サイクル政策を掲げ、英仏の再処理工場で大規模に再処理するなどLてきた結果で、日本は発電という平和利用で消費すると国際公約している。

だが、もともとプルトニウムの主な使途として想定していた高速増殖炉開発は、その原型炉「もんじゅ」が事故などで長期停止した揚げ句、二O一六年に廃炉が決定。公約を守るには、どんどんプルサーマル発電をするしかないのだ。

まず製造中止

前出の松久保氏は「プルサーマルだけでプルトニウムの削減を図るのは不可能で、もんじゅの廃炉が決まった段階で核燃サイクルは見直すべきだった。MOX燃料を作るのはやめ、使用済み核燃料は直接、地層処分できるようにするべきだ。化学物質による希釈技術など、原発以外のプルトニウムの平和的処分も考えてはどうか」と話す。

龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は使用慣みMOX燃料の取り出しを「言い換えれば、全く行き場のない、究極の高レベル放射性廃棄物が登場したということ」と受け止める。「原発内の貯蔵プールで核のごみを無期限で受け入れることになったのに、その自覚もなく、見守るだけの立地自治体もどうかしている」

核のごみの出口はない、とい問題の根本から議論するしかないという。「自治体は事故を想定し、保管計画や情報公開を国と電力会社に問うていくべきだ。でなければ、リスクを引き受けさせられた将来世代を含めた住民にも無責任だ」

(((デスクメモ)))
政府や電力会社は、MOX燃料を使えば「元の核燃料を15%再利用できる」と宣伝し、プルサーマル発電を推進してきた。だが八年前、本紙の取材に原子力委員会は15%の根拠はなかったことを認めた。「根拠は示せないがウソではない」と強弁した同委職員の顔を今でも忘れない。(歩) 2020・1・16

伊方原発3号織で取り出されたMOX燃料が納められたプール=14日、愛媛県伊方町で

(右)2013年6月、高浜原発へのMOX燃料輸送に抗議する人たち
(左) 昨年12月、原子力規制委員会が公開した東京電力福島第一原発3号機の原子炉
建屋内の様子。3号機にはMOX燃料が使われていた(規制委提供)

 

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